こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想になります。今回観た映画は『水曜日が消えた』です。


まず、この映画は本当は5月公開でした。しかし、ご存じの通りコロナ禍で他の多くの映画と同様、延期に。いつ観られるんだろうと思っていましたが、地方のシネコンでもかかるような公開規模の作品としては、先駆けて6月に公開。新作邦画に飢えていた私は、早速鑑賞してきました。


まあ本当のことを言うと、どうしても観たい映画というわけでもなく、正直、期待値もあまり高くなかったのですが、観たところ予想外に面白かったです。映画を観終わって素直に「好き~」という言葉が漏れました。ぶっちゃけ映画としてのクオリティはそんなに高くないですし(低くもないよ)、最後ももうひと捻りほしかったんですけど、でも全体としてはなんか好きなんですよね。観てよかったなと感じます。


それでは、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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―目次―

・何といっても中村倫也さんですよ
・私にはこのくらいがちょうどいい






―あらすじ―

幼い頃の交通事故をきっかけに、ひとつの身体の中で曜日ごとに入れ替わる“7人の僕”。性格も個性も異なる7人は、不便ではあるが、平穏に暮らしていた。各曜日の名前で呼び合う彼らの中でも、“火曜日”は一番地味で退屈な存在。家の掃除、荷物の受け取り、通院、、、他の曜日に何かと押し付けられて、いつも損な役回り。今日も“火曜日”はいつも通り単調な一日を終えると、また一週間後に備えて、ベッドに入る。
それは突然やってきた。“火曜日”が朝目を覚ますと、周囲の様子がいつもと違うことに気付く。見慣れないTV番組、初めて聞く緑道の音楽…そう、“水曜日”が消えたのだ。
水曜日を謳歌する“火曜日”だったが、その日常は徐々に驚きと恐怖に変わっていく。残された“火曜日”はどうなってしまうのか―。

(映画『水曜日が消えた』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください。












・何といっても中村倫也さんですよ



この映画の最大の長所。それは主演の中村倫也さんです。おそらく映画を観た人が100人いたら、98人はそう答えるのではないでしょうか。そのくらい、この映画の中村倫也さんは輝いていました。


その有様はまさに中村倫也濃縮還元劇場。一人七役(ということにしておきます)を演じるという謳い文句でしたが、この映画の主人公は火曜日です。曜日ごとに人格が入れ替わるという設定の中でも、最も地味で退屈な人格。野放図な月曜日の後始末を任され、冷蔵庫の中身を整理し、日記も一番まめにつけています。一番おどおどした人格でしたが、彼をメインに据えたことがこの映画が成功した最大の要因だと私は思います。


何が良いかって、その大人しい受けの演技ですよ。グチグチ言いながらも、しっかりと他の曜日の後始末をして、生活をする様子は微笑ましくもありながら、どこか悲しくもある。でも、抑え目で柔らかな声のトーンや、力の入っていない雰囲気からは、こんな言葉で形容していいのかわかりませんが、萌えを感じました。


もうですね、いちいち火曜日の仕草が萌えるんですよ。図書館で高いところにある本に手を伸ばしたりとか、耳の後ろを触る癖とか。それがあざとくなく、あくまで自然体でやっているからたまらない。推さずにはいられません。本当、ただ生活しているだけで尊い。すっかり中村倫也さんのファンになってしまいました。


もうこの映画は中村倫也をものすごく推していて、9割以上の時間画面に映りっぱなしなんですけど、この采配が的中していると感じます。私が観た回は、観客の9割が女性だったんですけど、中村倫也さんのファン層ってやっぱり女性が多いと思うんですよ。



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中村倫也さんが出演した中で、多くのファンを獲得した作品と言えば、『半分、青い』と『凪のお暇』でしょう。このうち、『半分、青い』は分かりませんが、『凪のお暇』の視聴者はおそらく女性が多かったのではないでしょうか。彼が演じた通称"ゴンさん"は放送されるたびに話題になり、ツイッターのトレンドにも入ってましたから。中村倫也がここで一気にファンを掴んだことは、自明だと思います。


でもって、この映画を観に来る一番の層って、中村倫也さんのファンである女性層だと思うんですよね。吉野耕平監督は、いくつかのCMやPV、短編作品を手掛け、あの『君の名は。』にもCGクリエイターとして参加しているとはいえ、『水曜日が消えた』が長編初監督作品で、お世辞にも一般層に名前の知れた監督とは言えません。他のスタッフの方も、失礼を承知で言わせてもらえば、中村倫也さん以上に知名度のある方はおらず、やはりこの映画の一番の武器は中村倫也さんであることは明白です。


