こんにちは。これです。GWも後半戦。皆さんいかがお過ごしでしょうか。


私はというと、今日も映画を観に行っていました。今回観た映画は『名探偵ピカチュウ』。原作のゲームは未プレイですが、ポケモンで育った私としては観ないわけにはいきません。12時の回に行ったところ、劇場内は親子連れや大人で満席でした。あの、『バースデー・ワンダーランド』もこれくらい入ってほしいんですけど...。なんでみんな『バースデー・ワンダーランド』観ないの...?面白いのに…


話を戻しましょう。『名探偵ピカチュウ』はとても面白い映画でした。ポケモンで育った人間にはたまらないシーンが盛りだくさんで油断すると泣いてしまう、そんな映画です。では、それも含めて感想を始めたいと思います。前半ネタバレなし、後半ネタバレありです。拙い文章ですが、よろしくお願いします。





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―目次―

・実写化されたポケモンに感動!
・吹替版について
・『ミュウツーの逆襲』とシンオウ神話
・カラカラからみるティムの進化





―あらすじ―

かつてポケモンのことが大好きな少年だったティム(ジャスティス・スミス)は、ポケモンに関わる事件の捜査へ向かったきり、家に戻らなかった父親・ハリーとポケモンを、遠ざけるようになってしまった。それから年月が経ち、大人になったティムのもとにある日、ハリーと同僚だったというヨシダ警部補(渡辺謙)から電話がかかってくる。「お父さんが事故で亡くなった―」。複雑な思いを胸に残したまま、ティムは人間とポケモンが共存する街・ライムシティへと向かう。荷物を整理するため、ハリーの部屋へと向かったティムが出会ったのは、自分にしか聞こえない人間の言葉を話す、名探偵ピカチュウ(ライアン・レイノルズ)だった。かつてハリーの相棒だったという名探偵ピカチュウは、事故の衝撃で記憶を失っていたが、一つだけ確信をもっていることがあった……。「ハリーはまだ生きている」。ハリーは何故、姿を消したのか? ライムシティで起こる事件の謎とは? ふたりの新コンビが今、大事件に立ち向かう!

(映画『名探偵ピカチュウ』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。













・実写化されたポケモンに感動!



『名探偵ピカチュウ』は最初のシーンを経た後、世界観の説明に入ります。ピジョンやピジョットが飛び、バッフロンが駆けずり回る。ここで、ポケモンと現実世界が高次元で融合していることにいきなり感動し、一気に映画の世界に引きずり込まれました。


その後、ティムはその友達にけしかけられ、カラカラの捕獲に挑みます。これはゲーム内のプレイヤー誰しもが経験する初めてのゲットです。さらに、近年ではポケモンGOが登場し、ポケモンの捕獲という経験をより身近に感じられるようになっています。ポケモンをプレイした経験がある人なら誰しもが懐かしさを覚えることでしょう。ちなみに、ここで登場したカラカラがこの映画において重要な意味を持っていたのですが、それについては後述します。


そして、ティムは父親の訃報を聞き、ライムシティの警察署へ向かいます。ライムシティは巨大企業の社長ハワード・クリフォードが作り上げた人とポケモンが共生する街。そこにはトレーナーも、バトルも、モンスターボールもありません。駅から降りて街に踏み出した瞬間、目の前に広がったのはポケモンと人が一緒に暮らす世界です。ウォーグルが配達をし、カイリキーが4本の腕を使って交通整理。エニガメが消火活動に協力し(アニポケ準拠や)、ヤンチャムがベンチでじゃれ合っています。


これの何に感動したかって、私が子供の頃に空想した世界そのものなんですよ。本当に小さい子供の頃はポケモンが現実世界にもいるはずだと思ってました。まあ当然ポケモンはいなくて、傷ついて大人になったんですけど、ライムシティの光景は、そんな私の子供心を呼び覚ましてくれるものでした。かつて夢見た世界がスクリーンの中にある。傷が癒されて、子供の頃の思い出が再生されていくようで、涙が出そうでした。もうこれだけでこの映画への評価は、好意的になりました。


