こんにちは。これです。今回のブログは2日連続での映画感想になります。


今回観た映画は『町田くんの世界』。当初は観る予定はなかったのですが、急遽予定を変更して観に行きました。感想としては最後のぶっとびっぷりに少し置いてけぼりを喰らったものの、面白い映画だなと。原作は未読ですが楽しめました。


では、感想を始めたいと思います。今回も拙い文章ですがよろしくお願いいたします。




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―目次―

・キャストについて
・簡単にストーリー等について
・キーワード①「わからない」
・キーワード②「自己肯定感」




―あらすじ―

町田くんが、みんなの世界を変えていく――

これまでのどんな主人公とも違っている、町田くん。運動も勉強も出来ないけれど、たったひとつの才能は、すべての人を分け隔てなく愛することだった! そんな“人が大好きな”町田くんが、“人が大嫌いな”の猪原さんに出会ったことで、初めて“わからない感情”に向き合うことに。そして、まわりのすべての人を巻き込んで、驚天動地の物語が動き出す!


(映画『町田くんの世界』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください













・キャストについて


『町田くんの世界』の大きな特徴。それは細田佳央太さんと関水渚さんという新人俳優二人を主演に起用していることです。この二人は演技経験もあまりないらしく思い切った采配だと感じましたが、『町田くんの世界』では、この采配が大きく吉と出ていました。


主人公の町田一を演じた細田さんは、この映画の出来を決定づける存在でしたが、そのプレッシャーにも負けず、真面目で不器用な町田くんを好演していたと思います。前半は敢えて抑揚のない喋り方をすることで町田くんの人間味を抑えて、後半になると感情を露わにして町田くんの人間味をぐっと増していました。あの走り方もややわざとらしかったのですが、町田くんのいじらしさを増幅していて愛おしかったです。


また、メインヒロインの猪原奈々を演じた関水渚さんは、初めての主演とは思えない存在感を放っていました。長い黒髪にクールな目元が印象的で、佇まいから猪原の持つ悲しさを存分に感じます。ただ、演技は明るかったり、わりと叫んだりしていてギャップが魅力的でした。町田君の家の前でのシーンが特に好きです。あそこの挙動不審っぷりツボです。


そして、この二人に共通することですが、とても初々しいんですよね。二人の初々しさのおかげで、この映画がとてもみずみずしいものになっていました。その初々しさが映えるような舞台や人物を設定した監督やプロデューサーの采配の勝利でもありますね。抜群のキャスティングでした。


さらに、彼ら二人の周囲の高校生を演じた役者さんもよくて。岩田剛典さんはイケメンならではのすかした感じがよく出ていましたし、高畑充希さんはいい意味でとてもうっとうしい。太賀さんも応援したくなるようなキャラクターだったんですけど、ここで特筆したいのはやっぱり栄りらを演じた前田敦子さんです。


なにがいいってそのぶっきらぼうな口調とSっ気のある退廃的な目線ですよ。これらが合わさって生まれる姉御感が半端ない。口を開くたびに脳がやられそうになる中毒性がありました。多分高校生の俳優さんを起用していたら、ここまでの姉御感は出せなかったはずで、前田さんの演技もよかったんですけど、こちらもキャスティングの勝利ですね。まあぶっちゃけ高校生には見えませんけど、そこも含めてナイスです。


加えて、彼らを支える大人を演じた方々も素晴らしくて。物語のキーとなる雑誌記者・吉高洋平を演じた池松壮亮さんは記者の冷めた部分と、町田くんたちを目にしたときの熱い部分を見事に演じ分けていたんですが、まあ他のキャストも豪華なわけですよ。戸田恵梨香さんに、北村有起哉さんに、松嶋菜々子さん、極めつけに佐藤浩市さんまで。脇役にここまでするかとびっくりするくらいの豪華さです。なんなのこれ。主演二人に新人俳優を起用することで出演料が抑えられたから?短い出番だとそんなに出演料がかからないから?いずれにしても笑ってしまうほど凄いキャスティングでしたね。もちろん演技そのものも流石のものでしたよ。




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・簡単にストーリー等について


この映画の物語は町田くんと猪原が出会うことから始まります。まあ厳密には初対面ではないのですが、青春映画の王道であるガールミーツボーイで幕を開けます。


町田くんは誰にでも優しくする天使のような男の子で、当然猪原にも優しくします。猪原は優しくされて町田くんに好意を寄せていくんですが、それが自分にだけ寄せられたものではないことに気づきショックを受ける。でも、彼女の町田くんのことを好きな気持ちはどんどん高ぶっていき、訳わかんない状態になっていきます。こういった恋愛要素が『町田くんの世界』では一つの軸になっていました。


ただ、『町田くんの世界』は単なる恋愛映画では終わらせなくて、これは後で詳しく述べるのですが、「自己肯定感」というものがキーになっていました。町田くんの優しさに触れた周囲が、触発されて自分を認めていく。青春時代に必要なアイデンティティーの獲得がなされていて、キャラクターの成長物語という側面も『町田くんの世界』はしっかりと持っています。いや、むしろこちらの方が主題でした。さらに、そこに「悪意に満ちている」という現代日本の病理までもが絡む。『町田くんの世界』は決して軽くない映画だと感じます。


