こんにちは。これです。早いものでもうすぐ2019年も終わり。そろそろ年間ベスト10を決める時期になりました。私もただ今考え中です。年を越すまでには発表したいと思うので、そのときはまたよろしくお願いしますね。


さて、今回のブログもいつも通り映画の感想。今回観た映画は『カツベン!』。『Shall we ダンス?』の周防正行監督の5年ぶりの最新作です。私が好きな俳優の一人である成田凌さんが主演を務めているということもあり、公開初日に観てきました。


では、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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―目次―


・キャストが濃ゆい!
・活動写真は良いけどストーリーは……。
・『ニュー・シネマ・パラダイス』だよこれ!
・この映画自体が活動写真的なのかもしれない





―あらすじ―

子どもの頃、活動写真小屋で観た活動弁士に憧れていた染谷俊太郎。"心を揺さぶる活弁で観客を魅了したい"という夢を抱いていたが、今では、ニセ弁士として泥棒一味の片棒を担いでいた。そんなインチキに嫌気がさした俊太郎は、一味から逃亡し、とある小さな町の映画館〈靑木館〉に流れつく。靑木館で働くことになった俊太郎は、"ついにホンモノの活動弁士になることができる!"と期待で胸が膨らむ。しかし、そこには想像を絶する個性的な曲者たちとトラブルが待ち受けていた!俊太郎の夢、恋の運命やいかに・・・!?

(映画『カツベン!』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをごらんください。











・キャストが濃ゆい!


時は1915年。この映画は白黒の画面から始まります。子供たちが走って映画の撮影現場を見に行く。音もなく台詞も画面に表示されるのみです。そして、『カツベン!』のタイトルが出て、普通の映画になりました。


男の子と女の子の二人は活動写真(映画の昔の呼び名)を見ようとします。お金がないので、厠から侵入し、タダで活動写真を見る二人。男の子の俊太郎は活動写真よりも、活動弁士(カツベン)の方が好きで、何人ものカツベンの名前を覚えているような男の子でした。活動写真中に女の子の梅子にキャラメルを渡す俊太郎。しかし、そのキャラメルは盗んできたものでした。俊太郎は捕まってしまい、梅子は俊太郎のカツベンの真似をじっと待たされてしまいます。そして、10年の時が流れました。


と、ここまでが子供時代の話なのですが、正直私には少し長く感じてしまいました。ここで私はこの映画にハマることができず、それが結構長引いてしまった。もう少しコンパクトにまとめてほしかった気はします。


10年後。俊太郎は弁士として活動しています。大人になった俊太郎を演じたのは、今年『愛がなんだ』や『さよならくちびる』などで大活躍の成田凌さん。口髭が良い感じに似合っていませんでした。俊太郎は、有名な弁士だと偽り、カツベンもいわば偽物。その裏では泥棒一味が盗みを働いていて、俊太郎もその一味でした。カツベンとしての偽りの姿から、普段の俊太郎に戻ったとき、姿だけでなくオーラも違っていたので成田凌さんさすがってなりましたね。



しかし、俊太郎は現状に満足していない様子。理想と現実のギャップに悩んでいます。あるとき、泥棒一味が主催する鑑賞会に警察がやってきます。この刑事を演じたのは竹野内豊さん。なんとも贅沢な起用法です。当然、泥棒一味は大パニック。捕まってしまいますが、俊太郎だけは難を逃れることに成功します。ただ、途中でトラックから転げ落ちてしまうけどね。ここで、一緒に大金の入ったバッグも落ちます。これがトラブルの原因となるのはお察しの通り。


俊太郎は行くあてもなく歩いて、靑木館という映画館に流れ着きます。3人の楽士が辞めるところを目の当たりにした俊太郎。館主にここで働かせてくれと頼み込みます。しかし、俊太郎に押し付けられたのは弁士ではなく雑用。そして、やたらキャラの濃い仕事仲間との日々が始まりました。


この映画ってキャストがかなり豪華なんですよね。靑木館だけでも竹中直人さんや渡辺えりさん、高良健吾さんに、永瀬正敏さんなどが脇を固めています。竹中直人さんというと特徴的な演技で存在感を発揮しがち。ですが、今回の竹中直人さんは薄めです。オーバーアクションも少なく、着実に演じています。まあ、その分周りのキャラクターが濃いんですけどね。


渡辺えりさんは肝っ玉母さん感が強くて、口調も厳しめ。高良健吾さんは自信過剰なスター弁士ということもあり、カツベン中も普段も貴公子のような甘ったるい話し方と流し目を見せてきます。永瀬正敏さんはかつては人気弁士でしたが、現在は酒に浸る日々を送っています。投げやりに喋る中にも温かみが感じられました。個人的には『チワワちゃん』にも出演していた成河さんを見ることができて嬉しかったですね。映画愛に溢れた映像技師の役で、ほっこりしました。