さらに、ポケモンがリアルなんですよね。最先端の、詳細はよく分からないCG技術を用いて、毛並みの一本一本に至るまで、現実的な質感を纏っていました。ピカチュウはもちろん、ブルーやエイパム、ルンパッパなど一匹一匹へのこだわりが凄くて。ファンタジーじゃなくて現実にいたらこんな感じなんだろうなというのが、完全に再現されていました。それに、セリフの中にポケモンが自然に溶け込んでいるのにも感動しましたね。渡辺謙さんがピカチュウって言ってるよ!みたいな。


この映画に出てきたポケモンの中で、個人的なお気に入りは巨大○○○○○ですね。ゲッコウガから逃げきった後の、あのスケールのデカさ。大地が上から迫って来て、地面が割れ、ボロボロとこぼれ落ちる。興奮しました。他にも歌を歌って眠らせるプリンや、スタジアムで活躍するドゴーム、道路の真ん中で堂々と寝ているカビゴン、やたら強いメタモンなど、お気に入りのシーンを上げればキリがありません。子供時代をポケモンと一緒に過ごした人なら確実に刺さるであろうシーンの連続です。ポケモンに思い入れのある私にとって『名探偵ピカチュウ』は最高の娯楽でした。




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・吹替版について


『名探偵ピカチュウ』は字幕版も用意されていますが、今回私が観たのは吹替版でした。上映会数も字幕版が2回なのに対し、吹替版は4回。実情の分からない吹替版の方が推されていました。さらに、ピカチュウ役は、私が観た時には伏せられていてドキドキの鑑賞でしたが、結論から言うと、吹替版はとてもよかったです。


まず、なんといってもピカチュウですよ。今回、ピカチュウの声を当てたのは西島秀俊さんですが、これが抜群にハマっていました。個人的には『ペンギン・ハイウェイ』以来なのですが、この時の落ち着いた役とは違い、フランクに演じていたのが印象的です。時に頼もしく、時に情けなく、時にもの悲しく、バリエーション豊かな声色で、おっさん可愛いという新たなピカチュウ増を築き上げていました。主人公のティムとの掛け合いもとにかく軽妙で、短い文をテンポよく積み上げるという洋画的なテイストを醸し出していましたね。とても楽しかったです。


その主人公のティムに声を当てたのは竹内涼真さん。ところどころ気になるところはありましたが、全体的には心を閉ざしているティムの孤独感や、ピカチュウとの交流を経て相手に立ち向かう勇気が生まれる様子を上手く表現できていたと思います。また、ヒロインのルーシーの吹替を担当した飯豊まりえさんの使命感に燃え、力強さを感じる演技もよかったですね。


そして、アニメを見ていた人間として最高だったのが、林原めぐみさん、三木眞一郎さん、犬山イヌコさん、うえだゆうじさんなど、お馴染みの声優陣が参加していたことです。最後にエンドロールを見たときには興奮しました。あと、この映画にはミュウツーが登場するんですが、そのミュウツーが女性の声なんですよ。途中まで。それがとても新鮮でよかったですね。


あ、安心してください。ピカチュウの鳴き声はちゃんと大谷育江さんですよ。エンドロールにローマ字でIKUE OTANIと表示されているのを見たので間違いないです。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。






・『ミュウツーの逆襲』とシンオウ神話


『名探偵ピカチュウ』を語る上で欠かせない映画と言えば、これでしょう。


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そう、『ミュウツーの逆襲』です。この映画はとある研究施設でのシーンから始まります。『ミュウツーの逆襲』っぽいなーとおもったら、なんと次の瞬間、培養液に浸っているミュウツーが映っているではありませんか。そして、研究施設を壊して逃走する。完全な『ミュウツーの逆襲』の踏襲です。


