こんにちは。これです。今日二度目のブログ更新も映画の感想になります。


今回観た映画は『ロング・ウェイ・ノース』。フランス・デンマークの共同制作のこの映画。9月に公開されたときから、映画ファン内での評価は高めだったので、3か月遅れになりますが観てきました。


で、実際観たところ、映画館で観てよかったと思える良作アニメーションでしたよ……!よかった見逃さないで……!上映してくれてありがとう……!


では、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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―目次―


・シンプルなアニメーションが想像力を働かせる
・ご都合も多いけど、サーシャが頑張っているから問題ない





―あらすじ―

 舞台は19世紀ロシア、サンクトペテルブルグ。
 14才の貴族の子女サーシャには悩みがあった。1年前に北極航路の探検に出たきり帰ってこない大好きな祖父。探索船は出たものの未だ行方が分からない。祖父と家族の名誉は失われ、祖父の名を冠する予定だった科学アカデミーの図書館も開館が危ぶまれている。ロシア高官の父は、そんな状況にあって、なんとかローマ大使の道を模索するが、そのためには社交界デビューの娘が皇帝の甥っ子に気に入られるしかないと考えている。
 社交界デビューの日、サーシャは祖父の部屋から航路のメモを見つけ、それが捜索船がたどったものとは異なる事に気付く。再び捜索船を出して欲しいとサーシャは舞踏会の場で王子に懇願するが受け入れられない。王子の不興を買い、父からの叱責を受けた娘は、自ら祖父の居場所を突き止めようと決意する。― サーシャが目指すものは、祖父との再会、それが叶わなくとも遭難した艦船ダバイ号の発見、そして何よりも真実を突き止める為の旅だった。
なんとか港までたどり着き、北方行きの商船ノルゲ号に乗せて貰おうと船長の弟に話しを持ち掛けるが、手違いもあり港に取り残される。食堂の女主人オルガの手助けにて、住み込みで調理や給仕といった未経験の仕事をしつつ船の戻りを待つ。その頑張りが認められようやく船に乗り込んだ後に待ち受ける多くの試練。船乗りの経験も無く、しかも女性であるサーシャには、想像を絶する困難が待ち受けていた。
 そして―

(映画『ロング・ウェイ・ノース』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください。







・シンプルなアニメーションが想像力を働かせる



この映画の最大の特徴といえば、輪郭のないアニメーションということがまず挙げられるでしょう。人物の顔や衣服もベタ塗りで、建造物も二段階ぐらいしか影が無く、映る画面だけを見れば、案外平坦なものです。人物と背景の境目も極めて曖昧。これを見て私が思い出したのはちぎり絵ですね。それも色鮮やかな和紙ではなく、単色の折り紙を使ったちぎり絵です。特に、雪が降る描写は大粒の雪をちぎった紙で表現していて、なかなか見られない表現で好きでしたね。


さらに、色も原色ではなく、パステルカラーが多く用いられていたように思います。どこか白を混ぜたこの色彩が、私には冷たさを感じさせました。ロシアや北極圏の冷たさが直に伝わってくるようで、身震いがするほどです。エアコンの風もどことなく冷たく感じられましたしね。それは、なぜかというとやはりシンプルなアニメーション。これに尽きると思います。


そもそも、アニメーション技術は昔よりも確実に進歩しているわけですよね。よく知らないですけど。デジタル技術の発達で、昔では書けないような細かいところまで書くことができるようになって、精緻な神作画というものの価値は以前より上がっているように思えます。いかにリアルに細かく書けるかを競っているかのようで、(労働環境の問題から目を背ければ)それは良いことではあるんですが、ただ『ロング・ウェイ・ノース』はこの流れに逆行しているんですよね。


シンプルなアニメーションの何が良いかと言いますと、想像力を働かせる余地があることだと思います。余白が多いから、その分を頭の中で勝手に補完できるんですよ。私、後半の北極圏のシーンはずっと手に汗を握りながら見ていたんですけど、画面はあまり動きが無く、氷も白と灰色の折り紙を重ねたようなシンプルなものだったんですよね。


でも、頭の中では青黒い海に、青白い氷壁が沈むさまがリアルにイメージできていて、強い迫力を感じたんですよ。これもシンプルなアニメーションのおかげで想像することができたからだと思います。こればっかりは言葉で説明しても分からないので、実際に観た方が早いですね。予告編置いときます。





氷壁が崩れるシーンありませんでしたね。すみません。やっぱり映画館で確かめてください。


それは置いといて、この映画って展開もあまり説明しないシーンが多かったんですよ。特にサーシャが出発を決意するシーンはセリフなしで見せていて。ここも想像力を掻き立てました。こういう演出って観客の想像力を信じていなければできない、とても勇気のあることで、掛け値なしに素晴らしいと思います。


