参考:
夷曲一揆|特設ページ(怒髪天公式)
怒髪天が掲げる“ロックバンドたるもの”という矜持 「それでも言わずにいられないものが本物」(realsound.jp)
怒髪天 ニューアルバム『夷曲一揆』インタビュー(Tracks)
こんばんは。これです。
昨日、グループ魂・石鹸さんの褌姿のジャケットがインパクト大の怒髪天ニューアルバム「夷曲一揆」購入しました。今回はその感想をブログに書きたいと思います。拙い文章ですが、どうかお手柔らかに。よろしくお願いいたします。
聴いてみてまず、「夷曲一揆」は複雑で世知辛い現代社会を生きる全ての人間に怒髪天が贈る最大級のエールだ!と感じました。
今回、「夷曲一揆」で怒髪天はシンプルに生きる、スッポンポンのススメを説いています。着飾ることなんてない。人生はそんなに複雑で難しいものじゃない。ただ「生きてるだけでオッケー」とそう言ってるわけですね。
でも、生きてくうえでスッポンポンでいることはなかなかできません。「私は私の、俺は俺のままで」というのはつまりは「わがまま」ですし、「ありのまま」と自分勝手は表裏一体です。「言いたいことも言えないこんな世の中じゃ」とはよく言ったものです。さらに現代ではSNSが隆盛を極めており、「裸武士」にもあるように「見栄の張り合い、化かし合い」があちらこちらで行われています。それに憑かれている人も、また疲れている人も出てきていますよね。みんながみんな鎧を纏っていて、本当のことなんてなかなか見えてこない。そんな時勢です。
そんな複雑になった現代社会を怒髪天、特に増子さんは憂いて、「もっとシンプルに、スッポンポンで行こうぜ」とのメッセージを「夷曲一揆」で伝えてるんですよね。
「裸同士でぶつかれば 俺もお前も 分かり合えるさ」
(裸武士)
「シンプルに生きるだけ シンプルにできるだけ」
(シンプルマン)
「初めての旅につき どうかひとつ お手柔らかに」
(初めての旅につき)
こう言っちゃなんですけど、これらは全て理想論です。所詮、夢物語です。生理的に受け付けない、遺伝子レベルで分かり合えない人間というのは存在しますし、シンプルに生きたいと願っても鎧はなかなか脱がせてくれず、周りもどんどんパーツを付け加えていきます。「どうかひとつ お手柔らかに」といっても許してくれる人ばかりではありません。その人も初めての旅を言って同じ苦労をしてるにもかかわらず。
でも、
「ロックバンドが理想や 夢歌わずにどうする」
(HONKAI)
この言葉通り、怒髪天は「夷曲一揆」で「理想や夢」を歌っています。「裸同士でぶつかる」という理想。「シンプルに生きたい」という夢。さらには「荒れた海の向こうに明日があるかもしれない」という希望も。夢や理想と希望は近しいものがあり、もうほとんどイコールといっていいものだと思います。
これらの理想や夢、そして希望は私たちの多くが持っているものだと私は考えています。怒髪天はそんなどこにでもいるような小さな小さな人間が抱くような恥ずかしい夢や理想や希望を「夷曲一揆」で肯定しているんですよね。怒髪天の最大の魅力「自己肯定」は35年近く経った「夷曲一揆」でも健在です。
怒髪天は「夷曲一揆」において聴き手である私たちに対して「裸の心でぶつかった」のです。裸の心でぶつかってきたことで私が纏っていた鎧も少しずつ剥がれていき、私の心も裸になりました。そうしてすっぽんぽんになった私の心を怒髪天は同じスッポンポンの姿のままで抱きしめてくれました。裸の私の心、そのままの私に価値があるということを認めてくれたのです。
私達が抱くようなちっぽけな夢や理想や希望を肯定されることで自分に何か価値のあるような気になってきます。自信みたいなものも少しですけど芽生えてきます。これも怒髪天の「生を肯定する」という姿勢ゆえですね。
まあ、「夷曲一揆」は今を生きる全員に聴いてほしいんですけど、特に私はこのアルバムを私のような自己否定を繰り返す人たちに聴いてほしいなと思います。難しく考え出し過ぎて「自分はダメだ」「自分なんて生きてる価値はない」と考えているような人たち。でも、怒髪天は「自分を肯定すること」の大切さや「難しく考えるこたぁない、シンプルに生きようぜ」というメッセージを「夷曲一揆」で教えてくれます。聴き終わった頃にはきっと心は少し軽くなって、見る世界もちょっとは違ってくると思います。
