こんにちは。これです。昨日アカデミー賞が発表されましたね。群雄割拠のなか作品賞に輝いたのは『グリーンブック』。日本では3月1日公開の映画です。私も多分見ると思います。楽しみだなぁ。


さて、今回のブログは映画の感想です。今回観た映画は『翔んで埼玉』。魔夜峰央先生原作の漫画を実写化した映画です。正直最初は見るつもりはなかったのですが、あまりに評判がいいので今回観にいきました。


そして、観たところ完全にハマりました。個人的には今年観た映画の中でもベスト1です。それもわりとぶっちぎりで。本当に面白い映画でした。


では、感想を始めたいと思います。なお、魔夜先生の原作は未読ですので、それを踏まえて読んでいただけると幸いです。では、よろしくお願いいたします。




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―目次―


・中世の雰囲気と現実的なワードのギャップ
・キャストについて
・しっかり笑えて意外と泣ける
・Jリーグサポーターにこそ見てほしい






―あらすじ―

 埼玉県の農道を、1台のワンボックスカーがある家族を乗せて、東京に向かって走っている。カーラジオからは、さいたまんぞうの「なぜか埼玉」に続き、DJが語る埼玉にまつわる都市伝説が流れ始める――。
 その昔、埼玉県民は東京都民からそれはそれはひどい迫害を受けていた。通行手形がないと東京に出入りすらできず、手形を持っていないものは見つかると強制送還されるため、埼玉県民は自分たちを解放してくれる救世主の出現を切に願っていた。
 東京にある、超名門校・白鵬堂学院では、都知事の息子の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)が、埼玉県人を底辺とするヒエラルキーの頂点に、生徒会長として君臨していた。
 しかし、アメリカ帰りの転校生・麻実麗(GACKT)の出現により、百美の運命は大きく狂い始める。麗は実は隠れ埼玉人で、手形制度撤廃を目指して活動する埼玉解放戦線の主要メンバーだったのだ。
 その正体がばれて追われる身となった麗に、百美は地位も未来も投げ捨ててついていく。2人の逃避行に立ちはだかるのは、埼玉の永遠のライバル・千葉解放戦線の一員であり、壇ノ浦家に使える執事の阿久津翔だった(伊勢谷友介)。
 東京を巡る埼玉vs千葉の大構想が群馬や神奈川、栃木、茨城も巻き込んでいく中、伝説の埼玉県人・埼玉デューク(京本政樹)に助けられながら百美と麗は東京に立ち向かう。果たして埼玉の、関東の、いや日本の未来はどうなるのか――!?

(映画『翔んで埼玉』公式サイトより引用)




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。











・中世の雰囲気と現実的なワードのギャップ


『翔んで埼玉』は過去の伝説パート現代パートという二つのパートによって成り立っています。伝説パートの進境が現代パートにも影響していくわけですが、恐らくこのあたりの構造についての詳しい説明は誰かがやってくれるでしょう。なのでこの感想では主に伝説パートについて書いていきたいと思います。多分この感想長くなると思いますし。




さて、伝説パートはまずは”都知事への近道”白鵬堂学院から始まります。この名門高校、白いロココ様式の建物の中に華美なシャンデリアがそこら中にかかっており、さらに廊下はレッドカーペット。雰囲気が完全に中世です。さらに生徒の制服も格式高いピンクを基調としており、主役の二人壇ノ浦百美と麻実麗の服装に至ってはまさしくベルサイユのばらのそれ。さらに、メイクもアイシャドーをたっぷり塗り、つけまつげを盛るなど、昔の少女漫画の雰囲気を再現しようとしています。その出で立ちは見なれない私たちにとってはもはやコント。『翔んで埼玉』はこういった美術面に力が入っており、そのこだわりは思いっきり突き抜けていました。


でもって、その浮世離れした印象から「春日部」だの「所沢」だの「草加せんべい」だの現実的なワードがバンバン出てくるわけですよ。もうギャップで笑うしかないです。大仰な格好しておいて言ってることは普段の私たちと大して変わらないというのがとにかく面白かった。「常磐線で我孫子まで出て、取手まで行って」とかおかしくてたまらなかったです


こういった地名の中でも個人的にツボにはまったのは東京の郊外の地名が出てきたところ。「田無」「八王子」「西葛西」「町田」「狛江」といったところががっつり出てきました。ここからは個人的な話になりますけど、私が大学時代に住んでいたアパートの最寄り駅が田無だったんですよ。まあもっぱら武蔵境ばっかり使ってましたけど。バイト先にも「最寄り駅:武蔵境」って出してたし。


