こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想です。


今回観た映画は『小さな恋のうた』。MONGOL800の同名曲にインスピレーションを得た映画です。上映規模もあまり大きくなく、正直観る予定はなかったのですが、評判があまりにもいいので、それに押される形で観に行ってきました。


で、観たところ高評価も納得の名作でした。映画館に私一人しかいなかったんですけど、それが申し訳ないくらい。なんでみんなこの映画観てないの...?もっと盛り上げてよ...!


では、ここから褒めちぎる感想を始めたいと思います。拙い文章ですが、お付き合いいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。




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―目次―

・若手俳優陣の熱演が光る!
・キラキラ感がちゃんとある!
・米軍基地問題を絡めたビターな展開が痛烈!
・日本アカデミー賞を狙えるくらい脚本が素晴らしい!






―あらすじ―

沖縄の小さな町。日本とアメリカ、フェンスで隔てられた二つの「国」が存在する場所。そこでは、ある高校生バンドが熱い人気を集めていた。自作の歌を歌いこなし、観るものを熱狂させるその実力で、東京のレーベルからスカウトを受け、なんとプロデビューが決まる。しかし、喜びの絶頂で盛り上がる彼らに一台の車が突っ込み、バンドは行く先を見失ってしまう。そこに現れた、一曲のデモテープと、米軍基地に住む一人の少女。それらによって、止まった時計の針は前に進み始める。フェンスの向こう側に友の“想い”を届けるため、彼らは再び楽器を手に取り立ち上がる―。

(映画『小さな恋のうた』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。












・若手俳優陣の熱演が光る!


『小さな恋のうた』は旬の若手俳優陣が共演しています。その誰もが好演していて、物語をより熱く盛り上げていました


主人公の真栄城亮多を演じたのは『ちはやふる―結び―』などの出演作を持つ佐野勇斗さん。明るくムードメーカーな一面も良かったですが、事故に遭ってからの葛藤ぶりが素晴らしかったですね。とくに演出が解けるシーンの狼狽っぷりは一見の価値ありです。喪失を乗り越えてからは佇まいにエネルギーが満ちていてカッコよく、また歌声も直情的で歌の持つメッセージ性をダイレクトに伝えていました。


続いて、ドラムの池原航太郎を演じたのが、こちらも『ちはやふる』シリーズなどでおなじみの森永悠希さん。現実で一番の年長者ということで、優しくバンドを包み込むかのような雰囲気が素敵でした。演技も柔らかく、高めの声も魅力的です。それだけに、亮多に自分の思いをぶつけるシーンは胸に響きましたね。あと、本当に楽しそうにドラムを叩くんですよ。展開が重くなりすぎるのを防いでいた最大の功労者だと思います。




他には、譜久村慎司役の眞栄田郷敦さんは、初めての映画出演とは思えないくらい堂に入っていましたし、新里大輝役の鈴木仁さん(『四月の君、スピカ。』など)は、出番はあまり多くないながらも、クールななかに熱い一面を織り交ぜていて格好よかった。フェンスの向こうの女の子・リサ役のトミコ・クレアさんも爽やかな空気を放っていてグッときましたが、特によかったのが譜久村舞を演じた山田杏奈さんです。


まず、ギターを弾く女の子というだけで100点満点中500点ぐらいはあるんですが、いい子でいるように抑圧されたこの演技がめちゃくちゃ上手いんですよ。家ではほとんど笑っていないですし。でも、その抑圧を跳ねのけるシーンは、唇の震えが印象的で胸に迫ります。あと、『21世紀の女の子』でも思ったんですが、山田さんって力強いがいいんですよね。その目力を存分に発揮するシーンは『小さな恋のうた』の中でも大きなインパクトを与えるので、観ていただきたい。でもって、『ミスミソウ』よりも笑うシーンがちょっとだけ多く、その笑顔がチャーミングでした。あとはホットパンツ姿ですかね。ありがとうございました。




さらに、『小さな恋のうた』では脇を固める大人たち、佐藤貢三さんや清水美沙さんらも、出色の演技をしています。その中でも印象に残ったのが根間敏弘役の世良公則さん。ライブハウス兼スタジオのオーナーという役なんですが、フランクな雰囲気で茶目っ気もある。それでいて、頼もしくてダンディーという大人の魅力を凝縮したようなキャラクターでございました。バンドの3人と同様に映画自体も見守ってくれていたように思えます。端的に言えば最高。


といったように、『小さな恋のうた』は全員が全員抜群の演技をしています。若手俳優中心だからといって、舐めて観ないのは損ですよ。はっきり言います。観てください。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。








・キラキラ感がちゃんとある!



