去年12月24日に10年にも及ぶ活動にピリオドを打った、内田万里(Vo,Key)、安西卓丸(Ba)、石井竜太(Gt)の3人からなる"ただのJPOPバンド"ふくろうず。CDも「テレフォンNo.1」から欠かさず購入し、ライブにも行ったことがある私は、頭をガンッと殴られたような衝撃を受け、心にぽっかりと穴が開いたような感覚を受けました。



石井さんはライブハウスでぽつぽつとギターを弾いて、音楽活動を続けているのは知っていましたが、後の2人は音沙汰のないまま。ただ4月29日に内田さんは安西さんをサポートギターに迎え、大阪は枚方でライブを披露。3人の生存が無事確認を知りホッとしたのを覚えています。



さらに内田さんはそこで新しく作ったCDを会場限定で発売しましたが、用意していた数が少なくあっという間に瞬殺。ほしい人全員に行き渡らなかったことをお客さんから聞いた内田さんは「何とかします」と宣言(したらしい)。さらに内田さんの限定CDがメルカリに出されるというお茶目な出来事もあり、通販での再販が決定しました。発売日は7月7日の七夕。内田さんのコメントでは「晴れますように」とありましたが、大雨でしたね。それはもう悲しくなるくらいの。





そして、発売日から1日を過ぎた7月8日。私の元にも内田さんの最初のソロ名義でのアルバム「POM-pi-DOU」が届きました。



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聴いていて、ふくろうず解散によって私の心に空いた穴はどんどんと埋まっていきました。
内田さんのふくろうずが解散した後のここから始めるという決意のような「POM-pi-DOU」。
内田さんのガーリーな部分がこれでもかと現れ出た「TONIGHT」。
これまたふくろうず解散後の心情をストレートに歌った「DAWN」。
少しずつ顔を出してきた希望を明るいアレンジに乗せた「BOO-bi-DOU」。
そして、ふくろうずと一旦距離を置くかのような寂寥感に満ちた「さよなら(安眠ver.)」。
どれをとっても名曲で、ふくろうず時代より一人になった分、キーボードが目立っている感じはありますが、ふくろうずが解散しても内田万里は内田万里のままでした。弾き語りではなく、あくまでもバンドアレンジという方向性で行くんですね。嬉しいです。





内田さんのコメントでは「CDを聞いてもらって『あー、内田はこういう感じだったのね。ふんふん』とその時の内田という人間の状況を楽しんでもらえたら嬉しいです。」とあったので、ここからはそういった話をしたいと思います。120%憶測と想像なのでそう思って読んでいただければ。



このアルバムにはふくろうず解散後の内田さんの心情、淋しさだったり途方に暮れる感じだったりが、本当にストレートに出てきてますよね。


「DAWN」の「朝がくればこの感情も消えるのかな」「果てしない絶望が待ってるのかも」からは、一人になった内田さんの悲しみが、「BOO-bi-DOU」の「やめちまえよ ばか 才能ないぞ」からは葛藤が感じ取れます。


「さよなら(安眠ver.)」なんてもう直接ですよね。全編を通して悲しい。特に「愛 して いた のよ」の後の「間違えちゃったけど」からは内田さんの後悔が垣間見えてもうそんなこと言わないでくれよっていう気持ちになります。





加えて、感じたのが「POM-pi-DOU」って夜の曲が多いんですよね。「TONIGHT」と「DAWN」、そして「さよなら(安眠ver.)」と5曲中3曲。これも内田さんの中の寂しさや悲しみなどといったネガティブな感情がそうさせたのかなって。


夜ってアンニュイな気分になってそういうネガティブな感情が増幅するじゃないですか。なので、夜っていうのは内田さんのネガティブな感情を象徴するものなのかなって私は考えました。ふくろうず解散後のどこに持っていったらいいか分からない感情を抱えながら眠れない夜を過ごしていたんじゃないかなって。





それは「TONIGHT」にも表れていそうです。これ恋する女性の片思いを歌った曲なんですけど、それはメインテーマとしてあるとして、ふくろうずに対しての内田さんの思いもサブテーマとして含まれていると思うんですよね。


ふくろうずに向けていたエネルギーを解散したことによって持て余してしまったのと、これからどうなるんだろうっていう漠然とした不安が。というか全曲にふくろうずに対しての思いが根底にはあるんじゃないかなあ。その不安を隠すように明るいアレンジになっていてそのギャップが際立ちますね。




でも、少しずつ時間は進んで「DAWN」、日本語で言う夜明けに近づいてきています。「さびしいなんて 言えないから わかったようなフリして 笑ってみせた」というのが孤独を、淋しさを感じて切ないんですけど、でも、内田さんはその淋しさを「さびしさに終わりなんかない」と受け入れたんですよね。受け入れたうえで「それでも待ってる この夜明けを」なんです。淋しさを受け入れたことで、内田さんの中には少しずつ希望が芽生え始めました。




その希望が現れているのが「POM-pi-DOU」ですよね。「ここからはじめよう」や「次はどこへ 遊びに行こうかな」から、夜を乗り越えて少し前向きな気持ちになった内田さんが見えてくるようで嬉しい。まぁその前向きな気持ちは徹夜してハイになっただけで、現実は何も解決していないんですけどね。


でも「繋いだ手と手を 離さないで行こうぜ」というのが頼もしい。現実は変わってないけど、でも信じていたいという強がりがいじらしく、このまま内田さんの作る音楽にどこまでも連れていかれたいなっていう気持ちになりました。



