Subhuman

ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203

タグ:チャットモンチー





41AJJ-ccDYL__SY450_





 散った桜の花びらが玉川上水にぽつりぽつりと浮かびはじめる4月の半ば。2階のネットカフェと一緒に慎ましく営業しているような、狭い狭いTSUTAYA。そこで借りた、3人の後ろ姿がギザギザの線で描かれたCD。それが私のチャットモンチーとの出会いだった。窮屈そうに肩を寄せ合って並ぶ縦長の長方形のなかで、上段2段目くらいだったと思う、他とは距離を置き、胸を張るかのように堂々とした正方形。それが目に留まった。上京したての私は慣れないセルフレジに慄きながらも、なんとかお会計を済ませ、お馴染みの黒い袋に入れてそれを持ち帰った。





 野球をする高校生の「ファイオー」という声が、一番離れていても聞こえてくる部屋。私はこたつに入りながら、高校受験のときからお世話になっているラジオカセットにCDをセットし、1980円のイヤホンを耳にはめ、スイッチを押した。「薄い紙で指を切って 赤い赤い血が滲む」。今までに味わったことのない感覚が私を襲った。「ハナノユメ」の生々しい歌詞、「シャングリラ」の胸が躍る四つ打ちのドラム、「親知らず」の実家を思い出すような暖かさ。「染まるよ」のエモーショナルな転調。その全てが私を刺激した。選りすぐりの17曲が終わるころには、私は既にチャットモンチーの虜になっていた。





 次の日、私の通う大学では赤、青、緑、色とりどりの幟があちらこちらに飾られていた。入ってきたばかりで右も左も分からない新入生たちを、木製のテーブルで今か今かと待ち受ける上級生。サークルの新入生入部期間が始まったのだ。自転車置き場から道路を横切ってすぐ右手。大学に3つあるバンドサークルのうち、1つがブースを構えていた。私は同じく木製のベンチに座り、ノートに名前を書いた。まだ、私の名前の他には何も書かれておらず、好きなバンドの欄には「チャットモンチー」、ではなく「the pillows」と書いた。まだ、昨日ベストアルバムを聴いただけで深く聴かれると困るなと考えてのことだった。





 ともかくも、一か月間の仮入部を経て、私はそのサークルの正部員となった。あれは文化祭でのことだったと思う。先輩を中心にしてチャットのコピーバンドが組まれた。もちろん、私は入っていなかった。前日にみんなで作った仮初めのステージでの先輩たちの演奏に、私はたぶんハイになっていた。格好よくあって、可愛らしくもあって、とても凛々しかったのを覚えている。初めての文化祭は盛況のうちに終わり、その後も定期ライブで、合宿で、文化祭で、いたる所でチャットのコピバンは組まれた。年の半分くらいは誰かがチャットを歌っていた。私もコピーしたいと思ったが、在籍した2年間で結局一回もチャットをコピーすることはなかった。





 問題は、私が男だったということだ。しかもあまりイケてない、どちらかといえば陰キャに分類されるような。そんな私がチャットをコピーしたら周りの目にはどう映るだろうか。答えは一つ、気持ち悪いだった。チャットのコピバンをやりたいと思っていても声に出せず、「次チャットなにやるー?真夜中遊園地とかいいよねー」という周囲の話をただただ聞かないふりをしながら、でも聞いていた。私の中のチャットをやりたいという気持ちは燻ぶり続けた。


ただ、幸運だったのはその頃私がキーボードを始めたということ。インターネットには、様々なアーティストの曲をピアノで弾けるようにアレンジした楽譜を販売しているサイトが有難いことに存在していて、そのなかにチャットもあった。私は「世界が終わる夜に」と「風吹けば恋」の楽譜を買って、夜な夜な自分の部屋で弾いていた。まったく上手くはならなかったけど、誰にも見せる予定のない独りよがりのチャットのコピーは、それはそれは楽しかった。自分とチャットの距離がほんの少しだけれど縮まった気がした。





