11月11日。ポッキーの日。いい買い物の日。そしてBase Ball Bearの結成記念日。彼らが通っていた高校の文化祭でライブをしたのが17年前のこの日。そこからBase Ball Bearは始まった。


そして、2018年11月11日、名古屋ダイアモンドホールで彼らはライブを開催した。タイトルは「LIVE IN LIVE 〜I HUB YOU〜」。東京、大阪と2公演続けてきた対バンツアーの最後に、彼らは先輩であるthe pillowsをゲストに招いた。


the pillowsは私が一番好きなバンドだし、Base Ball Bearも私にとって大切なバンドだ。しかもこの日限りでthe pillowsのサポートベーシストに、BaseBall Bearのベーシスト関根さんが入るという。行かないという選択肢は最初から無かった。朝早く起きて、高速バスに乗り込み長野から名古屋に向かう。実に2年ぶりの名古屋だった。


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暑い。フロアにいる1,200人の熱気で、頭上を見ると湯気が昇っていた。今か今かと開演を待つ人たちの口は忙しない。あちらこちらから声が聞こえた。街の喧騒と何一つ変わりがない。ミニチュアのコミュニティができていた。 




18時を少し過ぎたころ、会場が暗転し、SALON MUSICの「Kelly’s Duck」が流れた。the pillowsがいつも使っているおなじみのSE。安心感と期待感で私の胸は包まれた。真鍋さん、佐藤さん、さわおさんの後に続いて、関根さんがそろりと入ってくる。待ちに待った瞬間が始まろうとしていた。


さわおさんが大きなストロークでギターをかき鳴らす。「I think I can」。そして「Ride on Shooting Star」。軽快なリズムに乗せて意味の少ない歌詞が歌われる。会場の空気も大盛り上がりとまではいかなかったが、さわおさんの機嫌を損ねない程度の盛り上がりを見せる。サビで関根さんが「I think I can」とコーラスしているのを聞いて、早くも目的が半分果たされたような晴れやかな気持ちになった。「Ride on  ShootingStar」では、イントロで関根さんもさわおさんと真鍋さんに合わせて前後に揺れているんだろうな、と思った。「Ride  on Shooting Star」はthe pillowsの中でも屈指の盛り上がりを見せる曲だ。何度も聞いているので、体が自然に動く。小刻みに前後に揺れた。何回聞いても盛り上がるものは盛り上がるのだ。

「いつもよりキラキラしたピロウズでお送りします」


さわおさんもなんだか上機嫌だ。



「11月11日、ベースの日」

「ベーシスト界のファイターガール、関根史織!」


関根さんが頭を下げると大きな拍手が飛び交った。

そのあとさわおさんは「関根ちゃん」と言ってしまい、すぐ「史織ちゃん」に訂正していた。そこに大きな意味があるようには思えなかったけど、本人たちにとっては大事なことらしい。


「本日は史織ちゃんのリクエストも交えてお送りします」



そう言って次に演奏された曲は「Carnival」だった。ベースがとにかくシンプルで、なんならほとんどルート弾きしかしないような曲だ。関根さんは忠実に演奏していて、シンイチロウさんのいつもの決してリズムが崩れない、テンポキープの鬼のようなドラムと合わせてとても安心感があった。フロアのBase Ball Bearを見にきたお客さんも少しずつthe pillowsに慣れてきたことだろう。



たが続けられた曲は、そんなthe pillowsをあまり知らないBase Ball Bearファンをある種突き放すような曲だった。関根さんのベースが不穏な雰囲気を醸し出す。the pillowsのワンマンライブでもあまりお目にかかれない曲「STALKER」だ。歪んだギターからオルタナが溢れ出る。the pillowsをあまり知らないBase BallBearファンから見たらどう思っただろうか。これも関根さんのリクエストなんだろうか。だとしたらずいぶん大胆だなあと思う。



オルタナは続く。真鍋さんの耳に残るギターリフで始まったのは最新アルバム「REBROADCAST」のリード曲「ニンゲンドモ」。ピロウズの原点であるオルタナに立ち返ってさらに先に進んだような曲で、初見に優しいとはあまり言えない。ただこれからのツアーでやるであろうこの曲を一足早く聞けたのは嬉しかった。真鍋さんと関根さんのツインコーラスもこの日限りのレアものだ。主に真鍋さんがフレーズを、関根さんがハミングを担当していて、どちらも甲乙つけがたく良かったのだ。