私が青春映画に求めているものは、大まかに言えば苦労や挫折と、そこからの再起や再生です。リア充のキラキラした青春にはそれほど興味がないんですね。『小さな恋のうた』はまさに再起の物語で、これだけでこの映画を評価しないわけにはいきません。


でも、その話はいったん置いといて。私が青春映画に求めているものには、キラキラ感もあるんですよ。これは矛盾するかもしれません。ただ、現実の青春って苦しいじゃないですか。少なくとも私は楽しい学生生活を送った記憶がないですし。いつも屋上に向かう階段でご飯食べてましたからね。今もそうだけど。なので、映画でまで苦労や挫折ばかりを見させられると参ってしまうんですよ。去年『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を絶賛したのも、中盤の二人がキラキラしていたからですし。そして、『小さな恋のうた』でもこのキラキラ感はしっかりと確保されていました。


まず、『小さな恋のうた』はいきなり演奏シーンから始まります。「DON'T WORRY BE HAPPY」を爽快感たっぷりに演奏して、部室には学生が集まるほどの大人気。ライブさながらの盛り上がりを見せます。バンド「BAD POSITION」に東京のレーベルまで目をつけて、プロにならないかと誘う始末。キラキラと輝く海に向かって「待ってろよー!東京ー!」と叫ぶシーンはまさに青春そのものでした。


ただ、この映画の特徴として事故がかなり早い段階で訪れることがあります。曲が終わって5分もしないうちに早速轢き逃げ。映画は暗い展開へと落ちていきますが、それでも映画でしかできないある演出を使ってキラキラ感を出しているんですよ。歌ができる瞬間やバンドの初ライブの様子などを映し出してくれる事で、青春映画の陽の部分を見せることに成功していました。それに、この演出は後々にガツンと効いてきますからね。その意味でもよかったと思います。




それに、映画でバンドを描くからには、観ている人に「楽器やりたい」「バンドやりたい」と感じさせることが不可欠になると思うんです。去年の『ボヘミアン・ラプソディ』もそうでしたよね。これができなければバンド映画としての存在意義はないとさえ言えます。でも、この点において『小さな恋のうた』はほとんど完璧といっていい出来であると感じました。


なぜかというと、まず一つにアンプから音が出る感動を描いているから。一つに、「BAD POSITION」のメンバーが喪失を乗り越えて、演奏しているのがダイレクトに胸に伝わってくるから。そして、あるワンシーンを除いてライブが大いに盛り上がっているからです。誰もが通る原体験を描いているのはポイントが高いですし、再起に至るまでの過程も存分に描かれている。何より演奏でお客さんが盛り上がらなければ、誰もバンドをしたいと思いません。これらの要素が噛み合って、『小さな恋のうた』は未経験者でも楽器を手に取りたいと思わせることに成功しています。


それに、私は大学時代にちょっとだけバンドサークルに入っていたことがあるんですが、バンドサークルで「小さな恋のうた」が演奏される頻度ってえげつなく高いんですよ。年に一回は必ず誰かがやっていますし、初心者向けの曲として多くの教則本に楽譜が載っているほど、バンドサークルにはなじみ深い曲なんです。初めてコピーした曲が「小さな恋のうた」だったという人もかなりいるのではないでしょうか。なので、原体験と結びついていると言うことができ、かつてバンドサークルに入っていた人や趣味でバンドをやっていた人にはたまらないですね。マジで観てください。




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・米軍基地問題を絡めたビターな展開が痛烈!


ここまでは『小さな恋のうた』のキラキラ感について書いてきましたが、ここからはこの映画のビターな部分について書いていきたいと思います。というかむしろビターな展開の方が多いです。『小さな恋のうた』には。でも、その塩梅がこの映画では絶妙で、キラキラ感とビターな展開は互いに互いを引き立てていて、青春映画の理想形といってもいいぐらいでした。


まず、冒頭で事故があり、ここで慎司は死んでしまいます(ネタバレ)。この死を表す演出が見事なんですよね。慎司を失ったことにより、BAD POSITIONは解散。亮多は歌わなくなります。それでも、舞に慎司のデモテープを聞かされ、航太郎との互いの感情をぶつけ合う喧嘩の末、「慎司の曲を歌えるのは自分しかいない」と再起していきます。そして航太郎と舞と三人で、BAD POSITIONを再結成。学祭に出ることを目指します。この三人の再起が『小さな恋のうた』の大きなテーマで、時間をかけて追っていかれる見どころの一つです。


再起を果たした三人は学祭で、屋上で「小さな恋のうた」を披露。立ち直った3人の姿と、後述する約束と希望を胸に演奏されるこのシーンは最初の感涙ポイントです。思わず泣いてしまいました。でも、「BAD POSITION」はルールを破って演奏しているんですよね。そして、その逸脱行為にしっかりと罰が与えられる。キラキラした後にはビターな展開を用意していて、私が『小さな恋のうた』を好きなポイントの一つです。舞がギターを壊されたりね。




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さらに、『小さな恋のうた』の最大の特徴は、沖縄の米軍基地問題を扱っていることです。あらすじにも「日本とアメリカ、フェンスで隔てられた二つの『国』が存在する場所」という青春映画にはおおよそに合わない一文がありますが、これが『小さな恋のうた』の最大のキーポイントです。社会的な一面が『小さな恋のうた』を単なる青春映画で終わらせない名作にしていました。