で、その新居に移って一日目に自転車を買って田無駅に行ってみたんですね。で、着いた田無駅北口で初めて東京を感じたんですよ。新宿や渋谷からしてみれば規模は百分の一くらいですけど、長野に暮らしてた私からしてみるとそれは強烈な第一印象だったんですね。いまでもその時の様子思い出せますもん。なので田無は割と思い出のある場所なんですけど、映画の中じゃその田無が思いっきりディスられてるんですよ。「田無はDクラス。ギリギリ東京」みたいな感じで。もう「ふざけんじゃねぇよ!」ですよね。「田無をバカにするやつは俺が許さないぞ!」みたいな感じで。ちょっと東京に住んでいた私ですらこうなったんですから、散々地名が出された埼玉県民の方々の心中は察するに余りありますね。「ここ知ってる!」のオンパレードだったんじゃないでしょうか。うらやましいです。



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・キャストについて


『翔んで埼玉』で主人公の壇ノ浦百美を演じたのは『ヒミズ』などの作品で知られる二階堂ふみさん。今回初めて男装に挑戦したとのことですが、これが見事にハマっていました。スレンダーな体は男性服を着ても違和感がなかったですし、序盤の冷たい、ゴミを見るような目で埼玉県人を見るような視線がたまらなかった。無理してる感のある男口調も逆に新鮮でしたし、この映画で新境地を開いた感あります。


そして、相手役の麻実麗を演じたのはGACKTさん。まあぶっちゃけ高校生には全く見えないんですが、そんなことはどうでもいい。とにかくかっこいい。長髪で片目が隠されていて色気がある。演技もシリアスに演じていて、まあ大体おかしいんですけど、感動できるシーンもありました。しっかしよくキャスティング出来たなぁ。


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白鵬堂学院に転校してきた麗。生徒会長である百美は麗に学内を案内しますが、その途中で腹を壊して困っている埼玉県人に出くわします。「埼玉県人にはその辺の草でも食わせておけ」と埼玉県人にきつく当たる百美ですが、麗は埼玉県人の肩を持ちます。それが気に入らない百美は礼を公開処刑しようとしますが、麗はそれをものともしません。プライドを傷つけられ倒れてしまう百美。麗はそんな百美を医務室に運び、なんとそこでキスをします。男同士のキスはいけないものを見ているような気がしてハラハラしましたね。


そして、ここから百美と麗のBLが幕を開けます。まあこれがとにかく尊い。イケメン同士のBLというのはただでさえ尊いものですが、ここで恋に落ちた百美はもはやただの恋する乙女なわけですよ。デパートに行こうと麗を誘ったり、「着替えてくるから待ってて」とか言っちゃったり、メリーゴーランドではしゃいだり、アイスを買って二人で食べたいとせがんだり、好きな男子を目の前にしてキャピキャピしている普通の女の子なんですよね。この様子は男性俳優じゃとても出せないなと。だから二階堂ふみさんをキャスティングしたのかと一人納得してしまいました。


でもって、麗は相変わらずかっこいいし包容力があるんですよね。この二人ただの男女のカップルですよ、中身は。でも見た目的にはBLなわけで、これはいわば偽BL。普通のBLと偽BLという二重構造で尊さも二乗です。百美は百美で「埼玉県人でもいい。麗についていきたい」とか言っちゃいますし、こっちが顔赤くなりますよ。中世のパリッとした衣装も合わさって、この二人のBLはたいへんな目の保養でした。本当にありがとうございます。




でもって、この二人の他にも伊勢谷友介さん、京本政樹さん、中尾彬さん、麻生久美子さん、成田凌さん、間宮祥太朗さん、加藤諒さん、竹中直人さんら豪華な俳優陣が脇を固めるんですよ。全員シリアス調に演じていて、それがバカバカしい会話とのコントラストになっていて本当笑いました。豪華キャストの無駄遣いです(いい意味で)。この映画バカしかいなくて最高でした(もちろんいい意味で)。



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・しっかり笑えて意外と泣ける


いやー笑いました。『翔んで埼玉』は本当にネタがてんこ盛りなんですよね。もう序盤の「格付け」がおかしすぎる。麗が三か所の東京の空気をテイスティングしただけで当てる(今書いても意味わからないな)というものなんですが、これがもうGACKTさんそのまんま。私たちって正月に格付けに出て連勝を伸ばしてはガッツポーズをしているGACKTさんを知っているわけじゃないですか。それが映画館の大スクリーンで再現されたらそりゃ笑いますよね。唐突に出てきた「西葛西」にも笑いました。行ったことないのに。


