こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想になります。


今回観た映画は『弱虫ペダル』。累計発行部数1700万部の映画ですが、私にとってはこれが初体験。果たしてどうなるだろうかとおっかなびっくり観てきました。結論から言えば良かったとは思いますよ。少し惜しい気もしましたけど。


それでは感想を始めます。拙い文章ですがよろしくお願いします。




hab





―あらすじ―

千葉から秋葉原にママチャリで通う、運動が苦手で友達がいない高校生・小野田坂道(永瀬廉)。
念願のアニメ研究部に入ろうとしたが、休部を知りショックを受ける。
そんな時、坂道の自転車の走りを見た同級生の今泉俊輔(伊藤健太郎)からレースの勝負を申し込まれる。自転車で走る楽しさを初めて感じた坂道は、秋葉原で出会った同級生・鳴子章吉(坂東龍汰)に誘われて自転車競技部に入部する。マネージャーの寒咲幹(橋本環奈)や部長の金城真護(竜星涼)、巻島裕介(栁俊太郎)、田所迅(菅原健)ら尊敬できる先輩たちとの出会いによって、自転車選手としての思わぬ才能を発揮する坂道。そして迎えた県大会。レギュラーメンバーに選ばれた坂道は、初めて出来た「仲間」とともに、インターハイ出場を懸けたレースに挑む。

(映画『弱虫ペダル』公式サイトより引用)



映画情報は公式サイトをご覧ください












週刊少年チャンピオンで連載中の『弱虫ペダル』。タイトルは知っていましたが、漫画は基本ジャンプしか読まない私は、原作もアニメも未見の状態で映画館へと足を運びました。観る前は不安しかなかったのですが、ところが観てみてどっこい、想像以上の良作に仕上がっていました。ラストのレースは思わず胸が熱くなりましたし、原作は知りませんが実写化成功の部類に入るのではないでしょうか。


ただ、一方2時間の映画でできる限界も感じたんですよね。ロードレースはちゃんと俳優さんたちが漕いで、撮り方も工夫されていますし、盛り上げどころが複数あったのもよかったと思います。それでも、いかんせん描写不足なところが目立ち、惜しいという感じはしました。





※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。







この映画は春、入学するシーンから幕を開けます。主人公・小野田坂道はアニメ好きで、高校ではアニメ研究部に入ろうと意気揚々。しかし、アニメ研究部は休部になっていて、再開するには5人の入部者を集めなければなりません。しかし、それは友達がいない坂道にとってあまりに高すぎるハードルでした。


この映画で小野田坂道を演じたのは、アイドルグループKing&Princeの永瀬廉さん。普段ジャニーズ系にも疎い私にとっては、はじめましての方です。率直に申し上げますと、慣れていない感じはどうしても見受けられました。おどおどした口ぶりが同族嫌悪で少し嫌だったりもしました。でも、終盤につれて良くなっていたと思いますし、アニ研がなくなるシーンに代表されるように漫画チックな演技は、そうそう悪いものでもありません。でも、お風呂では眼鏡を外した方がいいのではと感じます。


坂道は40km先の秋葉原まで自転車で行ってしまうほどの健脚。20%の上り坂も立ち漕ぎなしで登ります。それに目を付けたのが、自転車競技部に入る気満々の今泉俊輔。坂道に勝負を仕掛けます。突き放してもついてくる坂道に驚く今泉。一人しか知らなかった坂道が、誰かと何かをするという楽しみを見つけるという筋書きは実に自然なものでした。


この映画で今泉を演じたのは、伊藤健太郎さん。『惡の華』などで何度かお見かけしたことある俳優さんだったのですが、今作でも抜群の安定感を披露。淡白なところがある今泉を、オーバーになりすぎることなく演じていました。熱くなりきれないからこそ、終盤の展開に意味がありますしね。ただ、伊藤さん自体は良かったんですけど、伊藤さんを見てキャーキャー言う女子たちは、ちょっと、いやかなり気になりました。ああいう安直な演出はそんなに好きじゃないです。


