こんにちは。これです。公開延期も相次いで、映画界は寂しい春興行になってしまっていますね。私が観たいと思っていた映画ドラえもんも公開延期になってしまいました。他にも大作映画がガンガン公開延期になっていて凹みます。


しかし、それならばやっている映画を観に行けばいいじゃない、ということで今日も映画を観に行きました。今回観た映画は『仮面病棟』。現役の医者である知念実希人さんの原作を、『屍人荘の殺人』などの木村ひさし監督が映画化した作品です。


正直観る予定はなく、また期待値もあまり高くなかったのですが、観てみて良い意味で裏切られましたね。しっかり面白く、これを見逃そうとしていたんだ、となりました。思わぬ掘り出し物ですね。こういうのを怪我の功名っていうんでしょうか。よく分からないですけど。


では、感想を始めたいと思います。極力ネタバレなしで行きたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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―あらすじ―

その日、平穏だった「田所病院」はピエロの仮面をつけた凶悪犯に占拠された。
そこには、一夜限りの当直医の速水と、凶悪犯に撃たれた女子大生の瞳。
危険な密室と化した病院から脱出を試みる2人は、次々と不可解な謎に遭遇する―。
入院記録のない患者たち。隠された病室、あるはずのない最新の手術室。
警察への通報を拒否する院長とスタッフ。意図の見えない凶悪犯の犯行目的…。

ここでは病院も人間も
ウソの仮面をかぶっている―。


(映画『仮面病棟』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください










この映画は取調室のシーンから始まります。予告編にもあったシーンですが、取り調べを受ける人間は逆光で伏せられています。そこから回想形式で、一夜の出来事が語られます。


大雨の夜。先輩医師の小堺から当直医を代わってもらうよう頼まれた速水秀悟。ヘルプに入る田所病院は元は精神科病院で、現在は認知症や寝たきりの患者が多く入院しているといいます。三人の理学療法士と少し話したのち、看護師・東野から病院を案内され、当直室に通さる速水。病室の前には「新宿11」などいくつか不思議な表示が。点けたテレビでは政治家のニュースの後に、近隣でコンビニ強盗が起こったというニュースが流れてきました。


この映画で主人公の速水を演じたのは坂口健太郎さん。立てこもり犯のピエロに振り回されるという役なのですが、基本的には冷静で、しっかり自分の意志を持っていた速水というキャラクターに坂口さんの落ち着いた雰囲気がマッチしていましたね。頭を使って交渉するシーンもいくつかありましたし、自ずから問題を解決しようとする姿勢には好感が持てました。


当直室で一人ペンダントを見つめる速水。実は速水には昔交際相手がいて、その交際相手は事故に遭って亡くなってしまっていました。近隣の田所病院に連絡したのですが、手術ができないということで別の病院に回され、処置が遅くなったことが大きい理由のようです。何ともベタな展開ですね。まあベタはbetter、より良いということなので奇をてらって滑るよりはいいですけど。


速水のバックボーンが説明されたところで、急患が入ります。一階にやってきた病院の面々。そこには撃たれて傷を負った女子大生・川崎瞳と、銃を持ったピエロがいました。ここでタイトルが挿入され、いよいよ本編のスタートです。


ピエロの要求は川崎の治療をすること。ですが、田所病院の手術室はもう何年も使われていない様子。にもかかわらず、鍵を開けてみると、そこにはきちんと管理された真っ当な手術室が。速水は疑問を抱きますが、ピエロに押され傷の縫合をせざるを得ない状況に。結果、傷の縫合は無事完了。その後、ゴルフクラブを持った病院長・田所がピエロに襲い掛かろうとしますが、安定の返り討ちに遭います。





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この映画でもう一人の主役・川崎を演じたのは永野芽郁さん。金髪に髪を染めて、口紅も塗りたくっていましたが、それが虐げられる者、振り回される者という印象を決定づけていて、たいへん素晴らしかったです。慎重な口調も良かったですね。助けを求めるような目つきも最高です。「一人にしないでください」や「何でもやります」などのキラーフレーズも飛び出しますし、観る前の期待を飛び越えていってくれました。関係ないようなところでも、永野さんのカットを挿入していて、制作陣は永野さんのこと好きすぎるだろって思いましたけどね。新たな代表作となったのではないでしょうか。


