こんにちは。これです。


先日、緊急事態宣言は解除されたものの、今日は50人近くの感染者が出てしまいましたね。クラスターもまた発生しているようですし、コロナ禍がまだまだ過ぎ去っていないことを実感させられます。TOHOシネマズは今週末、全ての劇場を営業再開させますが、本当に大丈夫なのか心配になってきます。感染対策には引き続き気を付けていきたいですね。


映画館ではソーシャルディスタンスが定められ、席を開けての鑑賞が半ば義務化。そんな状況の中で、私は今日も映画を観に行ってきました。今回観た映画は『彼らは生きていた』。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン監督が製作した、第一次世界大戦下のイギリス軍を描いたドキュメンタリー映画です。単純な私はポスターにある「ロッテントマト驚異の100点!」という宣伝文句にひかれたのです。


そして観たところ、その宣伝文句も頷けるほどの力作でした。今年観た映画の中でもトップクラスに辛かったです。でも、今は観て良かったと感じています。それくらい貴重な映画でした。


では、感想を始めたいと思います。拙い文章ですが、何卒よろしくお願いします。




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―目次―

・観る教科書みたいな序盤
・軍人たちは意外と明るい表情をしていた
・凄惨な突撃は観るに堪えない
・一番悲しいのは今も戦争が続いていること





―あらすじ―


第一次世界大戦
兵士たちが見た真実の戦場とは――


1914年、人類史上初めての世界戦争である第一次世界大戦が開戦。8月、イギリスの各地では宣戦布告の知らせと共に募兵を呼びかけるポスターが多数掲出され、志願資格の規定は19歳から35歳だったが、19歳に満たない大半の若者たちも歳をごまかして自ら入隊。よく分からないまま志願した者も多く、国全体が異様な興奮状態に包まれていった。
練兵場での6週間ほどの訓練を経て、西部戦線への派遣が通達された。
船でフランス入りしたイギリス兵たちは西部戦線に向かって行軍。イギリス兵たちは塹壕で監視と穴掘りに分かれて交代しながら勤務する。遺体を横切りながら歩き、ひどい環境の中、つかの間の休息では笑い合う者たちもいた。
菱形戦車も登場し、ついに突撃の日。彼らはドイツ軍の陣地へ前進する。そこへ、突然に射撃が始まり…。

(映画『彼らは生きていた』公式サイトより引用)



映画情報は公式サイトをご覧ください。







・観る教科書みたいな序盤


映画が始まってまずスクリーンに映し出されたのは、正方形のモノクロの画面。軍人たちが整列して歩を進めています。そこに被さるのは、かつての軍人たちが戦時中を振り返る音声。この映画は100年前の映像を復元して見せていますが、当時は録音技術がなかったため、映像にインタビュー音源を被せるという方法を取っていました。この時点では戦争の悲惨さを語るものは少なく、「楽しかった」という声すらありました。そして、証言が重なるにつれて画面は大きくなり、ついにはスクリーン全体を覆うほどになります。映画の本格的なスタートです。


時は1914年のイギリス。第一次世界大戦の勃発とともに、徴兵を呼び掛けるポスターが掲出されます。「君が入隊すれば勝利は確実」などいった扇動的なメッセージが踊るカラーのポスターに、当時の映像が合わさって流れます。入隊資格は19歳からでしたが、年齢を偽って入隊するものも少なくなかった様子。正直に申告したけれど、嘘をつくように言われたなんて証言もありましたね。入隊受付には千人が並んでいたみたいです。


ここ何が怖いかって、皆が入隊しているから俺も入隊しようみたいな空気が形成されていたことなんですよ。男性は入隊し、女性は快く送り出す。お国のために役立たなければ人間じゃないみたいな一種の洗脳がなされているように感じました。ナショナリズムの極致。授業で習った第二次世界大戦下での日本みたいで、どこの国でも、いつの時代でも変わらないんだなとゾッとさせられます。


そこからは、軍隊の訓練の様子や戦地に赴く様子などが、ザッと流されます。小ネタも挟みつつ展開していきますが、まだこの時点では画面はモノクロなんですよね。公式サイトには、当時の映像を3D技術も用いてカラーリングみたいなことが書かれていたので、観る前は当然全編カラーなんだと思っていました。恥ずかしながら。でも、映画が始まって30分くらいしても、まだモノクロのままなんですよね。時間とか予算とかいろいろな都合があったのかもしれないですけど、ここは観ていて少し退屈に感じてしまいました。カラーだったのは全体の半分ほどでしたね。


