こんにちは。これです。コロナウィルスなかなか収まりませんね。映画の公開延期も増え続け、Jリーグの再会もまた延期になってしまいました。ただ、そんななかでも公開してくれる映画は何本かあるわけで。そのありがたさを噛みしめながら、今日も映画館に行ってきました。


今回観た映画は『一度死んでみた』。広瀬すずさん主演のコメディ映画です。最初に言っておきますけど、私はこの映画好きじゃないです。ここまでアレな出来になっているとは思いませんでした。今は怒りを通り越して呆れてさえいます。


では、感想を始めます。あまりいいことは言っていませんし、拙い文章ですが、それでもよろしければどうぞよろしくお願いします。




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―目次―

・掴みからして上手くいってない
・観客を信頼していないのかな
・何年前の演出ですか
・完全に作劇を失敗している





―あらすじ―

父親のことが大嫌い、いまだ反抗期を引きずっている女子大生の七瀬(広瀬すず)。売れないデスメタルバンドのボーカルをしている彼女は、ライブで「一度死んでくれ!」と父・計(堤真一)への不満をシャウトするのが日常だった。そんなある日、計が本当に死んでしまったとの知らせが。実は計が経営する製薬会社で発明された「2日間だけ死んじゃう薬」を飲んだためで、計は仮死状態にあるのだった。ところが、計を亡き者にしようとするライバル会社の陰謀で、計は本当に火葬されてしまいそうに…!大嫌いだったはずの父の、絶体絶命のピンチに直面した七瀬は、存在感が無さすぎてゴーストと呼ばれている計の秘書・松岡(吉沢亮)とともに、父を救うため立ち上がることに!火葬までのタイムリミットは2日間。はたして七瀬は無事、父を生き返らせることができるのか!?

(映画『一度死んでみた』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください









※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。










・掴みからして上手くいってない


『一度死んでみた』、正直に言って、全く合いませんでした。予告編の印象からして、合わないだろうなとは思っていましたが、一縷の望みをかけて観に行ったところ、想像通り上手くいかなかったですね。ただ、他の合わなかった映画は、合わないなりに良いところもあるんですが、この映画には良いところが全然なくて。はっきり言って映画の出来自体が悪いと思います。チープでインスタントな演出に、カタルシスを感じられないストーリー。暫定で今年のワーストです。


まず、この映画は予告にもあった広瀬すずさん演じる野畑七瀬が、製薬会社の面接を受けるところから始まります。嫌いなものは製薬会社の社長である自分の父親・野畑計。「御社の入社は希望しません」と断固拒否。もう面接受けるなきゃいいじゃんという話で、最初から無理やり感がありますね。展開のためには必要だったのですが、全く不自然です。


そして次のシーンでは、七瀬がボーカルを務めるバンド・魂ズのライブ。ここで曲名がタイトルコールになっているのは良かったのですが、このライブがもうツッコミどころ満載。まず全然デスメタルじゃないですし、あんなに揃ってヘドバンしますかね。ファンも絵に描いたようなオタク集団で、15年くらい古いと思います。あれじゃバンドのファンじゃなくて、七瀬の顔ファンじゃないですか。イメージだけで撮っている気がして、あまり好きじゃないですね。


さらに、曲をぶった切ってまで、回想を挟むのでテンポは死滅。最初に演奏を見せておいて、観客の心を掴むのかな、ありがちだけど悪くない始まり方だなと思いきや、そんなことは全然なくてガッカリしました。まず掴みからして失敗していると感じました。



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・観客を信頼していないのかな



テンポの悪いオープニングが明けて、映画は本編へ。野畑製薬では、若返りの薬・ロミオを開発中。しかし、同じ製薬会社であるワトソン製薬も同じく若返りの薬を開発していて、ワトソン製薬は野畑製薬を吸収合併しようと目論んでいます。しかし、計はそれを突っぱね、自社での開発を目指します。


一方、七瀬のことが心配な計は見張り役をつけます。それが吉沢亮さん演じる野畑製薬社員・松岡卓。松岡は持ち前の存在感のなさを生かして、七瀬を監視。というかそのためだけに雇われている節もあって、どんな雇用形態だよと思います。


ここで、あまり好きじゃないのが、ライブハウスでのシーンなんですけど、松岡が自分のことを「存在感のないゴースト社員」だって言っちゃってるんですよね。こう自分から説明しちゃうのあまり好きじゃないなって。それは映画なんだから描写で見せることであって、台詞で言うことじゃないでしょう。吉沢さんの演技力があればいくらでも言わずに伝えられたと思いますし。


