こんにちは。これです。前回に引き続いて、今回のブログも映画の感想になります。


今回観た映画は『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』。タイトル通り、1969年5月13日の三島由紀夫対東大全共闘の討論会を題材にしたドキュメンタリー映画です。私は三島由紀夫の小説は読んだことがなく、全共闘にも詳しくなく、左翼右翼ってなんですかという、単なる浅薄な阿呆なのですが、何となく関心が向いたという理由だけで、観に行ってきました。


そして、観たところ想像以上に面白い映画になっていましたね。正直、討論の内容はなんのこっちゃなのですが、それでも今観る意味がある映画だと言えます。もはや必見レベルで。


では、感想を始めたいと思います。まず、断っておきますが、この感想は三島由紀夫や東大全共闘の政治思想を論ずる感想ではありません。映画に関する感想としては間違いなく最も程度が低く、また拙い文章ですが、何卒よろしくお願いします。




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映画情報は公式サイトをご覧ください







1968-69年は「政治の季節」と呼ばれた時代。五月革命やプラハの春などの政治革命が世界中で起こり、その波は日本にも押し寄せていました。まず、組織や党派に属さない一般学生が結集し、大学改革を主張する全学共闘会議(全共闘)が発足。そこに左派の学生も合流し、大学問題の範疇を越えた政治的なスローガンを掲げ、安田講堂立てこもり事件など過激化していきました。火炎瓶が投げ込まれ、火がぼうぼうと燃える様子は、戦争がまだ身近だった頃の様子を存分に物語っていますね。


一方の三島由紀夫。こちらも遍歴が紹介され、日本を代表する作家であることが改めて伝えられます。意外だったのは、自分の体も鍛えていたことですね。それもゴリゴリに。東大全共闘から「近代ゴリラ」と揶揄されるくらい。また、自らいざというときに天皇を守る「楯の会」を結成するなど、かなりの天皇論者であり、左派学生とは異なる右翼思想の持ち主でもありました。この辺りはしっかりと説明してくれるので、分かりやすいですね。


そんな三島が東大全共闘に招かれて、東大駒場900番教室を訪れたのが1969年5月13日。当時の東大全共闘は安田講堂の事件で失敗し、次の一手として、当時のスター作家だった三島由紀夫を招いて討論するという手を打ちました。900番教室に集まった学生は約1000人。その中に三島は単身赴いていきます。そして、午後二時。後に伝説と呼ばれる討論会が開始されました。


ここで、その討論の内容をお伝えできればいいのですが、いかんせん私は頭が悪いので、討論の内容をいまいち覚えていないんですよね......。最初のスピーチに始まり、他者とは何か。自然とは。実在とは。天皇論は今も議論されているので、多少はわかりやすかったのですが、それ以外は政治に疎い私にはちんぷんかんぷん。デカルトの分厚い難解な哲学書を読んでいるようで、全く頭に入ってきませんでした。こういう本、私10ページも読まないで投げてしまいますからね。


いや、ちゃんとわかりやすく伝えてくれようとはしてくれるんですよ。大事なところは文字に起こしてくれていますし、ニュース映像や当事者の証言で内容を補完してくれます(芥正彦さんだけ明らかに雰囲気違い過ぎる)。さらには、平野啓一郎さんや内田樹さんなどが噛み砕いて解説してくれるのですが、頭がお粗末な私にはそれすら......。


「三島は持続に重きを置いていた」とか「戦後に適応するために涙ぐましい努力をしていた」とか言われても、分かるようで分からなくて......。まあ、この方々が解説してくれなかったら、本当に置いてけぼりを食らっていたと思うので、ありがたかったんですけどね。


でも、議論の内容は間違いなく面白いんですよ。異なる思想の応酬は、観ているだけで白熱しているのが分かりますし。もっと張りつめているのかと思いきや、適度に笑いもあって。ただ、話している内容が雲を掴むようで、私には理解できませんでした。もっと政治とかこの国の行く末について、議論するのかなと思いきや、名前がどうだとか関係づけがどうだとか、これって本題と関係あるのかな?という話もけっこうしていて。


で、これまた芥さんが、わざわざ難しい言葉を選んで喋るんですよね。何ですか、事物って。別に物事でいいじゃないですか。抽象的な言葉も多く、理解するスピードが追いつきません。「観念的なこじつけじゃないか」という野次には、本当にそれなと思ってしまうくらいです。頭良い人は本当に頭良いんだなというバカみたいな感想を抱きました。