勝負は今泉の勝利。今泉は坂道を自転車競技部に誘っていますが、坂道はイマイチ踏ん切りがつきません。ある日、秋葉原で坂道が出会ったのが、コッテコテの関西弁を話す鳴子章吉。坂道の自転車を褒め、そのまま自転車競技部に勧誘します。この鳴子を演じたのは坂東龍汰さん。今までもいくつかの映画でお見かけしたことはありましたが、名前を意識して観たのはこれが初めてかもしれません。漫画チック、アニメチックに振り切った演技を披露。先輩との練習のシーンは流石にうるさいなと思いましたが、ここまで吹っ切れているのは個人的には嫌いじゃないです。




had






鳴子に連れられて坂道は自転車競技部に入部。さっそく一年生の実力を測るレースに出ることになります。ここ本当に展開速かったですね。あと『ぐらんぶる』でアホほど脱いでいた竜星涼さんがちゃんとしていて、少しすかした部長になっているのは笑いました。それと、29歳の柳俊太郎さんに高校生の役はそろそろ厳しいのではと思います。


自転車でレースに出ようとする坂道ですが、流石にそれは部長がストップ。代わりに純正のロードバイクを貰って走り出します。遅れてスタートした坂道ですが、先にスタートした同級生を次々追い抜き、先頭を走る今泉と鳴子に追いつきます。そして、二人を抜いて真っ先に山頂を通過。そのあとすぐに倒れてしまうわけですが、え?坂道めちゃくちゃ才能型じゃん。努力型だと思ってたら才能型じゃん。脚力については説明があったからいいものの、ちょっと教えられたぐらいでいきなりダンシング出来ます?才能の塊ですよ。


で、この才能型主人公・小野田坂道の脇を努力型のキャラクター、今泉と鳴子で固めているんですよね。ああこれは人気出るわなと。無双と努力が実を結ぶ、両方のカタルシスを味わえますもん。鉄板ともいえる構図だと思います。


それからは合宿のシーンを経て、舞台はインターハイ千葉県予選へ。6人のエントリーメンバーに名を連ねた坂道は(ここレギュラーの誰かが怪我して、坂道が代わりに出る展開だと思ってた)、初めての公式戦に臨みます。とってつけたような強キャラ?不動(ここは原作を読んでないと分からないなぁ)も参戦し、レーススタート。


このレースは観ていて、頭は冷静でしたけど、胸は熱くなったんですよね。何が良いかって、坂道、今泉、鳴子の三人それぞれに見せ場が与えられていることなんですよね。鳴子が序盤チームを引っ張り、坂道が得意の上り坂で今泉を先導し、最後に今泉が決めるという。カメラワークも一点に集中しないで工夫されていましたし、熱さと勢いがあったと思います。一人で誰からも役割を与えられなかった坂道が、役割を得て奮闘するという描写もグッドです。(ライバルチームの行為は進路妨害とかで反則にならないの?とは思いましたけど)










終わり方も(締めのセリフ以外は)良かったですし、原作を見ていない一見さんでも十分に楽しめる映画になっていると感じました。ただ、最初に述べたように二時間の映画に収めるには少し描写不足かなと思うところもあります。それは言ってしまえばキャラクターの掘り下げ方なんですが。


この映画って坂道以外のキャラクターの掘り下げがあまりないんですよね。辛うじて今泉の過去がチラ見せされるぐらいで、その他のキャラクターに至ってはほとんど皆無。おそらく原作ではしっかり描写されているのでしょうが、2時間の映画に収めるためにカットしてしまったあまり、キャラクターにのめり込むことができず、最後のレースにも熱さがもう一つ足りない気がしました。