曲が終わってさわおさんが第一声。


「仲良くしてくれるじゃないか」


さわおさんは出番の前に、マネージャーから「ピロウズが目当ての人20人くらいって」と言われていて危惧していたらしい。


「俺が確認できるピロウズの人が全員、史織ちゃんを見てる」とジョークなのか事実なのかよく分からないことを飛ばすさわおさん。


「小出に名古屋のお客さん盛り上がりますよって言われた」嘘だったら傷つくぞ」



一度タオルのところまで戻り、頭を拭くさわおさん。それを見て「(頭わしゃわしゃするの)見れてよかったです」と関根さんが笑っていた。関根さんはこの日次のREBROADCASTツアーで発売する「FIGHTER GIRL」Tシャツを着ていた。白い布地に黒い細い字でシンプルに「FIGHTER GIRL」と書かれているだけのTシャツがよく似合っていた。真鍋さんはBase BallBearの「I HUB YOU」Tシャツを着ていた。さわおさんは洒落たTシャツにカーディガンで、シンイチロウさんはよく見えなかった。



「なんでも特別な日(結成記念日)なんだって」

「そうだったらこんな攻めたセトリにしなかったのにな」



さわおさん、真鍋さん、関根さんの3人がギターとベースを縦に掲げる。この独特な弾き方をするのはthe pillowsの中でも1曲しかない。さわおさんが英詞で「Calvero」を歌い始めた。2分ちょっとの短い曲。これも関根さんのリクエストだったらしい。最後に一斉にベースとギターを戻すのだが、少しずれていて、そこがかえって愛おしかった。



映画「フリクリ プログレ」の主題歌「Spiky Seeds」で、フロアを盛り上げた後は小休止。MCが入った。





「ベース、関根史織」


「私、好きなこと公言するのあまりしないんですけど、ピロウズめちゃくちゃ好きで」

「結構ピロウズのライブにも行ってるんですよ」

「いつもはそっちにいるんで、そちらの心持ちというか、わかりますよね?」


微妙な語尾が笑いを誘う。


「三人がかっこよすぎて直視したら鼻血出そう」

「浮かれないよう必死でがんばってます」


「ドラム、佐藤シンイチロウ」


「ピロウズ29年やってきてよかった!」

「おじさんこんなに嬉しい日はありません!」 


デレデレで浮かれている。


「ギター、真鍋吉明」


「私、リハーサルのときに準備とか色々あって、いつも早めに行くんですね」

「初めてのリハーサルのとき行ったら既に史織ちゃんがいた」

「心意気というか、男気を感じた」


ベタ褒めだ。




MCとメンバー紹介が終わり、「サードアイ」が演奏された後、ステージが一瞬暗くなった。白熱灯の光がさわおさんを照らし出す。

「Can you feel?」

シンイチロウさんのドラムのカウントを合図に「ハイブリッド レインボウ」が演奏された。the pillowsのなかでも随一の人気曲だ。


Can you feel?
Can you feel that hybrid rainbow?
きっとまだ限界なんてこんなもんじゃない
こんなんじゃない


曲はエモーショナルな感想へと突入していく。ステージでは照明が頻繁に切り替えられ4人の姿はよく見えない。でも、そこに鳴っている音で十分だと思った。フロアが一体となって演奏に聞き入っていたから。感情の高まりは最後のサビでさらに増幅される。泣きそうになったが堪えた。でも堪える必要もなかったような気もする。




息もつかせぬままにさわおさんがスピーカーに足をかけてギターをかき鳴らす。予感があった。今回、関根さんがthe pillowsのベースに入るということで、見てみたい曲が1曲だけあった。さわおさんが関根さんを指差す。予感は当たった。関根さんが攻撃的なリフを繰り出す。「Sleepy Head」。ベースから始まるこの曲が、関根さんによってどうなるのか今回どうしても見てみたかったのだ。乾いて歪んだ、でもどこか丸みのある関根さんのベースに私は射抜かれた。そして、たぶん誰にとっても。激しさを増す間奏では、連続で照明が激しく焚かれた。ときおり映る4人の姿はシャッターで切り取られたようだった。