「HONKAI」にこんな歌詞がありました。
「ロックバンドが本気で 信じてないでどうする
こんな腐った世界を いつかきっと 変えられると」
「夷曲一揆」で怒髪天が放つ「自己肯定」という強烈なメッセージ。夢や理想や希望を、それを抱く自分を恥じることはないという姿勢。「夷曲一揆」を聴いた人は身に憑いているものが削ぎ落されて、その人から見る世界はたぶん少し変わってきてるんじゃないかなって私は思います。そして一人一人が見る世界が変われば、私たちの世界も少しずつ変わってくる。物凄く、物凄く大げさな言い方をするならば、世界を変えるために、是非とも多くの人に怒髪天ニューアルバム『夷曲一揆』を手に取ってほしいなと思います。
本当にこのとてつもないアルバムを一人でも多くの人に聴いてほしい。強くお勧めします。
是非とも聴いてみてください。
以下、全曲感想と思しき単語の集まり。内容の繰り返しも多いのでご注意を。
1.裸武士
我々の予想を遥かに超える先制パンチが飛んできた。和太鼓と野太い合いの手が印象的で、この和の雰囲気大好きです。まさに演歌。「姿形を偽って 見栄の張り合い 化かし合いだよ」とかはインスタなどのSNSのことを指してるんでしょうね。インスタは私も嫌いよ。あのキラキラした感じ受け付けない。スッポンポンの連呼はそういった虚飾に対する壮絶なカウンターですね。全員で「スッポンポン」と声を合わせるインパクトよ。あとタイトルの「裸武士」って「武士」と「武士」を掛けてるんですかね。祭りっぽい雰囲気ですし。
2.HONKAI
これはすごい。もうすごい。いや、すごい。布団でスヤスヤ寝てるところを無理くりに叩き起こされたような。固い拳で殴られて。どの言葉も刺さるんですけど、サビが特に来ますね。「ロックバンドが理想や 夢歌わずにどうする」っていう言葉にハッとさせられました。やっぱり暗い心の内を何千ルクスの光の束で照らす。そんなロックンロールに私は憧れてたんだなっていうのを改めて痛感させられました。しかもこれライブだとサビで会場全員でシンガロングするんでしょう。その場に立ち会ったら泣いちゃうかもしれないなぁ。
3.春、風船
優しいアレンジでありながら、増子さん曰く「絶望的に悲しい曲」。Aメロで貯めておいてからサビで一気に音数が増えて世界が開けるような感じと、清水さんの着実に一歩一歩踏みしめるようなベースラインが個人的には好きです。でも、改めて歌詞を見てみるとやっぱり悲しいですね。別れの季節、春の風に乗って飛んでいく赤い風船。誰の手にも届かないほど離れてしまった赤い風船。明るい感じでありながら哀愁が漂っていてたまらないです。
4.シンプルマン
私が怒髪天の一番好きなところって、「生きる」っていうことを無条件で、全力で肯定してくれるところなんですけど、「シンプルマン」はまさしくそんな曲ですよね。悩みに悩んで、どんどん志向が複雑になって、どこにも行けそうにないみたいな気持ちの沈んだ夜に聴きたいです。「シンプルに生きるだけ」という熱いメッセージに絡んでいた心の糸がほどけていく。とても勇気を貰える曲ですね。サビ前のBメロが1番と2番で対比されているのが好きです。あとは坂詰さんの悲しみを吹き飛ばしてくれるような勢いのあるドラムもいい。
5.デッドストックブルース
上原子さんの楽曲解説を見て気づいたんですけど、かの有名なエアロスミスの「WALK THIS WAY」をいじってできた曲なんですね。で、改めて聴いてみると想像以上にリフが似ていました。35年を迎えようっていうバンドのこういう遊び心とても好きです。また、デッドストックとは「売れ残り」という意味。でもヴィンテージアイテムとして付加価値が出る場合もあるらしいので、「価値のないデッドストックだぜ」といいながら、「誰か求めている人がいるかも」っていう無謀に近い希望もこの曲には隠れているのかなってウィキペディアを見ながら考えました。
6.初めての旅につき
これは共感度が高い。歌詞中でも言われてる通り「誰もが初めての旅」なんですよね。だって輪廻説とかを考えなければ、誰もが最初で最後の人生を生きてるわけですし。で、人に迷惑をかけたくないっていうのも誰もがそう教えられたことなんですけど、この曲ではその「迷惑をかける」ことを肯定してるんですよね。「あっ、今までしたことのない事をしてるんだから迷惑をかけてもいいんだ」って齢24にして気づかされました。最後のサビで上小原さんのギターが歌ってるところが好きです。それと、怒髪天のR&Eの演歌の部分が強く出た曲だと個人的には感じてます。旅に例えるのが演歌ぽいなって。
7.ゴミ集積所ノ破落戸
「破落戸」と書いて「バラッド」と読む攻撃的な曲。サビの歌の切り方やギターのカッティング、特に「このクチバシで 切り裂いて」のブツ切りになっているところが大好きです。誰もが持つ僻みや嫉みといった暗黒面を黒いカラスに託しているとだけあってこの曲も個人的には共感度が高いです。いい顔してる人を見るとその人の過去の恥ずかしい出来事を引きずり出して広めて貶めたくなっちゃうんですよね。いけないことだと分かっているし実際にすることはないんですけど。そういった暗黒面も怒髪天にかかれば肯定されるのは本当に凄いと思います。
8.1999GT-O
面喰うようなメタルの曲。最後の裸武士(reprise)を除くとこのアルバムで一番短い曲で一気に駆け抜ける疾走感が素敵です。「バカガミル ブタノケツ」というインパクト大のワードをサビに持ってくるセンスよ。そして、そこの重苦しいギターとベースがたまらない。ノストラダムスの大予言については私はあまり記憶にないんですけど、当時はこういう人が続出してたっていうのは「ちびまる子ちゃん」の話を読んでなんとなく知っていたので、ちょっと共感したりしちゃいました。あと、一説によるとノストラダムスの大予言はまだ終わっていないそうなんですけど、それはこれとは関係ないか。
9.YOI・YOI・YOI
前曲とのギャップが激しい穏やかな曲。上原子さんが弾いてるバンショーによってどこか民族的な雰囲気が醸し出されていいですね。あとこの曲も清水さんの軽快なベースがいい味出してます。テーマとしては「明日やろうはバカヤロー」の逆を行く感じですか。確かに「明日やろうはバカヤロー」というのは立派ですけど、立派な人はそれができるから立派になってるわけで、多くの人は先延ばしにしてしまいまいがちですよね。でも、その先延ばしにすることさえも怒髪天は肯定するんですよね。「それがなんだ?生きてればいいだろ?」みたいな。心強いです。
10.希望丸より愛をこめて
本編ラストの一曲。これは泣ける。Aメロの最初だけで涙腺に来てしまう。アッパーチューンなのにだって泥舟なのに「希望丸」ってついてるんですよ。いつかは沈む(まあこれがイコール「死」ってことなんでしょうけど)というのに。人生という航海のコンパスとなる希望。沈む夕日にさえ希望を感じてる。その後には夜しか来ないのに。その前向きさが余計に切なく感じます。サビでテンポを落としてじっくりと聞かせるのにも切なさに拍車がかかってます。それと上原子さんが「ラストの『アーアーアー』は、野太い声をライブでみんな待ってるぜ!」と言ってますので、皆さん、やったりましょう!アーアーアー...アーアーアー......
11.裸武士(reprise)
一曲目の「裸武士」をアカペラと手拍子だけでアレンジした曲。洞窟の中で焚き火を囲んで歌っている感じがして、ものすごく男臭いですね。一揆の後の打ち上げ、もしくは反省会のような感じでしょうか。最後にrepriseで終わるのは「LIFE BOWL」以来ですね。スッポンポン...……スッポンポン...……スッポンポン...……スッポンポン...……
以上にて感想は終わりになります。お読みいただきありがとうございました。
最後にもう一度。「夷曲一揆」、ぜひとも聴いてみてください。
お願いします。
おしまい