こんにちは。これです。

前エントリーの『愛がなんだ』の感想を書き終えた直後、私はまた映画を観てました。今回観た映画は『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜』。毎年恒例のしんちゃん映画。去年の『カンフーボーイズ』がよかったので、今年も高い期待値を持って観てきました。


それでは感想を始めたいと思います。今回もまとまってないですが、何卒寛大な心で、よろしくお願いいたします。




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ー目次ー

・はじめに
・音楽の使い方が面白い!
・ギャグが面白い!
・みさえがヒーローで、ひろしがヒロイン
・テーマ、メッセージについて
・感動の再生産がちょっと…
・終わりに





ーあらすじー

オーストラリアの秘境“グレートババァブリーフ島”で、今さら初めての新婚旅行を満喫中の野原一家。
その夜突然ひろしが消えた。
探しに出かけたしんのすけたちが見たものは、仮面族の村で行われるド派手な結婚式に参列する、花婿姿のひろし!
宝欲しくば、花婿贈れ、天の指輪輝くとき…
その島には、50年に一度、金環日食の日に、お姫様に花婿を差し出すことで、ご褒美としてお宝が得られるという伝説があった。
その花婿に選ばれてしまったのがひろしだったのだ。
まさかの“ひろし”=お宝のカギ!!
仮面族vs世界中のトレジャーハンターvs野原一家の、超熾烈な三つ巴のひろし争奪戦がぼっ発!!!
果たして、しんのすけたちは、ひろしを奪還し、無事に春日部に帰ることができるのか!?
大冒険の先に、野原一家が見つけたものとは…!?

(『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーンズ 〜失われたひろし〜公式サイトより引用)










・はじめに


感想を始めていくに当たって、まずは予告編をご覧ください。





こちらは最初に出た予告編ですが、ぶっちゃけ本編にないシーンがかなり含まれています。8割くらい違うんじゃないかな。海ではしゃぐシーンはありませんでしたし(セリフ自体はあった)、争奪戦のシーンもディテールが違っています。





こちらの第二弾の予告編はかなり本編に近いですが、それでも本編にはないシーンがあったり、仕上げがなされる途中のシーンもあります。試行錯誤の跡が見えますね。映画を観終わった後に予告編と見比べてみるのも面白いかと思います。


また、この映画の最初はわりと意表を突かれる始め方でした。今でのしんちゃん映画だったら伝説の説明から始まりそうなものですが、違うんですよね。よくよく考えたらそうなんですけど、予告編の雰囲気からは想像できないものなので、観ていない方は楽しみにしていてください。


あと、今回は野原一家がメインのお話なので、カスカベ防衛隊は、オープニング後の顔見せぐらいで、ほとんど出てきません。完全に蚊帳の外です。去年の『カンフーボイーズ』が防衛隊メインの話だったので、バランスを取ったんでしょう。少ないと思いますが、カスカベ防衛隊の活躍を楽しみにしている人はご注意ください。


以上、注意事項でした。では、ここから本編に入っていきたいと思います。今年のしんちゃん映画はいくつかの点で新しい試みをしていました。その最たるものとして上げられるのが、音楽です。



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・音楽の使い方が面白い!


これが今年のしんちゃん映画の最大の特徴ですね。音楽の使い方が今までとは全く異なっていたんです。テレビシリーズを見ていないので、オープニングが変わったことにまず驚き、ダンスシーンではラテンの陽気な音楽に合わせてひろしが踊っていますが(あいみょん絶対ここで出ると思ってた)、一番のポイントは既存曲が2曲も使われていたことなんです。


まず、最初に使われていたのが福山雅治さんの「HELLO」。「恋が走り出したら〜」っていうアレです。しかもひろし役の森川さんが歌うという特別バージョン。ここはひろしがみさえに謝りにいくシーンなのですが、どちらかというと叙情的なシーンです。


にもかかわらず、明るくポップな曲調で、ひろしの弾む心の内を表現していました。花とか買いに行って、周りの人に配ってますしね。あ、あいみょんはこの件で出てきました。


そして、この映画で一番いいなと思ったのがみさえ役のならはしさんが歌う「Everything」。囁くような歌声で歌自体もよかったのですが、痺れたのはこれがしんのすけ達が敵陣に乗り込むシーンでかかったことです。


本当だったらバトルシーンですし、ド派手な音楽を使って盛り上げたいところをあえて抑制する。そのギャップがとても面白いなと感じした。既存曲を2曲使うというのは今までのしんちゃん映画にはないチャレンジですが、上手く作用していたと思います。


また、あいみょんが歌う「ハルノヒ」もストリングスが感動的でしたし、歌詞もいい。タイトルも春日部から来ていて作品への理解を感じるので、近年のしんちゃん映画では屈指の良曲ではないでしょうか。正直映画自体はあまりはまれなかったのですが、音楽に関しては手放しで称賛できる出来でした。




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・ギャグが面白い!