しかし、不思議とこの映画の持つ雰囲気はそこまで重くありません。それはコメディタッチで描かれるシーンも多かったからですね。町田くんと猪原が河川敷で追いかけっこしたり、最後の展開などがそれにあたります。加えて、栄の冷めた口調もどこかコメディ的で面白かったですし、エンターテインメントとしての強度を『町田くんの世界』はバッチリ備えています


それに河野丈洋(元GOING UNDER GROUNDの人や)が手がけた音楽も基本的には明るくてポップ。かき鳴らされるギターから入るイントロも多く、映画を楽しく盛り上げていました。平井堅さんの主題歌「いてもたっても」も軽快で、映画の後味を爽やかなものにしていましたし、決して軽くないテーマを扱っていますが、軽い気持ちでも十分に観れる映画だと感じます。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。









・キーワード①「わからない」



『町田くんの世界』で、多く聞かれたワード。それがこの「わからない」です。特に終盤、あらゆるキャラクターが事あるごとに「わからない」「わからない」と発していました。


「わからない」についての私の考えは、昨日の『海獣の子供』の感想の通りで、ここで繰り返すことはしませんが、『海獣の子供』と『町田くんの世界』では「わからない」の対象が異なっているんですよね。『海獣の子供』は自然という大きな対象について「わからない」のに対し、『町田くんの世界』では、自分の心の中という小さな対象について「わからない」と言っています。


町田くんは物語が進むにつれて、自分の感情が分からなくなっていくんですよね。猪原に対するこの気持ちは何なんだと。今までみんなに優しくしてきた自分は本当によかったのだろうかと。必死に苦しむ町田くんの姿には共感を覚えますし、素晴らしいのが「わからないものはわからないままでいい」と割り切って受け入れているところなんですよね。


だって青春時代に感じる問いって、大人になっても結局分からないじゃないですか。「自分は何者なんだろう」とか「どうしてあの人を好きになるのだろう」とか。きっとその理由は一生をかけて追い求めていくもので、もしかしたら死ぬまで答えは分からないのかもしれない。いや、答えなんてないのかもしれない。私たちにできるのは疑問を疑問のまま、「わからない」のまま受け入れることで、それが大人になるということなのではないかとさえ思います。


その意味で、町田くんは「わからない」ことを「わからない」まま受け入れたので、物語を通じて一つ大人になったのかなと感じます。青春時代の悩みと成長が的確に描かれていてポイント高いです。




あと、おそらく誰もが気になっている最後の展開について。本当にセオリーを無視した展開でびっくりしましたが、ぶっちゃけあれは私も分かりません町田くんが自分を受け入れて、自信が芽生えたことを表しているのかなとも考えましたが、ここで大切なのは意味よりも現象でしょう。町田くんが××していること自体が大事で、「わからない」というこの映画のテーマを如実に表しているのではないでしょうか。「わからない」ことに意味があると思います。




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・キーワード②「自己肯定感」


さて、「わからない」と並んで、私が『町田くんの世界』で感じたもう一つのキーワード。それが自己肯定感です。この映画に出てくるキャラクター、特に高校生は自己肯定感の低いキャラクターが多く見受けられた印象です。(なお、ここからの自己肯定感の定義は、日本セルフエスティーム普及協会の「そのままの自分を認め受け入れ、自分を尊重し、自己価値を感じて自らの全存在を肯定するに従うものとします)


例えば、猪原は人間が嫌いな自分を責めている印象でしたし、氷室は学校ではチヤホヤされているものの、モデルの撮影では蚊帳の外にされています。さくらも自分を認めてほしくて可愛い子ぶってましたし、西野も「一緒にいて楽しい」と言われたことがありません。唯一自分に自信があるのは栄ぐらいでしたし、劇中では何度も「ダメ」や「最低」という言葉が飛び交っています


そして、これは日本の現実をも表していると私は思います。財団法人日本青少年研究所(おっかない名前だ)の「高校生の心と体の健康に関する調査(2018年度版)」では、日本と米中韓の高校生を比較しており、日本の高校生は自己肯定感が低いという結果が出されています。「私は価値のある人間だと思う」や「私はいまの自分に満足している」といった項目が3ヵ国よりも圧倒的に低いのが象徴的ですね。なので、『町田くんの世界』では自己肯定感が低いキャラクターを多く登場させることで、10代の共感を狙っていたのではないかと感じました。私も自分のことをクソだと思っているので、彼らが苦しんでいる様子には胸が痛くなりましたね。


でも、町田くんはそんな彼らのことを肯定して認めるんですよ。自己肯定感の醸成には他者から褒められる、肯定される、認められるということが重要です。町田くんの底なしの優しさを受けたことで、猪原は人と話すことが増えますし、氷室は一生懸命やることを決意します。さくらや西野にもいい影響を与えていますし、『町田くんの世界』は、町田くんの優しさが周囲を変える「優しい世界」なんです。それが現代の「悪意に満ちている」といわれる日本に強烈なパンチを放っていて爽快でした。




