こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想になります。


今回観た映画は『宮本から君へ』。新井英樹さんの同名漫画を実写映画化した一作です。私は、原作も読んだことありませんし、ドラマ版も未見。いわば何も知らない状態でしたが、評判がいいので、観に行ってきました。噂にたがわぬ熱い映画でしたよ……!


では、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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―目次―

・キャストについて
・時系列を簡単に整理してみる
・それぞれのシーンの雑感
・強いエゴが人を動かす





―あらすじ―

文具メーカー「マルキタ」で働く営業マン宮本浩(池松壮亮)は、笑顔がうまくつくれない、
気の利いたお世辞も言えない、なのに、人一倍正義感が強い超不器用な人間。

会社の先輩・神保(松山ケンイチ)の仕事仲間である、自立した女・中野靖子(蒼井優)と恋に落ちた宮本は、
靖子の自宅での食事に呼ばれるが、そこに靖子の元彼・裕二(井浦新)が現れる。
裕二を拒むため、宮本と寝たことを伝える靖子。怒りで靖子に手を出した裕二に対して、宮本は「この女は俺が守る」と言い放つ。
この事件をきっかけに、心から結ばれた宮本と靖子に、ひとときの幸福の時間が訪れる。

ある日、営業先で気に入られた真淵部長(ピエール瀧)と大野部長(佐藤二朗)に誘われ、
靖子を連れて飲み会に参加した宮本は、気合いを入れて日本酒の一升瓶を飲み干し、泥酔してしまう。
見かねた大野が、真淵の息子・拓馬(一ノ瀬ワタル)の車で送らせようと拓馬を呼びつけた。
そこに現れたのは、ラグビーで鍛えあげられた巨漢の怪物だった……!
泥酔する宮本と、宴会を楽しむ靖子、二人の間に、人生最大の試練が立ちはだかる————。

究極の愛の試練に立ち向かうべく、
愛する人のため宮本浩が“絶対に勝たなきゃいけないケンカ”に挑む!



(映画『宮本から君へ』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください。









・キャストについて


いやー、熱かったですね。『宮本から君へ』。凄い熱量でした。全身全霊で一世一代のケンカに挑む宮本の生き様、痺れましたよ。血だらけでみっともなくても、かっこいいって最高ですね。


そして、この宮本役は池松壮亮さんでなければ演じえなかったと思います。宮本浩は一般的な営業マン。予告編を見たときはずっと叫んでいる印象でしたが、映画本編ではそんなことはなく、上司に詰められると弱気になったり、訪れた靖子の家では上気になったりと、別の一面を見せていて、本当にどこにでもいる感じがありました。歯が抜けたことを表現する活舌の悪さがリアルでしたね。


で、そんな一般的な宮本をも熱くさせる愛情というものの衝動性よ。映画後半の宮本は、覚悟を決めてまるで別人のようでしたが、池松さんのクールな目つきがそれを表していました。言葉の端々にも怒りが現れていて、汚い言葉も感情の赴くままに発せられた感がありましたし、池松さんの演技は体当たりなんてレベルを超えていました本当に宮本浩にしか見えなかったです。宮本浩という一人の人間がいると心の底から思えました。今年観た邦画の中でもかなり上位に入りますね。ガンガン評価されてほしい。


そして、今作のヒロイン・中野靖子を演じた蒼井優さんも、同じくらい良かったです。明るい演技ももちろんなんですが、圧巻だったのは悲しむ演技ですよね。宮本に感情のままに思いをぶちまけるシーンは鬼気迫るものがありましたし、涙も大げさすぎず自然に流れてた。包丁を握り締める夜のシーンなんて本当に刺すんじゃないかぐらいの迫力がありました。本当、池松さんの熱量にも負けないくらいの熱量で向き合っていて、この映画を一段上のステージまで引き上げていました


で、何より良かったのが、靖子は靖子でしっかり芯を持っていることなんですよね。予告編にもあった「私は命二つ抱えて生きてんだ。あんたには負けないよ」という通り、男に振り回されながらも、自分というものが揺らいでいなくて、それがなおさら辛かった。個人的に一番好きなのが、宮本が靖子の仕事場に来たシーンで。子供は自分一人で育てるという強固な決意表明。ここの蒼井さんの目つき豹みたいに鋭いんですよ。で、宮本をも退散させていますし、涙目のまま周囲に気を払うところまで含めて、強さを感じましたね。蒼井さんも蒼井優じゃなくて中野靖子にしか見えなかったです


この二人の他にも、井浦新さんは、靖子の元交際相手として復縁を迫る役として、クズだけど色気がありましたしピエール瀧さんは流石の迫力で宮本を追い込んでいて、この映画になくてはならない存在でした。佐藤二朗さんも、いつアドリブ出すかハラハラしましたけど、穏やかな暴力みたいな怖さがあって正統派の一面を見せましたし、顔見せ程度の松山ケンイチさん(ドラマではもっと出ていたのかな)も、軽すぎず重すぎず良かった。


