こんにちは。これです。台風大変でした。私が暮らす地域は大きな被害はなかったですが、同じ長野市内では千曲川が越水して大きな浸水被害を受けた地域もあります。死者も少なからず出ていて、これ以上被害が拡大しないことと、早期の復旧を願っています。義援金口座が出来たらお金を送りたいと思います。それくらいしかできないので。


さて、こんな大変な状況の中観に行くかどうか迷いましたが、今回のブログも映画の感想です。今回観た映画は『真実』。『万引き家族』でパルムドールを受賞した是枝裕和監督の最新作です。日曜日なのに映画館には人が少なくて、台風の被害をまた一つ感じてしまいましたね。寂しかったです。


でも、切り替えて感想を始めたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。




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―目次―

・雰囲気が少し合わなかった
・是枝監督が描き続けてきた「家族」というテーマがこの映画でも
・「真実」が提示されないのが面白かった





―あらすじ―

すべてのはじまりは、国民的大女優が発表した「真実」という名の自伝本――

世界中にその名を知られる、国民的大女優ファビエンヌが、自伝本「真実」を出版。海外で脚本家として活躍している娘のリュミール、テレビ俳優として人気の娘婿、そのふたりの娘シャルロット、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、彼女の公私にわたるすべてを把握する長年の秘書─。“出版祝い”を口実に、ファビエンヌを取り巻く“家族”が集まるが、全員の気がかりはただ一つ。「いったい彼女は何を綴ったのか?」
そしてこの自伝に綴られた<嘘>と、綴られなかった<真実>が、次第に母と娘の間に隠された、愛憎うず巻く心の影を露わにしていき―。


(映画『真実』公式サイトより引用)



映画情報は公式サイトをご覧ください












・雰囲気が少し合わなかった


この映画のオープニングは木の葉が揺れる風景からスタート。サラサラと揺れる木の葉をバックにフランス語でタイトルが登場。このあたり是枝監督が撮っているのにもかかわらず、実にフランスっぽいなと感じました。モノクロでも何らおかしくない気がしたんですよね、この始まり方は。


さらに、続いてのシーンはインタビューを受ける大女優・ファビエンヌ。終盤への伏線を多分に含むシーンでしたが、画素数が低めに抑えられていてフィルム感をもの凄く感じます。7,80年代かな?と思ってしまいましたもん。その後に続くシーンも、台詞回しは平坦で画面もあまり派手じゃない。言ってしまえば、劇的な出来事はなく地味で淡々と進んでいきます


この7,80年代のフランス映画の香りを残した演出。実は観る前からキッズな私との相性はあまり良くないだろうなぁと感じていましたが、その悪い予感が的中。前日にあまり眠れなかったこともあり、序盤は結構寝てしまいました。そうでなくても眠気にかなり頭を支配されていて、ちゃんと観ることができたのは30分ぐらい経ってからです。シャルロットがスタジオに見学に行ったシーン?とかあまり記憶にないですもん。徐々に慣れてはいったんですが、この先の内容はうつらうつらしながら観ていたことをご承知おきいただければと思います。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。






・是枝監督が描き続けてきた「家族」というテーマがこの映画でも


ファビエンヌが執筆した自伝本「真実」。ただ、この本には実際の事実とは大幅に異なる内容が書かれていました。夫ピエールが死んだことにされていたり、秘書のリュックについての記述があまりなかったり。一番大きかったのは、彼女の姉妹で同じ女優であるサラの記述が少なかったこと。これに、娘のリュミールは大きく反発します。なぜなら、仕事にかかりきりだったファビエンヌの代わりに主にリュミールの面倒を見てくれたのは叔母のサラだったからです。


納得のいかないリュミールはファビエンヌと喧嘩。サラからファビエンヌが役を奪い取ったことを暴露するなど、なかなかのドロドロっぷりです。ここで喧嘩に入っていけず、蚊帳の外になっているイーサン・ホークが面白かったですね。あのイーサン・ホークがですよ笑。


しかし、ここからファビエンヌは少しずつ改心し、歩み寄りを見せていきます。もう前半のファビエンヌったらなかったですもん。それまで女優として築き上げたプライドから、悪口を言いたい放題。メチャクチャ口が悪くて、吸うたばこと共に、気難しい印象を与えます。名優カトリーヌ・ドヌーヴの巧みな演技もあり、どんどんヘイトが溜まっていきますが、それも後半に向けたフリ。徐々に彼女が女優として大成するために、家庭を犠牲にしていたことが明らかになっていくと、憐憫の眼差しを向けざるを得ません。楽しげに盛り上がる家族を見つめる悲しげな眼差しが印象的でした。


簡単にまとめるとこの映画って、人生ももう終盤に差し掛ったファビエンヌが、自らの人生を内省して、ないがしろにしていた家族と向き合って再生していく物語なんですよね。自伝本を執筆するのなんて若造にはできません。女優としてのキャリアも晩年に差し掛ったファビエンヌの、秘書のリュックも含めた家族との関係性の修復が、一番の見どころになっていたのは疑いようがないと思います。




