昨年、今年7月で”完結”することを発表したチャットモンチー(”解散”じゃなくて”完結”だから。解散って言ったら怒るファンも出てくるのでそこは注意してください)。
そして今年の元旦にトリビュートアルバムをリリースすることが発表されました。
月日は経ち、いつの間にか来てしまった発売日。その前日に平安堂(長野県にしかない本屋チェーン)に走り見事特典のポスターと一緒にフライングゲットしました。

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で、聴く前にインタビューを読んで、

CHATMONCHY Tribute -My CHATMONCHY- オフィシャルインタビュー

http://www.chatmonchy.com/interview/

そして聴いてみたところ愛に溢れた素晴らしいトリビュートアルバムでした。



例えば「チャットモンチー」という言語があるとして、みんな同じ言語を使っているけど口調だったり、性格だったり方言だったりしてみんながみんな違う。みんなが「チャットモンチー」っていう共通言語を使って会話してる。トリビュートアルバムってそういった会話を楽しむものでもあると思うんです。そこに男性や女性、プロやアマといった垣根は存在しない。

で、日本語で言ったら「あいうえお」、英語で言ったら「ABC」。そういった音素に当たるのがこのトリビュートではチャットモンチーへの愛情で。今回参加したミュージシャン全員に無意識下での愛情が根底にあるので、出てくるのは愛のある言葉、愛のある音楽ばかりなんですよね。16通りの言葉、音楽、愛情がこのトリビュートアルバムには詰まってます。


また、今回に限らずトリビュートアルバムっていうのはそのミュージシャンに「好き」という気持ちを伝えるラブレターでもありますよね。で、チャットモンチーでラブレターと言えば「Last Love Letter」です。


サムネで「チャットモンチーやめないで」って...。おぉう...。私もおんなじ気持ちだよ。

今回チャットモンチーが完結する前のタイミングで出るのでこのトリビュートアルバムはチャットモンチーに向けた「Last Love Letter」なんだな。って一瞬思いましたけど、ちょっと考えて「いや、それは違うな」と。

だってチャットモンチーは完結していなくなっても、チャットモンチーが残してくれた音楽、残してくれた思い出はきっと生き続けるでしょうし、これからも全国のバンドサークルや軽音楽部でチャットモンチーはコピーされ続けて、どこかのライブハウスでチャットモンチーは鳴らされ続けるはずで。

言語だって次から次へと伝えていかなければそこで途絶えてしまうわけですし、実際滅んでいった言語が歴史上にいくつあることか。

でも、私たちはチャットモンチーを聴き続けて歌い続けて鳴らし続けていくことで「チャットモンチー」という言語を次代に繋いでいけるわけです。

今回のトリビュートアルバムでも、接点のないようなミュージシャン同士が、ミュージシャンと私たちが「チャットモンチー」という言語で繋がれました。そしてこのアルバムを聴いている私たちも同じ日本語を話す同士であるように、「チャットモンチー」という言語を感受することで繋がれている。そして、まだ見ぬこのトリビュートをきっかけにチャットモンチーを聴き始める人とも。

本人たちは完結しますが私たちの話す「チャットモンチー」という言語は、私たちが話すのを止めない限り、完結することはありません。それはなんて素敵なことなんだろうと。これからも「チャットモンチー」という言語を聴いて話していきたいなと。そんなことを思ったトリビュートアルバムでした。まだ聴いていない人がいたら是非とも聴いてみてください。オススメです。

それとアルバムのクレジット、Thanks toの最後に”高橋久美子”ってあるのが素敵で胸が熱くなりました。まだ繋がってる。ちゃんと。






以下、軽くそれぞれの曲の感想を述べていきます。軽くといっても4000文字ぐらいあるんですけど。



1.「ハナノユメ」/忘れらんねえよ 

チャットモンチーに影響を受けたバンドってリアルに5万といると個人的には思っていて。その中でも「忘れらんねえよ」は最たるものですよね。ボーカルの柴田さんがチャットモンチーを見たところから始まったバンドですし。そんなもんでこのカバーには不器用な男の真っすぐな純情がこもりまくってる。最初にアカペラで入るのがもう。YouTubeでティザー見た時から最高だなと。最後のシャウトも凄い熱入ってて気持ちが伝わってくる。アルバムのオープニングを飾るにふさわしい曲です。



2.「Make Up! Make Up!」/CHAI

原曲も好きだけど、原曲よりもガーリーになっていてこちらも好きです。Aメロがわりと歪んでいたり、サビでパーカッション?が印象的に使われていたりもポイント高い。個人的に「Make Up! Make Up!」はアルバム「生命力」の中でももっと評価されるべき曲だって思っていたので今回こういう形でCHAIがスポットライトを当ててくれて嬉しい。コメントのテンションにちょっとついていけてないけどこういう芸風の人たちなのかな。いい意味でウザいですね。