その後も、埼玉県人は千葉県人に捕まったら穴という穴にピーナッツを入れられるとか、埼玉県人は自らの海を持つために茨城を横断するトンネルを掘っていたとか、伊勢谷友介さん演じる阿久津の父親とかギャグを畳みかけ、物語は終盤へ。埼玉解放軍と千葉解放軍の戦いに突入するわけですが、この戦いの様子が面白かった。それぞれの出身有名人を持ち出して戦うんですが、○○○○さんや○○○○○さんが「弱すぎる」って却下される。このテンポのいいディスりに爆笑です。あとこのシーンは別の意味で泣ける箇所もありましたね。R.I.P.




ただ、コメディチックな物語の中でもちゃんと泣けるポイントは完備されていて。私は終盤の方はずっと泣いてたんですけど、最初に泣いたシーンが埼玉解放軍が奮い立つシーンです。煮え切らない埼玉解放軍支部長たちを麗が「ダさいたま」「田舎くさいたま」って言って煽る。フラストレーションがたまっていきますが、それが加藤諒さんの「悔しいです!」で解放されるんです。


そうだよな。散々馬鹿にされて悔しいんだよな。分かるよその気持ち。長野だって「山しかない」って揶揄されるもん。それを自虐ネタに使っていても心は傷ついてるんだよな。隠れて泣いてるんだよな。これを今まで虐げられ続けてきた加藤諒さんが言ったという事実が余計刺さります。「ダさいたま」といわれても誇りはある。弱者が立ち上がるという物語の王道を行っていて最高でした。ここで涙腺が緩んだことで、終盤にかけて涙が溢れ出てきたんですよね。



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『翔んで埼玉』って表面上はディスっていても、実は「全肯定」の物語なんですよ。私がこの映画の好きなシーンで百美と麗が夜空を見上げるシーンがあるんですけど。ここで、百美が麗に「麗はどうしてそんなに埼玉のために頑張れるの?」って聞くんですね。で、麗はそれに「夜空はたくさんの星々が輝いてこそ美しい」(要旨)といった答えを返します。地域がそれぞれ輝くから日本は美しいと、そういうわけですね。


これって「みんなちがってみんないい」の精神じゃないですか。それぞれの違いを、多様性を認めるというのがこの映画のテーマなんですよね。このテーマに即して、実際埼玉と千葉は互いに認め合うわけですし、つまりは優しい世界なんですよ『翔んで埼玉』は。それぞれの地域に価値があるんだよ。価値のない地域なんてないって。ほら、現代って東京への過密が進んでいて、地域はますます過疎化が進み、2040年には多くの市町村に消滅の可能性がある時代じゃないですか。でも、そんな時代だからこそ地域の価値を全肯定したことにこの映画の大きな意義があると私は考えています。




それに、地域をディスるにはその地域のことをよく知らないとディスれないわけじゃないですか。調べるという愛情がないとディスれないわけですよ。だから地域ネタって愛情が必要なんです。その点、これでもかと地域ネタを投入してきた『翔んで埼玉』は愛情で溢れていました。これもこの映画が私を泣かせた要因の一つですね。最後のヤンキーまでもが地元に愛情を持ってるんですよ。


一般的に郷土愛って東京から離れれば離れていくほど強くなりますよね。埼玉県は映画のHPにもある通り郷土愛は全国ワースト1です。でも、その埼玉でも蓋を開けてみればこれだけの郷土愛を描けたわけですから、郷土愛をより持っていると考えられる他46都道府県の人にもきっと刺さるはずです。「うちはこうかな」とか「ライバルになるのはこの県(市町村)」かなと自分の住んでいる地域に置き換えて考えてみるときっと楽しめるはず。地域同士の対立ってわりと日本全国にありますし、そういった意味では日本人にとっては普遍的な物語かもしれないですね。



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・Jリーグサポーターにこそ見てほしい


ここまで書いてきたとおり、私はこの映画に完全にハマっています。で、考えたんです。私がこの映画にもこんなにもハマったのはなぜだろうかって。その結果、それは私がJリーグサポーターだからではないかという考えに至りました。


