こんにちは。これです。


夏に突入したとは思えない涼しい日々が続いていますね。ただ、そんな中でも夏の到来を告げるのはポケモン映画。というわけで観てきました。『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』。説明不要、色褪せ無用の名作『ミュウツーの逆襲』を21年ぶりにリメイクした映画です。


私は『ミュウツーの逆襲』をリアルタイムで見ていたわけではないので、これが映画館での初めての鑑賞になります。まあ大筋は知ってるんですけど、シリーズ初の3DCGということで新しいものが観れるかもしれないという期待を抱いて観に行きました。


では、感想を始めたいのですが、その前に一つ。『ミュウツーの逆襲』には劇場公開版、完全版、正規完全版の3バージョンが存在していますが、この感想では特に断りがない場合、『ミュウツーの逆襲』もしくはオリジナル版という言葉は、完全版を指すものとします(この3バージョンの違いについては後ほど説明します)。それだけ踏まえて読んでいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。




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―目次―

・変わらない物語と3DCG
・ところどころ変化してるけどほとんど同じ
・劇場公開版のリメイクだったのが不満
・テンポの良さが失われてしまったのが痛い





―あらすじ―

「清らかな心と、会いたいと強く願う気持ち」その二つを持つ冒険者の前にだけ姿を現すという幻のポケモン・ミュウ。全てのポケモンの"はじまり"と言われ、世界中のポケモン研究者が行方を追うなか、ついに一人の科学者がミュウの化石を発見し、それを元に神をも恐れぬ禁断の行為に手を染めてしまう。

「ここはどこだ…。私は誰だ…。」

最強のポケモンをつくりたいという人間のエゴによって、この世に生み落とされた伝説のポケモン。その名もミュウツー。存在する理由も分からないまま、最強の兵器としての実験を繰り返されるミュウツーは、その心の中に、自分を生み出した人間に対する憎悪の念を増していく――。

「これは、わたしを生み出した人類への、逆襲だ!」

(映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。




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・変わらない物語と3DCG




思えば『ミュウツーの逆襲』が、3DCGでリメイクされると知ったのはちょうど一年前。『みんなの物語』の終了後でした。初めて知ったときにはテンションは上がったんですけど、少し落胆もしたんですよね。『ポケモンもリメイクに走るのか』と。懐古主義かよ。新作やってよみたいな。で、その8ヶ月後ぐらいですかね。予告編を見たのは。





ここで目についたのが、脚本:首藤剛志というところです。というのも、オリジナルの『ミュウツーの逆襲』の脚本を書いた首藤さんはもう亡くなられているんですよね。首藤さんがいないのにストーリーはどうなるんだろうというのは結構気になっていたところなんですけど、このクレジットを見て察しました。あ、ストーリー同じなんだなって。


リメイクでシーンが追加され、新たな解釈が生まれるかと思いきやそうでもない。3DCGとはいうものの同じ内容を二度やるかねみたいに考えてしまって、観る前から割と億劫になってしまって。内容100点、企画0点で評価に困りそうだなーってためらっていたんですけど、いい映画なことは保証されているので、観に行ってきました。




で、観に行ってみると私って単純なもんで、3Dで描かれたポケモンにあっさり感動してしまったんですよ。毛並みの質感もあるし、何より奥行きが段違い。本当にポケモンが生きている感じがしたんですよね。この映画のテーマの一つでもある「生きる」「命」といったものがより主張されていて、この意味では3D化は正解だと感じました。人物も最初の方は慣れなかったんですけど、次第に慣れてきましたしね。クオリティそのものもちゃんと高いですし、これだけで1,800円のうちの1,000円くらいの価値はあるかと思います。そして、私は普段映画を1000円で観ているので、この時点でもう十分満足でした。


でも、今回の3D化には弊害もありまして。それはいい意味でのドライ感みたいなものが失われていること。『ミュウツーの逆襲』は手書きのドライ感みたいなものがあり、それが却って想像力を喚起させ、より胸に迫るみたいな効果があったように感じたんですけど、3Dだと良くも悪くもリアルになってしまうんですよね。リアルにすることで、想像の余地が少なくなってしまったのは、個人的にはマイナスかなと。全体の収支で見れば、十分プラスなんですけどね。



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・ところどころ変化してるけどほとんど同じ



さて、今回の『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は、子供の他にもリアルタイムでオリジナル版を観ていた大人もターゲットに含まれていると考えられます。かつての子供も今は大人になり、自分の子を持ち、親子二代で観に来る人もいるでしょう。『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』はそのどちらに向けても配慮がなされていました。