でも、何よりインパクトがあったのは、やっぱり真淵拓馬役の一ノ瀬ワタルさんです。


一ノ瀬さんは拓馬を演じるにあたり、なんと33㎏の増量をしたそうですが(どうやって太ったんだろう)、その努力が見事に結実。そのふてぶてしい外見は、こんなやつどうやったら勝てるんだろう……と絶望感を植え付けるのにふさわしいものでした。宮本との対格差は目を覆いたくなるほどで、越えるべき壁が高く設定されていたおかげで、それを越えられた時の喜びも大きくなっていました。


もちろん一ノ瀬さん自身の演技も良くて。あんな巨漢と目つきの悪さなのに、「宮本さん」って敬語を話すんですよね。それがタメ口よりも却って怖くて、じわじわと爆薬を積み上げているような感覚がありました。痛がる演技もそれまでのギャップで最高でしたし、この映画の影のMVPとも言える活躍を見せていました。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。










・時系列を簡単に整理してみる


この映画は宮本の後ろ姿から始まります。不穏な音楽とともに顔を見せた宮本の顔は血だらけで、トイレでぼやけた鏡に向かって何度も頬を叩くシーンは、出だしから上々のインパクトを与えていたと思います。


多分なんですけど、このオープニング、拓馬との非常階段バトルが終わってからのものですよね。『宮本から君へ』って時系列がバラバラで観ていて混乱したんですが、ちょっとここで整理してみたいと思います。原作を読んでいれば必要ない作業かもしれないですけど、そこはご勘弁を。


~時系列(多分)~

1.宮本と靖子がご飯を食べている途中に、風間(井浦さんの役)が押し入ってくる。

2.宮本と靖子が真淵(ピエール瀧さんの役)とその息子・拓馬に出会う。靖子は拓馬に強姦される。

3.宮本は拓馬に靖子の復讐を決意する。

4.宮本vs拓馬(第一戦)。宮本惨敗。

5.宮本は風間から靖子が妊娠していることを知らされる。

6.宮本vs拓馬(第二戦)。非常階段バトル。

7.オープニングシーン

8.宮本が靖子にプロポーズ。

9.二人は宮本の実家に行く。

10.二人は靖子の実家に行く。

11.靖子が出産する。エンディング。


おそらくこうだと思います。で、映画ではこれが7→9→10→1→2→3→4→5→6→8→11の順番で展開されていると思うんですよね。さらに、宴会のシーンや同僚とのパーティのシーン、宮本と靖子が海に行ったシーンなど細かいシーンも含めれば、正直、時系列は私の至らない頭では整理できませんでした。だれか原作を知っている方がいたら教えてください。


でも、振り返ってみるとこの時系列をいじったのは上手くいっていたのではないでしょうか。最初に二人の幸せなシーンを見せておいて、後から宮本の苦闘を見せるという構成だったんですけど、終盤の宮本の戦い。この非常階段バトル及びプロポーズの結果はもう分かっているわけですよ。宮本に幸せ気味な日々が訪れるのは認識していたので、「頑張れ宮本、幸せな日々が待ってるぞ」とより宮本を応援したくなりました。あくまで私はですけど。




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・それぞれのシーンの雑感


お互いの家に挨拶に行く宮本と靖子(9,10)
。少し不穏な雰囲気もありますが、全体的に和やかに進んでいきます。その後のシーンも二人で平穏な食卓を囲んでいますが、その雰囲気は靖子の元交際相手、風間の登場で一変(1)。ストーカーのように家まで上がってくる風間に対して、宮本はなす術がありません。しかし、靖子に欲望をぶつけ、気が済んだのか風間は帰っていきます。この後の宮本と靖子のベッドシーンはとても濃厚なものでしたね。ディープキスはもちろんのこと、コンドームなしでするんですから。ベッドの縁で隠してはいますが、ここだけでもR15+が頷けるほどのベッドシーンでした。


その後に、二人の微笑ましい生活(路上でキスして照れてるところがよかった)がいくつか挿入されます。予告編からしてもっとハードなものを想像していたので、この展開は少し予想外でした。まあ楽しむ宮本と靖子を見ることができて良かったんです。


そして、拓馬と二人の出会い(2)。拓馬は平静を装っていましたが、宮本が寝るやいなや、靖子を襲います。パワーを生かして靖子の逃げ場を奪い強姦。宮本はただ寝ているだけ。拓馬が帰っていった後は、靖子、蒼井さんのオンステージで、その迫真の演技を存分に味わうことができます。何も知らない宮本に声を荒げて、ブチギレるところも良かったですね。無念さがひしひしと伝わってきて。


その後、靖子が強姦されたことを宮本が知り、拓馬に復讐を決意します(3)。予告編にもある「頑張れ頑張れ」と宮本が叫ぶシーンがここに当たります。靖子の切実な叫びが聞いていて辛かった。しかし、ラグビーの練習会場での宮本vs拓馬の第一ラウンドは宮本の惨敗(4)。一撃で宮本を鎮める拓馬のパンチの威力たるや。宮本の睨む目つきも及びません。


その後、真淵が父親をボコった描写を入れつつ、物語は展開。風間が宮本の会社に現れます。風間から靖子が妊娠したことを知らされる宮本(5)父親は、風間か宮本かどちらか分からないと言います。ここ、情報料を請求する風間が狡くて良かったですね。ムカつきました。