「いつだってロックンロールだ!時代を突き抜けろ!!」


最後はthe pillowsのライブの新定番「Locomotion, more! more!」で締めて、関根史織 in the pillowsのステージは終わった。関根さんという新しい血が入ったことで、3人の演奏もまた違って見えたエキサイティングなステージだった。やっぱりthe pillowsは私の心のバンドだ。Base Ball BearのTシャツを着た人からも「ピロウズかっこよかった」と聞こえて、無性に嬉しくなった。




<the pillows セットリスト>

01.I think I can
02.Ride on Shooting Star
03.Carnival
04.STALKER
05.ニンゲンドモ
06.Calvero
07.Spiky Seeds
08.サードアイ
09.ハイブリッド レインボウ
10.Sleepy Head
11.Locomotion, more! more!













転換は20分ぐらいだっただろうか。ローディーの人たちがはけた後に、SEが流れた。知らない洋楽の曲だった。堀之内さんが入り、関根さんが入り、最後に小出さんが姿を現した。the pillowsのときは関根さんは下手側にいたのに、Base Ball Bearだと上手側に立っていて、あっ違うんだなと感じた。



小出さんの静かなギターにフロアが聞き入る。弾き語りで始められた1曲目は「ドラマチック」。小出さんのエモーショナルなギター、関根さんの確かなベース、堀之内さんの大胆なドラム、いずれをとっても楽しい。いきなりのフルスロットルの入りに、Base Ball Bearファンで埋め尽くされたフロアのテンションも上がる。手を上げる人数はthe pillowsのときよりも増えていた。


「ドラマチック」が終わって、次に演奏されたのは人気曲である「PERFECT BLUE」。イントロの小出さんのギターから既に爽やかさが半端じゃなく、暑苦しかったフロアに、清涼な風が吹いた。よく馴染みのある曲の連発にスッとBase Ball Bearの世界に入り込むことができた。




「PERFECT BLUE」が終わり、最初のMCタイム。右から野太い声の「堀之内ー!」、左から黄色い声の「堀ちゃーん!」。声援の8割ぐらいが堀之内さんへの声援で占められていたように思う。小出さんも「名古屋のこの局地的な堀之内人気はなんなんでしょう」と微笑していたほどに。


MCの話題はやはり関根史織 in the pillowsについて。小出さんは一回だけthe pillowsのコピーバンドをしたことがあるらしく、「僕なんてコピーバンド止まりですよ」と関根さんのことを本気で羨ましがっていた。


赤と青の照明が点けられ、ステージ上が紫に変わる。堀之内さんのカウントから演奏されたのは、アルバム「光源」から「SHINE」。「青春は1,2,3 ジャンプアップ」という歌詞が私たちを飛ばせる。何かを求めるように手を上げさせる。間奏で小出さんと関根さんが向かい合って演奏するときがあって、大体どのバンドもやることだけど、やはりいいなと感じた。


流れるように「LOVE MATHMATICS」へと続く。バスの中でシャッフル再生をしたときに、この曲がかかったので、今日やってくれるかなと淡い期待を抱いていたものが、現実となって嬉しかった。関根さんのベースもますます躍動している。サビで歌詞に合わせて、カウントアップをする手が多くて、それはまるで初春に生える土筆のようだった。


「LOVE MATHMATICS」が終わると、何気なく、ご飯茶碗から味噌汁のお椀に持ち替えるように、関根さんはベースをチャップマンスティックに持ち替えた。ベースの音もギターの音も出せる楽器らしい初めて見たそれは「スティック」の名に恥じない、まっすぐな棒だった。指で、不穏で妖艶なフレーズが奏でられる。「君はノンフィクション」というこの曲を恥ずかしながら私は知らなかった。でも、その掴みどころのなさがいい曲だと思った。手からするっとこぼれ落ちてしまうような。