まず大人。『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は始まり方から、まるっきり『ミュウツーの逆襲』と同じです。葉っぱに空いた穴からミュウが覗くっていう。シンクロ率100%で思わず笑ってしまうほどです。その後も基本的にはオリジナル版と同じ展開で物語は進んでいき、内容を忘れかけている人にもすぐついていけるような親切設計です。


しかし、オリジナル版と全く同じではなく、ところどころアップデートされています。まずミュウの壁画が違いますし、ロケット団が用意した船も、ラプラスを模した立派な足漕ぎボートにグレードアップ。ミュウツー城も桟橋や照明などなど随所に進化したところが見られます。バトルフィールドの位置がまるっきり反対になっていたのは地味に驚きました。


その中でも個人的にツボだったのはオープニング。海賊風のトレーナーのあの「ヘイ、ユーガバジハコゲットシタ、マサラタウッノサトシ、ソノヒトネ?」「ポケモンバトォデッキルッカナー」みたいな口調が再現されたのには謎の感動を覚えましたし、繰り出してくるポケモンもゴローニャからスリープに変更になっているんですよ。オリジナル版のオープニングで、でんきタイプの技が効かないはずのゴローニャが、なぜかビリビリして倒れている。ここは全員のツッコミどころですよね。作ってる側も流石にそれは分かっていたのか、スリープに替えられていて、なんだか嬉しくなってしまいました。


一方、子供に向けての配慮としては、オープニングに入るまでの描写を短くしたこと。子供って集中力があまり続かないですし、パッとオープニングに入るのは正しいことだとは思うんですけど、実はこれがとても不満でした




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。








・劇場公開版のリメイクだったのが不満


最初に触れたとおり、オリジナルの『ミュウツーの逆襲』というのは3バージョンが存在しています。まずは75分の劇場公開版。劇場公開版にミュウツーが誕生して間もないころを描いたラジオドラマ『ミュウツーの誕生』を元にしたストーリーを加えた85分の完全版。さらに、正規版にサトシとピカチュウの出会いから旅立ちまでのストーリーを再編集して加えた正規完全版の3つです。


私は、『ミュウツーの逆襲EVOLUTION』を見るにあたって、完全版のDVDを借りて見返してみたんですけど、その時の感想が「記憶していた以上にミュウツーの誕生をじっくり描いてるな」だったんですよね。想像の3倍くらい長かったです。


簡単にストーリーを説明すると、ミュウツー開発チームのリーダー・フジ博士にはかつて、アイという娘がいました。でも、アイは既に亡くなってしまっていて、フジ博士はアイのコピー・アイツ―を作り出します。そのアイツ―と生み出されたばかりのまだ幼いミュウツーが意識レベルで会話する。そこにはそれぞれコピーポケモン、フシギダネツー、ヒトカゲツー、ゼニガメツーもいます。


しかし、研究は上手くいかず、コピーポケモンたちは消滅し、アイツ―もまた消滅してしまいますただ一人取り残されたミュウツーは「私は誰だ」と自己の存在を問い続けるというストーリーが完全版にはあるんですよ。ここで不満なのが『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』では、このストーリーがまるっとカットされていて、アイツ―の存在がなかったことにされていることです



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アイツ―


どうして不満かというと、ミュウツーとアイツ―の別れのシーンで、ミュウツーは涙を流すんですね。「これは何?」と聞くミュウツー。アイツ―は「涙。生き物は体が痛いとき以外、涙を流さないんだって。悲しみで涙を流すのは人間だけだって」と答えます。アイツ―が消えた後のミュウツーの「アイ、止まらないよ涙。どうしたらいいんだ」という独白まで含めて大好きなシーンなんですけど、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』にはこのシーンがないんです。


すると、どうなるか。映画終盤でミュウとミュウツーの攻撃を受けたサトシは、石になりますよね。サトシが復活するように電撃を浴びせ続けるピカチュウ。しかし、一向にサトシは動かない。ピカチュウは涙を流し、周りのポケモン、オリジナルコピー問わず、も涙を流す。その涙で奇跡が起こり、サトシが復活する。『ミュウツーの逆襲』のハイライトともいえるシーンです。


ここで、アイツ―のあのセリフが効いてくるわけですよ。オリジナルとコピーという垣根だけでなく、人間とポケモンの垣根も超越して、涙を流す。「人間もポケモンも、オリジナルもコピーも同じ生き物である」というメッセージが胸に刺さって、いつ見ても泣いてしまいます。