 小さな遠慮が邪魔をして、話したことはあまりなかったけれど、たぶん私がいたサークルのみんながチャットを聴いていたと思う。髪色を金や青や緑にちょくちょく変えてピアスを両耳にぶら下げていたあの人も、徹夜でマージャンをしていた(と思われる)あの人も、背が低くて似合わない縁なしの眼鏡をかけていたあの人も、やる方も見る方もみんなチャットのコピバンを楽しんでいた。たぶん私たちのなかで、チャットモンチーは共通言語で最大公約数だった。


おそらく今もそのサークルではチャットがコピーされ続けているのだろう。とくに3ピース時代のチャットの取っつきやすさはものすごいものがあり、それは時を経ても変わらないと思われるから。本人たちは完結しても、こうやって聴き継がれて歌い継がれていくというのはとても素敵なことだとふと思う。


 







 一人で家にいた2017年11月のことだった。私がスマホでツイッターを見ていると、トレンドにチャットが上っていた。何事かとタップしてみると公式HPには「CHATMONCHY Last Album 2018 Release」とだけ。それ以外はどこをタップしても何の反応もなく、それがさらに私の不安を駆り立てた。そしてその翌日、「チャットモンチー 完結」が正式に発表された。チャットモンチーが、終わる。とても信じられることではなかったが、ネットの反応を見ていくうちにそれが本当のことだと思い知らされた。


「チャットモンチーやめないで」という声が多かったと思うが、一方でこの完結に前向きな反応を示している人も確かにいた。それに触れるにつれ、私の気持ちも前向きになっていった。チャットモンチーが終わってしまうのはすごく寂しいけれど、たぶん二人はこれからも音楽を続けていくはずだし、今度はそれを楽しみにしていたいなという気持ちに。そして翌4月。ラストアルバム「誕生」の6月27日リリースが発表された。最後の最後で「誕生」。なんてインパクトのあるタイトルだろう。


その日はあっという間にやってきた。



 あれ?今って梅雨だよね?と聞きたくなるような晴れの日だった6月26日。チャットモンチーLast Album「誕生」のフラゲ日。私はその日の仕事をつつがなく終え、自転車を漕いで、急いで駅前の書店に向かった。エスカレーターを昇って3階。本館との連絡通路のすぐ隣のCD売り場の新譜コーナー。私はそれを目にしたとき驚いた。形状がDVDそのものだったからだ。困惑したままアルバムを手に取り、裏面を見てみる。緑色の翼竜が翼を広げている。左上には「Headphone Recommended!!」。私はレジに向かい3500円を支払った。


店の中のベンチに座りビニールを剥いで中身を確認。そこでもう一度驚いた。歌詞カードが本になっているではないか。ページをめくると歌詞とその英訳。ここまではよくある、英訳が載っている時点で希少ではあるが、サプライズはその先。レコーディング風景のスナップ写真が20点ほどに、さらに「『誕生』に寄せて」という二人のライナーノーツまで載っている。これはまさに「買い」だ。そう思った。


まず、私はアルバムの楽しみ方は曲を聴くだけではないと考えている。それはジャケットだったり、歌詞カードだったり、CDの盤面だったり。そういった様々が合わさってアルバムは一つの作品となる。だから、私は「誕生」をiTunesでダウンロードしても、アルバムは絶対に買おうと決めていたのだ。そしてその予感は見事に的中した。心の中でガッツポーズをしながら、持参した黒のポータブルCDプレイヤーにCDをセットした(その日は外せない用事があった)。


聴き終わり、配信とはまた違った、よりダイレクトに響いてくるような、印象を受けた。用事が終わって家に帰ったら、あのラジカセで、今度はオススメされたようにヘッドホンをつけて、聴いてみようと、そう考えた。