終わって再びMC。今度のMCはさっきより長めだった。まずは結成記念日について。小出さんが振り返る。


「僕ら17年前の11月11日結成したんですよ」

「その頃はスーパーカーのコピーバンドで、まだBase Ball Bearって名前もなくて」

「関根さんが男装してたんですよね。髪もベリーショートにして。波平に毛が生えたみたいな、海平みたいな髪型で」


関根さんが笑ってごまかしていた。かわいらしかった。


「関根さん、どうですか17年間やってきて」


「ここまで続いてるってことで感慨深いものがあります」

「自分なんてクソだと思ったこともあったけど、辞めずに続けてきてよかったです」



話は続く。


「で、そのとき本当は解散ライブの予定だったんですね」

「前日、僕と堀之内さんがエラい喧嘩をしまして、それでこんなバンドもうやめるってなって、解散ライブの予定だったんですよ」

「で、そのライブが終わって俺はすごい楽しかったから、またやりましょうってメールしたら、熱い手のひら返しで、はい(ニコッ)って。それで続いてるわけなんですけど、堀之内さんどうですか、17年間やってきて」


「続いてるなーって思いますよ」

「だってもうバンドやってる時間の方が長いわけですからね」

「下手すれば親よりも一緒にいる」


「俺は親の方といるけどね」


「俺が親を大切にしてないみたいじゃねーか」


会場に笑いが起きた。ジョークを言いあえるって信頼関係が熟成してるなあって思う。





そしてMCの話題はツアータイトルにすげ変わった。


「今回のツアータイトル『I HUB YOU』。HUBっていうのはパソコンと外部データをつなぐものみたいな意味なんですね」

「で、どうしてHUBにしたかっていうと、俺が中1のとき、ハブられていたからなんですね」

「いや、だからギターも始めて、音楽も始めて、この2人とやっているわけなんですけど」

「それで、僕たちの音楽を通して、HUBになって、皆さんが出会ってもらったり、音楽ってそういう力があると思うんですね」(この辺り曖昧。要旨はこんな感じだったと思う)

「今回、ピロウズのめちゃくちゃカッコいい音楽を知ってもらって、ベボベファンとバスターズのHUBになれたらなって」



「僕らが下北沢で下積みをしてたころ「12月8日」っていうバンドがいて」

「次の曲はその時期のものなんですけど、僕らは歌い続けることで、12月8日の思いを引き継いでHUBになっていきたい」





そうして演奏された曲は「short hair」だった。堀之内さんのドラムがさらに勢いを増している。



たくさん失う

色も褪せていく

それでも僕は君を待ってる



MCを受けてサビ前のこのフレーズが胸に響いた。おそらく続けていくなかで、多くのバンドの解散や完結を目にしたのだろう。小出さんのボーカルからは経験から来る重みが感じられた。




「short hair」が終わった。すると小出さんがクラプトンのような泣きのギターを奏で始めた。この時点では何の曲かなんて分からないし、聞き入るしかない。カッティングギターが鳴らされたときに「Tabibito in the dark」だと気がついた。私がBase Ball Bearで一番好きな曲だ。



「この街に必要ない存在」「いつまでも愛されない存在」だとよく思う。いつも思う。「Tabibito in the dark」はそんな私を「なにもかも忘れて踊」らせてくれる。鬱から躁へと切り替わるエクステンション。実際にはなにも解決していないけど、片時でも忘れさせてくれる。それが好きなのだ。



そこにいつも後ろで鳴っていたあのギターはなかった。CDと比べると味気ない部分も正直ある。でもそれでいいと思った。小出さんがコードとメロディーを弾いて、関根さんがフレーズを弾いて、堀之内さんがリズムを作る。それだけでも「Tabibito in the dark」は、Base Ball Bearは成立することを知った。失ったものは大きいが、それを埋めてありあまるほどのエネルギーが今の3人には満ちている。サビで暗かったステージが一気に明るくなった。手を思いっきり突き上げてみる。掴んだものはなかったけど、ただただ気持ちがよかった。跳ねる。手を振る。不恰好でも自分なりの振り付けで踊った。