あと、私が一番好きな「BOO-bi-DOU」について。


このアルバムで一番明るい曲調の曲なんですけど、実際はそうでもなくて。「幸せだって 目がくらみそうよ あたし!」っていうのはたぶんこれも強がりですよね。空元気ですよね。葛藤がありますよね。


それなのに「くだらない歌」、これ多分ふくろうずの曲だと思う、を歌ってくれる君、この「君」は誰か一人のことを言ってるんじゃなくて、ふくろうずを好きでいてくれる不特定多数の人のことなんだと思う、がいてくれる。


それを受けて、内田さんは必要とされている、待ってくれている人がいると感じて「やめちまえよ」という葛藤に対して、「それでも やるっていうなら」と吹っ切れて、その状況を「幸せだって 叫んでみようか あした!」と表現したんじゃないかなって私は受け取りました。一ファンの勝手な都合のいい想像です。





そして、この4曲を得て最後の「さよなら(安眠ver.)」でアルバムは締めくくられます。ふくろうずに対する内田さんの気持ちが一番現れていて、すごく寂しくて切ない曲。これは繰り返しになるんですけど、ふくろうずと一旦距離を置くっていう内田さんの思いの現れなんじゃないかなって思うんですよ。


「安眠」っていうのは「やすらかにぐっすり眠ること」っていう意味なんですけど、でも永遠のさよならではたぶんなくて。「永眠」ではなく、また目を覚ます、覚ましたいっていう希望も込めて(安眠ver.)としたのではないかなと推測します。そもそも本人たちが望んで解散したわけではなさそうですしね。














さて、「ふくろうず」というバンド名には特に意味はないようですが、ふくろうという動物のは夜行性です。"ただのJPOPバンド”と名乗ってましたけど、私はふくろうずってその名の通り夜行性のバンドだったと思うんですよね。


まず、動物には昼行性と夜行性とがあります。昼行性・夜行性っていうのはその生物の習性の問題で、そこに優劣はないですし、夜行性の動物は別に昼行性のことを羨ましくも思ってないですし、その逆もまた然りです。


で、人間にも昼行性と夜行性っていうのがあると私は思ってるんですよね。別にそれは昼型・夜型っていう表面的なものではなく、もっと心の深層部分の話で。動物と同じように昼行性・夜行性に優劣はないですが、現実でどちらが幅を利かせているかというと、間違いなくこれは昼行性の方ですよね。


人間の厄介なところは夜行性の人間はどこかで昼行性に憧れを抱いてるというところです。人間っていうのはなまじ考えられる頭があるおかげで、自分にないものが羨ましく見えてしまいます。しかし、昼行性の方が「人間としてこうあるべき」という世間一般が思い描く姿に近く、昼行性は夜行性の、自分にない部分に対して憧れを抱くことはあまりないと思われます。


でも、夜行性は違う。「人間としてこうあるべき」である姿とは違う自分の姿を責めてしまう。「どうしてああなれないのか」「自分はダメな人間だ」。そういった妬み嫉みひがみが夜行性の心の奥底には渦巻いています。「優劣なんてない」といっても聞く耳を持ちません。




以前このブログでも書きましたけど、私はふくろうずのことを「だめな人のためにいたバンド」だと思ってまして。そういう自分のことをダメだと思っている夜行性に、手を引っ張るでもなく背中を押すでもなくただ寄り添う。比べる必要なんてない、だめな自分でもいいじゃないかと囁き続ける。ふくろうずってそういうバンドだったと思うんです。


方向が夜行性の人たちの方を向いていたおかげで、夜行性の人たちの中では知る人ぞ知る的な人気がありましたけど、幅を利かせている昼行性には目を掛けてもらえなかった。それがセールス的な不振につながってしまったんじゃないかなって邪推ですけど思います。





ふくろうずが結成してけっこうな月日が流れ、夜も更け夜明けが近づいてきた。そして、夜明けが訪れて夜行性のふくろうは眠ったのです。


でも、内田さんは眠らなかった。眠い目をこすりながらも、今まで自分を支えてくれた夜行性だけじゃなくて、自分に目を向けてくれなかった昼行性に「こっち向いて」とアタックを始めたのです。そんな内田さんの挑戦を、重い瞼を何とか上げて頭をカクンカクンさせながら、微力ながらでも応援できたらいいなと「POM-pi-DOU」を聴いて思いました。




今までふくろうずを聴いていた夜行性も、ふくろうずなんて聞いたこともないっていう昼行性も、ぜひともこの「POM-pi-DOU」という素晴らしいアルバムを聴いてほしいなって思います。絶望の果てに希望を見つけた内田さんの清々しい姿がそこにはあるから。心の大切な部分にきっと残るはず。本当にいい曲書くんですよ、内田さん。


最後に。コメントで内田さんは「そして、この作品を作った頃の気持ちと、今のわたしの気持ちはまた全然違ってきています。この気持ちもいつか表現できたらと思っています」と次回作の意欲を語っています。アルバムは想像以上の出らしいんですけど、さらに多くの人に広まってほしい、そしてもっと内田さんの作る音楽を聴いていたいとの思いを込めて「POM-pi-DOU」の商品リンクを貼ってこのエントリーを終わりにしたいと思います。がんばれ、内田さん。




【蔦屋枚方書店 Yahoo!店 限定】内田万里 1stミニアルバム『POM-pi-DOU』限定リリース

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おしまい