映画の舞台は「ミュウツーが生み出されてから20年後」と明言されていますし、これは『ミュウツーの逆襲』が1998年公開だということを強く意識しています。(最初観た時は10年前と勘違いしていました。字幕版を観た方によると20年前が正解だそうです。申し訳ありませんでした)また、『ミュウツーの逆襲』と同じく、ミュウツーにティムとピカチュウが立ち向かう展開もあります。多くの面で『ミュウツーの逆襲』をなぞっている『名探偵ピカチュウ』ですが、まあさすがにそのままというわけにはいかず、変更点を加えてはいますけどね。




さて。片づけをするために、父親が住んでいた部屋を訪れるティム。そこで出会ったのは人語を喋るピカチュウでした。しかし、ピカチュウの言葉はティムにしか聞こえていない様子です。


父親の部屋にあった紫のガスを吸って狂暴になったエイパムから逃げ回る二人。ちなみに、このガスの名前は「R」。ロケット団ですね。Ride On the City, Knock out Evil Tusks.これ分かる人、何人ぐらいいるんでしょうか。


それはともかく。ピカチュウはティムの父親が生きているといいます。ルーシーと共に足取りを追うなかで辿り着いたのが、ハワード・クリフォードとその息子が経営する巨大企業でした。ハワードは研究施設での出来事を二人に見せます。そして、研究施設に向かうティムとピカチュウ、ルーシーとコダック。遺伝子操作されたポケモンに襲われながらも(ここも『ミュウツーの逆襲』っぽい)、徐々に真相に近づいていきます。ホログラム便利すぎない?という懸念はありますけど。




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ここからが『ミュウツーの逆襲』と分岐していくところなんですが、『名探偵ピカチュウ』は『ミュウツーの逆襲』と違って、人間主導でミュウツーが動かされるという特徴があります。ハワードは人間の進化を追及していて、その答えがポケモンに人を吸収させるというものでした。そして、ミュウツーはその力を持っていた(拡大解釈もいいところですが、それは置いておきましょう)。ハワードの意識を移されたミュウツーによって、人がポケモンに吸収されていきます。ポケモンしかいなくなった世界はホラーでしたね。


さて、このハワードのアプローチで重要な点があります。それは、過去への回帰ということです。実はハワードは進化を追い求めるあまり、進化に逆行してしまうという皮肉的な状況に陥っていました。


これを見ていく上で、紹介したいのがシンオウ神話です。ご存じないほとんどの方に向けて説明しますと、初代の赤・緑の発売から10年経って発売されたのがダイヤモンド・パール。北海道をモデルとしたシンオウ地方を舞台にした作品です。そして、シンオウ地方にはミオとしょかんという施設があり、このミオとしょかんの三回にはシンオウ神話のコーナーがありました。


シンオウ神話の中にこんな一節があります。


はじめに あったのは
こんとんの うねり だけだった
すべてが まざりあい
ちゅうしんに タマゴが あらわれた
こぼれおちた タマゴより
さいしょの ものが うまれでた



この「さいしょのもの」とは、そうぞうポケモン・アルセウスのことです。ポケモンの世界ではポケモンが先に存在していて、人間は後から生まれたということがシンオウ神話で明らかになりました。ハワードは人間をいなくすることで、太古の昔へと回帰していたのです。


また、ミオとしょかんにはこんな本もあります。



もりのなかで くらす
ポケモンが いた
もりのなかで ポケモンは かわをぬぎ
ひとにもどっては ねむり
また ポケモンの かわをまとい
むらに やってくるのだった



ここからは、かつて人とポケモンが同一であったということが読み取れると思います。『名探偵ピカチュウ』のハワードのアプローチは、まさしく人とポケモンを同一の存在に戻す行為です。でも、それは過去へ逆行する行為で、未来へ進んでいません。いわばハワードの進化は間違った進化とも言えそうです。