というか、この映画全体的に説明過剰すぎるんですよね。大事なことは全部喋っちゃう。特に七瀬が嘘をつくときに耳を引っ張るという癖があるというところ。あそこもわざわざ明言するまでもなく、広瀬さんの演技力があればどうとでもなったと思いますし、説明の多さはあまり俳優さんのこと信頼してないのかなぁとすら思いました。


あと、たぶん観客のこともそんなに信頼してないんじゃないかなって。これくらい説明がなければわからないだろと、見くびられている感じが嫌でしたね。特に状況が変わったときの説明。火葬時間が遅れたとき、早まったとき、いちいち状況を図で説明してくれるんですけど、そんなことしなくてもそれくらい分かるよって言いたかったです。あと、歌の歌詞も直接的過ぎる気がして、感動の押しつけ感がありました。そこはもうちょっと慎重に考えてほしかったところですね。




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・何年前の演出ですか


さて、野畑製薬内には、何やらワトソン製薬との合併を推し進めようとする人間がいる様子。まあ推理もへったくれもなく、その怪しい雰囲気のまんま、小澤征悦さん演じる渡部が内通者なのですが、そこは計には分かっていない様子。そして、内通者を探るために計が取った手段が、ロミオの開発途中で偶然できた二日間だけ死ねる薬・ジュリエットを飲み、自らが死んでいる間に怪しい動きをした人物を特定するというものでした(まあこれも渡部の提案なのですが)。


ジュリエットを飲み、一時的に死ぬ計。ただ、死の直前に渡部は謎の書類にサインさせるという、隠す気もない悪役ムーブ。その様子をロッカーからこっそり見ていた松岡が、計の死の真相を七瀬に伝えることで、ようやく物語は動き出します。93分という短い上映時間のわりに、ここに至るまでの時間がけっこう長く(30分以上はあったと思う)、構成も少し上手くいっていないように感じました。


そこからはコメディ映画らしく、俳優さんの大袈裟な演技と、二転三転するストーリーとで映画は引っ張られていくのですが、それにしても演出がチープでインスタントな感じはしました。それはもうコメディ映画だからという言い訳も効かないくらい(というかコメディ映画だからこそ、その辺りは真摯にやるべきでは)。


まず、これを言ったら元も子もないのですが、計が幽体として現れる演出が、個人的にはキツかったです。七瀬にしか見えていないとはいえ、けっこう何でもありで、便利な説明要員と化している気がしました。三途の川で死に別れた妻と再会するくだりも何を見せられているんだろうって思いましたし、極めつけはジェスチャークイズ。あそこは恥ずかしくて、もう直視できませんでした。


さらに、現実世界の描写も収まりの悪い演出のオンパレード。ジャパーンのキツさは言わずもがな。ワトソン製薬が葬儀場を予約できないようにしたり、棺桶を買い占めるシーンは本気でやってるの?と正気を疑ってしまいましたし(キャラクターじゃなくて、作り手の方ですよ)、葬儀会場での歌に対する反応も、宗教レベルの絶賛が気持ち悪い。


極めつけは七瀬の口元に生クリームがついていた演出ですね。もう2020年にもなって、まだそれやるかと。それはもう1900年代に置いてきてよと辟易してしまいました。松岡がクリームを拭うといった胸キュンシーンなんでしょうけど、全然キュンとしませんでした。




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・完全に作劇に失敗している



どうしても、ワトソン製薬と野畑製薬の合併を成し遂げたい渡部は、計を火葬してしまうことで、生き返らせなくすることを思いつきます。しかし、計を生き返らせたい七瀬と松岡は、当然これに反発。告別式を行って、火葬の時間を遅らせんとします。


この映画がきついのって、ここからの展開なんですよね。単刀直入に言ってしまえば、主人公である七瀬が全然頑張ってないんです。全部、偶然の産物なんです。葬儀会場のホテルが空いたのだって、郷ひろみさんの体調が悪くなったからですし、棺桶を用意できたのも魂ズのステージセットに元々あったから。警戒態勢の中紛れ込めたのも、松岡がたくさんのオタクを用意してくれたおかげですし、七瀬が何かしたことで、状況が変わったというのが全くないんです。


