こんにちは。これです。今回は、まず最初に告知があります。


この度、私これは11月24日(日)、東京流通センター第一展示場で開催される第二十九回文学フリマ東京に参加させていただくことになりました。『あの広い屋上に花束を』、『柘榴と二本の電波塔』、他一編(タイトル未定)の中編小説三作と、それらをまとめ、さらに書き下ろし短編を収録した作品集(タイトル未定)の計四冊を頒布させていただきます。ブース番号オ-36、「胡麻ドレッシングは裏切らない」という謎のサークル名で頑張ります。ただ今加筆修正中。詳細はこちらのWebカタログをご覧ください。当日は何卒よろしくお願いいたします。


さて、告知も終わったところで、いつものブログに参りましょう。今回のブログも映画の感想です。今回観た映画は、『IT イット THE END/"それ"が見えたら、終わり。』。ホラー映画歴代興行収入No.1を記録した『IT イット/"それ"が見えたら、終わり。』の続編です。前作はホラー映画ながら、青春物語としての色も強く、好きな映画だったので、CHAPTER ONEの文字を見た時から楽しみにしていた映画です。ちなみに前作の感想は、私が初めて書いた映画の感想でもあります。


その意味でも楽しみだった一作。では、これから感想を始めたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。




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―目次―

・続編になって、恐怖がパワーアップ!
・27年前のペニーワイズ退治は、ルーザーズにとっての青春だった
・その青春との決別





―あらすじ―

子供が消える町に、"それ"は現れる。

小さな田舎町で再び起きた、連続児童失踪事件。
幼少時代、"それ"の恐怖から生き延びたルーザーズ・クラブの仲間たちは、27年前に固く誓い合った〈約束〉を果たすために町に戻ることを決意する。
だが、"それ"はより変幻自在に姿を変え、彼らを追い詰めていくのだった……。

なぜ、その町では子供が消えるのか?
なぜ、事件は27年周期で起きるのか?
"それ"の正体と目的とは?

果たして、すべてを終わらせることができるのか!?


(映画『IT イット THE END/"それ"が見えたら、終わり。』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。











※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。










・続編になって、恐怖がパワーアップ!


この映画は、いきなり前作のラストシーンから幕を開けます。ルーザーズの7人が、「それ」(=ペニーワイズ)がまた現れたら、ここに戻って来ようと草原で誓うシーンです。前作を見ている人なら、オッとなって引き込まれること請け合いですし、前作を見ていない人もその後のシーンと合わせて、話の大体の筋を理解できる親切設計になっていました。


舞台は27年後に移り、遊園地に人が集まっています。遊園地を楽しむ同性愛者のカップルでしたが、不良にリンチに遭い、一人が橋から川に投げ落とされてしまいます。この投げ落とされた人、名前をエイドリアンというので、彼氏がエイドリアーン!と叫ぶシーンは『ロッキー』を彷彿とさせましたよね。溺れるエイドリアンでしたが、ペニーワイズに抱えられ、一度は助かります。その後ガブリといかれていましたが。そして、これでもかと赤い風船が飛びまくり、タイトルが映し出されました。


ペニーワイズの出現を知ったマイクは、ビル、ベバリー、リッチー、ベン、エディ、スタンリーといったかつてのルーザーズを招集。27年経ったルーザーズはそれぞれ立派な大人になっていました。ベバリーの相変わらずの男運の悪さと、シュッとしたベンには思わず笑ってしまうほどでしたけどね。あとリッチーは良くも悪くも全く変わっていませんでした。


中華料理屋で再集合するルーザーズ。久々の顔合わせに話が弾む姿は、まさに同窓会という趣でした。いや、行ったことないけど。しかし、話が「それ」の話題になると空気が一変。誰しもが、「それ」のことをそんなに覚えておらず、さらにスタンリーはマイクの招集に応じてはいません。フォーチューンクッキーが不吉なメッセージを浮かび上がらせ、さらに、赤ちゃんの顔や目玉に足が生えて動き出すなど、ペニーワイズから最初の洗礼を浴びます


なんとかして中華料理屋を出ると、電話でスタンリーが昨日、死んだことがルーザーズに知らされます。仲たがいするルーザーズ。しかし、ビルとマイクはペニーワイズをやっつける方法を知ります。それは先住民のスピリチュアルな儀式で、ペニーワイズを箱に封印するというものでした。まさかのジャパニーズ魔封波方式です。


しかし、マイクが言うには、ペニーワイズを封じ込めるには、それぞれの思い出の品が必要となるとのこと。ここからスタンリーを除く6人が、それぞれの思い出の品探しに赴きます。記憶を辿る6人。この映画はその6人のシーンをカットすることなく、全て映し出すので、ここがこの映画の169分という長い上映時間の主な原因を占めていたと考えられます。でも、私はこれをあまり長くは感じなかったんですよね。