ただ、『翔んで埼玉』がJリーグを扱っていたかというと実はそうでもありません。Jリーグ要素は最後の浦和レッズのステッカーとタオマフ、あとは桐谷美玲終身名誉ジェフサポーターぐらいです。というかスポーツ要素すらほとんど見当たりませんでした。これはスポーツは1年単位で結果が変わるので扱いづらいという脚本上の都合もあると思うんですけどね。


でも、Jリーグ要素を出そうとすればいくらでも出せたのも事実で。劇中で浦和と大宮が言い争うシーンがあったんですけど、そこで浦和は「このJ2民が」とか煽ってほしかったし、大宮は大宮で「お前ら、よその選手を0円で強奪してんじゃねーか。自称ビッグクラブならもっと補強に金かけやがれ」って返してほしかった(これはさすがにマニアックすぎるか)。あとゆるキャラもふっかちゃんチーバくんふなっしーだけじゃなくて、コバトンは最低限出して2対2にしてほしかった。欲を言えばレディアアルディとミーヤ(必ずセットで)、レイくんジェフィなんかも出してほしかったですし、いっそのこと振り切ってゆるキャラ・マスコット大集合みたいな絵面も見てみたかった。けど、やっぱりカオスになるからいっか。


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コバトン






えーと、何の話でしたっけ。あっ、Jリーグの話でしたね。私が思うJリーグの最大の特徴って、このnoteにも書いてある通り、「クラブが地元の名を冠している」ところなんですよね。Jリーグクラブには必ず地域名が入っていて、それがJリーグの大きなアイデンティティになっているのです。私は普段スタジアムではゴール裏と呼ばれる席で応援をしているんですけど、自分の地元を大声で叫ぶのが好きだからスタジアムに通い続けているんですよ。


実は私のような人はJリーグサポーターには意外といて。それはJリーグ観戦者調査2017の、Jリーグ観戦者の86.4%がホームタウンのある都道府県に在住しているJリーグを観戦する動機やきっかけ(あてはまる5――あてはまらない1の五段階評価)で「地元のクラブだから」が4.23と高い数値を記録しているというデータに裏付けされています。つまり多くのJリーグサポーターは地元のクラブを応援しているのです。


そのなかには私のように、「地元の名をスタジアムで歌う」サポーターも多いでしょう。これらのサポーターは郷土愛が強いといえると思います。だって自分の地元を恥じていたら歌えないはずですから。『翔んで埼玉』で描かれていたのはまさにそういった郷土愛の姿です。地元を叫び称える埼玉県人と千葉県人。その姿はJリーグサポーターと何が違うのでしょう。


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さらに、「地元の名を冠する」クラブ同士が戦うJリーグは地域の代理戦争という意味合いも持っています。特に同県同士のチームが戦うダービーマッチはそれぞれの地域のプライドをかけて熱く燃え上がります。『翔んで埼玉』でも東京と埼玉と千葉の戦いが描かれていました。地域同士のライバル心が可視化されており、これはまさにJリーグそのものです。


このようにいくつか共通点が見受けられる『翔んで埼玉』とJリーグですが、その最大の共通点は価値の全肯定。Jリーグはスポーツなので当然順位はつけられます。1位もいれば最下位もいます。ただ、順位とクラブの価値がイコールかといえば断じてそんなことはありません。1位のクラブにも最下位のクラブにも等しく価値はあります。


これは『翔んで埼玉』が描いた「みんなちがってみんないい」という価値の多様性と全く同じです。自分だけでは争えず、争うにはライバルが必要です。そのライバルがいてくれる価値を認めるということ。これはJリーグが大切にしているリスペクト精神に通じます。互いが互いの価値を認め合うこと、互いが互いを肯定すること、それによって生まれる全肯定が『翔んで埼玉』とJリーグに通底しているものなのです。




なので、私はこの映画をJリーグサポーターにこそ見てほしいと思います。特に「地元のクラブだから」という理由で応援している人たちに。きっと何か感じるものがあります。だまされたと思って映画館に行ってみてください。想像を超える笑いと感動が待っていますよ。



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以上で感想の方は終了となります。映画『翔んで埼玉』。散りばめられたネタの数々は観終わった後、家族友人と語り合うのに最適。週末の興行収入1位と好スタートを切ったこの映画ですが、これから口コミでどんどん広がっていくんじゃないかと思います。第二の『カメラを止めるな!』になれるポテンシャルは十分に持っている映画かと。なので、ぜひ映画館に足を運んでみてください。全力でオススメします。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい





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