Subhuman

ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203

2019年04月



前編はこちら



両チームのスタメンは以下の通りです。


002



DSCN1721


前半キックオフ!


DSCN1722

DSCN1723


立ち上がりは予想された通り、FC東京がボールを持つ展開になります。FC東京は#18橋本選手#8高萩選手がCBの間に落ちて、SBを高く上げようとしてきますが、この日の山雅は前線からプレスに行きません。#10レアンドロ・ペレイラ選手がプレスに行かないのでスイッチが入らないという理由もありましたが、5バックにして守備を固める方向にシフトしてきました。


DSCN1726


これは前節の鳥栖戦でサイドで縦関係を作られて苦戦したという反省に基づいているものと考えられ、あらかじめサイドにWBを置いておくことでスペースを消そうという狙いが見えます。FC東京のSHをWBとCBの間にポジションを取らせるように誘導して、サイドをSB1枚のみにしたいという考えがあったのではないでしょうか。


DSCN1727


ただ、この狙いはあまり奏功したとはいえなかったと思います。FC東京はSHが中に入ったとき、タイミングよくFWがサイドに流れて、CBを釣り出します。ここでCBのスライドが一瞬遅れ、空いたハーフスペースをSHや#8高萩選手に使われるということが多くなっていました。山雅のボランチはバイタルエリアを消すことが最重要任務で、ハーフスペースをボランチが落ちて埋めるようにはそれほど設計されていないので、FC東京はその穴を上手くついてチャンスを量産していた印象です。


003


005


また、敵陣深くまで攻めることで山雅の攻撃の開始位置は下げられてしまっています。山雅は縦に速い攻撃を志向しているため、ディフェンスラインでボールを回すということはあまりなく、ロングボールを#10レアンドロ・ペレイラ選手に当てて、セカンドボールを拾っての攻撃が主です。CBの#3森重選手#32渡辺選手は、身長では勝てないまでも上手く体を当てて、#10レアンドロ・ペレイラ選手を自由にさせていませんでした。さらに、4バックが横に圧縮し、#18橋本選手が下がってセカンドボールを拾っていて、山雅はなかなか攻撃に出ることができませんでした。


DSCN1728

DSCN1730


そして、ボールを奪ってのFC東京の攻撃ですが、山雅の両シャドーが上がって空いたボランチの脇のスペースを狙っていたように思えます。FWの選手が下がったり、SHの選手が中に入ったりしながら、ボランチ脇のスペースを巧みに使い、ボランチとWBを引き付けて空いたサイドのスペースをSBが突くという攻撃を多く見せます。ここで、シャドーが素早く戻ればよかったのですが、攻撃に重心を置いていたのと前半の山雅は少し攻→守への切り替えが遅く、それが苦戦を招いていたように感じられました。


004


FC東京と比べると山雅はディフェンスラインでボールを回す場面は少なかったのですが、FC東京は山雅よりも前線からのプレスに来ていた印象です。ポイントは山雅のサイドのCBにSHが寄せるということ。この時、サイドは山雅のWBとFC東京のSBで1対1になっているため、山雅は数的優位を作ろうとシャドーの選手が流れていきます。


DSCN1732


ただ、これはFC東京の思う壺。サイドに人数をかけることで、山雅の中の枚数は不足しています。また、選手の質もFC東京の方が高いので崩し切ることは難しく、山雅は肝心のシュートを打てません。FC東京のSHもこれを見越して中へのパスコースを切っていて、サイドに誘導していましたね。


DSCN1735

DSCN1736


一方、これはさらに少なかったのですが、山雅がディフェンスラインでボールを回せるとき。#35宮阪選手が下がってボールを受けようとしますが、FC東京はここまでは比較的ボールを持たせてくれます。ここで山雅はWBをサイドにまで開かせ、FC東京のSBとCBの間を空けて、そこを#7前田選手の快速が突くというのが一つの攻撃パターンです。しかし、FC東京のSBは釣られずコンパクトにしていましたし、CBが斜め後ろにカバーのポジションを取ることで、#7前田選手の裏抜けを封じていました。ディフェンスラインも下げるときはすぐに下げ、裏のスペースを消してきています。


006


反対に、山雅の3バックはいつもフラット。ラインを高く保ってコンパクトにしようとするのはいいですが、#11永井謙選手に裏に抜け出された時に、追いつける選手がいません。この問題を解決できなかったことが、山雅にとっては致命傷になってしまいました。


DSCN1740

DSCN1741


FC東京が攻撃時、すなわち山雅が守備時。基本的にFC東京のSHには山雅のWBがついています。ここで、FC東京のSHが下がる時、山雅のWBがそのままついていきます。ここで、裏にスペースが空く。FWが流れた時はCBがついていきますが、ボールサイドのボランチやSBが飛び出してきたときはどうするか。答えはシャドーが下がって対応するです。


DSCN1743


山雅のボランチは中央を固める意思が強いため、後方からの飛び出しに対応するのはシャドーの任務。特に#13中美選手の守備での貢献が目立っていましたね。FC東京のストロングポイントである#15久保選手を擁する左サイドの攻撃を止めるために、#13中美選手が下げられ、その結果カウンター時には前線に#7前田選手#10レアンドロ・ペレイラ選手の2枚だけ。枚数が足りず、すぐさま囲まれてボールを奪われてしまっていました。


007


また、山雅は前目のハーフスペースを消す任務もシャドーに与えています。これにより#7前田選手#13中美選手のポジションはどんどんと下げられ、#10レアンドロ・ペレイラ選手も孤立したくないがために下がってくるので、ボールを奪っても素早く前線に運ぶことができません。ビルドアップの過程で、FC東京の守備陣形が整ってしまい、攻撃を封じられてしまっています。


DSCN1745


ただ、これも山雅の想定内。FC東京はここまでの平均ポゼッション率が43.6%とあまり高くないチームで、得意としているのはショートカウンター。山雅は下がって5-4のブロックを作ることで、このショートカウンターを封じており、FC東京に不慣れなボールを保持する戦い方を押し付けてきました。まあFC東京のボールを回す上手さは想定以上だったでしょうけど。山雅用に練習してたんでしょうか。


DSCN1747

DSCN1748


なかなか攻撃に出ることができない山雅でしたが、優位に立てるポイントが実は一つだけありました。それは左サイド。この日のFC東京の右SBは、普段左SBを務める#25小川選手。小川選手の利き足は左足で、右足はとっさには出しにくいという特性がありました。一方山雅の左WBの#42高橋選手も左利き。#42高橋選手は縦突破が得意で、左足でクロスを上げることができます。このとき、#25小川選手の対応は体の向きから遅れがちになり、左サイドからのクロスはこの日の山雅で一番可能性のある攻撃でした。


DSCN1750


まあ当然このことはFC東京も分かっていたので、左を切って右サイドにボールを集めるようにしていましたけど。#3田中選手は縦突破というよりは周囲とのコンビネーションで崩すタイプなので、距離感を適切に保ったり、マークの受け渡しをスムーズにできれば、守るのは左サイドと比べれば難しくありません。誘導された右サイドを崩すことができず、山雅の攻撃は残念ながら前半はあまり機能していませんでした。


DSCN1753

DSCN1754


前半44分。山雅は中盤でのボールの奪い合いに敗れ、#15久保選手にボールを運ばれてしまいます。プレッシャーのかかっていない#15久保選手はスルーパスを通します。ここで、#5今井選手#3田中選手が少し前にいて、山雅のディフェンスラインは揃っていなかったので、#11永井謙選手にその裏を突かれてしまいます。スピードのある#11永井謙選手に#5今井選手は追いつくことができず、#11永井謙選手は落ち着いてシュートを決めます。山雅のしたい攻撃をFC東京が実現し、先制に成功しました。山雅としては、前半を0で折り返せるという間際での失点だったので、ダメージは大きいですね。








そして、そのまま前半は0-1でFC東京リードで終了。サイドから執拗にハーフスペースを狙ってくるFC東京の攻撃に対し、山雅もCBが適切なポジショニングを掴み始めたり、シャドーが戻るようになったりと対応してきていましたが、終了間際での失点を喫してしまいました。前半を0-0で折り返すゲームプランが崩れ、後半は攻撃に重心を置かなければいけません。シャドーの位置が低く、攻撃に繋げられなかったという前半の課題をどう修正してくるでしょうか。


DSCN1763


ハーフタイム中には東京ドロンパが山雅ゴール裏に来てくれた様子。トイレに行っていて見られませんでした...。










DSCN1764


両チーム選手交代のないまま後半キックオフ!