3.「シャングリラ」/ねごと

久しぶりにねごとを聴く人は少し戸惑うと思うんですけど、最近のねごとってかなりシンセシンセしてて初期とはだいぶ違うんですよ。これが今のねごとなんです。最近のムードからももっとしっとりとした曲をやるのかなとも思ってたけど「シャングリラ」という王道チョイスで来ました。もうイントロから浮遊感が溢れててまさに最近のねごとって感じですよね。原曲にはほとんどなかったアウトロを長めにとることで余韻がめっちゃ残ります。蒼山さんの歌声も沁み込んでくる感じでとても好きです。



4.「初日の出」/People In The Box

何て言ったらいいか分からないんですけど不思議なアレンジですよね。何かが漂ってる。原曲にも僅かにあったアンニュイさが20倍ぐらいに増幅されてる。インタビューでも言われてますけど、間奏に「世界が終わる夜に」のフレーズが挿入されていて。「初日の出」っていう始まりの曲に入れてきたってことは「始まりと終わりは表裏一体。チャットモンチーは完結するけど、それは新たな始まりでもある」ってことなんですかね。歌詞にも「初めては終わらせていく」ってありますし。少なくとも私はそう感じました。



5.「惚たる蛍」/Homecomings

チャットモンチーの中でも隠れた名曲として知られるこの曲。今回Homecomingsのカバーで原曲の儚さを残したままより力強くなってますね。でもって「夜」っていうのがより前面に出てて情景が浮かんできますよね。夏の夜の川に舞う蛍の群れが。幻想的。ギターの福富さんからのコメントからもそれは伝わってきます。Homecomingsを知らなかったので、今回YouTubeで曲を何曲か聴いてみたんですけど普段は英詞の曲を歌ってる人たちなんですね。今度アルバム借りてちゃんと聴いてみようかな。



6.「こころとあたま」/ペペッターズ


一般公募の2曲のうちの一曲目。今回のトリビュートの詳細が発表されたときに公式HPに上げられた長文を見て「うわっ、この人たち凄いな。チャットモンチーガチ勢や」って思って、どんなカバーなのか楽しみにしてたんですよね。それで聴いてみると想像以上に良くて。原曲の疾走感はだいぶ落ち着いてはいるんですけど、代わりに揺るぎのない泰然自若さみたいなものが付与されていて、安心して聴ける。原曲とはだいぶカラーが違いますけどどちらも好きです。コメントからもチャットモンチー愛があふれ出てますね。最後の方は「ハイビスカスは冬に咲く」のオマージュかな。好きだから好きだって胸を張ってる、そんなカバーです。



7.「バスロマンス」/YOUR SONG IS GOOD


インスト。原曲の幸福感がYOUR SONG IS GOODというエフェクターで増幅されてます。優しい世界。歌を担当してる鍵盤ハーモニカの音が温かみを感じていいですね。要所要所で入ってくるトロンボーンも効いてます。銀河系っていう設定なので浮遊感だったり掴みどころのなさもあったり。アルバム全体の中でもある種のクッションとして素晴らしい役割を果たしてると個人的に思います。



8.「きらきらひかれ」/フジファブリック

私自身フジファブリックにそんなに明るいわけじゃないんですけど、そんな私でも「凄い。もうイントロからフジファブリック感がカンストしてる」って感じました。始まった瞬間に音のシャワーがブワッとおりてきて爽快感が凄いです。インタビューにも「チャットにはなむけの言葉を贈ってくれてるのかな」とあるようにすごく前向きなカバーで、明るい気持ちになれますね。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード全てから愛がこれでもかというほど伝わってきて素敵です。



9.「世界が終わる夜に」/集団行動

まず個人的な話になっちゃうんですけど、昔ぷりんと楽譜でこの曲のピアノバージョンの楽譜を買って一人で夜な夜な弾いてたんですよ。なので「世界が終わる夜に」は個人的に結構思い入れがある曲でして。その思い入れの強さもあって今回のトリビュートの中でも1,2を争うくらい好きです。ボーカルの齋藤さんの歌声が飾り気が無くて純粋でそこに引き込まれました。ドラムがところどころマーチみたいになってるのも好きですし、ラストのサビに入る前で最初のフレーズがまた出てくるっていうのもポイント高いです。このカバーで「世界が終わる夜に」は完全体になっちゃった。もう手が付けられない。



10.「真夜中遊園地」/川谷絵音

今回のトリビュートアルバムの中で一番変化度が大きいカバーなんじゃないでしょうか。シックでグンと大人っぽくなってて、構成も結構変わってますし。初めて聴いたときは「え、2回目とBメロ被せるの」ってなりました。でもそれが気にならないくらい盛り沢山ですよね。緩急が凄くて意表を突かれたり、「どこに向かっていくんだろう」っていうBメロが雑踏の中で消え入るように聴こえてきて胸が締め付けられそうになったり、最後は振り落とされそうになる。ここまで変えてしっくりくるって川谷さんのセンスがもう凄すぎるなって。もっとちゃんと聴いておくべきだった。