小出さんが観客を煽る。コールアンドレスポンスは最近見たあの映画のようだ。「俺達なりのロックンロール」と演奏されたのは「The Cut」。CDではラップパートをRHYMESTERが担当していたが、ライブでは小出さんがラップ部分も歌っていた。関根さんが近づいてくる。ベースを弾く関根さんに向けてラインを炸裂させる姿にあちらこちらから歓声が上がった。2番ではギターを弾きながらもラップをこなしていて、凄すぎて逆に軽く引くほどだった。「Tabibito in the dark」に続いてフロアを踊らせる。私たちは3人のなされるがままだった。





MCを挟まず曲は続く。聞こえてきたのはくぐもるような独特のイントロ。「yoakemae」だ。フロアの熱りは冷めることはない。小出さんが「明日はどこだ」からの「ここだ」を大いに溜める。そのぶんサビの高揚が増していた。



そして早くも本編最後の曲に。最後はもちろんこの曲。ここでやらなければいつやるのと言わんばかりに「17才」が投入された。会場にいる全員が、この曲が演奏されることを予期していたのだろう。蛇のように待ち構えて、手拍子で一気に飛びつく。空気が泡のように弾けた。小出さんも関根さんも堀之内さんも、実に楽しそうに演奏していた。曲終わりの「Base Ball Bearでした!ありがとうございました!」がとても眩しく聞こえた。





会場ではアンコールを求める拍手がこの日も起こった。ぶっちゃけ惰性でやる日もあるのだが、この日は違ったように感じる。再びステージに登場した3人は「IHUB YOU」のロングTシャツに着替えていた。



「いや、こんなめちゃくちゃアンコール期待されたら、並大抵のアンコールというわけにはいかないでしょう」

「というわけで、スペシャルゲスト、山中さわおさんです」


さわおさんが手にビールを持ついつものスタイルで登場した。



「お先にビールいただいてます」

「3人になったBase Ball Bear初めて見たけど、めちゃくちゃギター上手いのな」

「それと、ドラムはどのバンドでもああいったポジションなんですね」

「うちのおじいちゃん枠」

「でも、おじさんになるかと思ったらおばさんになってることもあるからね」


「ある、それめっちゃある」


「僕も最近それは感じます」


会場が柔らかなマイルドな雰囲気になった。



「さて、これからやる曲みんな知ってるかなー」

「いや、知ってるだろう」

「このTシャツにちょっと見覚えがあるはず」


そういうさわおさんが来ていたのは、25周年での対バンツアーでの「ROCK AND SYMPATHY」Tシャツ。ということはあの曲しかない。


Funny Bunny」だ。


the pillowsのオリジナルバージョンとは、コードもビートも大きく変え、ダンサブルになったBase Ball Bearのカバー。そのアレンジに乗せてさわおさんが歌う。夢を見ているようだった。



1番はさわおさんが歌って、2番は小出さんが歌う。小出さんが歌っている間に、ビールを呑むのがなんともさわおさんらしい。サビはさわおさんと小出さん、それに関根さんも加わって3人のボーカル。感動とそれを上回る楽しさがあった。



間奏の間、手持ち無沙汰になったさわおさんは堀之内さんのところまで行ってシンバルを叩いていた。子供みたいでかわいらしかった。最後のサビももちろん3人で歌っていた。



君の夢が叶うのは

誰かのおかげじゃないぜ

風の強い日を

選んで走ってきた



大盛況のまま夢のセッションは幕を閉じた。関根さんがthe pillowsのサポートをしたのもそうだけど、こういうコラボレーションがありえるのが対バンの大きな魅力だと思う。さわおさんが帰っていったあと、小出さんが「やってて思ったけど、めちゃくちゃいい曲ですね」と嬉しそうに語っていたのが印象的だった。





そして、最後の1曲へ、という前に告知の時間。小出さんにカンぺが渡される。



「バンドのさらなる進化を捉えたBase Ball Bear、1年9ヶ月ぶりの新作が新たに立ち上げたGDPレーベルより発売決定!」


歓声が、嬌声が上がった。


「GDPはゴリラ・ドラム・パークの略」

「30分くらいで考えたけど真剣」


「バンドの新たな姿を捉えた新曲4曲に、4曲だよ!?すごくない!?」


興奮して話す小出さん。マテリアルクラブのあとにすぐ作ったらしい。



「バンドの最新の姿を収めたライブ映像、あ、この前の日比谷ノンフィクションね、disc2も収録したスペシャルEPとして、2019年1月30日に発売!近い!あと2ヶ月だよ!」