DSCN1766

DSCN1767


後半になってゴールが必要な山雅は、前半よりもシャドーのポジショニングを意識的に高くしてきました。守備時にはSBを見ることに専念し、ボランチの飛び出しは同じボランチが対応することで、守備の負担を軽くしています。前半よりも下がらず、前にポジションを取ることで、#10レアンドロ・ペレイラ選手が競ったセカンドボールを拾えるようになりました。立ち上がりに#10レアンドロ・ペレイラ選手が競った時に、二人とも前に動き出していたのが印象的ですね。


DSCN1769


また、WBも前半よりは中に絞るようになり、密集を作ろうという意識が見えます。#42高橋選手を使う意識が強くなり、#42高橋選手も高めのポジションを取ります。ただ、#42高橋選手の上がった後のスペースのカバーは整備されておらず、#15久保選手を中心にいいように使われていましたね。後半14分にポスト直撃のシュートを打たれたのは危なかったです。


DSCN1770


後半15分。山雅が早めに動きます。#7前田選手に替えて#11永井龍選手を、#13中美選手に替えて#20杉本選手を投入。2シャドーを交代し、運動量を復活させゴールを目指します。


DSCN1779

DSCN1780


この二人の投入で山雅は攻勢を強めます。前半は#10レアンドロ・ペレイラ選手が下がってボールを受けたり、サイドに流れたりしたシーンで中の人数が不足するという問題があったのですが、#11永井龍選手#20杉本選手が前線に入ることで、迫力が増しています。また、#20杉本選手はディフェンスラインと前線の間の中継点としても機能していて、高い技術力でボールを前に運べていました。次はスタメンでもいいんじゃないかと思います。


DSCN1772

DSCN1773


ただ、攻勢を強めたことで山雅の中盤にはよりスペースができていましたし、シャドーに入るボールをFC東京のDFは狙っていたので、ボールをカットされてショートカウンターを受けるシーンも前半よりも多くなっていました。後半23分。FC東京は#11永井謙選手に替えて、#16ジャエル選手を投入し、2点目を奪いに行きます。

DSCN1785


後半31分。#16ジャエル選手#9ディエゴ・オリヴェイラ選手とのワンツーで左のペナルティエリア角を攻略してこようとします。これは山雅のディフェンスがカットしますが、こぼれ球が#15久保選手に渡ってしまいます。ゴールに向かってドリブルを開始した#15久保選手の足を#31橋内選手がひっかけてしまい、PKの判定。#15久保選手のボールを晒すプレーが絶妙でしたね。


DSCN1781

DSCN1784


このPKを#9ディエゴ・オリヴェイラ選手が独特の助走から、#16村山選手の逆を突いて決め、FC東京が追加点を獲得しました。#9ディエゴ・オリヴェイラ選手はこれで公式戦6試合連続ゴールと絶好調です。

DSCN1794







DSCN1792


PKの間に山雅は最後の選手交代を行っていました。#35宮阪選手に替えて#8セルジーニョ選手を投入。シャドーに#8セルジーニョ選手を入れ、ボランチに#20杉本選手を下げて、より攻撃的に1点でも奪おうとします。


DSCN1797

DSCN1798


前線に枚数を増やしてゴールを目指したい山雅でしたが、FC東京もコンパクトに4-4のブロックを作っているので、スペースはなかなかできていません。#8セルジーニョ選手が下がってボールを受け突破口を作ろうとしますが上手くいかず。それでも、FC東京も足が止まり始め、サイドへのプレッシャーが弱まっていたので、山雅はサイドからクロスを上げられるようになり、後半39分の#11永井龍選手のシュートといった惜しいシーンもありました。

DSCN1797

DSCN1799

この日の入場者数は36,412人と発表されました。山雅サポーターも1,500人ほど来ていたようです。


DSCN1801

DSCN1803


FC東京はボールを奪っても縦に急がず、ボールを繋ぐことで、時間を使ってきていて、後半38分には#8高萩選手に替えて#17ナ・サンホ選手を投入するなど、前線からプレスをかけて、山雅のロングボールを制限してきてもいましたね。

DSCN1807


後半アディショナルタイム3分もFC東京はわざとヒートアップしたり、#9ディエゴ・オリヴェイラ選手に替えて#39大森選手を投入したりして、有意に時間を使いそのまま試合終了。平成最後のゲームをは2-0でホームのFC東京が制しました。


IMG_0967

IMG_0973


この試合に置いて山雅はFC東京にボールを持たせるというゲームプランで、シャドーもブロックに参加しての5-4で守るという作戦はある程度機能していましたが、やはり前半を0で終えられなかったのが痛かった。下がりすぎ故の攻撃時の枚数不足も引き続き解消すべきテーマですね。#10レアンドロ・ペレイラ選手をもっと中で張らせることができるよう戦術も整備しなければなりません。


DSCN1809

健闘した選手を山雅サポーターは拍手で迎え入れます。


DSCN1810

IMG_0976

FC東京のゴール裏ではこの日初スタメンの#32渡辺選手が勝利のシャー!を行っていましたね。ヒーローインタビューも#32渡辺選手でした。初スタメンということを感じさせない活躍ぶりだったと思います。


IMG_0975

ありがとうございました!



















<ハイライト動画>








監督コメント
(Jリーグ公式)

選手コメント(Jリーグ公式)

J1順位表(Jリーグ公式)

2019 明治安田生命 J1リーグ第9節 VS FC東京|試合結果(松本公式)

2019明治安田生命 J1リーグ 第9節 FC東京 2-0 松本山雅FC|フォトギャラリー
(松本公式)

2019明治安田生命J1リーグ第9節 vs松本山雅FC|試合結果(東京公式)

松本山雅 首位FC東京に敗れ11位後退(信濃毎日新聞)













これで山雅は3勝2分4敗の勝ち点11で順位も11位。2試合ぶりの勝利を掴みたい次節は5月4日(祝)14:00から。ホーム・サンプロアルウィンでセレッソ大阪との対戦です。ロティ―ナ監督が就任したセレッソはここまで2勝2分5敗の勝ち点8と結果は出ていませんが、各ポジションに強力な選手をそろえた手強い相手。私は行けませんが、GW真っただ中ですし、ぜひともサンプロアルウィンでの応援をよろしくお願いします。


頑張れ!松本山雅FC!!


お読みいただきありがとうございました。


おしまい





☆よろしければフォロー&友だち登録をお願いします☆







前節、サガン鳥栖に1-0と競り勝った松本山雅FC。リーグ戦での直近の成績を2勝1分とし、3勝2分3敗の勝ち点11で10位につけます。残留争いに巻き込まれないためにも、さらなる勝ち点が必要ですが、今節の相手はFC東京。第8節終了時点で6勝2分の勝ち点20と首位につけています。未だ無敗の強敵に山雅はどう立ち向かったのでしょうか。


では、観戦記を始めます。よろしくお願いいたします。




後編はこちら















朝6時、高速バスに乗って長野を出発。高速道路は意外にも混んでおらず、時間通りの9時45分に新宿駅に到着しました。そこから京王線で最寄りの飛田給駅へと向かいます。電車の中には複数人の山雅サポーターがいました。


IMG_0719

到着した飛田給駅にはFC東京と東京ヴェルディのタペストリーが掛けられていて、観戦客を歓迎します。


IMG_0721

IMG_0720

駅前のマクドナルドもFC東京の青赤仕様です。


スタジアムへは真っすぐ。10分ほど歩き、歩道橋の階段を上がると、


IMG_0724

味の素スタジアムが姿を現しました。東京に住んでいた時以来なので、およそ2年ぶりの来訪です。屋根を支える鉄骨が円状に配置されていて、インパクトを与えてきます。


IMG_0723

右にいるのってモンストのキャラクターですよね。FC東京ってモンストの会社がスポンサーになってるんですか。つまり課金すればするほどFC東京が強くなると。怖っ。


IMG_0727

入り口から3分ほど歩いて、アミノバイタルフィールド前の青赤パークに到着です。






IMG_0728

東京ドロンパのふわふわがあり、


IMG_0729

シュートスピードを測るブースがあり、


IMG_0784

大きいボールでのモンスターフットボールが繰り広げられていたり、


IMG_0731

ステージの上のビジョンではゲームハイライトが流れてたり。#9ディエゴ・オリヴェイラ選手がゴールを決めていました。


まず、青赤パークをぐるりと一周し、どんなスタグルがあるのかを確認。そして、適当なスタグルの列に並びます。そのスタグルは20分ほどの待ち時間でした。待ち時間中、暇なのでツイッターを見てると10時45分からガンズくんが青赤パークに登場すると自ら呟いていました。






IMG_0737

最初に青赤パークの入り口付近にいたのは、この日のマッチデースポンサーである東京ガスのキャラクター、パッチョと電パッチョです。青い方がパッチョでオレンジが電パッチョですよね。目が点になっており、口角がかなり上がっているというシンプルなデザインですね。電パッチョには頭に稲妻がついていて、おへそ的にコンセントプラグが張り付いています。二人もお尻がプリティでした。





IMG_0740

ガンズくん登場。東京でも会えるとは。


IMG_0742

握手をしてくれるガンズくん。


IMG_0743

IMG_0744

FC東京サポーターから東京ドロンパのぬいぐるみを渡され抱えます。ややヘッドロック的ですね。


IMG_0746

IMG_0748

もちろんちゃんと持ち直してくれました。


IMG_0749

そしてパッチョ、電パッチョと共に3ショットです。


IMG_0751

IMG_0752

IMG_0754

IMG_0755

IMG_0756

ひょっこりはんするガンズくん。からの...

IMG_0757

IMG_0758

IMG_0759

まさかのチューチュートレインが始まりました。お客さんのノリに答えてくれてのもので、とてもありがたいです。


IMG_0763

東京っぽいポーズ。


IMG_0765

IMG_0766

愉快なポーズをするパッチョ。表情が豊かに見えます。


IMG_0767

サインをするガンズくんの人気は松本でも東京でも変わりません。


IMG_0769

IMG_0771

蠱惑的なポーズも披露です。


IMG_0772

東京ドロンパのふわふわの前に張り切るガンズくん。


IMG_0773

IMG_0776

IMG_0779

フワフワの中に入りたいガンズくん。しかし、入口とはサイズが合わず入れません。中の子供たちに手を振ると、子供たちも振り返してきたようでした。


IMG_0785

IMG_0786

IMG_0788

サッカー盤に興じるガンズくん。あちゃーというポーズが可愛いです。


IMG_0790

IMG_0791

取材も受けていました。


IMG_0795

その隣ではモンスターフットボールに、まず電パッチョが参戦しています。


IMG_0796

IMG_0797

正面を向いて決めポーズ。ボールは?


IMG_0798

さらにパッチョが、


IMG_E0804

ガンズくんも参加し、キャラクターサッカーの様相を呈してました。


IMG_0800

IMG_E0805

ボールに襲い掛かるガンズくん。一緒にプレーできた子どもは羨ましいですね。


IMG_0810

その後もお客さんによるガンズくんの撮影は続きます。ここでふとステージに目をやると特撮風の怪人が登壇しています。その名をワルビーというそう。ポケモンにいた気がします。


IMG_0812

三味線の音楽にのせてラップ調に自らのテーマを歌うワルビー。怪人のオンステージ。それを阻止すべく登場したのが、


IMG_0820

地域宣伝隊コダレンジャーです。コダレンジャーとはこの日の「小平の日」に合わせて登場した小平のヒーロー。丸ポストレッド、グリーンロードグリーン(グリーン2回言っとる)、ブルーベリーパープルの3人からなるローカルヒーローらしいです。造形はわりあいしっかりしていますね。


IMG_0822
そして繰り広げられるヒーローショー。


IMG_0830

IMG_0832

『トクサツガガガ』で観たヤツや!と一人ニヤニヤしてました。戦隊ヒーロー然としたちゃんとした曲もありましたしね。


IMG_0836

最後には覚えてろーという常套句を吐いて、去っていったワルビー。


IMG_0840

こうして小平市と味スタの平和は守られた(?)のでした。ありがとうコダレンジャー。


ヒーローショーを眺めていると、後方には人だかりができています。戻ってみると

IMG_0843

東京ドロンパが登場していました(横向きですいません)。


IMG_0842

味スタで初めて会った東京ドロンパは160cmほどで想像以上に小さくて、キュートでした。GWで子供の日も近いということで、鯉のぼりを持っていましたね。


IMG_0844

サポーターのキャップにサインをする東京ドロンパ。


IMG_0849

とここでガンズくんと東京ドロンパが4年ぶりの再会です。どうやらガンズくんから何かプレゼントがある様子。


IMG_0850

お客さんの期待を煽り、溜めてから出したプレゼントは


IMG_0852

山雅が経営する喫茶山雅のレトルトカレーでした。


IMG_0853

受け取る東京ドロンパ。


IMG_E0854

そして、二人でポーズです。


IMG_E0855

IMG_0856

並び立つと東京ドロンパのミニマムさが際立ちますね。あー可愛い。


IMG_0862

IMG_0863

FC東京サポーターの方からもプレゼントとが贈られます。手を伸ばして掴む東京ドロンパ。


IMG_0865

中に入っていたのは...


IMG_0866

平成最後の饅頭と令和最初のまんじゅうでした。二人で仲良く写真を撮ります。今、気づいたんですけどこの日の東京ドロンパは子供の日を意識してか兜を頭につけていますね。


IMG_0868

IMG_0870

元気にアピールする東京ドロンパ。


IMG_0872

IMG_0873

テンションが上がれば縦にもなりますよ。ただ、仲良くしていた二人ですが...


IMG_0878

IMG_0879

IMG_0880

ガンズくんが東京ドロンパの饅頭を頂戴したところから二人の小競り合いが始まりました。後ろ姿ですけど、この「待ってよー」ってする東京ドロンパ可愛すぎませんか。


IMG_0881

IMG_0882

IMG_0883


IMG_0885

IMG_0887

IMG_0888

IMG_0889

まあ喧嘩するほど仲がいいということで。


IMG_0891

IMG_0892

袋の中には煎餅も入っていました。小さくつまむガンズくん。


IMG_0894

東京ドロンパに贈られた煎餅は焼き鳥味でしたが、ガンズくんは特に気にしていない様子でした。まあ公式で「好きな食べ物:山賊焼き(共食いだけど、気にしない♪)」とか言っちゃうキャラクターですからね、ガンズくんは。


サポーターの方からのプレゼントはまだまだ続きます。


IMG_0895

袋の中に入っていたのは...


IMG_0897

二人が描かれた飛びだす手紙でした。とても可愛らしくて感動的ですね。このマスコットにかける情熱は見習いたいです。


IMG_0900

IMG_E0903

様々な角度でポーズを取ってくれるのは有難いですね。


気づいたら東京ドロンパソロの写真を撮っていなかったので、ここでいくつか紹介したいと思います。


IMG_0906

IMG_0916

IMG_0917


IMG_E0921

IMG_0922

IMG_0923

平成最後ということで東京ドロンパもはっちゃけ気味です。我ながら臨場感のある写真が撮れたかなと。


IMG_0912

IMG_0914

お客さんからあざといポーズをリクエストされたガンズくん。可愛い悩殺ポーズを披露です。


IMG_0926

11時30分を過ぎて二人の出番もそろそろ終了。ただ、最後の最後まで二人はお客さんを楽しませてくれました。この口を覆う東京ドロンパ魅力的です。


IMG_0927

IMG_0929

何だこのポーズ。


IMG_0930

2人とも楽しい時間をありがとうございました!GWのいい思い出です。














マスコットタイムも終わり、ここからはスタジアムでの楽しみ、スタグルの時間です。

IMG_0733

IMG_0734

まず1品目はロケットチキンさんです。メニュー表と待ち時間が表示されるのはとてもいいですね。山雅やパルセイロでも取り入れてほしいです。11時30分ごろにはFC東京サポーターは先行入場をしていたのか、あまり並ばずに買うことができました。


IMG_0931

手書きで書かれたメニューの中から最小単位の2ピースのフライドチキンライスセットを注文です。



IMG_0933

フライドチキンはしつこくなく爽やかな味わいで、魔法の調味料であるタルタルソースがベストマッチでした。甘辛ソースをかけてもいけますね。硬めに炊かれたご飯も歯ごたえがあって美味しかったです。あと写真はないですけど、このとき小平市出身のシンガーソングライター三ツ矢竹輝さんがステージで歌を披露していました。




続いてのスタグルは

IMG_0934

普段食べられないものを食べようと、イタリア料理のLasagna Italianaさんを選択しました。


IMG_0938

IMG_0937

本場イタリア人シェフが料理してくれるということで期待も高まります。ただ、一人で回しているので提供にはやや時間がかかり、列の進みもちょっと遅かったですね。

進みそうで進まない列で待つこと15分。ラザニアを手に入れました。


IMG_0940

出された瞬間からチーズの豊潤の香りが鼻腔を刺激するこのラザニア。ミートソースとチーズのインパクトが強く、モチモチしたラザニアと合わさってなかなかこってりとした味わい。見た目以上のボリュームがありました。タバスコをかけても美味しそうだなと感じます。




ここまで書いてきてなんですが、実はチケットを家に忘れて来てしまって。なので入場する前に当日券を買わなくてはなりませんでした。ただ、12時15分ごろの正面入り口に一番近いチケット売り場はそこまで並んでおらず、スムーズに買うことができたのでよかったです。ビジター自由席も余裕で残席ありましたしね。


IMG_0941

チケットも購入してあとは並ぶだけでしたが、ゲートから200mを過ぎても入場列の最後尾が見えてきません。どれだけ並んでいるんだと歩き続け、300mほど先の広場内にやっと最後尾を見つけました。


IMG_0942

IMG_0944

このときすでに入場開始から30分ほどが過ぎていました。列も消化されているだろうと高をくくっていましたが、想像以上に山雅サポは来場していて見通しが甘かったです。ただ、並んでからは列はスムーズに動いていて、ストレスを感じることなく入場することができました。それでも15分ほどかかりましたけど。






IMG_0946

味の素スタジアムに入場すると空は晴れ渡っていて、円周上の座席にノスタルジーを感じます。縞模様のピッチは日光を反射して輝いていて、子供たちが楽しそうにサッカーをしていました。前の方には座れる座席がなく、12列目あたりにやっと席を見つけ、座れることができました。


IMG_0949

IMG_0947

それでも少し時間があったので外に出ると、ビジター自由席の近くには山雅のグッズ売場が展開されており、多くの山雅サポが詰めかけていました。何か買いたかったなぁ。


IMG_0950

IMG_0954

IMG_0958

グッズ売場横ではガンズくんが再登場し、サポーターと記念撮影を行っていました。OneSoulポーズがキマってます。


この時、時刻は13時。選手をアップ時から応援するには、再び青赤パークに行くことは叶いません。でも、まだ足りない気分だったのでスタジアムをうろうろしてスタグルを探します。


IMG_0960

最終的に長野にもあるけど、ケンタッキーにしました。オリジナルチキン2ピースと念のためにお茶を注文です。


IMG_0961

普段あまりケンタッキーは食べないんですけど、スタジアムで食べるケンタッキーはまた違った味わいがありますね。行楽的。皮が美味い。


DSCN1618

FC東京のキーパーが登場したのに遅れて、山雅のキーパーも登場しました。






DSCN1620

この日、最初に#16村山選手のチャントを歌った時、歌声が屋根に反響して、サポーターを包み、いつものアルウィンとは違った迫力に、「今日は勝てる」と感じました。やっぱり屋根があるのはいいですね。


DSCN1625

少し遠いけど、フィールドプレイヤーも登場です。





DSCN1631

DSCN1632

DSCN1636

DSCN1646

DSCN1647

DSCN1649




この日のアップ中には、GWのスペシャルプログラムとして、平井大さんのスペシャルライブが催されました。今旬のミュージシャンを呼べるなんて流石首都クラブは違いますね。


DSCN1638

DSCN1640

DSCN1641

場所はメインスタンドとホームゴール裏の間の第4ゲート付近です。真ん中でやるのかと思ってた。


DSCN1642

DSCN1644

この日の平井大さんは「Slow & Easy」と今年の映画ドラえもんの主題歌「THE GIFT」を披露。味スタに伸びのある歌声と、うっとりする演奏が味スタに響き渡ります。生演奏を聴きながらアップを見るのは初めての経験で、素直にいいなと思えました。


DSCN1651

DSCN1654

平井大さんのライブが終わってからは、チーム関係なく会場中から拍手が沸き起こりました。平井大さん素敵な時間をありがとうございました。




では、ここで両チームのスタメンの紹介です。






002

FC東京は前節からスタメンを3人変更。#15久保選手が負傷から復帰し、負傷した#2室屋選手に替わって#6太田選手が今シーズン初のスタメン。大卒ルーキーの#32渡辺選手#20チャン・ヒョンス選手を押しのけての出場です。フォーメーションはオーソドックスな4-4-2。


一方の山雅は負傷の報道もあった#35宮阪選手も無事出場し、前節と変わらない11人で首位に挑みます。フォーメーションは不変の3-4-2-1。










DSCN1658

DSCN1659

選手入場を前に高まるFC東京サポーターたち。


DSCN1660

DSCN1661

DSCN1662

DSCN1665


山雅の選手紹介を終えて、次はホームチームFC東京の選手紹介です。


DSCN1668

DSCN1670

DSCN1671

DSCN1672

DSCN1674

選手紹介の前のVTRで練習の様子を流すのはいいですね。日頃の積み重ねが表れているようで、感動します。


DSCN1676

DSCN1677

DSCN1678

DSCN1679

DSCN1680

DSCN1682

DSCN1683

DSCN1684

DSCN1688

DSCN1689

東京のチームにふさわしいスタイリッシュさ。青と赤で視覚的にも刺激的でした。


DSCN1667

キング・オブ・トーキョー、アマラオの横断幕も変わらず選手を見守ります。





DSCN1692

DSCN1693

FC東京名物の「You'll Never Walk Alone」。でしたが、


DSCN1694

山雅サポーターは県歌「信濃の国」を大声で歌い上げます。私の耳には「信濃の国」の大合唱しか聞こえず、誇り高かったです。でも、合間に聞こえる「ユルネバ」も感動的でした。


DSCN1695

DSCN1701

そして、東京でもタオマフを掲げ、入場曲「中央線」を合唱します。


DSCN1705

DSCN1707

DSCN1712

選手入場が終わり、この日のマッチデースポンサーである東京ガスの会長と、ソシオ会員でしょうか、二人の子供から花束が贈呈されました。


DSCN1713

DSCN1717

コイントスの結果、エンドチェンジがなされます。


DSCN1719

円陣を組んで...


DSCN1721


前半キックオフ!







後編に続く


☆よろしければフォロー&友だち登録をお願いします☆






こんばんは。これです。今朝に引き続き、今回も映画の感想です。


今回観たのは『メアリーの総て』。私が海外の女優で一番好きなエル・ファニング主演で、かの傑作『フランケンシュタイン』を弱冠18歳で書いたメアリー・シェリーを主人公に据えた映画です。去年公開時からずっと観たいと思っていたのですが、長野では公開が遅れまくり、平成も終わるこのタイミングでの公開となりました。もう三館ぐらいしかやってねぇよ。


ただ、個人的には今年観た映画の中でもかなり上位に食い込んでくるぐらい大好きな映画だったので、ここに感想を書いていきたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。




cah






―目次―

・ストーリーについて
・「こうあるべき」への抵抗
・なぜ書くのか





―あらすじ―

19世紀、イギリス。作家を夢見るメアリーは、折り合いの悪い継母と離れ、父の友人のもとで暮らし始める。ある夜、屋敷で読書会が開かれ、メアリーは"異端の天才詩人"と噂されるパーシー・シェリーと出会う。互いの才能に強く惹かれ合う二人だったが、パーシーには妻子がいた。情熱に身を任せた二人は駆け落ちし、やがてメアリーは女の子を産むが、借金の取り立てから逃げる途中で娘は呆気なく命を落とす。失意のメアリーはある日、夫とともに滞在していた、悪名高い詩人・バイロン卿の別荘で「皆で一つずつ怪奇談を書いて披露しよう」と持ちかけられる。深い哀しみと喪失に打ちひしがれる彼女の中で、何かが生まれようとしていた――。
 
(映画『メアリーの総て』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。








※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。








・ストーリーについて


さて、感想を始めるにあたって、『フランケンシュタイン』のあらすじは今更説明する必要もありませんが、いま一度確認です。『メアリーの総て』公式サイトには、


天才科学者フランケンシュタインは研究の末、死体の材料を繋ぎ合わせて人造人間を生み出すことに成功する。しかし、創り上げられたその"怪物"はあまりの醜悪さから、フランケンシュタインに見捨てられてしまう。怪物は人間の理解と愛を求めるが、拒絶され疎外され、やがて恐ろしい復讐へ――。孤独な怪物の愛と哀しみを描いた、不朽の名作。



とあります。この映画最大の見どころは、メアリーと『フランケンシュタイン』の「怪物」とが重なり合っていくという点にあるのですが、そこに関係しているのはやはり「」という実体のないものかと思われます。


「怪物」は創造主であるフランケンシュタインの愛情を受けられませんでしたが、メアリーもまた母親からの愛情を受けられていませんでした。それもそのはず、メアリーの母親はメアリーを産んで亡くなってしまったからです。自らを産んでくれた母親からの愛情が精神の発達に大きく寄与するのはご存知の通りですが、メアリーは父親からの愛情を受けられず、継母からは疎外されてしまっていました。


このメアリーを演じたのが『マレフィセント』などでお馴染みのエル・ファニング。昨年、『パーティーで女の子に話しかけるには』を観て彼女の虜になり、今作も「エル・ファニングが出ているから」という一点のみで観に行ったのですが、まあ今作も素晴らしかった。キレイ。可愛い。美しい。かっこいい。全ての要素を兼ね備えていて、一挙手一投足が魅力的で目が離せませんでした。特に墓場でのシーンなにあれ。蠱惑的すぎるでしょう。


さて、メアリーは強制的に送られたスコットランドで、詩人のパーシーと出会います。演じたダグラス・ブースの色気のあるダメ男っぷりよかったなぁ。メアリーは母親からの愛情を受けられず、家族からも疎外されてしまっていたので、愛情を注いでくれる相手を望んでいたのは想像に難くありません。二人は付き合い始め、パーシーには性に奔放で、妻子がいるにもかかわらず、メアリーと駆け落ちをしてしまいます。自由恋愛という都合のいい甘言を振りかざして。そこにはなぜか義妹のクレアもついて来ます。クレアを演じたベル・パウリーの現代にも通じる嫌な女感よ。




cab





三人は共同生活を始めます。この一連のシーンのエル・ファニングはまさしく恋する乙女という感じで笑顔がキュートでした。ただ、クレアがパーシーと関係を持ったり、メアリーがパーシーの友人のホッグに言い寄られたりで、二人は言い争いをすることが多くなります。ここで、自由恋愛を標榜しているにもかかわらず、パーシーはメアリーには自分のものでいてくれるよう迫り、自分が浮気した時には自由恋愛を持ち出して、メアリーを説き伏せにかかります。うん、クズ男ですね。もちろんメアリーもパーシーに幻滅していきます。


ただ、メアリーは妊娠していて、二人の間にはクララという赤ちゃんが産まれます。クララはメアリーにとって、初めて掛け値なしの愛情を注げる存在であり、彼女の心は満たされていきます。しかし、クララは簡単に死んでしまいます。クララを失ったメアリーは愛の行先を失い彷徨います。生き返ったクララを夢に見るほどに。劇中で死人を生き返らせることに興味を示していたのも、母親とクララを生き返らせて自分を満たしてほしいという思いからですね。


物語は進み、クレアの策略により、三人は著名な詩人であるバイロン卿の家に泊まることになります。トム・スターリッジ演じるバイロン卿は見た目もキマってましたし、キスもドラッグもキメていてインパクトのあるキャラクターでした。バイロン卿とパーシーはポエムの応酬を繰り広げながら、日々は過ぎていき、ある雷雨の夜、メアリーたちはバイロン卿の提案で怪奇話を創作することになります。しかし、ここでクレアが家出。クレアとバイロン卿の関係は壊れ(バイロン卿は「別に愛してなかった」とか言ってた)、さらにパーシーの妻が自殺したのを受けて、三人は再び家に戻ります。この辺りの展開は程よく胸糞が悪くて好きです。


そして、メアリーは『フランケンシュタイン』を書き始めます。「怪物」に自分を投影するかのように筆を進めるメアリー。その筆致は鳥肌ものです。愛を求めて、手に入れて、失って。愛に振り回されたメアリーは自らの孤独と向き合って、自分の言葉を記せるようになります。彼女を「怪物」に変えたのは、自分は愛されない、満たされないという絶望でした。最後の「The End」が書かれた時。彼女の胸の奥からの叫びがダイレクトに届いてきて、胸が締め付けられましたね。ただ、メアリーの本当の戦いはここからでした




cac















・「こうあるべき」への抵抗


このメアリーが『フランケンシュタイン』を書き終えてからの展開が、個人的には超絶に大好きなものでして。まず、メアリーは『フランケンシュタイン』を最初にパーシーに見せるんですよ。読み終えたパーシーの感想が「面白いけど、もっと希望や理想があった方がいい」というもの。物語にプラスの感情を求める、実に大衆的な意見です。「物語とはこうあるべき」という押しつけがましさですね。そんなものないのに。


さらに、持ち込んだ出版社には、本当にメアリーが書いたのかと疑われてしまいます。パーシーが書いたのではないかと。さらに、「10代の女の子が描く物語にはふさわしくない」などと言われて跳ね返されまくり、唯一受け入れてくれた出版社にも、匿名での出版とパーシーの序文を加えるという条件を出されます。


これって、こうあるべきという定められた役割の押し付けじゃないですか。「女の子は暗いこと、難しいことは考えず、明るく振舞っていればいい」みたいな。ジェンダーロールの強制ですよ。そして、この極端に言えば性差別的な振る舞いはパーシーとバイロン卿に多く見られます。パーシーはメアリーに自身の所有物でいることを迫ってますし、パイロン卿は「女は賢くないから自分の詩が理解できない」という直接的な物言いをしています。これを受けてメアリーは「男が血に飢えた怪物に見える」と言ってますしね。


ただ、メアリーはこれに反抗して『フランケンシュタイン』を書いたんですよ。「怪物」を被差別対象に描くことで自らとリンクさせ、そして物語の中で復讐をしていく。これは、男に差別され抑圧されてきたメアリーの復讐でもあるじゃないですか。差別への抵抗を『フランケンシュタイン』に委ねたものの、支配的な男からは認められない。そんな孤独の最中でも戦うメアリーの姿がとても勇ましく見えます。エル・ファニングの見た目のかっこよさと合わさって、感情移入は今年一番ぐらいにしたかもしれないです。もう大好きですね。




cae















・なぜ書くのか


この映画を観て感じたのが、「私は満たされない人間が好き」だということです。正直、私って満たされている(ように見える)人間って好きじゃないんですよ。この世の春を謳歌しているような人間よりも、日陰者の方が好きで。これは物質的にではなく、精神的にという意味です。心のパーツがどこかかけている人間の方が、個人的に身近に感じるんですよね。そして、この映画には精神的に満たされない人間ばかり出てきました


ビッチでリアルな嫌味のあるクレアも、自分の性欲に従順なパーシーも、いろいろキマっているバイロン卿も、みんな駄目なところがあって、心に孤独を抱えていました。孤独だからこそ繋がりたいと思って愛情を求めるんですよね。それが見えたので、私は彼ら彼女らをどうしても嫌いになれません。フランケンシュタインから見捨てられた「怪物」と根っこの部分では変わっていない。


そして、クレアが「『怪物』を自分のことだと思う人間は、あなた(メアリー)が想像するよりずっと多い」と言っていたように、満たされない人間って案外多いんですよ。いや、心から満たされている人間なんてこの世に一人もいないかもしれない。満たされたいから、物を求め、友人を求め、愛情を求める。これら人間の営みを『フランケンシュタイン』は描いているから、200年もの時を超え、未だに読まれているのではないでしょうか。


私が思うに、人間が文章を書いたり、絵を描いたりして創作するのって「満たされたい」からなのではないかと。充足を求めて、満たされたくて、それでも満たされない思いを作品にぶつける。「満たされなさ」は最強のエネルギーで、創作にはなくてはならないものです。もし完全に満たされてしまった時、人は創作することを辞めてしまうのではないかと思えます。


それに多分、物語って満たされない人間の願いであり、祈りなんですよ。ままならない現実を克明に書きつけ、主人公を満たされない存在に設定し、最後には満たされていくように物語を進める。このタイプの物語は満たされない自分への赦しであり、救いですよ。自らを充足させて、辛い現実に立ち向かうエネルギーを得る。物語が生きる糧となっているのです。




caf




また、創作の大きなメリットとして、作品は残るというのがあります。「自分」をどう残すのかは、人類にとって永遠の課題。きっと、自分が生きた証を書くことでしか残せない人種がこの世にはいて、そういう人たちが、文を書いているのではないでしょうか。そして、愛されたいという欲求を満たせなかったメアリーもこの人種でした。


でも、メアリーには『フランケンシュタイン』を匿名で出すことしかできなかったんですよね。自分を世の中に認めてもらえないという絶望。バイロン卿と一緒にいたDr.ポリドリの書いた『吸血鬼』が、バイロン卿本人も自分で書いていないと言っているにもかかわらず、世間にはバイロン卿が書いたことにされているという現実が、自分を残せないという残酷さをより突きつけてきます。


それでも、この映画の最後から二番目のシーンは『フランケンシュタイン』の作者がメアリーと記されているというシーンでした。暗く胸糞も悪い物語ですが、最後に自分の名を残せた、自分の存在を確認することができたという希望のあるラストを迎えていて、メアリーの苦労が少しでも報われたようで感動しましたね。




cag





多分、このブログも読まれないでしょう。今公開しているのが三館のみということで、まあ10PVもいかないんじゃないかな。それに、私が5月1日~3日にかけてnoteで出そうとしている小説(?)も、読まれることはないと思います。あの、凄惨な事件で死んだ人の葬式に多くの人が押し掛けるという話で、善意や正義の暴走を書こうと思ってるんですけど、こんなの誰も興味ないですよね。認められたい、満たされたいですけど、誰も満たしてくれないのは目に見えていて。


でも『メアリーの総て』を観て、「創作には満たされないことが大事」と再確認することができましたし、これで読んでもらえれば嬉しいですけど、読んでもらえなくても「満たしてくれなくてありがとう。これで次も書けます」って受け入れられるような気がします。メアリーが『フランケンシュタイン』を書くシーンを観て、創作意欲が湧いてきましたし、趣味で創作をしている人は、ぜひ観ておくことをオススメします。心に火をつけてくれますよ。劇場公開はもうほとんどないですが、DVD/Blu-rayは6月4日発売ですので、機会があればどうぞ。




cad















以上で感想は終了となります。『メアリーの総て』、もう上映館もないので、観てくださいとは気軽に言えませんが、いい映画なので6月4日発売のDVD/Blu-rayをレンタルして観てみてください。オススメです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい


メアリーの総て [Blu-ray]
エル・ファニング
ギャガ
2019-06-04



☆よろしければフォロー&友だち登録をお願いします☆







こんばんは。これです。もうすぐ平成も終わりますね。あと3日。悔いなく新しい元号を迎えたいものです。


それはさておき、今回のブログは映画の感想です。今回観た映画は『バースデー・ワンダーランド』。『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!オトナ帝国の逆襲』の原恵一監督の4年ぶりの新作です。世間は『アベンジャーズ:エンドゲーム』一色の中、張り切って観てきました。


で、観たところ面白いのはもちろんなんですが、かなり攻めてるなと感じました。なので、これ空感想を書いていきたいと思います。前半ネタバレなし、後半ネタバレありです。相変わらずまとまっていませんがお読みいただければ幸いです。では、よろしくお願いいたします。





bzg






―目次―

・観ていて楽しい!
・キャラが可愛い!
・アカネと王子について
・今作で描かれた成長とは






―あらすじ―


誕生日の前日――自分に自信がないアカネの目の前に突然現れたのは、謎の大錬金術師とその弟子の小人。「私たちの世界を救って欲しいのです!」と請われ強引に連れ出されたのは、<幸せ色のワンダーランド>!時空を操るクモやまん丸でモコモコの羊、巨大な鳥や魚と、アカネたちとそっくりな人達が暮らすその世界は、失われる危機に瀕していた…。自由奔放な叔母のチィと共に一生に一度きりの、感動の冒険が始まる。

(映画『バースデー・ワンダーランド』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。










・観ていて楽しい!


まずは、この映画の予告編をご覧ください。







この予告編からでも分かる通り、『バースデー・ワンダーランド』の最大の魅力はそのビジュアルにあります。魅力的なビジュアルの中でも特に顕著だったのが自然の描写。この映画はアカネの家の花畑シーンから始まるんですが、その花々が生命力に満ち溢れていて瑞々しく、いきなりいいインパクトを与えてくれます。その後のアカネが自転車でチィの店に向かうシーンも、なんてことない河川敷を繊細に描いていて、明るい音楽とともに気分を盛り立ててくれます。


そして、黒い空間に光沢を持った白い糸が輝く神秘的な空間を経て、アカネとチィはワンダーランドへと突入します。そこにあったのは自分たちの世界よりも鮮やかな世界。原色の赤い花が咲き誇り、純白のデカい羊たちと見事なコントラストを醸し出しています。二人が着いたケイトウと呼ばれる町も中欧のような街並みで落ち着きます。その一方で、敵であるザン・グとドロボの住むニビの町の退廃的な雰囲気も良かったですし、溶鉱炉のうねりの描き込みと言ったらなかったですよね。ゾクゾクしました。


二人と案内人のヒポクラテス。それに、超可愛い小人のピポは平たく言えば町を守るために、市街地のサカサトンガリで行われる市場を目指します。ここから物語はロードムービーのような様相を呈していくのですが、この旅がとにかくワクワクするものでして


銀杏の黄色い紅葉が映える秋の風景。赤みがかった砂漠に吹く砂嵐。それを乗り越えた夜に見られる星空。しんしんと積もる雪。朝日を浴びたり、水中で魚と戯れたり。絵本のページを捲るかのように次から次へと印象的な画面が映し出され、童心に帰って楽しむことができます。個人的に鳥肌が立った場面もいくつかあるので、これはぜひとも映画館の大スクリーンで味わってほしいところです。




bzi





さて、ビジュアルが力強いこの映画ですが、人物も負けてはいません。この映画で話題になったのが、ロシア人イラストレーター、イリヤ・クブシノブさんをキャラクター/ビジュアルに起用したことなんですが、この起用は大成功を収めていたと思います。黒目の奥に小さな赤い丸が映る目は、注目すべきもので人物の存在感を際立たせるのに寄与していましたね。また、やや高めの頭身は絵本のようなワンダーランドの中では程よく浮いていて、画面を引き締めていました。最初はその特徴的なキャラデザにハッとするかもしれませんが、すぐ慣れるので心配なさらずに観てほしいです。




あと、この映画って音楽もいいんですよ。アカネが自転車をこぐシーンの明るい曲から、ゲーム『不思議のダンジョン』シリーズのような曲(分かるかな、これ)。ハードロックにクラシックまでバリエーションも多彩です。miletさんの挿入歌も一番カタルシスを得られる場面を感動的に盛り上げてくれましたし、『オトナ帝国』もそうでしたけど、原監督の音楽を映像に合わせるセンスが冴え渡っていて、映画体験をより楽しいものにしてくれていました。




bzb













・キャラが可愛い!


この映画ってキャラクターが可愛いんですよ。主人公のアカネは「できっこない」が口癖(というわりには一回も言ってなかった気がする)の臆病なキャラクターですが、いきなり救世主に指名されて戸惑っている姿が可愛かったですし、ワンダーランドに適応していく過程も見どころ満載でした。声優を務めたのは今作がアニメ映画初出演の松岡茉優さんです。正直、予告編を見たときはちょっと怪しいなと思ったんですけど、本編だとそんなことは全くなくて。アカネの変化を上手く演じていた印象です。まあ本業の声優さんに混じるとどうしても浮いてしまう部分はあったんですけど、目くじら立てて非難する類のものではないかと。


そのアカネの正反対にいたのが、叔母のチィです。アカネとは違い好奇心旺盛で、ワンダーランドへの適応も早く、様々なものに興味を示しては、キュートに映画を盛り上げていました。煮え切らないアカネの一方でこのチィの明るさが映画にもたらした効果は計り知れないですね。言葉巧みに男を騙したり、チータラで猫を手なずける魔性っぷりもよかったです。声を当てたさんもはまり役で、快活さが弾けていて好印象です。


大錬金術師のヒポクラテスも堅物さが逆に愛おしかったですし、中盤である姿に変えられてからは笑いどころも豊富で身近に感じられるようになっていました。もっこもこの防寒着を被ってる姿にはギャップがあって可愛かった。声を当てた市川正親さんもミュウツーと比べて優しげな話し方を心掛けていて、それが暖かくてよかったです。


そして、それらを凌駕するほどの可愛さだったのが、ヒポクラテスの弟子の小人のピポ。前述しましたけど、超可愛いんですよ。小さくて一生懸命で爽やかな少年ボイスにキュンキュンしまくりでした。主に説明役も担ってたんですけど、その可愛さから世界観もスッと入ってきて、理解を助けてくれました。声優の東山奈央さんも、先日声優アワードを受賞しただけあってさすがの演技でしたし、今作のMVPだと思います。ずっと可愛らしくて仕方なかったです。


で、ネタバレですが映画の終盤に小人がもう一人増えるんですよ。その前から独特の口調が可愛らしかったキャラなんですけど、小人の姿になってピポと絡んで、もう言語化不能の可愛さ。二条以上の破壊力を持って、私の精神を揺さぶってきましたね。二人で人参を持ってジャンプするところなんて悶え死ぬかと思いました。あれは来ます。


他にもイリヤさんがデザインしたキャラクターは、全員が押し付けてこない暖かみがあって可愛いですし、本当に観てほしいなって思います(語彙の喪失)。子どもも大人も楽しめてオススメですよ。




bze















※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。








・アカネと王子について



アカネはあらすじにもあるように自分に自信がないキャラクターです。それがよく表れていたのが冒頭の学校でのシーン。アカネは友達とヘアピンをつけて登校する約束を交わしていました。しかし、そのうちの一人が聞いていなかったという理由でヘアピンをつけ忘れて来てしまいます。その子はアカネに助けを求めますが、アカネは助けずに帰ってしまいます。ここで重要なのが同調圧力と役割。アカネは友達と思われる女の子たちのヘアピンをつけようという同調圧力に勝てず、これは自己が希薄な状態です。そして、「友達の一人」という役割を半ば強制されていて、それに抗えないでいます。このことが映画の後半で重要な意味を持つと感じました。


ヒポクラテスが救世主に指名されたアカネ。当然嫌がりますが、ヒポクラテスに「前のめりの錨」をつけられ、後ろ向きな気持ちを封印されてしまいます。そして、ワンダーランドへ入ったアカネ。様々な経験を経た後に、敵であるザン・グと一対一の場面を迎えます


実はザン・グにはワンダーランドの王子で、シズクギリという儀式に反抗して城を離れたとバックボーンがありました。シズクギリは王族が代々行ってきた儀式。いわば、これは大人になるための通過儀礼とも見ることができます。ザン・グはシズクギリの舞台である井戸を破壊しようとしましたが、アカネはこれを食い止めようとします。「井戸を壊せたらあなたの怒りは消えるの?」「私もシズクギリを手伝う」。このアカネの阻止により、ザン・グは元の王子様に戻ることができました。つまり、これは王子が大人になるということを受け入れたということ。それを成し遂げたのはアカネの精神的成長。それが如実に表れていたと思うのがその次のシーンです。




bzd




このシーンでは、アカネと王子は光を放つ虫、名付けてヒカリムシ(そのまんま)を籠から逃がしています。ここで先の同調圧力と役割が意味を持ってくると個人的には捉えていて。ヒカリムシは光る役割を期待されていた虫。また、光を放つという同調圧力から逃れることは彼らにとって死を意味しています


王子はシズクギリを行う役割を期待されていて、その同調圧力に耐えきれず逃げ出してしまったというキャラクター。そして、アカネも同じ。それを象徴していたヒカリムシを逃がしたということは、二人が役割と同調圧力から解放されたいという思いがあったのかなと個人的には思えます。しかし、王子はシズクギリの役割から逃れられず、アカネも緑の風の王女という役割を担っています。逃れたくても逃れられないのは残酷ですね。しかし、以前と違うのは二人とも自らの意志で、役割を担っているということ。勇気を出したアカネに触発されて、王子も前向きになれて、結果としてシズクギリは成功。ワンダーランドは救われました。


そして、映画の最後にアカネの行動は、実は前のめりの錨によるものではなく、自らの意志や勇気によってなされたものだということが明かされます。自らの意志で成長したアカネ。勇気や意志をもって困難に立ち向かっていくアカネの姿に、きっと多くの人が共感を覚えることでしょう。アカネに感情移入していて一体化していればなおさらです。アカネの成長を自らの成長のように感じられ、前向きな気分で映画館を後にできることでしょう。まさに、世界が違って見える、です。




ただ、このような精神的成長を描いた作品というのは世の中に溢れかえっています。10代を主人公にするとすれば、精神的成長は欠かすことのできない一番のファクターです。成長を描いた作品は一定の満足感を得られますが、『バースデー・ワンダーランド』は、さらにその一歩先に行く取り組みをしていると感じました。それは肉体的成長です。




bzf














※ここからの内容はあくまで個人的な解釈になります。そのつもりでどうぞ。









・今作で描かれた成長とは


観終わった後、私は「『バースデー・ワンダーランド』は壮大なようで、実はささやかな営みを描いているのではないか」と考えました。それは肉体的成長。多くの人が経験したであろう初体験。もっと直接な言葉で言えばセックスです。「『バースデー・ワンダーランド』はファンタジー世界を表層に、思春期の女の子の初めてのセックスを描いた作品である」というのが私のこの映画に対する見解です。


映画を観ていて初めてその思いが芽生えたのが、アカネと王子様の二人がシズクギリに行く場面。厳かな装いをした二人に「え?何これ?初夜?」って感じてしまったんですよね。で、その後のヒポクラテスの「シズクギリは代々命を繋ぐ大切な儀式」みたいな説明があって、「やっぱり初夜じゃねーか」と確信に変わっていきました。そう思うとこの映画を別の意味で考えられるようになっていきます。




bzc




まず、ワンダーランドとは何か。これについて私は二つの説が考えられると思います。まず、一つ目がアカネの脳内説。ワンダーランドがあんなに鮮やかでファンタジーに満ちていたのは、アカネの幼さ、無邪気さを表していたと感じたのが理由の一つ。ワンダーランドが色を失っていっていたのは、アカネの大人になっていくという不安であると考えたのがもう一つの理由です。私たちはアカネの脳内を覗いていたというのがこちらの考え方です。