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その最大の理由は、ペニーワイズによる脅かしのバリエーションの豊富さでしょう。前作に比べ尺が長い分、ホラーシーンの物量が単純に多かったのもありますが、今作のペニーワイズは、怖がらせるために様々なテクニックを駆使。カタカタと近づくのは当然のこと、わざと弱った振りを見せ、相手を近づけてみたり、周囲の人をも巻き込んで追い詰めてみたり。目を開けたら近くにいる、振り向いたら真後ろにいるなどの王道の演出だけでなく、こういった変化球も混ざてきていたので、最後まで新鮮なまま観ることができました。特に鏡の迷路のシーンは怖かったですよね。あそこカメラが頻繁に切り替わって緊張感がありました。


それに、この映画の脅かしはペニーワイズだけに頼っていなくて。ゾンビや死体、顔からタカアシガニみたいな足が生えたクリーチャーや殺人鬼、地形攻撃に心理攻撃など、「それ」は様々な形に姿を変えルーザーズを追い詰めます。特にCGを駆使した気持ち悪いクリーチャーのバリエーションの豊富さには目を見張るものがありました。個人的にはエディのシーンの病原菌ゾンビが好きでした。おどおどしさという面では、この映画でも1,2を争う出来だったと思います。


それに、俳優さんたちの力も大きいですよね。この映画の特徴って子供が怖がっているよりも、分別のついた大人が怖がっていることなんですよね。ほら、子供の方が感情を表出しやすいですし、私たちも未来ある存在が奪われるのは嫌なので、ホラー映画って被害者は若い人になりがちじゃないですか。でも、この映画は被害者を40台の大人に設定していて。そのハンディキャップは大きかったと思うんですけど、俳優さんたちの恐怖の演技は本当に迫真のもので、説得力があり「それ」やペニーワイズの恐怖をダイレクトに伝えていましたリッチーが個人的には一番好きでしたかね。最後泣かされそうになりました。


また、観ていて大きいと感じたのが編集の力です。この映画ってシームレスな場面転換が多かったじゃないですか。星空をパズルピースに見立てたり、血の滴りを繋げたり、大人からカメラが外れた次の瞬間には、子供のシーンになっていたり。とにかくシーンごとの移行がスムーズだったんですよね。そこで引っかからずに観ることができたのは大きいと思います。大人のシーンの要所要所で、子供のシーンを挟む構成もテンポが良かったですしね。飽きずに観られました。




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・27年前のペニーワイズ退治は、ルーザーズにとっての青春だった


さて、思い出の品を探す6人。それは、自らのトラウマと向き合う作業をも意味していました。前作で、「それ」は各キャラクターが一番恐れるものに、姿を変えて現れてきました。それは大人になるためには越えなければならないハードル。前作は、そのハードルに立ち向かうルーザーズの青春物語とも言うことができると、個人的には考えています。


そして、この映画ではそのルーザーズのトラウマが掘り起こされます。ビバリーの父親は相変わらず怖いですし、ベンは体型をとやかく言われることを気にして、リッチーは秘密を誰にも言えないでいました。前作では、最後ペニーワイズが何者かに引きずり込まれるという結末でしたし、ルーザーズはペニーワイズを、大人になるためのハードルを乗り越えることができていません。その意味でルーザーズは10代に、青春時代の中に取り残されていたと言えないでしょうか。青春は過ぎ去ってから青春だったと気づくものだとするならば、彼らが「それ」をあまり覚えていなかったのは、まだ青春の中にいてそれを自覚できていなかったということができるのではないでしょうか。


思えば、ペニーワイズ退治は、ルーザーズにとっては悪夢でありながらも、間違いなく青春でもありました。だって、ルーザーズという仲間ができたのですから。それに前作では誰も死んでいません。なので、27年前のペニーワイズ退治は、恐怖の思い出よりも、それに関連した楽しい思い出の方が勝ってしまったと私は考えます。


この映画で、過去のスタンリーが成人の儀式の際に「いい思い出は忘れてしまうけど、悪い思い出はなかなか忘れられない」という趣旨の発言をしていたけれど、まさにこの通りだと思うんです。スタンリーは、一応は形式上区切られて大人になったので、境目がない他のルーザーズとは一線を画しています。なので、スタンリーはもう「大人」で、ルーザーズでの日々は青春だったと振り返ることができてしまったのでしょう。そこで、ペニーワイズの恐怖の記憶ばかりが呼び起こされ、自殺してしまったのだと思います。