さて、私が個人的に好きなしんちゃん映画に『ヤキニクロード』があります。細かいテーマなんてどうでもいい。とにかくギャグに全振りしたのが好きな理由です。また、感動作と言われる『戦国』や『オトナ帝国』の次に出てきたのも、原点回帰って感じでポイント高いです。


そんな私が最近しんちゃん映画に対して思うのが、もっとギャグを増やしてほしいなということなんですけど、『新婚旅行ハリケーン』は量の面でも手数の面でもギャグが去年の『カンフーボーイズ』よりも多かった印象です。


ひろしやしんのすけがイケメンになるシーンも多く、しんちゃんの言い間違えも多用。罠のシーンではフリにしっかりと乗るお約束もあり、ドアを開けるシーンはすれ違いコントのよう。


他にもギャグではありませんが、最初の争奪戦のシーンやトロッコのシーンは勢いがありますし、小さな子どもでも退屈しないで見られる工夫が様々なされていました。やっぱりしんちゃん映画って家族連れが多いじゃないですか。で、子どもの関心を引くには分かりやすさが必要になります。今年の『新婚旅行ハリケーン』はその辺りをしっかりと心得ていた印象です。単純に面白くて楽しかったなぁ。



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見るからに怪しかったけど特に何もなかった人。











※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。





・みさえがヒーローで、ひろしがヒロイン


さて、ここからは映画の内容について語っていきたいと思います。まず、触れておきたいのが今作の構造。今作は女性であるみさえがヒーローの役割を担い、男性であるひろしがヒロインの役割を担っています。今まで多く用いられてきた、「男性=ヒーロー、女性=ヒロイン」という図式とは逆で、おそらくこれはしんちゃん映画の中でも初めてではないでしょうか。『ユメミーワールド』に近いところはありますが。


まあ思うにあれですよ。昨今のポリコレ?ジェンダーロール?に配慮した形ですよ。東大の教授の答辞じゃないですけど、昨今はジェンダーロールが社会問題になっているじゃないですか。男は男らしくあれ、女は女らしくあれっていうヤツです。「らしさ」を説明できる人がどれだけいるのだろう。


で、映画って時代をどう設定しても、今生きてる時代背景が必ず入ってくるものなんです。例えば戦時中なら、戦意高揚のムードが入ってきますし、今は、少なくとも日本では、戦争を是とする時代ではないので、同じことを書いたら間違いなく炎上します。映画は時代を映す鏡なわけです。


ものすごく意地の悪い言い方をするならば、『新婚旅行ハリケーン』で描かれたジェンダーロールの逆転は、「今流行っているから」という枠を出ないもののように思えます。だってなんだかんだ言って子どもの世話をしているのは主にみさえじゃないですか。ジェンダーから解放されたヒーローの活躍を描くにしてもちょっと中途半端だと思います。


もちろん、今作のみさえがかっこいいのは言うまでもありません。トレジャーハンターの純子が「絶対無理」と言ったのを強い気持ちで跳ね返していく様子は見ていて痛快でしたし、思い出したかのような熊本弁も味があった。木に隠れてぶちまけるシーンはこちらも泣きそうになりましたし、部分部分はよかったんですけど、コンセプトのところで少し相容れないかなというのが正直な感想です。




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・テーマ、メッセージについて


この映画の目的は「ひろしを奪還して、平穏な日常を取り戻す」ということです。いわばテーマは「何でもないようなことが幸せだったと思う」というTHE虎舞竜みたいな感じ。もちろん極めて大事なテーマですけど、ぶっちゃけ去年の『カンフーボーイズ』に比べると強度が低いかなと思います。


だって『カンフーボーイズ』の展開は衝撃的だったじゃないですか。正義の暴走という現代社会の歪みを映し出したような展開に、正義の反対はまた別の正義という強いメッセージ。考えさせられる部分があり、一年経った今でもインパクトを残しています。


それに対して、今作の「日常が大事」というテーマは普遍性はあるものの、時代性という面では劣ります。さらに、「宝物は一生をかけて夢中になれるもの」というひろしからのメッセージもやや唐突。私はまだ見つけてないな…とこれまた考えさせられますが、正直インパクトは薄い


ギャグはいいけど、メッセージ性を期待すると、今年はあまりよくないかなと思います。良くも悪くも娯楽方面を強化したのが、今年の『新婚旅行ハリケーン』でした。これは好み分かれると思います。




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・感動の再生産がちょっと…


サクサク行きましょう。『新婚旅行ハリケーン』で私が一番はまらなかったのが、この部分です。もう言っちゃいますけど、今年は『オトナ帝国』を意識してますよね。


だって序盤の回想シーンって、いい感じの音楽が流れて、季節が変わって、家族も変わっていくというシーンで、まさに『オトナ帝国』的です。写真もね、ちょっとあざといですよ。泣かせようとする意図が強い。いや、実際ホロリとは来ましたよ。ただ、心のどこかで認められない自分がいたんですよね。


それは『オトナ帝国』のときの感動を再生産しているからだと感じます。私はひろしのあの回想シーンは何度も見てますし、今思い出しても泣きそうなんですけど、免疫がついちゃったんですよね。なので、またかと思ってイマイチ泣けませんでした。はい、難癖ですね。すみません。もうそろそろ終わりにしましょうか。



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・終わりに


上映後に来年GWにもしんちゃん映画やるよと告知があります。なので席を立たないでほしいのですが、ここで、星座をバックにぶりぶりざえもんが映るんですよ。声優さんが変わってから初めての映画ですし、内容も想像の力をテーマにしていそうで、個人的には好きなテーマです。来年もしんちゃん映画が楽しみです。それまでなんとか生きていたいです。




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以上で感想は終了となります。わりと悪く言いましたけど、それでも今年のしんちゃん映画も一定の水準は備えていますので。笑えますし、ホロリもする家族で楽しめる作品になっていると思います。興味のある方はぜひ観てみてください。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい