こんにちは。これです。


いよいよ39府県で緊急事態宣言が解除されますね。映画館も徐々に営業を再開しており、良い兆しは見えてきていますが、まだまだ気は抜けません。私が入った劇場も座れる椅子は20%ほどしかありませんでしたし、ウィズコロナの新しい生活様式に慣れるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。引き続き、マスクなどの予防をしっかりとしていきたいと思います。


さて、そんな最中、私は一か月ぶりに営業再開した映画館に、映画を観に行っていました。今回観た映画は『もみの家』。不登校の女子高生が、自立支援施設で生活していくという、日陰者である私のパーソナリティ的にマストな映画です。好きな女優さんである南沙良さんが主演ですしね。


そして観たところ、想像と大きく違う印象を抱いた映画でした。まさかこんなことになるとは思ってもいなかったです。でも、灯りがついた後は映画館で観れてよかったと思いました。見逃さないで良かったです。


それでは感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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―目次―

・正直怖かった
・田舎はあんなに良いところじゃないよ
・嫌な展開を極力オミットしている
・振り切っていて逆に好き





―あらすじ―

心に不安を抱えた若者を受け入れる〔もみの家〕に、16歳の彩花がやってきた。不登校になって半年、心配する母親に促され俯きながらやってきた彩花を、もみの家を主宰する泰利は笑顔で招き入れる。
「うちの生活の基本は、早寝早起きと農作業。ご心配もあるかと思いますが、まずは腹を括ってじっくり見守って頂ければと」
娘を心配しながらも、母親は東京に戻っていく。

彩花のもみの家での生活が始まった。
朝。寮生たちはそれぞれが担当している当番をこなした後、食卓につく。
寝不足でごはんが喉を通らない彩花に泰利は自分たちで作った野菜を勧め、泰利の妻・恵もきゅうりのぬか漬けの乗った皿を差し出すが、匂いが苦手だと言って手をつけない。

昼。畑での作業中、お調子者の伴昭がふざけて彩花を泥の中に突き飛ばす。伴昭が謝り、他の寮生も声をかけるが泥だらけのままその場を無言であとにする彩花。
その姿を見かけたハナエは驚き、声をかけた。
「つらかったね。偉かったねぇ」
彩花は、堰を切ったように声をあげ泣き始める。

慣れない環境に戸惑いながらも、もみの家での生活に次第に慣れてゆく彩花は、周囲に暮らす人々との出会いや豊かな自然、日々過ごす穏やかな時間の中で少しずつ自分と向き合い始める――。

(映画『もみの家』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。












・正直怖かった



白河の清きに魚も棲みかねて もとの濁りの田沼恋しき


『もみの家』を見ている途中、私の頭の中には、記憶の彼方に埋もれたこの狂歌がずっと浮かんでいました。正直に言います。怖かったです。あんな優しい人、世の中にいないですよ。日常生活を営んでいるはずなのにリアリティがなく、席を立ちたいとさえ思いました。こんな怖い映画だとは予想外でした。作り手が意図したのとは、全く違う感想を抱いてしまいました。本当にすいません。


この映画は105分という限られた時間の中で、一年という長い時間を描いています。なので、とにかく序盤はテンポ重視。もったいぶることもなく、本田彩花が半年以上学校に通えていないことを示し、すぐに舞台となるもみの家へ。とにかく早く主題に入ろうという素晴らしいスピード感です。


今作の主人公である本田彩花を演じたのは南沙良さん。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で名演を見せて以降、活躍を続けていますが、今回の役も実にピッタリ。目線や表情で陰の空気を作り出すのが上手いんですよね。それによって心を開いた後の演技が、なんてことないものなのにより輝いて見えたり。いつの間にか、拒絶していた私を映画に引き込んでくれました。降る雪を見つめる横顔が特に良
かったですね。今後も作品を見ていきたい女優さんだと改めて感じました。




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・田舎はあんなに良いところじゃないよ


もみの家は、普通の家に心に不安を抱えた若者が集う、いわゆる自立支援施設です。入居者の誰もが仲良く、初めて来た彩花にも優しく接します。でも、考えてみると、突然親元を離れて、既に出来上がっている集団に放り込まれる。このシチュエーションってけっこう恐怖だと思うんです。少なくとも、私だったら嫌ですね。彩花も帰りたいと一度はこぼしていましたし。


でも、新入りの彩花を入居者たちは拒絶せず、受容するんですよね。それも涙が出るほどの優しさで。自分たちも心に傷を負っているからか、決して否定しません。まぁ、ふざけている人もいましたけど、それはご愛嬌でしょう。ただ、こうもすんなり受容されると、何か裏があるんじゃないかと却って気味が悪いです。


悪意なんてものは全くなく、誰もが完全な善意の塊。でも、その一面しかなかったら、それは人間じゃなくて、人形に近いものでしょう。「ここにいて良いんだよ」と、逆に押し付けられているようで、居心地の悪さのようなものを感じてしまいました。普段優しくされたい、認められたいと思っているのに、いざ優しくされると「なんか違う」と思ってしまう。私は何とも面倒くさい人間です。