あと、病院の面々も良くて。看護師の佐々木を演じた内田理央さんは、こういう閉じ込めモノに一人はいるもう嫌だって言う役どころなんですけど、その怯えている様子がハマっていましたし、東野を演じた江口のり子さんの仕事口調はさすがの安定感でした。でも、一番良かった、というか面白かったのは田所を演じた高嶋政伸さんですよね。ピエロにうろたえる演技はもちろんのこと、後半の転調も良かったですし、なにより銃を手にした時の顔芸よ。予告編でも印象的でしたけど、実際来るともう爆笑ですよ。最後のみっともない感じも好きです。


ストーリーに話を戻します。川崎の手術が完了して、5人は2階に誘導されます。階段は鉄格子で封鎖され、一つしかないエレベーターはピエロが監視。5人と入院患者は病院内に閉じ込められてしまいました。そこから速水と川崎、病院の3人はなぜか別行動。不審すぎますね。当然、速水も不審に思って階段を上って5階へ。術後間もないのに動きまくる川崎も一緒についていきます。


5階には院長室と資料保管室があり、院長室はピエロによって散々荒らされていました。また、田所と佐々木が資料保管室に入っていく様子を二人は目撃。ただ、資料保管室には鍵がかかっていて、入ることはできず、田所にもバレて、問い詰められます。そこにピエロが登場。金庫の三千万円を奪っていきます。さらに、田所も殺そうとしますが、それは川崎の「何でもやります」という一声で、未遂に終わります。


また、この件の中で田所と佐々木の密談を速水と川崎は目撃していたので、当然怪しみ、入院記録を調べることに。ただ、そこには地名+数字の患者(身元不明の患者をこう呼称している)の手術記録が。担当は病院の三人。急患にもかかわらず、手術時間は短く、まるで最初から予定されていた手術のような……。速水は確信します。「この病院には何かある」。ここ少しあからさまな感じはしました。





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とまあ、ここまでは予告編に毛が生えた程度の情報なんですけど、正直この先はネタバレになるのであまり言いたくないんですよね......。こういう密室スリラーってタネを明かされると面白さが半減どころじゃなく減ってしまいますし......。なので、この感想では、なるべく新鮮な状態で映画を観てほしいということで、真相を明かすのは避けたいと思います。


でも、ここからの密室スリラーは想像以上に面白かったんですよ。緊迫感もしっかりありますし(大体銃のおかげですけど)。ちゃんとさりげないシーンが伏線になっていて、気づけるような人は気づけるような設計になっていて。私はアホなので気づけませんでしたけど、ああそうかとなること請け合いです。速水の頭脳プレーや、振り回される川崎、結構あたふたするピエロくんなど見どころも多いですしね。


事の真相も「最近別の映画で同じテーマ見たな」とは正直思いましたけど、倫理的な問題を扱っていてので、メッセージ性みたいなものもありました。全体的にはずっと集中力を保って観れたので、私はこの映画好きですよ。観る予定はなかったですけど、観て良かったと思います。ただ、ちょっと引っかかるシーンもなくはないんですよね。


何が引っ掛かったかっていうと、端的に言えば神の意志を感じたんですよ。例えば、川崎が速水に自分の過去を喋るシーンがあるんですよ。親代わりだった姉が亡くなったって。だから先生の気持ち分かりますって言うんですけど、正直ここ川崎が語る理由も必然性も何にもないんですよね。悪い言い方をすれば唐突で。ここで川崎の過去を明かしておこうっていう物語の都合が透けて見えてしまって。ぶっちゃけこういうのはあまり好きではないですね。もっと自然な流れでやってほしかったとちょっとげんなりしてしまいました。


あと終盤。タネ明かしをするのはいいですし、こうだったのか!という快感も十分にあったんですが、ちょっと説明過多かなという感じはしました。もう2割くらい減らしても良かったのかなと。言っていることは正しいんですが、やや説教くさくなっている感じはしました。最後に語りかけるのは正直やりすぎでしょう。神の意志、ご都合を感じてしまいました。その後の終わり方は良かったんですけど、ここで少し萎えてしまいましたね。


でも、テンションが下がってしまったのは、この2点くらいで、あとは大体テンション上がりっぱなしでしたし、何度も永野さんを映してくれるのはありがたく、満足しています。コロナウィルスの影響で、公開延期が相次いで、映画館も人が少なくなっていますが、お暇があれば『仮面病棟』ぜひ観てみてはいかがでしょうか。観て損はしないぐらいの面白さはありますよ。




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以上で感想は終了となります。お読みいただきありがとうございました。


おしまい 


仮面病棟 (実業之日本社文庫)
知念 実希人
実業之日本社
2014-12-05



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