こんにちは。これです。最近はかなりダウナーな気分で、何をするにもやる気出ねぇーという感じなのですが、何とか気を奮わせて、今日も映画を観に行ってきました。


今回観た映画は『ビューティフル・ボーイ』。ティモシー・シャラメが薬物依存者に扮し、父親デヴィッドとの愛と再生を描くヒューマンドラマです。想像はしていたけどやっぱり辛い映画でしたね。


では、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。





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―あらすじ―

成績優秀でスポーツ万能、将来を期待されていた学生ニックは、ふとしたきっかけで手を出したドラッグに次第にのめり込んでいく。
更生施設を抜け出したり、再発を繰り返すニックを、大きな愛と献身で見守り包み込む父親デヴィッド。
何度裏切られても、息子を信じ続けることができたのは、すべてをこえて愛している存在だから。

父と息子、それぞれの視点で書いた2冊のベストセラー回顧録を原作とした
実話に基づく愛と再生の物語。

(映画『ビューティフル・ボーイ』公式サイトより引用)










※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。









実は最近、薬物について関心があるんですよね。いや、別に摂取したいわけじゃないですし、そもそもどうやって手に入れるのかも分からないし。でも、薬物を使う人ってどんな人なんだろうということにはとても関心があって。自制心の弱いどうしようもない人ではなく、私たちの隣にいる人が溺れていくんじゃないかって。彼らと私たちの違いって何だろうって考えるんですよ。で、考えれば考えるほど何も違わないなって思わされて、今はだいぶ凹んでる感じです。




さて、『ビューティフル・ボーイ』の主人公・ニックは、成績優秀で傍から見れば特に欠点のない存在に見えます。でも、本当は心の中に満たされなさを抱えていて、薬物に手を出してしまいます。このニックを演じていたのが『君の名前で僕を呼んで』などで注目のティモシー・シャラメ。佇まいからして、色気があって美しい。身長は高くて、スタイルもいいんですけど、それ故の儚さも持ち合わせていたのが印象的でした。薬物にハマっていく様はその並外れた演技力もあって痛々しかったです。車に乗っているシーンが特に好きですね。
 

また、『ビューティフル・ボーイ』は、息子ニックと父親デヴィッドの2冊の自伝が原作となっています。映画はこの2本をミックスした脚本になっており、ニック目線とデヴィッド目線が存在していました。どちらかというとデヴィッド目線に比重は傾いており、この映画のテーマは薬物依存者をどう支えていくかというところにあったと思われます。


そのデヴィッドを演じたのが、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』などの出演作を持つスティーヴ・カレル。その息子を信じ切る優しい目が印象的でした。でも、終盤になるとあえてニックを突き放すんですけど、その後の辛そうな演技と言ったら。苦渋に満ち満ちていて苦悩がダイレクトに伝わってきましたね。




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ニックは薬物を使ってしまって、デヴィッドと共に病院に行きます。ここでのニックの悪びれなさがよかったですね。俺のせいじゃないだろみたいな。歪んだ自己正当化がビンビンに感じられます。そして、ニックは回復プログラムを受けますが、施設を脱走して薬物を使ってしまいます。ただ、これも職員は織り込み済みでよくあることと気にしていないんですよね。いやー辛い。再発は回復の過程という言葉がズシンときます。本当かよ。


脱走したニックを探しに行くデヴィッド。ここでなぜか唐突にニルヴァーナがかかるんですよね。シーンとは一見不釣り合いでしたが、ここで一気に目が覚めました。この映画の特徴なんですが、全体的に静かなんですよね。セリフもあまり多くないですし、雰囲気も落ち着いていてけっこう淡々としていますし。なのに、音楽はわりとエモいんですよね。車を走らせるシーンとか。そのギャップが意外でした。


このけっこう淡々としているのが、『ビューティフル・ボーイ』のポイントだと個人的には思っていまして。薬物依存症の怖さを伝えるのがメインではないように感じたんですよ。いや、薬物怖っとはなりましたけど、本当に薬物の怖さを伝えたいのなら、もっとオーバーに書くことだってできたと思うんですよね。禁断症状でのたうち回らせて、人を殴ったりとか。でも、そうすると嘘になっちゃうので。伝記の映画化なので、リアリティが一番大事なんですよ。そういう意味では、ティモシー・シャラメの抑え目の演技はとてもハマってましたね。すごくリアリティがありました。


それでも、薬物依存症の怖さっていうのは描けていて。何をするにも薬物が最優先になってしまうんですよね。薬物が買えないから嘘を言ってお金をせびったり、家のものを売ろうとしたり。で、そのためには本心を隠さないといけないわけで。中盤、ニックの日記をデヴィッドが読むシーンがあったんですが、クリーンな様からだんだん薬物に溺れていく様子が絵と共に克明に描かれていて。息子が嘘をついていると知った時のデヴィッドの表情はこれまたキツかったですね。