さらに、映像と音声が必ずしも合っているわけではないので、情報量が多い多い。特に前半はほとんどひっきりなしに喋っているので、本を読んでいるみたいに間髪入れず文字がなだれ込んでくる感覚がありました。まるで分厚い歴史の参考書を読んでいるみたいです。観る教科書と言ってもいいでしょうか。一方的に押し付けられて、ちょっと嫌な感じもしましたが、それもカラーになってからは印象が一変。引き込まれるように観ていました。




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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。













・軍人たちは意外と明るい表情をしていた


カラーになって最初のシーンは、軍人たちが西部前線の塹壕の中を進むシーン。交代制で監視や穴掘りに勤しみ、睡魔に襲われ、また空腹に苦しむ彼ら。もちろん相手の銃弾や炸裂弾の破片なんかも飛んできますので、全く安全ではありません。死体は当然のように転がっており、カラーになった分、血の赤色がグロテスクに映ります。虚飾なしのむき出しの死体は思わず目を背けたくなりました。


それに加えて、個人的にきつかったのが人間以外のシーンです。この時代にはまだ馬が現役で、砲弾などは馬車によって運ばれていましたが、当然、馬に乗っている間も砲撃は来るので、馬も死傷します。皮膚がめくれ、血が滲む。人間と同じくらい悲惨に感じてしまうのはなぜでしょうか。


さらに、前線にいる間は体を洗うことも、服を着替えることもできないので、シラミが発生します。このシラミがですね、また克明に映されるんですよ。足の一本まで。髪の毛をうようよしていて気味が悪い。それに、死体にはネズミが群がります。大量発生したネズミが屠殺されていて一か所に固められている様子は、生理的な嫌悪感を催します。


あと、これは人間なんですけど、冬になると塹壕には水が溜まるんですね。で、長い間歩いていると足が凍傷になってしまうと。この凍傷になった足がとにかく見るに堪えなくて。足先が真っ黒に変色してるんですよ。この映画の中で、個人的に一番キッツいシーンでした。カラーリングしていた人はどんな気持ちで作業していたのか聞きたい。


とまあ、嫌だった描写を挙げればキリがないんですが、意外だったのが、軍人たちはそれほど苦に感じていなかったこと。変な高揚感があったのかもしれませんが、暇な時間には笑顔で雑談をしているんですよね。「今撮られてる?イェーイ」みたいな人たちもいましたし、「落ち着いてさえいれば、前線は楽しかった」という証言すらありました。この映画は単に戦争の悲惨さだけでなく、軍人たちの意外な明るさも描くことで、よりリアルに戦争の姿を捉えています。実際のところは分かりませんが。


四日間の前線での勤務を終えた後に、一週間の休憩があるんですけど、軍人たちはこの休憩を精一杯楽しんでいるんですよね。ワイワイ喋ったり、タバコやギャンブルをしたり。今に繋がる問題的な描写もありましたが、緊張から一時的にでも解放された彼らの姿は、微笑ましくもありました。だって、ビールを飲めるとあれば一斉に、酒樽に群がっているのですから。現代人と変わらないなと少し笑ってしまうくらいです。まあここで笑顔をたっぷりと描いておくことで、この後の展開がより辛いものとなるんですけどね。




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・凄惨な突撃は観るに堪えない


休憩も束の間。軍人たちには、ドイツ軍へ突撃せよという指令が下ります。前線にさらに人数が投入され、塹壕はすし詰め状態。そして、銃剣を装備して、白兵戦が始まってしまいます。この白兵戦はまさに銃弾の雨あられ。ドイツ軍の機関銃にイギリス軍は成す術もありません。切り札として投入された戦車も破壊されてしまう始末。当然中にいた人間は即死です。さらに、突撃隊の一は把握されていないので、後ろからは味方の砲弾が飛んできてしまいます。引くことはできず、軍人たちは弾幕の中を進み続けるしかありません。


ここは流石に撮影されていなかったため、絵で代用されますが、この絵もまたキツイ。普通に銃剣で相手の肩をぶっ刺している絵とかありますからね。そして、数多の証言から浮かび上がるのは、人が次々と死んでいく地獄。死体が横たわっているのはごく当たり前のことで、いちいち気にしてなんかいられません。ある軍人が笑っている映像を流しておいて、次の瞬間には銃声とともに死体になっているなんて演出もあり、思わずやめてくれとこぼしたくなりました。


さらに、証言によって積み重ねられるのは容赦のない欠損描写。腕が吹き飛んでいるのなんて、もう気にも留められないぐらい。話していたら、そいつの頭が吹き飛んだみたいな証言もありました。もう何度も、何度も何度もこの欠損の話がなされるんですよ。その度、イメージしてしまって心臓が縮こまり、身震いがしました。何度も何度も何度も。本当に戦争の苛烈さを頭に叩き込んできます。


これに輪をかけて辛いのが、先の前線のシーンで「前線では偶然隣り合った奴が仲間になる」といった証言があったこと。戦場という極限状態のため、軍人たちはより強固な関係性で結ばれていきます。何度も「仲間」という言葉が出されましたが、戦場ではその仲間が当然のように死んでいくんですよ。死体を見過ぎて感覚がマヒしてしまったという証言が、その悲惨さをより一層際立てます


それにですね、イギリス軍に志願した若者には19歳未満の者も少なくなかったと前述しましたが、これはドイツ軍も同じだったんです。両軍ともにまだ20歳もいかない若者たちがバッタバッタと死んでいってる。戦争とは国の未来を切り開くようでいて、次代を担う若者を次々に殺す、未来を奪う行為なんだなと痛感させられます。軍部がまともに機能していれば、そもそも戦争なんて起こらなければ、彼らは死なずに済んだのに。そう考えると、戦争の醜悪さがより身に染みますね。




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・一番悲しいのは今も戦争が続いていること


幾度にも繰り返された悲惨な白兵戦を経て、戦争は終結。ここで、イギリス軍とドイツ軍が初めて交流します。もう泣きたくなったのが「敵対していたドイツ人は多くが好人物だった」という証言があったことです。ドイツ人たちも命令して戦わされていたに過ぎない。鉄線を越えてみれば、同じ人間だった。照れながらもお互いの帽子を交換したり、仲良く写真を撮ったりする姿が胸に沁みます。ドイツ政府側も休戦を望んでいたようですしね。


第一次世界大戦は終結しましたが、その後のイギリスは失業した退役軍人で溢れかえってしまいます。軍しか知らない人間もいるわけで、彼らは路頭に迷ってしまいます。ベッドで寝ていたはずが、起きたら床に寝ていたという戦争の記憶が抜けないエピソードも語られていましたし、締めなんてなじみの客に「しばらくどこ行ってたんだ?」と言われて怒ったという証言で終わりですからね。戦争の傷跡は軍人だけじゃなく、社会にも残るんだなと思わざるを得ません。


この戦争において、イギリス軍とドイツ軍の見解は実は一致していて。それは全く無意味だったというものでした。イギリス軍だけで100万人もの戦死者を出し、多くの未来ある若者の命を奪い、社会に大きな傷跡を残し、国力を疲弊させた戦争が全く無意味なものだったと。技術の発展うんぬんを抜きにしても、やはり戦争はしてはいけないという当たり前のことを、強く思い知らされます。


でも、一番悲しいのが、この第一次世界大戦から二十年しかしないうちに、第二次世界大戦が勃発していることなんですよね。そして、今も各地で戦争や紛争は続いている。アメリカでは抗議デモの鎮圧に軍が駆り出されていますし、シリア等では今も内戦が収まっていません。


白兵戦は減少し、飛行機から一方的に爆弾を落として、何万人もの命を奪えるようになった。スイッチ一つで、はるか遠くにいる相手も殺せる時代です。人殺しをしているという実感は薄く、一方的な攻撃に話し合いの余地はありません。イギリス軍とドイツ軍のように一つのフレームに収まることはできないのです。


その戦争をこの映画は、無意味なものと断じています。私たちは歴史から多くを学ぶことができます過去を知ることは今を知ることに等しい。戦争の悲惨さをこれ以上ないほど克明に記録したこの映画は、まさに今観る価値がある映画だと私は感じました。R15+指定がなされており、グロテスクな描写も多いですが、ぜひ一度は観てみることをお勧めします。きっと感じるものがあるはずですよ。



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以上で感想は終了となります。『彼らは生きていた』、第一次世界大戦を描いているようで、今にも通じる作品です。機会があれば観てみてはいかがでしょうか。お勧めです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 






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