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『町田くんの世界』で重要なキャラクターの一人、吉高洋平。彼が言うには「世界は悪意に満ちている」と。善意よりも悪意を人々は求めていると。吉高の雑誌の編集長・日野(佐藤浩市さんが演じていて無駄に豪華)はその理由を「自分よりダメな人間を見て安心したいから」と語っていましたが、私はこれも自己肯定感の低さが元になっていると思うんですよね。自分に自信がないから、自分よりもダメな人間を見て間接的に自己を肯定したいんですよ。おそらく。


でも、その行為はNPO法人カタリバによると


他者に対して「自分は人より優れている」などとして、自分より立場が弱い下の存在を作って自分以外の人を軽く視ることで自分を相対的に肯定することは、本来の自己肯定感が高い状態とはかけ離れています


と一刀両断されています。でも、ついつい人を下げたくなっちゃいますよね。それを行ってしまうのは自己肯定感が低いから。では、なぜ自己肯定感が低くなってしまうかというと、個人的には他者と比べてしまうからだと考えています。


これは、あくまで私の話なんですが、私は人と比べてどうかが全てだと思っているんですよ。自分ではある程度できているつもりでも、自分以上にできる人がいると選ばれるのはそちらの人になりますよね。選ばれなかった自分に価値はなく、極論を言えば、全ての人に勝てるだけのものがないと自分の価値を認めることができません。そんなことは不可能なのに。このブログだってそうですよ。私としては全力で書いているつもりですけど、私のよりも高質のブログなんて山ほどありますからね。そりゃ読まれないですよ。


それに、『町田くんの世界』で印象的だったのがスマートフォンに興じる人々です。冒頭のバスのシーンで町田くん以外の人は全員スマホを見てましたよね。近年は携帯やSNSの普及で、情報量は爆発的に増え、人と人とが繋がりやすくなっています。でも、これは裏を返せば人と比べられる機会が増えたということ。


インスタグラム等SNSの普及で、キラキラしたシーンを見せられ、劣等感を感じている人も多いかと思われます。「何者かになりたい」という思いがネット上には渦巻いていて、それは自分を認められておらず、自己肯定感がない状態だと思われます。炎上して注目を浴びたいのも今の自分に満足していないからですよ。たぶん。


でも、これと対照的に町田くんは携帯を持っていないんですよね。情報の洪水から自衛しています。それでも、人と比べられる機会の少ない町田くんが自己肯定感を持っていたかというと、そうではないのが『町田くんの世界』の面白いところです。




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映画序盤の町田くんは誰にでも平等に優しく接していましたが、そこには自己がありません。感情のないロボットのような不気味さがあります。自己がなければ自己肯定も自己否定もありません。


ただ、思考停止していた町田くんが猪原との交流を通じて、徐々に自己を見つめていくというのが、この映画の幹となっているストーリーでした。猪原に好意を抱いていくうちに、誰かれ構わず優しくしていた町田くんは本当にそれでよかったのかと悩みます。今までの自分のことを「最低」と振り返ってもいました。町田くんの中で徐々に自己が育っていき、自己否定が生まれていきます。町田くんは散々揺れ動いていたので、一切ブレないというのはあまり適切ではありませんね。ブレブレでした。私はよかったんですけど、町田くんの優しさを物語の柱として観ていた人には、ちょっと疑問を感じる展開かもしれないです。


で、町田くんがどのように自己を肯定していくかというと「わからない」に正面から向き合うことなんですよ。世の中分からないことだらけです。自然はもちろん、全部分かっているはずの自分の中で渦巻いている気持ちすら分からない。でも、町田くんの父親は「わからないから素晴らしいんだ」と肯定しています。この父親の言葉を受けて町田くんはもがき苦しみながらも、「わからない」ことも含めて自分を認め、肯定したからこそ、自己が生まれ、ロボットから人間になっていきました


自己が生まれた町田くんが発した最後のセリフは、今まで幾度も発せられてきた言葉であるにもかかわらず、それまでとは全く違った意味を持って聞こえます。『町田くんの世界』は、町田くんに認められて周囲が成長していく物語かと思いきや、その実町田くん自身が成長する物語でもあったのです。もがき苦しみながらも、自己が生まれ、自己を認めて成長していく町田くんを人間らしく感じられることが、『町田くんの世界』が優れているポイントの一つだと私は感じました。




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以上で感想は終了となります。『町田くんの世界』、私好みの優しい世界の映画でした。現実にも町田くんがいてほしいくらいです。多くの人に受け入れられるタイプの映画だと思うので、よろしければご覧になってはいかかでしょうか。


お読みいただきありがとうございました。




参考:

映画『町田くんの世界』公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/machidakun-movie/#index

自己肯定感とは(一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会)
https://www.self-esteem.or.jp/selfesteem/

自己肯定感―低い理由と対策(NPO法人カタリバ)
https://www.katariba.or.jp/news/2018/06/15/11006/

高校生の心と体の健康に関する調査(財団法人日本青少年研究所)
https://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/126/File/05_report_kokoro.pdf




おしまい




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