一方で、主役の成田凌さんは靑木館に来たときにはまだ慣れていないので、引いたお芝居を心がけているように見えました。オーラも消して、アクの強い靑木館の面々を引き立てていて、好印象でしたね。この映画での成田凌さんは基本的に振り回されっぱなしなのですが、どことなく落ち着かない視線がハマっていました。でも、いざカツベンのシーンになるとバシッと目つきが変わって、かっこよく見せていてオンオフが上手いなーと感じました。


また、靑木館のライバルであるタチバナ館の面々も魅力的。小日向文世さんは、タチバナ館の館主でストレートにヤクザなのですが、滲み出る怖さは安定感があります。その娘の井上真央さんの惑わせるような口ぶりも笑ってしまうほど楽しいものでしたし、他にも図体が大きいわりに何の役にも立たない構成員(名前は失念)なども好きでしたが、一番は何といっても音尾琢真さんですね。しっかりチンピラでした


音尾さんってチンピラ役が似合う俳優さんですよね。でも、最近観た『ひとよ』ではマジで善人のタクシードライバーを演じていて。本当いつ豹変するんだというぐらいの不自然さを感じて、それはそれで面白かったんですけど、今回はチンピラに戻ってました。殴るし、難癖は飛ばすし、銃を構える姿に違和感がない。それでいて親分からは詰められるしで、文句のつけようがないチンピラっぷりでした。あと、これは観ていただきたいんですけど、今回の音尾さんはドロップキックをかますんですよ。一番爆笑したシーンなので、ファンの方はぜひ観ていただきたいです。




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・活動写真は良いけどストーリーは……



このような個性的な俳優さんたちと並んで、この映画の大きな魅力となっていたのが映画内映画活動写真でした。作品の特性もあり、この映画では多くの活動写真が登場するんですよね。しかも、そこに出演している俳優さんたちがまた豪華で草刈民代さん(『Shall we ダンス?』や)、城田優さん、上白石萌音さん、シャーロット・ケイト・フォックスさん(朝ドラヒロイン経験あり)など、いずれも一映画の主演を務めることのできる方ばかり。お金のかかりっぷりを感じます。


もちろん活動写真ということで、無声で白黒。そこに色を付けるのは活動弁士の説明なんですよね。この映画に登場した説明は大きく分けて三種類。高良さん演じる茂木のじっとりとした説明。永瀬さん演じる山岡のボソッとした説明。そして、俊太郎(芸名:国定忠治)のオーソドックスな説明。三者三様で聞いていて楽しい。無声映画に声がつくとこんなにも変わるものなのかとびっくりするほど面白く、心は少しずつ動かされていきました。実際に活動弁士に興味が出てくるくらいです。


その中でも特に好きだったのが、黒島結菜さん演じる梅子(芸名:松子)が説明に加わって、俊太郎のピンチを救うシーンです。ここまで男声一辺倒でやってきたところでの女声の参加の爆発力たるや。黒島さんのはきはきした声も耳馴染みが良かったですし、活動写真の内容も二人とリンクしていてまた良き。この映画一番のハイライトだと個人的には思います。


ただ、俳優さんの演技や活動写真はよかったのですが、肝心のストーリーの方はというとあまり……。引き抜かれる引き抜かれないのやり取りや、大金によるトラブルなど正直想像の範疇を得ない展開が続くんですよね。この映画の見どころの一つとして、俊太郎が偽物からホンモノになる瞬間のカタルシスがあると思うんですけど、それももっと感じたかった。あと、落ちぶれた山岡とそれを見て切なくなる俊太郎という図式も、個人的にはもう少し見ていたかったかなと。正直、面白くなる要素をうまく生かし切れていないように感じたんですよね。途中まではですけど


この映画ってストーリーというよりは、俳優さんの演技や活動写真の面白さで引っ張るタイプの映画で。それはそれで一つの方法としてありなんですけど、もう少しストーリーでも引っ張ってほしかったかなと。途中までは、映画自体よりも活動写真の方が面白いぞ……ヤバくない……?って思っていたぐらいですもん。まあ活動写真はハイライトシーンを見せているので、面白くて当然なんですけど、映画自体には、あまりのめり込めてはいませんでした。


ただ、途中にこの映画がある映画に似ていることに気がついたとき、私の印象は一変しました。その映画とはこちら。


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ニュー・シネマ・パラダイス』です。












※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。









・『ニュー・シネマ・パラダイス』だよこれ!