 リレーでトラック1周400mを全力で走り終えた後のように疲れた体を引きずりながら帰宅。母親が作ってくれた暖かいご飯を食べて2階へ向かう。よく熟れたりんごのような色をしたブックレットをカバーから取り出し、もう一度二人のライナーノーツをじっくり読んでみる。テーマは同じなのに、二人で切り口がまるで違うのが面白い。CDをセット。ヘッドホンのプラグをラジカセのジャックにイン。擦れて三角形もよく分からなくなったスイッチを押す。さあ始まった。変わらず心が躍り出す。


1曲目は「CHATMONCHY MECHA」。打ち込みのドラムから始まり、今までのチャットモンチーとは一味違うぞというところを見せつけるかのようなインスト曲。ゲームのオープニングのようで楽しい。


2曲目は「たったさっきから3000年までの話」。暗くて壮大でどこか神秘的。後半で加速するのが、未来に向けてギアを上げた感じがあって印象的。ここのギターやベースの歪み具合が好き。それと、「ボケたボケてない」のところは「Last Love Letter」のMVを思い出す。どうでもいいことなのだけれど。


3曲目は「the key」。正直、最初に聴いたとき「うへぇ、重い」って思ってしまった。でも、恐竜の足音みたいな打ち込みドラムから、サビで生音主体のバンドサンドに変化するのは、開放感があって気持ちいいなあ。


4曲目は「クッキング・ララ feat.DJみそしるとMCごはん」。このアルバムで一番明るくて楽しい曲。ここまで2曲重い曲が続いていたのでホッとする。DJみそしるとMCご飯さんのラップも等身大でとても素朴でいい。心の氷が融かされるよう。


5曲目は「裸足の街のスター」。「今も群れるのは嫌いさ」や「派手に転がるのはごめんさ」のひねくれっぷりがたまらない。ミドルテンポで展開されているのも、歌詞の一言一言や音の一つ一つに存在感が感じられて、個人的には好きだなあ。


6曲目は「砂鉄」。元メンバーの高橋久美子さんが作曲した曲で、もう当然のように泣いた。こんなの泣くに決まってる。これについては思うところが大きいので後述したい。


7曲目は「びろうど」。終わりからまた新たに生まれる始まり感が強い。ここまでさんざ、メカメカ―打ち込み打ち込み―ってやってきての最後にアコースティックが最高に沁みる。曲中の「青い血」は「ハナノユメ」の「赤い血」との対比になってるのかな。とても鮮やかな対比。チャットモンチーの最後を飾るにふさわしい曲だなあ。


………。


ブックレットに私の目線は釘づけにされ気づいたら30分が経っていた。どの曲も本当に素晴らしくて、まるで時間の経過を感じない。橋本さんと福岡さん、そして2人を支えるたくさんの人達によって、魔法にかけられたような心地だった。この魔法を一人でも多くの人に味わってもらいたいと心の底から思う。ありふれた言葉だけれど本当に。
 




 がっつり書きたい。ここから、「砂鉄」のことを。がっかりしないよう最初に伝えておきたい。この項の文章は全て推測で妄想だということを。


「砂鉄」はその曲もいいけどやっぱり高橋さんの歌詞が最高だ。「だめでもだめだめでも許すよ」という歌詞は、「やさしさ」の「明日ダメでも 明後日ダメダメでも 私を許して それがやさしさでしょう?」のアンサーになっている。泣ける。でもそれだけではなくて、注目は2回目のサビの歌詞。「どうせ嫌いにはなれない」。これが「変身」の「どうせ嫌いになんてなれないだろ?」の意趣返しになっているのだ。先日刊行された高橋さんのエッセイ集「いっぴき」でも、チャット退団後の高橋さんの苦悩が少しだけだが綴られている。(まだ読んでいない人は早く買ってほしい)


脱退して初めて私はチャットモンチーだったんだと実感した。(中略)やっぱり私はどこへ行ってもチャットモンチーの高橋なのだった。最初は参ったなぁと思ったが、今は超える必要のない勲章なんだなと思える。
(高橋久美子著「いっぴき」より引用)