そこからはやって、止めて、再発しての繰り返しですよ。怖いのが485日クリーン(薬物を使っていない状態)を続けていても、簡単にスリップ(再び薬物を使うこと)をしてしまうということ。コカインで逮捕されたピエール瀧さんも、コカインを止めていた期間があったそうですが、再び手を出してしまっていて。ワイドショーで聞いたんですが、薬物は「やめる」のではなく、「やめ続け」なくてはならないそうなんですよ。一度使った快感は脳に刻まれて、それが一生消えることはないと。


最後にニックは8年間クリーンを続けているとありましたけど、またいつスリップするかは分からないわけです。映画でもニックは依存症を完治できていません。というか完治できたら嘘になってしまうし。ラストシーンでニックとデヴィッドが日陰にいたのも、まだ依存症を抜け出せていないということを表していたのではないでしょうか。もやもやする人もいるかもしれませんが、この終わり方はリアリティがあって私は好きですね。




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この映画で重要なポイントがデヴィッドの視点から描かれていることというのは先に述べました。この映画で特徴的なのは支える側の辛さも描いているということに私はあると思います。デヴィッドはお前の"すべて"を愛していると言って惜しみない愛情を注いでいますが、これが逆効果になってしまっているのが辛いところで。親が何とかしてくれるという拠り所があるからか、深刻さをイマイチ欠いてしまっているんですよね。デヴィッドは仕事柄ニックとあまりいられなかったという描写もあり、その分愛情を注いでいたと思われますが、それが裏目に出てしまっていたと。デヴィッドの苦悩が大きくなっていき、ニックのガールフレンドに「やってもいないヤツに何が分かる」と言われ、自らも薬物に手を染めてしまうシーンは、この映画で個人的に一番辛いシーンでした。


そして、映画終盤にはデヴィッドはニックを突き放します。ここがまた最大級に辛い。愛しているからこそ突き放して、落ちるところまで落とさせなければならない。自分の力で這い上がらせるしかない。息子を思うが故に干渉するよりもずっと辛い道を選ぶデヴィッドの苦悩が、辛くて観ていられませんでしたね。


そのあとの崖でのセリフも大変。「人を救うことはできない」って言っているんですよ。あのデヴィッドが。こんなもの諦め以外の何物でもないじゃないですか。自分には何もできないという無力感ですよ。私も基本的には人をあまり信じておらず、自分を救えるのは自分だけだなーと思っているので、共感して胸の奥が痛みます。確かに薬物依存症は最後には本人次第で、他者が干渉する余地なんてないのですが、それを悟ったデヴィッドの絶望。よく崖から飛び降りなかったなと思います。










父親から見放された絶望で、再び薬物を使ってしまうニック。病院に運ばれ、医者から「生きているのが奇跡」と言われるまで深刻化していっています。そして、この映画のラストシーンなのですが、デヴィッドが泣くニックをそっと抱きしめるんですよね。


これはお前に何が分かるって感じですが、多分薬物依存者って薬物を使う自分のことを恥じていると思うんです。ああまた使ってしまった。薬物をやめられない俺はダメだ。でも、そのどうしようもない悲しみを薬物で紛らわすという悪循環が依存だと。本にそう書いてありました。つまりやりたくてやってるんじゃないんですよ。やめたいと思っていながらやっているんですよ。だって害があるのなんて分かっているはずなんですから。自分への絶望で泣いてしまうニックの姿が胸に迫ります。


そして、デヴィッドはそのニックを何も言わず抱きしめるんですよ。これはダメだと思っている自分も含めて存在全体の肯定ですよ。ニックにとっては。薬物依存症の治療には愛ある支援者が必要で、デヴィッドがその支援者になるという覚悟をしたシーンだと、私はこのラストシーンをそう受け取りました。日陰の向こうに日が差している良いラストだったと思います。その後のテキストを含めて。




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最後にまとめると、『ビューティフル・ボーイ』は薬物依存症の怖さをダイレクトに伝える映画ではなく、本人と周囲どちらも辛いことを描いた非常に苦渋に満ちた映画です。この映画を観て、「薬物依存者は周囲に迷惑をかけるダメ人間だ」みたいな感想が出てくるのはしんどい。自分の大切な人が薬物依存症になってしまったら、自分には何ができるのだろうと考える機会を与えてくれる映画だと感じました。薬物依存者を断罪して排除するのではなく、存在を認めて支えていけるような社会になったらいいですね。




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以上で感想は終了となります。『ビューティフル・ボーイ』、辛かったですが個人的には『君の名前で僕を呼んで』よりも好きですね。薬物依存について考えるきっかけにもなるので、よければ観てみてください。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい


ビューティフル・ボーイ [Blu-ray]
ティモシー・シャラメ
Happinet
2019-09-03



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