具体的には、大金を返してもらいに来たチンピラ・安田(音尾さん)が靑木館をめちゃくちゃにして、フィルムをズタボロにした時ですね。とても上映できる状態ではなく、明日からどうすんだよと。ここで山岡が、使えるフィルムを繋ぎ合わればいいと提案するんですよね。で、このフィルムを切り貼りしているときに、私は「あ、これ『ニュー・シネマ・パラダイス』だ」と思ったんですよ。


ほら、『ニュー・シネマ・パラダイス』って、切り貼りした様々な映画のキスシーンを主人公のトトが見るシーンで終わるじゃないですか。キスシーンってトトが子供の頃は見ることができないもので、それを壮年になってからバーッと見せられて、もう超感動したんですけど、『カツベン!』のこのシーンはそれを彷彿とさせるんですよ。実際の活動写真を見ていると否が応でも思い出しますもん。少し泣きそうになったくらいです。


で、思い返してみると『カツベン!』って実に『ニュー・シネマ・パラダイス』的だなって思うんですよね。それはまず、俊太郎と梅子の関係ですよね。梅子を演じた黒島さんは、まるで朝ドラのヒロインのような輝きを放っていました。二人の間には恋心みたいなものが芽生えていて、淡い関係。ここも『ニュー・シネマ・パラダイス』におけるトトとエレナみたいだなと感じます。ラストで梅子が駅にいるシーンも、まあ『ニュー・シネマ・パラダイス』では駅にいるのはトトでしたけど、それを思い出さずにはいられませんでした。あと、映画館が火事になったところも。


でも、根底にあるのはどちらも映画愛だと思うんですよ。『ニュー・シネマ・パラダイス』では、シチリア島の人々にとって映画は唯一の娯楽みたいなところがありましたし、『カツベン!』も今よりは娯楽が少ない大正時代を舞台としています。活動写真を見て一喜一憂する姿は海や時代を越えても変わらないのだと感じます。


それに、俊太郎もトトも映画関係の職業に憧れていて、ここも同じ。さらに『カツベン!』では、キャラクターも大体活動写真が好きなんですよね。映写技師の浜本(成河さん)は自分が好きなシーンを閉館後にこっそり見ていますし、山岡がボソッと説明するのも映画の良さを引き出さんがためです。
タチバナ館の面々でさえ、活動写真に見入っているように私には見受けられましたし、ここまで映画が好きなことを押し出していると、好感を持てずにはいられません。今も昔も変わらない普遍的な映画愛を感じられて、ここは掛け値なしに好きですね。




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・この映画自体が活動写真的なのかもしれない


でも、『カツベン!』は『ニュー・シネマ・パラダイス』のようにしっとりとは終わりません。切り貼りの活動写真の上映が終わった後、安田が俊太郎に銃を向けます。逃げ惑う観客。映画が映画ならシリアスになりそうな場面ですが、ところがどっこい、『カツベン!』はここから一気に趣を変えて、コメディになるんですよ。


だって、俊太郎を追って靑木館から出た安田の頭に看板がタイミングよく落ちてくるんですよ。で、俊太郎が拝借した自転車にはペダルがついておらず、足で走って行くしかないですし、それを追う安田。さらにそれを追う竹野内さん演じる・木村刑事はまるで銭形のとっつぁん。このズッコケ逃走劇が軽快な音楽とともに、とにかく楽しいんです近年稀に見る絵に描いたようなドタバタ劇でしたよ。これだけで観てよかったと思えるほどで、映画館から楽しい気分で出ることができました。


ここ、何も考えずに笑ってみることができる良い展開なのですが、実は『ニュー・シネマ・パラダイス』的展開から外れた『カツベン!』独自の展開になっているんですよね。私は、『カツベン!』って俊太郎の説明そのものだと思うんです。俊太郎ははじめは人のモノマネしかできなかったですが、切り貼りの活動写真のシーンでは、自分だけのカツベンを編み出したわけですよね。この映画も『ニュー・シネマ・パラダイス』をなぞっておいて最後に独自の展開になるという意味で、俊太郎の成長過程とよく似ているなと感じるんです。


もっと言うと、『カツベン!』自体が活動写真的な映画だとも思います。この映画のキャラクターは皆コッテコテな喋り方をしていて、その演技はまるで活動弁士が声を当てているようにも感じられます。この演出、私は好きですね。フィクションと割り切って観ることができて。さらに、この映画の最初と最後は白黒の画面になっていますし、ここからも活動写真感が表れています。これも一つの物語が始まって終わった感じがして、好きな演出でした。


まとめると、『カツベン!』から感じたのは、キャラクター、ひいては周防監督や制作陣の映画愛でした。こんな映画嫌いになれるはずもありません。もっと面白くできた感は否めませんが、どちらかというと好きな映画です。実にまっとうにエンターテインメントをしているので、興味があれば観てみるのもいいのではないでしょうか




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以上で感想は終了となります。『カツベン!』、焦点が絞り切れていない感はありますが、誰でも楽しむことができるエンタメ映画だと思います。よろしければ年末年始にどうぞ。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 



カツベン! (朝日文庫)
片島 章三
朝日新聞出版
2019-11-07