脱退直後は高橋さんもチャットの幻影に苦しんでいた、ようだ。しかし、高橋さんも「変身」して、それを受け入れられるようになっての「どうせ嫌いにはなれない」である。チャットのことを嫌いになりそうになったときもあったが、それを乗り越えたという重みが感じられる。このフレーズで私の心のダムは決壊した。曲の素直な展開も相まって本当に泣いた。チャットモンチーは最高だ。


さらに、これは高橋さんから橋本さんと福岡さんの2人に贈るはなむけの言葉でもあると私には感じられた。チャットを完結させた後も、これからいろんなところで「元チャットモンチー」は付いて回るだろう。元チャットという部分だけが注目されて、今自分がしていることがクローズアップされないかもしれない。でも、大丈夫だよ。私もそうだったから。受け入れられる日がきっと来るよ。そう高橋さんが橋本さんと福岡さんに話しているように私には聴こえた。友達ではないけどそれ以上のつながりで繋がっている3人。なんて美しい関係なんだろうと思う。やっぱりチャットモンチーは素晴らしい。


以上、100%妄想と推測で塗り固められたこの項は終了。書きたかったから書いた。それだけ。












 ところで、時は止まらない。どんなに素晴らしい音楽を聴いても、どんなに美味しいものを食べても、どんなに極上の魔法をかけられても、だ。時間をゆっくり感じたり、時間の経過を感じなかったりはあるかもしれないが、それで時が止まるわけではない。時は今この瞬間も変わらずに流れ続けていて、チャットモンチー完結の瞬間も刻々と近づいてきている。7月4日の、チャットモンチー最後のワンマン、武道館はもう1週間もないし、7月21,22日の、チャットモンチー最後のステージ、こなそんフェスはもう1ヶ月もない。チャットモンチーがチャットモンチーではなくなる瞬間が確実に迫ってきている。

先に私は、「チャットモンチー完結を受け入れた」と書いたが、この「誕生」というアルバムを聴いてやっぱりこう思う。完結してほしくないと。





 産声を、全編打ち込みという新しいスタイルで、大きく高らかな産声を上げたチャットが、「誕生」を経て、次はどんなアルバムを作るのだろうかと楽しみにしている自分がいる。しかし、その機会は永久に訪れることはない。それはとても悲しいことだ。もっとチャットモンチーの音楽を聴いていたかったし、行ったことのないライブにも行きたかった。武道館にもこなそんフェスにも私は行けそうにない。その事実が私をより悲しくさせる。

CDをラジカセにセットしてもう一度初めから聴いてみる。私は再び魔法にかけられる。チャットモンチー最後の曲「びろうど」ではこう歌われている。「生きていくのよこれからも」。そうだ。生きていくのだ。これからも。橋本さんも、福岡さんも、高橋さんも、それを支える多くの人たち、顔も名前も知らないけど同じチャットを聴いている大勢のリスナー、そして私も。生きていくからにはそこには音楽が生まれる。橋本さんと福岡さん、そしてそれを支えるたくさんの人達による、新しい音楽の「誕生」を心待ちにしたいと、改めてそう考えた。


あの春の日、チャットモンチーに出会えて本当に良かった。


最後にもう一度。チャットモンチー、ありがとう。



yjimage


おしまい


誕生(初回生産限定盤)
チャットモンチー
KRE
2018-06-27








昨年、今年7月で”完結”することを発表したチャットモンチー(”解散”じゃなくて”完結”だから。解散って言ったら怒るファンも出てくるのでそこは注意してください)。
そして今年の元旦にトリビュートアルバムをリリースすることが発表されました。
月日は経ち、いつの間にか来てしまった発売日。その前日に平安堂(長野県にしかない本屋チェーン)に走り見事特典のポスターと一緒にフライングゲットしました。

IMG_2121

IMG_2122



で、聴く前にインタビューを読んで、

CHATMONCHY Tribute -My CHATMONCHY- オフィシャルインタビュー

http://www.chatmonchy.com/interview/

そして聴いてみたところ愛に溢れた素晴らしいトリビュートアルバムでした。



例えば「チャットモンチー」という言語があるとして、みんな同じ言語を使っているけど口調だったり、性格だったり方言だったりしてみんながみんな違う。みんなが「チャットモンチー」っていう共通言語を使って会話してる。トリビュートアルバムってそういった会話を楽しむものでもあると思うんです。そこに男性や女性、プロやアマといった垣根は存在しない。

