こんにちは。これです。


昨日の『THE GUILTY/ギルティ』を観て、ブログを書き終えた後、私はもう一本映画を観に行っていました。大九明子監督の『美人が婚活してみたら』です。大九監督の前作『勝手にふるえてろ』が個人的にクリーンヒットしたので、ぜひ観てみたいと思ってたんですよね。この映画も長野ではやっていないのではるばる松本まで出かけて観に行きました。



では、感想を始めたいと思います。どちらかといえば否定的な感想になっていますが、それでもよければお付き合いくださいませ。




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―目次―

・キャストとキャラクターについての雑感
・リアリティを出していた演出について
・コントっぽい脚本について
・結論がちょっと…






―あらすじ―

主人公のタカコは道行く誰もが振り返る美女。WEBデザイナーという仕事にも恵まれ、愚痴を聞いてくれるケイコという親友もいる。しかし、長くつきあってから相手が結婚していることが発覚するという恋愛が3回も続き、気づけば32歳になっていた。不毛な恋愛に疲れ果てたタカコの口から「死にたい……」という言葉がこぼれ出たその夜、タカコは結婚を決意し、婚活サイトに登録する。マッチングサイトで出会った本気で婚活に励む非モテ系の園木とデートを重ねながら、シングルズバーで知り合った結婚願望のないバツイチ・イケメン歯科医の矢田部に惹かれていくタカコ。実は自身の結婚生活に悩んでいたケイコは、タカコが結婚後についてまったく考えていないことに苛立ち始め、2人はとうとう本音を激しくぶつけあう大げんかをしてしまう。

(映画『美人が婚活してみたら』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください。















・キャストとキャラクターについての雑感


この映画の主人公であるタカコを演じたのは黒川芽以さん。ちゃんと美人でこの映画の根本を崩していないのはもちろん、演技でも自信たっぷりに振る舞うことで美人という強者の余裕を感じさせました。部屋でだらけている様子さえ可愛らしいってどういうことよ。でも、ケイコとの喧嘩などや終盤の別れなど時折見せるキツい表情もよかったなあ。


そして、そのタカコの友達であるケイコを演じたのは臼田あさ美さん。ケイコの話し相手というキャラクターをあっけらかんと演じていました。でも後半になるにつれて、嫌な人間らしい表情も見せるんですよね。矢田部の元妻のインスタの愚痴をプリントアウトするし、歩道橋の上では子供を迫る親にブチギレる。ここ空気重くて個人的には一番好きなシーンです。


次にオクテな男・園木を演じたのが中村倫也さん。タカコの心を溶かしていく役割を柔和な演技で全うしていました。女性に慣れてない頼りない感じがとてもよくて、分かる〜って感じます。タカコと2人で歩くシーンなんて、2人の歩幅が合ったり合わなかったりでいじらしかった。


そして極めつけが田中圭さん。女性に慣れている歯科医・矢田部を演じているんですが、まあフェロモンがすごい。余裕からくる妖しい雰囲気。これは普通の人には出せないなあ。バーボンの氷を回すところとか女性すごく喜びそうですよね。タカコとの濡れ場もあってファンの方には目眩がするほど素敵な田中圭像をまた一つ提供したのではないでしょうか。


以上でキャスト・キャラクターの項は終わり。本当に雑な感想ですみません。まあチラシの裏の落書き程度に受け取ってもらえれば。




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・リアリティを出していた演出について


さて、この映画の特徴ってリアルさだと思うんですよ。例えば、最初のシーンは公園を遠くから撮ってタカコを小さく描いてますよね。ここからは「タカコはいくら美人といえど周りの人間と同じ存在。特別扱いはしないぞ」という大九監督のメッセージを感じました。


それにタカコとケイコが居酒屋で飲むシーンは2人のアップではなく、周囲の客と一緒に映してるじゃないですか。ここで彼女たちの埋没感、その辺にいる感じが表現されていたように思います。リアルにもああやってだべってる女同士っているよね的な。


他にもタカコの部屋を定点カメラで撮影したり、ケイコが疲れて帰ってくる様子を足元を映すことで訴えてかけてくるなど特徴的な演出は多かったんですが、その中でも印象的なのが、多用されていた後ろからのショットです。


思えば、タカコと矢田部が話すシーンやタカコのシャワーシーン、タカコが園木から離れていき回想に突入するシーンなどこの映画では後ろからのショットが多く用いられていました。この後ろからのショットの利点はなんといっても顔が見えないこと。今どんな表情をしているのだろうと想像を掻き立てられます。少し横顔を見せるのも効いていましたね。見せすぎない感じが逆にリアルでした。


それに、この映画での後ろからのショットって「キャラクター(主にタカコ)の後ろめたい気持ち」を表現していたと思うんですよ。タカコと矢田部が話すシーンはタカコには園木の存在がありますし、タカコが園木こら離れていくシーンには元彼の影があります。


このようにタカコには後ろめたい思いがあったと思われますが、結論を出してからのタカコには後ろからのショットがないんですよ。全部前から撮ったショットで。これはタカコの気持ちが前向きになったことを表していると個人的には感じます。これを踏まえて考えると『美人が婚活してみたら』は(一応)傷ついていたタカコの再生の物語と言えますね。




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・コントっぽい脚本について


また、この映画は芸人であるシソンヌじろうさんが脚本を手がけていることも大きな特徴です。シソンヌといえばキングオブコントでキングに輝いた経験もある実力派のコント師です。そういったコント畑の方が書いているだけあって、この映画にはコントっぽい部分がいくつか見受けられました。