そこから、映画はいよいよ最大の見せ場。宮本vs拓馬の第二ラウンド、通称”非常階段バトル”を迎えます(6)。宮本の不意打ちも拓馬には通じず、捕らえられ、吊るし上げられ、指を折られる始末。二人の戦いは泥臭いという言葉がぴったりで、カメラワークもブレにブレた細かいカットを繋ぎ臨場感を演出。スタイリッシュに撮ろうなんて意思は全く見られません。一瞬、金〇の皴まで映すのには恐れ入りました。


地上9階ぐらいの高さで二人が戦うので、これ本当に落ちて死ぬんじゃないか?とまで思ったほどです。尺も長く、流石は『ディストラクション・ベイビーズ』の真利子監督です。『ディストラクション・ベイビーズ』観てないですけど。「邦キチ!映子さん」でしか知らないですけど。


もうマジで汚い(卑怯という意味ではない)、でもそれしかないだろうなという方法で、血まみれになりながらも、見事宮本は拓馬に勝利を収めます。そして、いよいよ物語は山場のプロポーズシーンを迎えます。



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・強いエゴが人を動かす


さて、話は変わりますが、この映画を観て私が感じたこと。それは一言で言うと「エゴ」になります。この映画の宮本の行動原理って、愛というよりもエゴだと思うんですよね。


もちろん、最初は宮本は靖子の復讐のために動いていたかもしれません。ですが、その深層はどうでしょうか。自分が強姦されるのに寝ていた宮本に、靖子は憎しみを抱き、二人は別れてしまいます。ここからの宮本の行動原理には、「自分が拓馬を倒して、靖子に認めてもらって、また一緒になりたい」というエゴが働いたとは考えられないでしょうか。


だから、宮本の主語は「俺が俺が」なんだと思います。実際、靖子にもそのことを指摘されていました。プロポーズの最初も「靖子に褒められたかった」。結局、一方的な愛情なんてただのエゴだと思います。でも、人を動かすのもまた、その強烈なエゴなんですよね。「俺の人生バラ色だからよ」なんてその象徴ですよ。矢印は真っすぐ自分に向いている。でも、それは私には出来ないことで、負けっぱなしの人生(ドラマを見ていないからよく分からないけどそうらしい)を肯定せんとするエゴに、思わず泣いてしまいました。羨ましくて。


で、そのエゴが靖子に届いて、二人は縁を戻すことになります。やっぱりですね、人にエゴを届けるためには、叫ぶなり血まみれになるなり、それくらいの強烈さがないとダメってことですね。強い思いを表現するために叫び散らかすのは、私はそこまで好きじゃないんですが、『宮本から君へ』は叫ぶだけに足る理由がありました。だってそうでもしないと届かないから。この映画はこういった強い思いがマグマのように煮えたぎっていて、私は熱くなりましたし、「愛してる」というエゴを不器用に表現する宮本が好きでした。


それに、最高だったのがエンドロール。宮本と靖子が笑う写真を持ってくるのは、映画とのギャップになっていていい演出でしたし、主題歌の「Do you remember?」も、また熱くて良い曲。この「Do you remember?」。私は、「昔は君の中にもエゴがあっただろ?覚えてるか?」みたいな意味だと私は受け取ったんですけどどうでしょう。


それに、「いききっちゃうんだ」という新井先生直筆のメッセージが胸を打ちました。よく「なんで生きてるの?」って質問がありますけど、「うるせえ!意味や価値なんか知るか!生きたいから生きてんだよ!!」と私は思っていて、これもまた一つのエゴですよね。「いききっちゃうんだ」は、そのエゴを通すんだという強い意志の表れにも感じて、勇気を貰えます。


極めつけは、最後の「君へ」。宮本が放った強烈なエゴは、映画の枠を超えて、観た人に熱気を与えて動かすに足るものだと思います。だって、私今叫びながら走りたいですもん。ありきたりな言葉ですけど、「君はどうする?」みたいなことが問われているのかなと。私は、もうちょっと苦手なこと、会話とかコミュニケーションとか、あと世間話とか頑張って見たいなと感じました。熱量があるので、観た後はそれなりに疲れますけど、同時にパワーももらえて良い映画ですね。


と、まあここまで書いてきてなんですけど、『宮本から君へ』。面白かったんですけど、評判が良かったのでハードルを上げ過ぎたところは個人的にはあると思います。もっと上映直後のまっさらな状態で観ていたら、もっと違ったのかなと。


それに、やっぱりドラマは観ておいた方が良かったですね。原作の前半部分をドラマ、後半部分を映画でやっているみたいなんですけど、やっぱり前半も観ておいた方が、宮本と靖子の積み重ねを感じられて、より楽しめたのかなと。映画が良かっただけに、そこだけが心残りです。




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以上で感想は終了となります。映画『宮本から君へ』、原作もドラマも未見でも楽しめる熱い映画でした。公開劇場はもうさほど多くないようですが、3/6にDVD/BDが出るようなので、よろしければそちらでもお楽しみください。パワーを貰えますよ。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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