「そして、この新EPを引っさげて、2月3日から全国18カ所を巡るツアー、『LIVE IN LIVE 〜17才から始めて17年になりました〜』が開催決定!名古屋は3月10日、ダイアモンドホールで」


東名阪3公演かと思っていたら、予想以上に多くてびっくり。ただ、長野には来ないようだ。



「そして、今公演終了後に物販でチケットを4,500円で最速販売!そんな急に言われてもーという方、僕らにはベボ部があるじゃないですか。本日21時からベボ部で先行販売開始!18日までの受付となります。※会員登録がないと利用できません」



「関根さん、抱負をどうぞ」

「すごいいい感じになってると思うので、頑張ります」

「堀之内さん」

「言えることは一つ、今日は楽しんで帰ってください!」



「今回は光源ともまた違って、光源は打ち込み入れてたりしたんだけど、今回は3人だけの音で、ダビングもほとんどしてない感じ」

 

「名古屋の頭のおかしいお客さんなら盛り上がってくれるだろうって急いで仕上げた」

「この名古屋が盛り上がりの基準となる」



そこまで言ったところで、小出さんがタイトルを叫ぶ。


試されるーー!!



紫の妖しい光に乗って新曲が始まった。3人のみのソリッドなサウンド。芯の強さ。ストレートなロックンロールと言える。フロアも初めて聞いた曲なのに、もうノリノリで手を挙げていてなかなかどうして適応力が高い。そしてサビの


試される 試される やたらと僕ら試される


のリピートが印象的な一曲だ。やっぱりあの一件以後、色々な苦労や試されるシーンがあったのだろうか。いや、確実にあったんだろうな。そんなことを窺わせる新曲だった。





演奏を終えて3人が下がった後も、拍手は鳴り止む気配を見せない。期待と渇望が入り混じっている。3人が三度ステージに姿を現すと、フロアが興奮に包まれた。


ダブルアンコールで演奏されたのは「祭りのあと」。東京、大阪、名古屋と3都市を回った「LIVE IN LIVE ~I HUB YOU~」という祭りを締めくくるにはこれ以上ない選曲だ。初めてライブで聞いた「祭りのあと」はCDで聞くそれよりもテンポが速くなっていて、切迫感を駆り立てる。シリアスに歌う小出さんと対照的に、関根さんは右へ左へ大きく動いていた。堀之内さんがジャンプしてドラムをたたいて終わる様がダイナミックだった。最後まで大きな盛り上がりを見せたまま、この日のライブは終了した。最高の夜だった。




当たり前のことだけれど、それぞれのバンドにはそれぞれの人生、というかバンド生がある。それぞれのペースで製作を行い、ライブを行っている。そのバンド生が交差するのが対バンというものなのだ。今回、Base Ball Bearとthe pillowsのバンド生が交差した結果は、最高のライブパフォーマンスという結果になって表れた。the pillowsに関根さんがサポートとして加入したのも、さわおさんとBase Ball Bearが「Funny Bunny」をセッションしたのも、そうやすやすと見れることではない。一夜限りのステージが終わった後、私ははるばる名古屋まで来てよかったと、素直に思えた。周りの人も晴れやかな表情をしていて、誰にとっても楽しい夜になった11月11日のことだった。


さわおさんはライブの最中にこう言った。


「気が早いけれど、関根史織 in the pillows、またやります」


私は、その言葉が現実となる日が、なるべく早く訪れるよう願ってやまないのである。







<Base Ball Bear セットリスト>

01.ドラマチック
02.PERFECT BLUE
03.SHINE
04.LOVE MATHMATICS
05.君はノンフィクション
06.short hair
07.Tabibito in the dark
08.The Cut
09.yoakemae
10.17才

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01.Funny Bunny (with. 山中さわお)
02.試される(新曲)

en2
01.祭りのあと
 










おしまい



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Base Ball Bear
ユニバーサル ミュージック
2017-04-12