沖縄の米軍基地問題が未だ燻ぶっているのは、皆さんご存知かと思います。この映画でも、慎司を轢き逃げした車が米軍所有だったため、米軍人の仕業とみなして、デモ活動が展開されていました。猜疑心だけでデモをする人たち。時折挿入されるデモの様子が痛々しい。憎しみが憎しみを生むという負の連鎖。フェンス1枚で隔てられた両国間の距離は限りなく近くて、果てしなく遠い。何十年も前から繰り返されてきたデモ活動に、人間は分かりえないし、戦争はなくならないという事実を感じます。


慎司は生前、米軍人の娘・リサに会っていました。フェンスで隔てられ、直接触れ合うことはできませんが、慎司はリサに自作曲を聞かせていました。イヤホンのコードはフェンスの隙間を簡単に通り抜けます。イヤホンを片方ずつ分け合うというのは、定番のときめく展開ですが、それが国境をも越えるとなればなおさらです。音楽が国境を越えることを如実に表したこのシーンだけで、『小さな恋のうた』は勝利を掴んでいました




慎司が死んでしまったことを悲しむリサ。言葉が通じないながらも亮多は、学祭で慎司が残した曲を演奏すると約束します。そして、演奏された『小さな恋のうた』。このシーンには3人とリサの約束だけでなく、音楽は国境を越えられるという希望や、人と人は分かり合えるはずだという祈りまでもが乗っかっています。こういうフィクションの希望や祈りに弱い私は、無抵抗でただ涙を流すのみでした。あらゆる障壁を乗り越える音楽の力を激しく感じます


ただ、映画はこれでは終わらず、予告編にもありますがフェンスの前で3人は歌います。リサのためだけに演奏されたこのシーンでは、ある映画的演出がなされていて、曲がバラードであることも合わさって、感涙ポイントの二つ目となっていました。希望や祈りが視覚化されたシーンで、現実はそんなに簡単にいかない、いやいかないからこそ感動するシーンです。




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・日本アカデミー賞を狙えるぐらい脚本が素晴らしい!


『小さな恋のうた』の最大の長所は間違いなく脚本です。この映画では全ての展開が歌のために組み立てられており、その脚本の妙にただただ感嘆しきりでした。


『小さな恋のうた』は二つの物語が軸になっている映画でして。慎司の喪失から立ち直るBAD POSITIONの3人の物語と、米軍基地問題を含んだ、リサとBAD POSITIONの3人に慎司を含めた4人の友情の物語の二つです。前半は前者の物語が展開されるのですが、物語が進んでいくにつれて、後者の展開が色濃くなっていくんですよ。


その代表例が、屋上で演奏される「小さな恋のうた」。ここでは両者の物語が深く交差していて、「ほら、あなたにとって大事な人こそすぐそばにいるよ」の「あなた」とは、「大事な人」とはいったい誰なのか。それは慎司とリサだけではなく、亮多&航太郎と慎司、舞と慎司、亮多&航太郎&舞とリサなどいく通りもの解釈ができる。気づいたら歌が複数の意味を持っていて、とても感動しました。


それに、意味を乗せて歌詞をまた違った印象にするのも上手くて。例えば、米軍基地問題は歌い出しや「やさしい歌は世界を変える」に収斂されていきますし、何よりヤバかったのがBメロ。ここに序盤の演出がガツンと効いてきて、ほかのどの瞬間よりも涙腺を刺激されました。完璧かよ...。


また、その後の2曲も印象的で。映画の内容が歌に寄せているから当然っちゃあ当然なんですが、特に最後の1曲ですよ。ここも直前の展開と映画的演出、歌に入る前の亮多のセリフに感動、がバリバリに効いていて、三つ目の感涙ポイントです。『小さな恋のうた』には少なくても3つの感涙ポイントがあり、人によってそれはもっと増えるでしょう。泣けるシーンが複数ある映画はとても強く、『小さな恋のうた』もそんな強さを感じる映画でした。マジのガチで観てください。


そして観たあかつきには、この脚本を書いた平田研也さんにぜひ盛大な拍手をお願いします。本当に評価されて欲しいし、評価されるべき脚本だと思います。できれば、日本アカデミー賞の脚本賞も受賞してほしいくらい。とにかく素晴らしいの一言です。





映画を観た後だとより感動しますね。凄い。














以上で感想は終了となります。『小さな恋のうた』は名作なのでぜひとも観ていただきたいんですが、明日からは同じ音楽映画の『さよならくちびる』が始まるんですよね...。さらに、定番の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』や、見るからに日本アカデミー賞を取りそうな『長いお別れ』、東野圭吾さん原作の『パラレルワールド・ラブストーリー』など、6月第1週には注目作が目白押しなので、『小さな恋のうた』は上映回数が減ってしまうことが予想されます。


なので観るなら早めに、何なら今日観てください。これほどの名作が盛り上がらないのはおかしいので、ぜひぜひお願いします。


お願いだから観て!!!



お読みいただきありがとうございました。


おしまい


小さな恋のうた (講談社文庫)
平田 研也
講談社
2019-03-15



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