きっと、この映画のターゲットは既に原作やアニメで『弱虫ペダル』を履修している方なのでしょう。その方たちはキャラクターの背景を知っているから脳内補完して楽しめますし、漫画やアニメに寄せた俳優さんたちの演技を諸手を挙げて受け入れるでしょう。ただ、原作もアニメも見ていない私にはその背景知識がないんですよね。2時間の映画に収めるための取捨選択の結果としては理解できますが、この映画は原作を見ていなくても楽しいけど、原作を見ていれば超楽しいという映画になっていると感じました。(悪口のように書きましたけれど、全く悪いことではないです)




hac




先ほど、ラストのレースで頭は冷静だったと書きました。なんで私が冷静でいられたかというと、うっかり「良いんだけれど、『ちはやふる』には及ばないかなぁ」と思ってしまったためです。いや、二部作三部作と一本の映画を比べることができないのは分かっているんですよ。でも、自分の中で高校部活ものの物差しとして『ちはやふる』が確固たる存在になっているんだなとは感じました。



hae




では、何が『弱虫ペダル』には足りなかったのでしょうか。若宮詩暢のような強力なライバルキャラクターでしょうか。でも、聞き及ぶ限りでは『弱虫ペダル』にも強力なライバルキャラクターはいるようですし、そもそも映画で若宮詩暢が登場したのは『下の句』からで『上の句』には登場しませんでした。そうやって少し考えた結果、『弱虫ペダル』と『ちはやふる』で最も違うのは「広がり」だと私は感じました。


『弱虫ペダル』も『ちはやふる』も、競技に熱中する高校生、プレイヤーはしっかりと描けています。ですが、『ちはやふる』には支える人、サポーターという視点があるんですよね。『上の句』で最も象徴しているのが、千早たちの師匠である原田先生でしょう。まぁ原田先生も名人戦に挑戦するくらいのプレイヤーではあるんですが、それ以上に千早たちを支えるサポーターとしての役割を担っています。


『上の句』で、新に勝てないと思い悩む太一に贈った「青春全部かけてから言いなさい」という言葉はあまりにも有名です。この言葉は太一の心の灯火になったたいへん重要な言葉なのです。(というか『ちはやふる』は原作からして"支える人"の描写がめちゃくちゃ上手いから読んでください。「産みの苦しみを知りなさい」とか痺れますよ)


一方、『弱虫ペダル』にはこういったサポーターとしての視点が希薄です。例えばマネージャーの寒咲幹。彼女を演じた橋本環奈さん自体は悪くはなかったのですが、問題は寒咲がいなくても(映画上では)物語が成立してしまうという点なんですよね。だって彼女、何かしました?坂道に発破はかけましたけど、あれって分かりきってることじゃないですか。というか喋っている暇があったら早よ行けやとさえ思ってしまいましたし、彼女の父親にしてもロードバイクを坂道に与えるという役割しか果たしていないのが現状です。


それに、これは観終わってから疑問に思ったんですけど、なんで総北高校自転車競技部には顧問がいないんですか?インターハイ常連校に顧問がいないのっておかしくないですか?こういうところもサポーターの視点が希薄だなと思ってしまいます。プレイヤーだけで完結しているおかげで「広がり」が足りていないというのは、この映画だけで見れば決して悪いことではないのですが、高校部活もののマスターピースである『ちはやふる』と比べてしまうと、どうしても一枚落ちてしまう印象を受けてしまいました。




それと、最後にこれはどうしても言っておきたいのですが、この映画の締めのセリフが私は一番違和感を覚えました。「誰にだって輝ける場所はある」という言葉。とっても良い言葉なんですが、それを才能型主人公が言うかねぇと。それじゃ何も良いところのない凡人の私は立つ瀬がないですよ。思わず「ケッ」と思ってしまったので、ここはもうちょっと考えてほしかったなと正直思います。




haa













以上で感想は終了となります。映画『弱虫ペダル』。最後の方は『ちはやふる』との比較で、ちょっと悪く言ってしまいましたが、単品の映画としては良作であることは間違いありません。原作を知らない方でも楽しめるようになっているので、興味のある方はぜひ観てみてはいかがでしょうか。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





☆よろしければフォロー&読者登録をお願いします☆