もみの家の生活は「早寝早起き、仕事は農業」。自分で作った作物をいただく、東京では為しえないプリミティブな生活です。田んぼを耕すのも、田植えをするのも手作業。機械使えばいいじゃんと思わずにはいられないのですが、そこは近代化にかぶれた人間のエゴでしょう。田舎で土と、作物と接することに意味がある。実際、汗をかいたなら、私だって愛着は湧いてくるでしょうし、悪くないと思うかもしれません。なんら間違ったことは言ってません。


ただ、ちょっと田舎を美化しすぎているように感じてしまったんですよね。田舎には温かい人のつながりがあって(おばあちゃんとの交流みたいな)、都会はそれが希薄だと言わんばかり。富山で実際に一年に渡り撮影したそうですが、ここまで良い面しか描かないのは、却って失礼な気もします


確かに四季折々の自然は綺麗でしたし、山からの眺望はご当地映画あるあるとはいえ、夕日が田んぼに跳ね返って幻想的でした。でも、田舎は理想郷じゃないでしょう。村八分とかありますし。おばあちゃんが亡くなって三日経って発見されたという少し厳しいシーンも織り交ぜていましたが、それは都会でもありますし。清らかすぎて、窮屈に感じてしまいました。捻くれてますね。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。









・嫌な展開を極力オミットしている


そして、さらに怖いのが、この至れり尽くせりのお城のような空間に、彩花はわりとすぐに順応するところです。入居者と少し対話しただけで、心を開いて、笑顔を見せる。極めて失礼ですが、本当に不登校なの?と邪推してしまうほどです。そりゃ彩花本人にとっては、大きな出来事なんでしょうけど、ちょっと描写不足かなという感じはしました。いつの間に取り込まれてしまっていることに、半ば恐怖を感じてしまいます。


思えば、この映画って嫌な展開を極力オミットしていたように感じるんですよ。もみの家を卒業していった淳平という男性や、萌絵という女性だって、挫折して戻ってくるんだろうなって思っていたけれど、卒業してそのままですからね。キャラが立っている人からいなくなるのはどうなんだろうと少し思いましたけど、自立支援施設の役割を十分すぎるほど果たしていますね。


嫌な展開というのはおばあちゃんが亡くなるくらいで、それも彩花の成長のためには必要なシーンでしたし、本当に優しい世界でした。正直、狂っているほどに。優しい世界というのは私の好みですし、現実も優しい世界であってほしいなと思うのですが、ここまで徹底されると逆に恐ろしいです。ある意味今年最高のサイコホラーだとすら感じてしまいました。


でも、映画が進むにつれて、私もこの優しい世界に慣れてしまったんですよね。それは南さんの演技力や坂本監督の手腕もあるんでしょうけど、やっぱり優しくされたいんだなって。おばあちゃんが亡くなったときには、そうなると思っていたとはいえ、悲しかったですし、出産のシーンは本当にハラハラしました。


たぶん、ぬるいお湯みたいなこの映画の温度に、冷たい水にいた私は、最初は熱っと感じていたんですけど、だんだん気持ちよくなっていったのだと思います。気づけば私も取り込まれてしまっていて、スクリーンが明るくなったときに、我に返ってまた怖くなりましたね。



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・振り切っていて逆に好き


さて、この映画で描かれていることって、世間一般で見れば100%正しいんですよ。否定するのではなく、受容することが福祉の現場で必要とされていることも理解できますし、地域の人々との触れ合いが人間関係が希薄になっている現代に必要とされているのも間違いないでしょう。命は循環している。お母さん産んでくれてありがとう。そして、また学校へ通い出す。ぐうの音も出ないほどの正しさです。


ただ、その正しさに苦しんでいる人もいるんですよね。不登校の子供には、学校に行けという言葉は真綿で首を絞められているように感じるでしょうし、水が清らかすぎると却って魚は棲めないものなんですよ。私も仕事がないときがありましたし、地域のサポートステーションにお世話になった時期もあります。職員の方は、私を受容してくれましたし、そのことに嬉しさを感じたのも事実です。ただ、それも行き過ぎると恐ろしいんだなって。過量の薬は毒になるんだなって感じてしまいました。


と、ここまであまり良いことを書いていませんが、それでも私はこの映画好きですよ。ここまで振り切っていると、怖さを通り越して逆に好感を持ってしまいます。何事も中途半端は良くないですからね。途中で思った「あっ、こういう映画なんだ。このまま突き進んでくれたらいいな」というのをブレずにやってくれましたし、ホラーとして好きです。完全に意図されたのとは違う見方なんでしょうけど、現時点で2020年上半期ベスト10に入ります。


でも、こんなことを思ってしまう私は、きっとあまり良い心根をしていないのでしょう。優しい世界に溶け込んで、ラストシーンに爽やかな感動を覚える人の方が、よっぽど素直で良い人間だと思います。現実の人間はこんな優しいものじゃない。そんなことを思いこんでいる自分が今は怖いです。もっと人を信じられたらいいんでしょうけどね。なかなか難しいです。


それと最後に一言。坊主の人どこ行った?



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以上で感想は終了となります。映画『もみの家』、私のは大分捻くれた感想ですが、素直な優しさが詰まった映画ですので、見る人が見れば感動すると思います。こんな状況下で、安易に勧めづらいのですが、よろしければ映画館でご覧ください。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい


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