そして、この間違った進化に立ち向かったのがティムとピカチュウのコンビです。この二人のベクトルは父親が死んだという過去ではなく、生きている父親を見つけるという未来に向いていました。未来に向かうということは、間違った進化と対比して、正しい進化とも言うことができると思います。間違った進化に正しい進化は勝利し、物語はハッピーエンドを迎えました。とても希望のある終わり方でしたね。気持ちがよかったです。


では、次の項では、この映画でなされたティムの進化について述べていきたいと思います。




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・カラカラからみるティムの進化


さて、ティムを語る上で欠かせないポケモンがいます。それは相棒のピカチュウではなく、ティムが最初に捕獲しようとしたカラカラです。


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カラカラは、赤・緑のポケモン図鑑ではこう説明されています。


しにわかれた ははおやの ほねを あたまに かぶっている。
さびしいとき おおごえで なくという。



これはティムの境遇と意図的に重ね合わせているものと思われます。ティムもまた母親を亡くしていましたほねとは母親を失った悲しみだと私は考えています。ここでティムの矢印は過去に向いています。父親をも亡くしたとあってはより一層です。ただ、本能に従うカラカラとは違ってティムは大声で泣くことはしなかった。それが余計に悲しいです。


さらに、カラカラはモンスターボールに入らず、ティムに反撃しました。これはティムが自分で自分を受け入れることができておらず、日ごろから自分を責めていたことの表れと思うのは私だけでしょうか。


また、青版のポケモン図鑑ではカラカラは、

あたまに ほねの ヘルメットを かぶって いるので 
ほんとうの かおを みたものは いない。



と説明されています。この「ほんとうの かおを みたものは いない」は、ティムが心を閉ざしている状態だということを表しているのではないでしょうか。ティム=カラカラという図式がより明確化されていきます。


ただ、ティムはピカチュウと行動を共にするうちに、少しずつ心を開いていきます。映画が始まる前には立ち向かえなかった巨大企業にも、一人で乗り込んで行けるまでになりました。そして、ハワードの企みを阻止することに成功します。


では、ここで時代は進みますが、ムーン版のカラカラの説明を引いてみましょう。


あたまに かぶった ずがいこつは しんだ ははおや。
しの かなしみを のりこえたとき しんかすると いう。



映画はティムの父親も戻ってきて、未来に向かうハッピーエンドで幕を閉じます。先程のティム=カラカラという図式を適用するならば、ティムもまた母親の死の悲しみを乗り越え進化したとなるのではないでしょうか。それは父親と一緒に生きていくことを決めたことも関係していて、電車の切符を捨てたところからも、祖母に母親の面影を見るのを止め、家族をやり直そうというティムの前向きな姿勢が見て取れますね。映画序盤とは真逆です。


『名探偵ピカチュウ』は、ポケモンと人間の共生や人間の進化という大スケールの物語に見えて、その実ティムの成長、進化の物語だった。これが私がこの映画の一番好きなポイントです。ちょっと難しいところはありますけど、GWにファミリーで見るのにはうってつけの映画ですね。もちろんかつてポケモントレーナーだった大人も懐かしくなりますし、万人に勧められる映画です。ぜひとも映画館でご覧ください。


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以上で感想は終了となります。『名探偵ピカチュウ』。少年の成長を描いた王道の作品なので、たとえポケモンをプレイしていなくても大丈夫です。最後にはサプライズもありますし、機会があれば観てみてはいかがでしょうか。オススメです。


お読みいただきありがとうございました。




参考:

映画『名探偵ピカチュウ』公式サイト

感想『名探偵ピカチュウ』 実写版ポケモンによるまさかの『ミュウツーの逆襲』再演に驚嘆!(ジゴワットレポート)

カラカラ - ポケモンWiki

ミオとしょかん - ポケモンWiki



おしまい





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