11.「湯気」/Hump Back

165km/hの火の玉剛速球がど真ん中に飛び込んできました。ド直球だなあ。前の曲がかなりの変化球だったので余計ストレートさが際立ちますね。聴いていて気持ちいいし、すんごいリスペクトしてるんだなあっていうのが伝わってきます。こういう真っすぐなカバーもいいですね。青臭さもあってそこがたまらない。それとボーカルの林さんの歌声にはどこかGO!GO!7188っぽさも感じます。絶対私の好きな部類のバンドだと思うし、今度CD借りてみようかな。置いてあったらいいな。



12.「恋愛スピリッツ」/グループ魂


これも変化度大きいですね。何しろコント入ってますからねコント。コメントにもある通り「恋愛スピリッツ」って重い曲なんですけど、こういう勢いがあって軽快なアレンジも意外とアリですね。振り切れてて今までの「恋愛スピリッツ」のイメージが覆りました。渚さんの酔っ払ったような歌い方も、割と重めのコントも含めていい大人が真剣にバカやってる様が大好きです。スナック「チャットモンチー」行きたい。群馬にあるらしいから割と近いぞ。



13.「余談(スチャットモンチー ver.)」/スチャダラパー


チャットモンチーとスチャダラパーの相性がこんなにいいなんて。ライムがすごい心地いい。個人的には「行間にロマン 時事放談」が好きです。原曲のリミックスも相まってなんかクラブで流れてるような感じがします。それとBoseさんのコメントに「本当それ」って思いました。「哀しさや憂い」「妬みや嫉み」いいですよね。私みたいなモンにはそういう陰の部分の方が共感性高いです。「CAT WALK」とかね。



14.「染まるよ」/きのこ帝国

「染まるよ」ってチャットモンチーで一番好きな曲に上げる人も多いですし、相当難しいチャレンジですよね。でもそんなハードルを軽々と飛び越えていきました。とても切実で悲しくて心を揺さぶられる。最初から原曲にもあった陰の部分がより鮮明に出ているんですけど、そんな中でも微かな希望がちゃんと見えるというか。陰鬱な夜を一歩一歩懸命に越えていく感じがします。「でも もう いら ない」からの感情の昂りも原曲と同じかそれ以上に感じて名カバーだなと。あととにかく佐藤さんとあーちゃん(Perfumeみたいだ)のツインギターがいい。いやーきのこ帝国ええわあ。



15.「小さなキラキラ」/月の満ち欠け


一般公募の2曲のうちの二曲目。ボーカルとキーボードとストリングという少ない単位で構成されていてとても素朴です。本当にこのまま海に流れていきそうな、海を揺蕩っていそうな儚さがあります。熊谷さんのボーカルも可愛くて掴みどころのない魅力がありますね。今井さんもここまで原曲の良さを残したまま、キーボードとストリングスだけのアレンジにしていて凄まじさがあります。「さよなら」が連呼されるのがどうしようもなく私の胸を締め付けるので、それも含めてこの曲を選んだセンスがマジ凄い。この二人天才なんじゃないか。



16.「東京ハチミツオーケストラ」/ギターウルフ

これはもう笑うしかないですよね。ホントぶっ飛んでる。今までの余韻をすべて吹き飛ばすほどの圧倒的なパワー。曲が始まったときの高揚感といったらもう。正直聴く前はハマるのかなって思ってたんですけど、セイジさんの荒っぽい歌い方とエモーショナルなギター、ヒカルさんのあいもたしかにかんじられて、躍動感のあるベース、トオルさんの熱のこもったドラム、どれもがばっちりハマってますね。流石。聴き終わった後、顔を上げて前を向くことができて、最後を飾るにふさわしい曲です。愛も確かに感じられて、なによりメッチャかっこいい。








さて今年5月にはチャットモンチーとしてのラストアルバムの発売が控えています。
インタビューでも「たぶん、今までのチャットでは全然ないアルバムになりそうです」「ある意味、完結にふさわしいアルバムかもしれないですね。最後の最後まで最新というか、“今やりたいことはこれです”って言える感じにはなりそうだなって」とあるので、どうなるのか全然分からないけどドキドキしながら待っていようと思います。
そして7月4日には日本武道館でのラストワンマンライブ、7月21,22日は地元徳島でチャットモンチー主催のフェス「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018~みな、おいでなしてよ!」が開催。いよいよチャットモンチーとしての完結が間近に迫ってきています。

今までたくさんの名曲と思い出をくれたチャットモンチー。

わたしの届かぬあなたへ。栄光の結末を願ってます。





おしまい