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この「家族」というテーマって、今までの是枝監督の作品で結構描かれてきたテーマですよね。『万引き家族』はもちろん『誰も知らない』『そして、父になる』『海街diary』など。その多くは、血の繋がっていない家族で、血の繋がりが家族にどう影響するかことを是枝監督は多く描いてきて、それは『万引き家族』で一つの到達点に達したと感じます。


ですが、『真実』ではそれとは反対に、血の繋がった家族が主体です。ファビエンヌ、リュミール、孫のシャルロットの三人がこの映画の主要な登場人物でした。しかし、血が繋がっておらずとも雰囲気が良かった『万引き家族』とは対照的に、こちらの家族は血が繋がっているのに雰囲気が悪い悪い。底を流れる意地の悪さや不協和音と言うものが、じわじわと私たちの感情を揺さぶっていきます。


ただ、ファビエンヌは女優としては、もう斜陽に差し掛っています。新進の女優のマノンの才能を見せつけられて、焦りも出てくるファビエンヌ。しかし、それが却って自分を見つめ直す機会となったのがラッキーでした。自伝本を書くという人生を振り返る機会があったのもプラス。しかし、長年のプライドから素直になれないファビエンヌ。リュックに謝ろうとしてもなかなか踏ん切りがつかないのはいじらしくもありました。


しかし、リュミールがリュックに謝る脚本を書いてくれたおかげで、リュックは辞職を撤回(脚本であることは見抜かれていましたが)。さらに、「真実」ではなく「虚構」である映画の撮影。そこで迫真の演技を披露するファビエンヌの姿に心動かされ、ファビエンヌとリュミールも少しずつ和解していきます。窓際での体を寄せ合うシーンは、言葉では強がっているものの優しさに溢れていて好きでした。『万引き家族』が関係性が崩壊していったのに対して、『真実』は修復されていて、こちらの方が明るくて分かりやすいのかなと感じます。フランスのカラッとした雰囲気もありましたし。




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いずれにせよ『真実』は、家族がテーマになっていてフランス映画ながら、はっきりと是枝監督の色が出ていましたが、この映画の特徴って「家族」の再生だけに収まっていないことなんですよね。斜陽のファビエンヌ自身も再生しているんですよね。才能溢れるマノンも実は悩んでいて、それはサラの後継者と言われることでした。


終盤にマノンがファビエンヌ家を訪れるシーンがあります。ここで、序盤の記者のインタビュー「女優として誰のDNAを継いでいると思いますか?」という質問が伏線となって効いてくるんですよね。ファビエンヌはマノンにサラの服を着せて、サラの後継者であることをポジティブに捉えるよう働きかけます。ファビエンヌもずっと家族の側にいたサラに負い目を感じて悩んでいましたが、家族と向き合って再生していく中で吹っ切れたんですよね。サラを羨んでいてもそれでいいと。


励まされたことによって、マノンは元気を貰っていましたし、さらにファビエンヌ自身も新たにシーンを取り直すアイデアが浮かびます。家族関係が再生されたことで、女優としてのファビエンヌも再生されたんですよね。もう最後のファビエンヌは撮りたくて撮りたくて仕方がないと言った感じでしたし、家庭と仕事の好循環に胸がすく思いがしました。ワークライフバランスや。


















・「真実」が提示されないのが面白かった



最後に、この映画で面白いと思ったのが、この映画って「真実」も「事実」もあまり提示されないんですよ。自伝本の内容が一文も読まれないのもかなり意外でしたし、この自伝本自体あまり話に絡んできませんし。さらには、回想シーンもなく語られる事実は口頭のみで、それが「真実」かどうかははっきりとしないんですよね。


それに、この映画では「演じる」ということが大きなキーになっていまして。「演じる」という行為もノンフィクションでない限りは、「真実」じゃなくて「虚構」じゃないですか。でも、その「虚構」がファビエンヌたち家族の再生に一役買っているんですよね。『オズの魔法使い』とか。


で、この映画で一番面白いなと感じたのが、最後のシャルロットとファビエンヌの会話でした。シャルロットは「女優になる」と言ってファビエンヌを喜ばせますが、実はこれリュミールが書いた脚本だったんですよね。ファビエンヌがリュックに謝ったシーンの意趣返しになっていて、でファビエンヌはそこで「脚本じゃない」って言っていましたよね。なので、このシーンもシャルロットの本心と言う可能性もあるわけですよ。


往々にして、映画の登場人物には「真実」は分からないけど、観客には分かっているみたいなことあるじゃないですか。でも、この映画では「虚構」と「真実」の境目を曖昧にすることで、観客にも何が「真実」か分からないようになっているんですよね。映画自体はそこまでハマらなかったんですけど、その点が想像を掻き立てられて面白いなと感じました。




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以上で感想は終了となります。映画『真実』、キッズなせいで私には合わなかったんですけど、間違いなくいい映画ですので、興味がある方は尻込みせずに、映画館に向かっていただければと思います。本当に被害がないのに自粛だけはやめてくださいね。それで傾く産業もあるので。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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