ただ、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』にはアイツ―のセリフがない。となると、あの涙はオリジナルとコピーという意味だけに限定されてしまって、ポケモンと人間という意味を内包していない。単一的な意味しかなく、まあ感動はするんですけど、完全版を知っている身からすれば、泣くことは残念ながらできないです。


もしかしたら、これは私が事前に予習復習兼ねて完全版を見たのがいけなかったのかもしれませんね。あやふやな記憶のままで行っていたらもっと感動していたかもしれない。でも、『ミュウツーの逆襲』が公開されたのって、もう21年前ですよ。興収76億円とは言ったって、たぶんリアルタイムで観ていた人よりも、20年間でDVD等で見た人の方が多いと思うんです。


で、その人たちは完全版ないし、正規完全版を見ている。私のようにリメイクが決まって見返した人もいるでしょう。そうなると『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』にアイツ―とのシーンを期待するのは自然です。だって劇場公開版知らないんだから。完全版しか知らないんだから。で、期待していたのと違うと。期待を裏切ることは低評価に繋がりやすいですし、せっかくリメイクするんだったら完全版をリメイクしてほしかったというのは正直なところです。


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・テンポの良さが失われてしまったのが痛い


でも、完全版って映画の始まりから、タイトルが出てオープニングが流れるまで20分以上あるんですよ。これだけ長いと子供は集中できないだろうと。だからカットするのも理屈では分かるんですけど、さらなる問題はアイツ―のシーンをカットしたにもかかわらず、映画自体が完全版よりも10分以上長くなってしまっていることなんですよね。


アイツ―のシーンをカットした分の尺を埋めようと、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』では、様々な工夫がなされていました。ロケット団になんか歌わせてみたり、タケシに口説かせてみたり、フシギバナ同士のバトルを長くしてみたり、ミュウツーのアクションシーンを増やしてみたり。またシーンの一つ一つもオリジナル版と比べると長いという傾向がありました。一つ一つは小さなことなんですけど、それが積もり積もって気づけば、オリジナル版を超過してしまっているんですよね。


これも私がオリジナル版を観て感じたことなんですけど、テンポが超良いんですよ『ミュウツーの逆襲』って。スピーディにストーリーが進んでいって、観ていて飽きないんですよね。ただ、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は一つ一つのシーンが冗長になっていて、テンポの良さはだいぶ失われてしまっています。これでは子供の集中を持続させるのは難しいのではないでしょうか。実際、私の後ろにいた子供は映画の後半で喋ってしまっていましたし。しかも、「何食べるー?」とか映画に関係ないことを。なので、子供に観させることを意識するなら、もっとテンポをよくすべきだったと感じました。


あと、ぶっちゃけ大人向けとしてもどこか中途半端だなと思います。終盤のいかにも泣いてくださいみたいな大げさな音楽もあまり好きじゃないですし、個人的にハマらなかったのが、オープニングの後にミュウツーがサトシの元に招待状を送るシーン。ここオリジナル版では正体が伏せられているんですけど、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』では、ジョーイさんがもうミュウツー様って言っちゃってるんですよね。ミュウツーの顔も出てますし。この「もうみんな知っとるから別に隠さんでもええやろ」感。いや、そこは分かっていたとしても正体を隠して、ワクワク感を醸成するところでしょう。この開き直りにも似た姿勢が地味に嫌でしたね。




もうこんなこと言いたくないんですけど、まとめると『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は、3DCGを用いたアニメーションはいいものの、肝心の内容は大人と子供のどっちつかずになってしまったという印象がありました。なので内容的には65点くらい。でも、映画館の大スクリーンで『ミュウツーの逆襲』を観られたのは嬉しかったので、企画は0点から加点して25点。合計で90点です。あれ?観る前より下回ってる…。


いや、本当に観てほしいんですけどね。これで興収が芳しくないとポケモン映画自体終わってしまう可能性だってなくはないので。だから、こんな感想なんて気にせずに、まだ観に行っていない方は是非とも映画館に足を運んでみてください。今のうちがチャンスですよ。



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以上で感想は終了となります。こんな面倒くさいファンの感想にお付き合いいただきありがとうございました。『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』、オリジナル版を観た人も観ていない人にも多くの人に観てほしい映画です。本当によろしくお願いします。こんな感想書いておいて何ですが。


最後にもう一度。お読みいただきありがとうございました。




参考:

映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』公式サイト
https://www.pokemon-movie.jp/


劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲 -Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/劇場版ポケットモンスター_ミュウツーの逆襲




おしまい





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