それはまず、矢田部と会ってタカコが舞い上がるシーンや、ケイコがタカコに婚活雑誌を見せるという分かりやすい部分があります。このあたり明らかに笑かしに来ていて実際笑ってしまいました。


また、この映画って最初のタカコとケイコの会話で分かりやすく状況を伝えてくれるんですよね。美人と言われても謙遜しないタカコの性格や、付き合った男が全員不倫していることなどセリフで。コントでもまず最初は舞台説明から入ることが多いじゃないですか。イメージですけど。コント的だなあって振り返ってみると思います。タカコが婚活を始めた後のボケの積み重ねもコント師らしかったですしね。


それに、コントってリアリティが大切だと思うんですね。徹底してリアリティを追求することで、そこから逸脱したボケが笑いを生むじゃないですか。学芸会のようなチープなセットよりもプロが作ったセットの方が、説得力があって笑いも大きくなります(それを逆手にとって「ショボイな」って笑いもある)。


そういった意味じゃ上記のようにリアリティを追求していた大九監督の演出はじろうさんの書いた脚本になかなかマッチしていたのではないかと感じます。想像以上に笑えましたし、喜怒哀楽の「喜」や「楽」の部分では十分に成功作なんじゃないかとあまりハマらなかった私でさえ思えました。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。






・結論がちょっと…


さあ、映画の終盤、タカコは園木とも矢田部とも別れます(超絶ネタバレ)。婚活をやめにし、ケイコと漬物づくりに勤しむタカコ。この前でタカコがなんて言ったか分かります?「私は恋がしたかっただけだったんだ」です。これが結論。タカコは独身のままでいることを選択します。


映画の最初に「死にたい」って呟いたタカコ。しかし、最後はルンルン気分で歌まで歌っちゃっています。これはタカコが結婚しなきゃというムーブを跳ね除けて、自分でいることを受け入れたということでハッピーエンドなんですが、付き合わされた男はたまったものではありません。


そりゃ矢田部はいいですよ。女性の扱いに慣れていますし、他の候補もたくさんいます。でも園木の立場はどうなるんだって話ですよ。園木はオクテだけど意を決して、順番を飛ばそうとしたんですよ。それを直前で「ごめんなさい」って…。振り回されて可哀想ですよ。


確かに大九監督の描きたい(であろう)「苦しみながらも輝く女性像」っていうのは分かるんですよ。私もそういうの好きですし。ただ、タカコが出した結論って、男を「恋愛するためのツール」としてしか見てないと思えてしまうんですよね。観終わった後考えてみると、園木と矢田部ってオクテと遊び人っていう役割を与えられた人形にしか見えないなって。タカコの自己実現のための踏み台的な。


前述したようにこの映画ってタカコが再生する物語なんですけど、そこに軸足を置きすぎて、園木と矢田部の人間らしさがあまり見えなかったのはあまりハマれなかった理由の一つですね。




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そして、私がこの映画にハマれなかった最大の理由っていうのがタカコが美人として設定されていたことだったんです。えーと作品の根幹の否定になっちゃってますね。でも実際そうなんだから仕方ない。


だってタカコって自分が美人であることを否定しないんですよ。謙遜も全くしないし、強者の余裕が感じられます。こっちはブスで余裕全くないっていうのに。少なくともこの時点で共感はできるはずもないです。まあそれは分かっていて観に行ったんだろといえばそれまでなんですが、どこかで弱みを見せてくれることを期待してたのは否めない。


それにタカコって「死にたい」って思ったことが一度もないっていうんですね。32年も生きてきて。そんな人います?どんなにイージーモードな人生でも一度は死にたいって思いますよね?私なんて毎日うっすら死にたいと思ってるのに。それでも今死んだらみっともないなとか、恥ずかしいなとかそんな理由で生きのばしてるのに。


この映画のテーマって「美人でも誰にでもそれなりに苦労はある」ということもあると思うんですけど、タカコの苦労って付き合ってくれる男がいての苦労なんですよね。途中上げて落とすパートがあるんですが断言します。ブスはそこまで行けない。落とされてもどこか他人事に思えてしまう。リアルな画づくりを心がけているにもかかわらず。


それに仕事もできてなんでも話せる相手もいるって完璧かよ。弱み全然見せてくれないし、遠く感じてしまいました。あれ、文句ばっかり言ってるな…。なんで観に行ったんだろう…。当たり屋かな。




それでも大九監督の前作『勝手にふるえてろ』は、どハマりして去年の3位に推したんですが、それに比べるとこの映画はなぁ…。多分『勝手にふるえてろ』のヨシカは持たざる者で、『美人が婚活してみたら』のタカコは持てる者だったのが大きいのかなと。


ヨシカは彼氏いない歴=年齢というキャラクターで、絶滅した生物が好きというヤバい一面も見せてくれで、「これは俺だ」ってなったけど、タカコにはそれが薄かったんだよなぁ…。美人だし全部うまくいってるやんみたいな感じで、憧れはするけど共感はできなかった。でもこれは私が持たざる者の方が好きっていう嗜好の問題もあるんでしょうね。決して悪くない映画でしたし。


あとはやっぱり松岡茉優さんですか。あれだけ美人なのにいい塩梅で冴えない感じ出してたもんなぁ。歌ってから帰って泣くシーンや一人で淡々と過ごすシーンの胸の締め付けられ方すごかったし。最高で最強です。やっぱり松岡茉優さんはすごいですよ。何だこの結論。




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以上で感想は終了となります。『美人が婚活してみたら』、私ははまれなかったんですけど、決して悪い映画ではありませんので。上質な笑いを提供してくれますので。興味のある方は観てみてもいいのではないでしょうか。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい


美人が婚活してみたら
とあるアラ子
小学館クリエイティブ
2017-05-11



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