そして、それはバワーズにも言えることでした。バワーズは父親を殺したという悪い思い出があり、服役中は否応なく、それを思い出させます。そのまま年を重ねてしまって、悪い思い出を引きずったまま。バワーズにとっての10代は、ルーザーズと違って悪いものなんですよね。で、ずっとその中にいたため、風船を見てしまって、また安易に全員ぶっ殺すとなってしまったのではないでしょうか。




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・その青春との決別


そんな青春の中に取り残されたルーザーズたち。彼らは年齢を重ねていますが、内面はそれほど変化していません。だからこそ、同じハードルにぶち当たったのでしょう。ただ、彼らが年齢を重ねてしまったことで、相対的にペニーワイズの立場は変化していると感じました。


前作でのペニーワイズは、ベバリーの父親や、スタンリーの肖像画など、どちらかというと未来を縛るものだったと感じます。ビルのジョージの失踪や、マイクの両親の焼死など過去の事件もありますが、それも心に影を落として、自己の変容を制限するという意味では未来を縛るものであると言えると私は考えています。


一方、今作のペニーワイズ。見せるトラウマの内容は前作と一緒ですが、前作と違って、ベバリーの父親は亡くなり、ベンは痩せています。直接的なトラウマは、そこにはもう存在していません。彼らが年を重ねたことで、変わらないペニーワイズは相対的に未来を縛るものから、過去を想起させるものへと変化していたのではないでしょうか。また、前述したようにペニーワイズ退治は、どちらかというとルーザーズにとっては楽しい思い出。青春の一ページです。今作のペニーワイズはそんな楽しかった思い出の具現化。ルーザーズの拠り所。いわば、青春の残滓であると私は感じました。


青春時代の思い出は美化されがちで、また再び味わいたいと思う人もいるかもしれません。私は戻りたいとはこれっぽちも思いませんが(昔は昔で辛いし、今は今で大変)、戻ってみたいという人も少なからずいるのではないでしょうか。今作のペニーワイズも、あの頃に戻らないかとルーザーズに手招きします。ずっと人生のいい場面だけを繰り返していられたら、どんなに幸せなことでしょう。


ですが、知っての通り、一度過ぎてしまった青春は二度と訪れることはありません。「大人」になるためには、どこかで青春と決別しなければ、青春を終わらせなければならないのです。良い体験だけではなく、悪い体験もしなければならないのです。映画終盤に正体を現したペニーワイズ。青春の残滓たる彼の姿は、鋭利な節足が不気味なとても醜いクリーチャーでした。そして、「やったか!?」→「やってない!」と、エディが刺されて重傷を負ってしまいます。27年前に戻りたいと思うことは、とても致命的なことであることが示されていると感じます。


しかし、ルーザーズは映画終盤、それぞれの過去のトラウマを乗り越える姿を見せます。ベバリーは父親の所有物ではないと宣言し、ビルはジョージを殺してしまったという自責の念から解放されます。それは大人になるためのハードルを各自がようやく乗り越えたという描写であり、青春を過去のものとして見ることができるようになった瞬間のように、私には思えます。


再び、ペニーワイズと対面したルーザーズは既に5人。彼らが編み出した解決策は、ペニーワイズを小さな存在だと自覚させること。彼らはペニーワイズに「小心者」だの「ただのピエロ」だのありったけの言葉をぶつけます。戻りたくないかと手招きする青春の残滓たるペニーワイズは、ただのピエロ、道化でしかないと。それは、彼らが自分自身に言い聞かせているようにさえ、感じられました。




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四十歳は青春の老年であり、五十歳は老年の青春である」とは西洋のことわざです。ルーザーズは2人の犠牲を払いながらも、ペニーワイズを倒すことに成功しました。それは彼らが青春と決別したということを表していると考えられます。27年前と違って、ペニーワイズを倒したことを覚えているルーザーズ。それは彼らが、青春をもう過ぎ去ったものとして認識したことの表れではないでしょうか。それは、スタンリーとエディが死んだという悲しい思い出とともに、彼らの心に記憶されています。


それでも、彼らの人生は続いていきます。ビルは仕事の調子を取り戻し、ベバリーは夫と歩み寄る。マイクは、27年以上自分を縛り続けたデリーから旅立ちます。きっと彼らには、大人になったことに対する祝福、「老年の青春」が待ち受けていることでしょう。『IT イット THE END/"それ"が見えたら、終わり。』は、ルーザーズが27年前から続いていた青春を終わらせて、「大人」として新たな人生を生き始める映画であると私は感じました。前作以上の爽やかな終わり方で、ホラー映画にもかかわらず後味は良好です。前作を観ていなくても楽しむことができると思うので、よろしければ映画館でご覧ください。



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以上で感想は終了となります。『IT イット THE END/"それ"が見えたら、終わり。』。前作の続編としては、ほぼ完璧に近い内容だと思います。機会があれば、ぜひどうぞ。オススメです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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