そして、制作陣もそれは重々承知だったようで、この映画はさまざまな中村倫也さんを見せつけてきます。というか、まず映画が始まる前に、中村倫也さんのスペシャルメッセージがありますからね。最初の「こんにちはか、こんばんはか分かりませんが」と少し照れながら言うところで、もうノックアウトですよ。観に来た女性のハートを鷲摑みですよ。プラスにしかならない試みで、これ他の映画でもやってほしいなと思います。


もちろん映画本編も良くて。火曜日の萌える仕草はもちろん、水曜日になっても火曜日の人格であるときの、戸惑う演技はオーバーになりすぎず的確。徐々に恐怖心が芽生えていくのを表情の変化で表していましたし、映画中盤に第二人格が登場するときの切り替えっぷりは、口調も完全に別人で、そのギャップに震えました。



さらに、注目していただきたいのが、終盤の〇〇〇が〇〇〇の〇〇をするシーン。ここはそれまでの〇〇〇とは微妙に変化をつけていて、言われてみればなるほどと思うような、細かい変化なんですが、その細かい演じ分けは白眉ものです。いろいろな味の中村倫也さんを楽しめるので、ファンの方は大いに満足することでしょう。本当、ここまで需要と供給が一致している映画も珍しいくらいです。制作陣は”分かって”いますね。(まあ、これが中村倫也さんのベストアクトかって言われれば、たぶん違うと思うけど、それでも)




また、脇を固める俳優さんも良かったです。石橋菜津美さんはサバサバしながらも、火曜日を心配する目線が良かったですし、夜に映画を観るシーンの小声でつぶやくところは最高です。水曜日が恋する図書館司書を演じた深川麻衣さんも、もうすっかり女優の風格を身に纏っていますし、何より安定して可愛い。


きたろうさんや中島歩さんといった医師の二人も、それぞれ違う役どころで映画のバランスを取ってましたし、休日課長さんはびっくりするほど出番が少ない。彼ら彼女らの最大限を引き出せたとは言い難いですが、映画の没入を妨げるほど浮いている方もいなかったので、総じていえば悪くないという言い方になるでしょうか。まあそこは吉野監督の伸びしろということで、どうか一つ。




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・私にはこのくらいがちょうどいい



そして、肝心の映画の内容についてですが、ここでは多くを語ることはいたしません。サスペンスという物語の性質上、予備知識なしで楽しんでほしいからです。ただ、ストーリーの強度的にはそんなに高くないかな......というのが正直なところです。


最初の女の人はヒール片方だけで帰ったの?とか(これ絶対何らかの伏線になると思ってた)、あの検査には何か意味あるの?とか、ツッコミどころはいくつか挙げられます。最後ももうひと捻りほしかったですし、あれで終わってしまうのは少しあっけない気もしました。絶対、もう一波乱あると思ってた。エンドロールは良かったですけど。


それに、映像的な強度もそこまで高くないかと......。撮影もときどき引いてみたり、監視カメラの映像を入れて、バリエーションを加えていましたけど、ちょっと緩い感じはしました。それに、吉野監督が自ら手掛けたVFXも、万華鏡的な演出で説明を飽きさせないようにするのは良かったのですが、おそらく一番気合を入れたであろう事故のシーンは、綺麗ですが、使い過ぎてちょっとクドいような気もします。


でも、映像の強度はインディーズ映画ほど低くはないですし、ストーリーの強度も致命的なほど弛緩してはおらず、バカな私にも分かる塩梅でした。何というか個人的にはこのくらいがちょうどいいんですよね。お風呂の温度は39℃、カレーは中辛、布団は羽毛的な。言い方は悪いんですが、ポップコーンを食べながら緩く観れる娯楽映画になっていると思います。


ますます口は悪くなるんですが、この映画って映画史に名を残すような傑作では絶対にないんですよ。かといって駄作でもなく、佳作という評価が個人的には一番しっくりきます。おそらく映画大好きなシネフィルの人からは、あまり評価されないと思います。でも、こういうライトな映画ファンに向けての映画もあっていいよねという。


先週、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』という映画を観たのですが、この映画はもう映像がバッキバキに凄くて。私はそこまでハマってないんですが、評価も「映画史に残る傑作!」と言わんばかりに高くて。そりゃ映画のクオリティとしては、『ストーリー・オブ・マイライフ』の方が断然高いんですけど、個人的に好きなのは『水曜日が消えた』の方なんですよね
 

これは、もう相性としか言いようがないなと。3月に見た『仮面病棟』も好きでしたし、私はこういうB級(狙ったわけではなく、結果的にそうなっているという意味です)サスペンス映画が好きなのかもしれないですね。もはや偏愛です。もう至らないところも含めて、愛していきたいなって感じました。あー好き。



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以上で感想は終了となります。映画『水曜日が消えた』。大々的に推せる作品ではありませんし、評価もそこまで芳しくないとは思いますが、個人的にはツボに入りました。よろしければ映画館でご覧ください。そう小声で言いたいと思います。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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