そして、もう二つ目がアカネの体内説。まず、ワンダーランドの通行口は二つですし、二つはとても離れているということ。シズクギリという行為を行った後に、近くに出口があったこと。体内の細胞は恐るべき速さで新陳代謝を繰り返し、次々と入れ替わっていく。いわば体の外よりも変化が激しく、ワンダーランドの住人はアカネの細胞だったのではないか。あの旅は臓器を巡っていて、最後に子宮に辿り着いたのではないかというのがこちらの考え方です。まあ実際はこの両方をミックスしたものではないかと私は思いますけどね。頭と体の両方を網羅した不思議な世界があのワンダーランドだったという解釈です。




また、この映画で印象的だったのがチィの存在です。チィはワンダーランドをズケズケと冒険していましたよね。初めてのセックスに不安を覚えるアカネとは対照的に。これはチィが経験者であるということを表しているんじゃないかと思います。だって、あの雰囲気に橋の上での会話から、そうであるとしか考えられないじゃないですか。ヒポクラテスに却下されたのも、初めてではないからでしょうし。チィはアカネの先をいく存在としてこの映画では描かれていたのもそれを裏付けるかと。




さらに、考えたいのがシズクギリについて。「代々命を繋ぐ儀式」とだけあって、まあ言うまでもなくセックスですよ。シズクギリが失敗したと見せかける展開あったじゃないですか。それで王子が井戸に身を投げて、アカネはそれに抱き着いて。で、井戸の底には白髭のおじさんがいるんですよね。王子が覚悟を示したとかで、地上に戻ってシズクギリは無事成功します。


はい。初めてのセックスって成功したか失敗したかなんてよく分からないじゃないですか。ビデオでは見てるけど、そもそも成功の定義が分からないですし。たぶん王子の前に現れたのって王子の父親ですよね。彼が認めたってことは、セックスが成功したということを表してるんじゃないかなと。これでお前も命を次に繋いでいけるなという感じでしょうか。




bzh




ワンダーランドから戻ってきたアカネとチィ。二人は事後のようにぐったりとしています。ここでアカネが自転車をこいで家に帰るというシーンがあるんですが、ここの風景が冒頭のシーンから少しぼかされているんですよね。初めてのセックスって大人の階段を一気に登る行為じゃないですか。比喩じゃなく経験した前と後じゃ世界が一気に違って見える。アカネが一つ大人になったということを如実に表しているシーンです。アカネへの誕生日プレゼントは「初体験」でしたね。いや、知らんけど。




そして、この映画は極めて重要な終盤のシーンを迎えます。アカネが家に帰ると母親のミドリがいました。アカネは帰って来るやいなやミドリに体を寄せます。そこでのモノローグが「いつもよりお母さんを感じた」。初体験を経て、自分も母親になるかもしれないという実感が沸いてきてのモノローグですからね。この映画のミソですよ。


映画の中で明言はされていませんが、王子の部屋の画やアカネの部屋のマットから、600年前にワンダーランドに現れた緑の風の女王というのはミドリで確定的です。アカネを産んだのはミドリですし、そのミドリも同じ初体験をしていたというのが大切で、ここに脈々とつながる命のリレーのようなものを感じます。きっとアカネの子供もワンダーランドに行き、その子供もまた行くんでしょうね。そうやって命が繋げられていく。そんなことを思ったラストでした。




ここまで見てきたように、あくまで私はこの映画は初体験の話だと考えているんですが、初体験って非常にデリケートなテーマじゃないですか。タブーの匂いがするし、引火性もあります。でも、それは命を次につなげていくためには必須のステップ。初体験を肯定的に、ここまで鮮やかで爽やかに描いた作品というのはそうそう見られるものではありません。この点において、『バースデー・ワンダーランド』は非常に意義のある作品だと個人的には思います。原監督めっちゃ攻めてますね。凄いです。




bza
















以上で感想は終了となります。最後は突っ込んだ話になりましたが、『バースデー・ワンダーランド』、色彩も鮮やかで展開も楽しいので幅広い方々にお勧めできる映画です。『アベンジャーズ:エンドゲーム』を見た後でもいいので、よろしければ観てみてください。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい





☆よろしければフォロー&友だち登録をお願いします☆







こんばんは。これです。もうすぐGWに突入しますね。GWは大作映画が目白押し。そのなかでも最たるものはやはり『アベンジャーズ:エンドゲーム』でしょうか。私はアベンジャーズについていけていないので、多分見ないとは思うんですが、どれほどの話題になるかは楽しみです。


そんな今回のブログも映画の感想になります。今回観たのは同じアメコミでもDCの『シャザム!』。公開前からいろいろと話題になっていた映画です。今回、『キングダム』や『響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』と迷った末に観たのですが、観たところ、映画面白かったです。ただ、私のようなものにはキツい映画ですね。人を選びそうです。


では、それも含めてここから感想を始めたいと思います。後半暗くなってしまいましたが、今回もお付き合いいただけると幸いです。では、よろしくお願いいたします。




bya





―目次―

・良かったところについて
・「家族」や「仲間」といった優れたテーマ
・ただ、受け入れられない




―あらすじ―

身寄りのない思春期ど真ん中の子供、ビリー。ある日突然、彼は魔術師からスーパーパワーをゲット!
シャザム!」それは最強でサイコーな魔法の言葉!これを唱えれば筋肉ムッキムキ!稲妻バッキバキ!のスーパーヒーローに変身できるのだ!ヒーローオタクのフレディといっしょに、悪ノリ全開!止まらない!そんなスーパーパワー絶賛ムダづかい中のビリーの前に、科学者Dr.シヴァナが現れる。
手に入れたスーパーパワーのために、フレディがさらわれてしまう…
ビリーはついにヒーローとして目覚める!

(映画『シャザム!』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。








※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。







・良かったところについて


まず、この映画の最大の特徴としてはノリが軽いことが挙げられると思います。吹替の監修に福田雄一氏を起用したことにも表れているように、とにかく登場人物の喋る言葉が現実と変わりません。映画的な飾りは全くなく、死ぬほど日常的な会話がなされます。それでも、短いセリフをポンポン重ねたり、少し捻ってみたりと、セリフ回しが面白く、思わず微笑んでしまうほどでした。ヒーロー名の命名にあーだこーだいうシーンが特に面白かったですね。あ、俗に言われる福田節というのは、最後のサンタを除いてそんなにはなかったと思いますよ。菅田将暉さんの吹替も言われるほど悪くはなかったですしね。まあ本職の声優さんに混ざると流石に浮いてしまっていましたけど。
 

また、この映画のコンセプトとしては「もし14歳の少年がヒーローの力を手に入れたら?」ということなんですが、14歳と言ってもまだまだ心は子ども。見せびらかしたくて仕方ないでしょう。それはビリーも同じことで、グループホームの住人であるフレディと共に、たくさんの動画をアップしています。飛んでみたり、瞬間移動を試してみたりと、古今東西のヒーローに見られる能力を検証した動画がテンポよく積み重ねられ、しかもここで流れるのが、先頃のフィーチャーも記憶に新しいQUEENの「Don't Stop Me Now」。とにかく軽快で、童心に帰って楽しむことができます。


他にも、早退するのにシャザムの姿を使ったり、オッパブに行って5分で金がなくなったりとコメディシーンが満載。特に劇場内(5人)がウケていたのが、スーパーでのシーン。シャザムとなったビリーが銃弾の球をポンポンと跳ね返す描写に、後ろの3人組は声を漏らして笑っていました。コメディシーンに行くまではやや長いですが、それでも笑える人にはたくさん笑える映画でしたね。とにかく、海苔を軽くして笑いを入れて間口を広くして、人に勧めやすくしてもらおうという狙いは成功していたように思えます。




byb




また、ヒーロー映画の大きな見どころであるアクションも『シャザム!』にはたっぷり盛り込まれています。こちらも、ビリーが少しずつ覚醒していくという物語の性質上、エンジンがかかるまではやや長いのですが、それでも終盤にある展開を迎えてからは、ほとんど全編がアクションのようなもの。スピードにパワーに飛行に稲妻にと、バリエーション豊かなアクションで観客を楽しませてくれました。


さらに、意外に思われるかもしれませんが『シャザム!』にはホラー要素もあります。そのホラーの9割を担っていたのが、今作のヴィラン・Dr.シヴァナが繰り出す七つの大罪をモチーフとしたモンスター。黒めの灰色に隆々とした毛のない肌が、たいへん気持ち悪く、目の小ささや口の大きさに恐怖を感じます。父親の会社の会議室で、初めてモンスターを解き放つシーンはまさに阿鼻叫喚。頭を丸かじりしたり、ちぎっては投げたりとグロテスクな行為が重ねられ、ぼやかされたガラス戸越しに見せることでより恐怖を演出してきます。終盤はこのモンスターたちが大体の時間出ずっぱりなのでとても楽しかったです。びくっとはしたものの、この映画で個人的には一番笑顔になったシーンですね。




byc













・「家族」や「仲間」という優れたテーマ


『シャザム!』のテーマとして挙げられるのが、「家族」や「仲間」といった人との繋がりです。予告編のコミカルな印象とはうって変わって、本編ではドラマパートに多くの尺がつぎ込まれていました。