あとは、楯の会や当時の担当編集等の証言で、三島由紀夫の人間性に迫ろうとしていたのもポイントですね。お寿司屋さんに連れて行ってくれた話だったり、自決した人の原因を神経衰弱だと決めつけることに怒ったり。映画では三島のベースにあるのは、10代を戦争末期という時期で過ごしたことみたいな話されていましたね。当時は戦争をして天皇のために死ぬことが当たり前で、自分の運命と国の運命が同一化していた。けど、戦争に負けてその二つが別れてしまって、さてどうしようかという。残された者の苦悩みたいなものは、この映画を観ていて印象に残ったシーンの一つでした。




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といったように、ところどころ分かりそうなところはあるんですが、全体的にはやっぱりよく分からないというのが正直なところです。自分の頭の悪さを実感させられます。ただ、そんな中でも印象に残っているのが、討論会の空気ですね。熱情は迸っているんですけど、意外に楽しそうなんですよ。議論にはユーモアもあって良く笑いも起こっていて。


まるで、彼らは本気で議論していることを楽しんでいる様子でした。相手から言葉を引き出すことを楽しんでいるといいますか。芥が三島の煙草に火を貸したシーンはそれを象徴するものでしょう。本当にいがみ合っていて険悪な雰囲気だったら、あんなことできないですよ。


そのベースにあったのが、お互いを認めることなんですよね。三島は東大全共闘の主張に反論するときも、否定から入らずに「諸君らの言うことは分かるけども~」みたいに、一定の理解を示してから入るんですよ。開口一番「それは違う」みたいなことは言わないんですよね。論理的矛盾を指摘したり、揚げ足を取ることもせず、言葉遣いも丁寧。相手である東大全共闘にしっかりと敬意を払っているんです。


「諸君らの熱情は認めるけども、それ以外は認めない」というのも、東大全共闘に参加する学生をしっかりと人間として見ているからですし、それは東大全共闘もそう。東大全共闘の学生は一度も三島を呼び捨てにしないんですよ。理解を示しているんですよ。全く反対の思想を持つ相手にも、敬意を払うことが議論の基本なんだと感じずにはいられません。


これって本当に今の時代、特にSNSでのやり取りとは真逆だなって思います。元来、SNSは文字数が制限されていて、議論にはあまり向かないツールではあるんですが、それにしたってここ最近は酷い。スマートフォンの向こうにも人間がいることを考慮せずに、匿名だから特定されないだろうと、思慮分別のない暴言のオンパレード。相手にも人生があることを考えれば、もう少し慎重にもなると思うのですが、画面の向こうを想像できないのでしょうか。俗にいう「炎上」は目をつむりたくなるほどです。そこに敬意は全くありません


いや、分かるんですよ。現実では気を遣ってばかりだから、SNSぐらい自由にやらせてくれというのは。ただ、それにしたって気軽に「死ね」とか「消えろ」なんて言っていいわけがないじゃないですか。思ったとしても言うべきではないです。言葉は、人を殺せるんですよ。物理的に。自分が吐く言葉が凶器となって人に刺さっているなんて、きっと思いもしないのでしょう。


そんな人たちには、劇中の三島のこの言葉を聞いてほしい。


非合法で人を殺したんなら、お巡りさんに捕まる前に、自決でも何でもすればいい


つまり、言葉で人を殺したのなら、その責任を取れますか?自分も死ねますか?ってことなんですよ。言葉って怖いんです。今でも大きな力を持っているんです。その自覚が匿名性が発達した現代では、希薄になっているのかなと感じました。言葉ってもっと慎重に扱うべきものだと思うんです。相手のことを考えて、責任を持って発しなければいけないということを、私はこの映画から感じ取りました。


なので、私はこの映画を一人でも多くの人に見てほしいです。特に、この映画のナレーターである東出昌大さんの不倫騒動を過剰に叩いていたツイッタラーたち。自分とは関係もないのに、よくそこまで躍起になれるなと感心してしまうほどなのですが、そういう人たちにこそ、この映画を観てもらって自省してほしいなと思います。自分の行為がどれほど恐ろしいことなのか分かってほしいです。


ただ、そういう人たちはこの映画、絶対観ないんだろうなと。本当に届くべき人には、届かないんだろうなと口惜しく思います。観て自分の行動を顧みてほしいんですけど、SNSで炎上への加担を続けるんだろうなと思うと、残念でたまりません。この映画を観ようかどうか迷っている方がいたら、ぜひ観ることを強く勧めます。内容は分からなくてもいいので、この映画のメッセージをぜひ感じ取ってください。



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以上で感想は終了となります。映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』。一人でも多くの人が見るべき映画です。三島由紀夫や東大全共闘について知らなくても大丈夫。ちゃんと説明してくれますから。どうぞ安心して、コロナウィルス対策を万全にしつつ、映画館に足を運んでくれると幸いです。お勧めです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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