いや、リアルなアニメーションにもちゃんと価値はあるんですよ。でも、『ロング・ウェイ・ノース』の良さはそれとは路線が違う良さで。この映画を観て感じたんですけど、極論を言ってしまえば、リアルな画が見たいんだったら、実写のドキュメンタリーを見ていればいい話なんですよ。4Kカメラ?で撮影されたような。


でも、『ロング・ウェイ・ノース』は、アニメーションにしかできないようなシンプルでデフォルメされた画で魅せている。これって実写ではできないことで、アニメーションの独自性や優位性みたいなものを追求していると感じました。そして、その試みは見事に成功していて、頭の中ではある意味リアルを上回るような映画体験をすることができました。想像力を働かせることができるシンプルなアニメーション。ここがまず私が『ロング・ウェイ・ノース』を好きなポイントの一つです。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。







・ご都合も多いけど、サーシャが頑張っているから問題ない



さらに、『ロング・ウェイ・ノース』はストーリーも好きでした。と言っても、奇を衒ったことは全くしていないんですよね。画風同様に極めてシンプルな作り。サーシャがピンチを救って認められるシーンや、カッチとの恋愛とは違う友情。傷ついた仲間を見捨てられるか!という熱いシーンや親子愛。一つ一つの要素を切り取って見れば、何ら特別なことはなく、実にベタな展開のオンパレードです。


でも、このド直球を投げ込んでくる姿勢、私はとても好きでした。ベタはbetter(より良い)ですし、気を衒って外してしまう映画よりかは、こういったベタを積み重ねる映画の方が安心して観ることができます。ベタを適切に積み重ねることができれば、余計なことは何もいらないと思い知らされます。


また、『ロング・ウェイ・ノース』はかの高畑勲監督が日本公開を切望した映画だそう。映画館に置いてあったリーフレットには「作品の中でいっぱいウソをついている。このウソのつき方が気持ちいい」と高畑監督のコメントが紹介されていました。で、このウソなんだろなって映画を観ながら考えたときに、それはご都合展開だと思ったんです。思い返してみると、『ロング・ウェイ・ノース』ってけっこうご都合主義的な展開が多いんですよね。


例えば、サーシャが一か月間通報されなかったのには無理がありますし、あそこでオルキン(サーシャの祖父)を見つけることができたのも、実にご都合的。そのメモにダバイ号の位置が書かれていて、最終的に見つけることができたことなんてフィクションにもほどがあります。他にも『ロング・ウェイ・ノース』にはご都合主義的展開がいくつもありましたし、もしかしたらここは批判される要素かもしれません。でも、私はこれを良いご都合主義だと感じました。




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その理由は、サーシャが強い意志を持って能動的に困難を切り開いていったからです。やっぱり能動的な主人公っていいですよね。受け身じゃなくて自ら困難に立ち向かっていく。モーソンとダバイ号を見つけるんだという強い意志のもとに、ガンガン行動するサーシャはとてもかっこよかったです。最高の主人公でしたよ。こんな主人公が見たかった。


で、『ロング・ウェイ・ノース』が良いのは、ご都合主義展開がサーシャが頑張ったことによるご褒美として与えられているという点だと思います。なんの努力もしないで与えられるご褒美なんて反感を買うだけですし。その点、サーシャならこんなに頑張っているんだからご褒美ぐらいあげてもいいだろうという気持ちに自然となるんですよね。だからご都合展開にもあまり違和感がないし、むしろ好意を持って受け入れられる。


それに、能動的に頑張るサーシャに対して、周りが優しいのも最高ですよね。食堂の女主人・オルガの面倒見の良さ半端ないですし、船員たちも徐々にサーシャを認めていく。さらには、困った仲間を見捨てられるか!という優しい世界。北極圏という厳しい世界の中で、この優しい世界は際立っていて、寒くてハラハラしながら観ていても、どこか暖かさを持って観ることができました


そして、ダバイ号は発見され、船員たちは帰ることができてハッピーエンド。これもサーシャが自分から頑張った結果ですよね。やっぱり頑張った人間にはご褒美がないと、フィクションとしてはあんまりですよ。現実は頑張っても報われないことの方が多いから、せめてフィクションの中では報われてほしいですよね。


『ロング・ウェイ・ノース』ってなんというか物語の基本だなって。良い意味で教科書通りだなって観ていて思いましたね。その基本をしっかりやれば、これだけ面白いものができるんだと改めて感じさせられました。なんかお話書いたり、作ったりしている人は、全員観たらいいんじゃないかなと思います。そのくらい面白く、またタメになる映画でもありました。もちろん何も作っていない方も観てほしい。万人にお勧めできる良質なアニメーション映画だと思います。




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以上で感想は終了となります。『ロング・ウェイ・ノース』、上映館はもうあまり多くないですが、とても良いアニメーション映画なので、迷っているならば、ぜひとも観ることをお勧めしたいと思います。脳内で想像する楽しさがありますよ。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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