私は、物語というのは「キャラクターが困難を乗り越えるために頑張った軌跡」だと思っているんですけど、この映画にはそれが全然ない、厳しい言い方をしてしまえば、物語やドラマといったものがないんです。葬式会場で、七瀬が計への本当の気持ちを歌うシーンも、あれは感動させたいんでしょうけど、そこに至るまでの七瀬の頑張りがあまりに希薄すぎて、カタルシスが感じられません。だから何?と思ってしまいます。


この映画は「人間は考えるだけで存在している」だとか、「何がしたいの」だとか、「当たり前のことが一番大事」だとか、「大事な人と年を取りたい」だとか、感動するような台詞がいくつか出てきました。ただ、そこに至るまでの掘り下げやドラマが不十分なので、ただ上辺だけをなぞるように過ぎていった印象があります。はっきり言って薄っぺらい。なぜなら、七瀬が自分の力で困難を乗り越えていないからです。


この映画の一番杜撰だなと思うところが、解決方法でして。正直、後出しジャンケン感があるんですよ。ごみ箱に捨てられた取扱説明書だって、松岡がすぐ確認しない理由がありませんし、強い電圧を与えるって、それが静電気でいいのかどうかは置いておくにしても、全く七瀬が関わっていません


それに、最終的な解決もダメだと思います。まず、七瀬と計がなんかいいことを言って問題解決みたいな空気になったところで、渡部の横やりが入るんですね。無理やりサインさせた遺書には「七瀬が問題を起こした場合、一番の年長者に決定権が移る」という条項がありまして。この条項自体が意味不明なんですが、一番の年長者はワトソン製薬の社長。もちろん合併を決めます。が、ここで話はさらにもう一転。実は、ロミオの開発者が一番の年長ということが明かされ、合併は反故になります。


ここも一応伏線は張ってあるとはいえ、後出しジャンケン感は否めませんし、そもそも七瀬が完全に蚊帳の外なんですよね。極端な話、七瀬が場にいなくても成立してしまうんですよ。七瀬が何かすることで、状況が変わったみたいなものが全くないんです。七瀬の行動は何も掴み取っていないんです。エンタメ作品なんだから、最後は主人公に掴み取らせないとですよ。そんなハイヤーパワーみたいなものによって決着がついたら、今までのは何だったの?ってなります。完全に作劇をミスっています。




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確かに伏線回収はいくつもなされていましたし、そこに爽快感みたいなものはかすかにありましたよ。でも、それは末節に過ぎなくて。根本の困難の乗り越え方が偶然の産物でしかなかったら、それは単なるご都合主義でしょう。キャラクターの頑張りが何の影響も与えないんだったら、その話は失敗ですよ。


なんか演出も含めて、この映画はこうしちゃいけないという悪い見本になってしまっている気がしますね。「小説家になろう」などで、底辺をさまようアマチュア作家の小説でさえ、もうちょっとキャラクター、特に主人公が頑張ってますよ。この手の商業映画でこれなんて、個人的には認めたくないです。


褒めるところと言ったら93分というコンパクトさと、俳優さんぐらいですかね。広瀬すずさんは今までとは違う、尖っていて強い口調の演技もしっかりこなしていましたし(役の幅は広がったとは思うけど、それがキャリアにプラスになるのかは知らん)、吉沢亮さんは地味目な役に合わせて、現実的な口ぶりをしていました(吉沢亮さんである必要性があったのかどうかは疑問ですけど)。


堤真一さんもちゃんと役になりきっていて、職人気質みたいなものを感じましたし、木村多江さんは演出の被害者になっていてかわいそう。他にも端役で佐藤健さんや妻夫木聡など、めまいがするような豪華俳優陣が出演していて、そういう「この人も出てる」みたいな楽しみ方をするのが、この映画に限っては一番いいのかなと思います。


でも、いくら豪華な俳優さんたちを揃えても、元の脚本や演出が上手くいっていなかったら、ダメな映画になってしまうんだなと、この映画を観て思いました。話の大切さが身に染みた感じがします。俳優さんのファンにですら、あまりオススメしたくない映画ですが、創作をしている方にとっては「こうしちゃダメなんだ」と学ぶことができるかもしれないですね。私は、この映画にそれくらいの意味しか見出せませんでした。ごめんなさい。




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以上で感想は終了となります。『一度死んでみた』、今年に入って初めて、はっきりとダメだと言える映画でした。2020年にもなって、この映画が作られてしまう日本映画界がちょっと心配になるくらいです。どうにかなりませんかね……。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 






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