『シャザム!』の主人公、ビリーは両親から離れて育った孤児でした。カーニバルで母親からはぐれたまま離れ離れになってしまい、それ以降は里親の下を転々とする生活を続けています。ビリーは実の母親を探し回っていますが、見つからずじまいです。


里親の下から何回目かの脱走をした後、ビリーはグループホームに預けられます。このグループホームはぐうの音も出ないほどの聖人夫婦が運営していて、フレディ、ダーラ、メアリー、ユージーン、ペドロと、ビリーと同じ孤児たちが暮らしていました。


ビリーは怪しい魔術師からシャザムの力を貰い、ヒーローオタクのフレディとともに、前述の通りバカやったりしています。自業自得で人を殺しそうになったビリーはフレディと喧嘩をして、Dr.シヴァナに目をつけられ攻撃を受けます。ここでビリーはただただ逃げ回ることしかできませんでした。このことがきっかけとなり、グループホームのメンバーも巻き添えを食らい、Dr.シヴァナに人質に取られ、決戦に突入していくわけですが、注目したいのはこの前のシーンでビリーが実の母親に会うことができているということです。




bye




実の母親と再会を果たしたビリー。母親はビリーが訊ねてきたことに複雑な表情を見せます。母親はカーニバルのあの日、自分ではビリーを幸せにすることができないと、自らビリーの元を離れていました。母親に言わば捨てられたという事実を知り、ショックを受けるビリー。奥では別の男の乱暴な声。ビリーはせっかく会えた母親の元を離れていきます。血で繋がっている家族関係がビリーの意志で断たれたというシーンでした。


そして決戦。ここで予想外だったのが、孤児5人もシャザムの力を貰うということです。ヒーローは孤独なものという定説を覆したこのシーンは、ビリーと5人が本当の仲間になり、絆が芽生えたということを表しているかと思います。同じ目線に立てたとでも言いましょうか。ビリーが5人を真の意味で受容したシーンですね。5人の協力もあり、事態は収束。ここで素晴らしかったのは、ビリーがDr.シヴァナを、フレディがいじめっ子を助けているということ。罪を憎んで人を憎まずという健全な精神が宿っていて、この決着のつけ方は好みです。


物語はいよいよラストシーン。それまで食事の際に手を重ねるという儀式に参加しなかったビリーですが、ラストシーンでは自ら最初に手を差し出しています。そして、言った言葉が「ここには長くいそう」。血の繋がりよりも精神的な繋がりを選んだビリー。精神的な繋がりこそが大事という強いメッセージを感じます。これまで居場所がなかったビリーが最後になってようやく自分の居場所を見つける。これは多くの人の共感を呼ぶことができ、まさしく万人受けする展開といえるでしょう。描きようによってはいくらでもシリアスにできるこの展開を、『シャザム!』は重くなりすぎることなく描き切った。不真面目なようで、実は優等生のような正しい映画でした。評価が高いのも頷けますね。




byf













・ただ、受け入れられない



『シャザム!』は映画としては素直に面白かったんですけど、同時にこの映画は激しく人を選ぶとも思ったんですよ。それは俗な言葉ですが、陽キャと陰キャの違いです。陰キャで、しかも誰ともつるむことなく、映画館にもいつも一人で行く。そんな私にとって『シャザム!』はとてもツラい映画でした。


この映画で描かれた「精神的な繋がりが大事」というメッセージ。家族や仲間が大事というテーマ。これは、古くからみられる普遍的なテーマです。少年漫画に始まり、青春小説やバディものの映画など、このテーマが柱に据えられた作品は枚挙に暇がありません。最近だと同じアメコミの『スパイダーバース』がそうだったでしょうか。今度の『アベンジャーズ』もきっとそうなんだろうなぁ。


そして、これらのメッセージ・テーマが正しいことには疑いの余地はありません。人は一人では生きていくことができない。人と人の間にいるから人間。暴力的なまでの圧倒的な正しさです。でも、それだとぼっちはどうなるんですか精神的な繋がりを結べる相手がいないぼっちは正しくない、間違った人間ですか


私は、紛うことなきぼっちです。周囲に人はいますが、他人を怖がって、心の底では誰も信用していません。でも、分かっているんですよ。友達がいる方が正しいって。みんなでワイワイ、それがあるべき人間の姿なんだって。でも、正しいからこそ受け入れられないんですよね。自分を否定することになってしまうので。自分を見失ってしまい、形もなく崩れていく。残るのは塵のみ。それがたまらなく嫌なんですよ。


一方、ヴィランであるDr.シヴァナもまたぼっちでした。父親から「簡単に人を頼るな」と教えられ、心の底から信じられる人はいません。まさに、私と同じで映画中ずっと近しいものを感じていました。そして、それは終盤の展開で決定的なものになります。




byd





Dr.シヴァナは七つの大罪のうち、6つのモンスターを召喚していましたが、残りの一体は召喚しないままでした。それは妬みです。ビリーとDr.シヴァナは対照的な存在で、ビリーには家族はいないけど精神的な繋がりはある。Dr.シヴァナには家族はいるけど精神的な繋がりはない。精神的な繋がりを結べる相手がいること、それが全員シャザムとなったことで可視化されたことに、Dr.シヴァナは深い嫉妬を抱いていました。これは同じくぼっちである私の感情と呼応しています。私も、ビリーに映画が進むにつれて嫉妬を抱くようになっていました。


しかし、ビリーはこの妬みを弱弱しい存在だと断じます。小学生みたいな煽り文句で、Dr.シヴァナの妬みを引き出す。そして現れた醜い妬みのモンスターは、私の嫉妬をも可視化したものでした。ビリーはシャザムに変身する際の雷で、妬みを退治します。それはとても雑なやられ方で、私はたいへんなショックを受けました。


なぜかというと、妬みや嫉妬が人間にとって必要な感情だからです。というか七つの大罪全てが人間にとって必要なものです。暴食色欲怠惰は分かりやすいですよね。どちらも人間の根源的な営みです。高慢は英語でpride。これを再翻訳すると自尊感情。自尊感情のない、自分を大切にできない人間は悲惨です。人間の欲が歴史を動かしてきたという意味でも強欲は必要ですし、憤怒も怒ることは時として有意なコミュニケーションになりえます。


そして、嫉妬。これは羨望、憧れと強い関係があります。どちらも他者との関係から成り立っていますし、あなたが嫉妬している人を思い浮かべてほしいのですが、そこには「ああなりたい」という憧れが多分に含まれているはずです。「ああなりたい」という正のエネルギーが、歴史的な技術革新(と罪深い戦争)をもたらしたのは自明の理。嫉妬が人間を前に推し進めてきたのです。


しかし、『シャザム!』では、この嫉妬が正しさによって捻り潰されてしまいました。ビリーとDr.シヴァナが戦うシーンで、バットマンとスーパーマンのおもちゃで遊ぶ男の子が登場しました。この男の子はビリーに対して憧れを抱いていたはずです。でも、その憧れをも正しさの稲妻は消滅させてしまっています。純粋な憧れを踏みにじる。ヒーローとしてあるまじき行為ではないでしょうか。それもひどく雑になされたことにより、「面白いけど、受け入れられない」というこの映画に対する私の評価は決定的なものになってしまいました。


そりゃ正しさにはいろいろありますし、孤独を正しさとする人も中にはいるでしょう。でも、精神的な繋がり、一文字で言えば。その形成に囚われている私からすれば、『シャザム!』は陽キャのウェイのような押しつけがましさで、正しさを突き付けてくるように映ります。


でも、たぶん『シャザム!』は精神的な繋がりを持った人向けの映画なんですよ。声を上げて笑って、熱くなれる人がこの映画の正しいターゲットで、私はそこに選ばれませんでした。なので、同じようにぼっちで観に行こうとしている人には、もしかしたらダメージを受けるかもしれないということは言っておきたいです。




これは余談なんですが、シアター内で私の後ろにまさに『シャザム!』のメインターゲットみたいな人たちがいたんですよ。3人連れでヘラヘラ笑って、エンドロールが終わってないのに喋り出して。で、映画が終わった後に自分の椅子の下を見ると、買った覚えのないポップコーンが二粒あったんですね。これはもしやと思い、一列後ろを見てみると床にポップコーンが散乱していて。一度見ちゃったからには見逃すわけにもいかず、一粒一粒拾ってたんですけど、その時には「正しさって何なんだろう」って思いましたね。友達がいても、床にポップコーンを散らしたまま平気な顔で帰れる人間が、本当に正しい人間なのかなって。そんなことを考えた夜でした。




byg














以上で感想は終了となります。最後は塞ぎ込んだ話になってしまいましたが、『シャザム!』が笑える楽しい映画ということには間違いはないので、ぜひともご家族ご友人をお誘いあわせの上、映画館に足を運んでもらえればと思います。一人でもいいですけど、くれぐれも注意してくださいね。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい


シャザム! :魔法の守護者(THE NEW 52! ) (DC)
ジェフ・ジョーンズ
小学館集英社プロダクション
2015-02-07



☆よろしければフォロー&友だち登録をお願いします☆




このページのトップヘ