で、日本語で言ったら「あいうえお」、英語で言ったら「ABC」。そういった音素に当たるのがこのトリビュートではチャットモンチーへの愛情で。今回参加したミュージシャン全員に無意識下での愛情が根底にあるので、出てくるのは愛のある言葉、愛のある音楽ばかりなんですよね。16通りの言葉、音楽、愛情がこのトリビュートアルバムには詰まってます。


また、今回に限らずトリビュートアルバムっていうのはそのミュージシャンに「好き」という気持ちを伝えるラブレターでもありますよね。で、チャットモンチーでラブレターと言えば「Last Love Letter」です。


サムネで「チャットモンチーやめないで」って...。おぉう...。私もおんなじ気持ちだよ。

今回チャットモンチーが完結する前のタイミングで出るのでこのトリビュートアルバムはチャットモンチーに向けた「Last Love Letter」なんだな。って一瞬思いましたけど、ちょっと考えて「いや、それは違うな」と。

だってチャットモンチーは完結していなくなっても、チャットモンチーが残してくれた音楽、残してくれた思い出はきっと生き続けるでしょうし、これからも全国のバンドサークルや軽音楽部でチャットモンチーはコピーされ続けて、どこかのライブハウスでチャットモンチーは鳴らされ続けるはずで。

言語だって次から次へと伝えていかなければそこで途絶えてしまうわけですし、実際滅んでいった言語が歴史上にいくつあることか。

でも、私たちはチャットモンチーを聴き続けて歌い続けて鳴らし続けていくことで「チャットモンチー」という言語を次代に繋いでいけるわけです。

今回のトリビュートアルバムでも、接点のないようなミュージシャン同士が、ミュージシャンと私たちが「チャットモンチー」という言語で繋がれました。そしてこのアルバムを聴いている私たちも同じ日本語を話す同士であるように、「チャットモンチー」という言語を感受することで繋がれている。そして、まだ見ぬこのトリビュートをきっかけにチャットモンチーを聴き始める人とも。

本人たちは完結しますが私たちの話す「チャットモンチー」という言語は、私たちが話すのを止めない限り、完結することはありません。それはなんて素敵なことなんだろうと。これからも「チャットモンチー」という言語を聴いて話していきたいなと。そんなことを思ったトリビュートアルバムでした。まだ聴いていない人がいたら是非とも聴いてみてください。オススメです。

それとアルバムのクレジット、Thanks toの最後に”高橋久美子”ってあるのが素敵で胸が熱くなりました。まだ繋がってる。ちゃんと。






以下、軽くそれぞれの曲の感想を述べていきます。軽くといっても4000文字ぐらいあるんですけど。



1.「ハナノユメ」/忘れらんねえよ 

チャットモンチーに影響を受けたバンドってリアルに5万といると個人的には思っていて。その中でも「忘れらんねえよ」は最たるものですよね。ボーカルの柴田さんがチャットモンチーを見たところから始まったバンドですし。そんなもんでこのカバーには不器用な男の真っすぐな純情がこもりまくってる。最初にアカペラで入るのがもう。YouTubeでティザー見た時から最高だなと。最後のシャウトも凄い熱入ってて気持ちが伝わってくる。アルバムのオープニングを飾るにふさわしい曲です。



2.「Make Up! Make Up!」/CHAI

原曲も好きだけど、原曲よりもガーリーになっていてこちらも好きです。Aメロがわりと歪んでいたり、サビでパーカッション?が印象的に使われていたりもポイント高い。個人的に「Make Up! Make Up!」はアルバム「生命力」の中でももっと評価されるべき曲だって思っていたので今回こういう形でCHAIがスポットライトを当ててくれて嬉しい。コメントのテンションにちょっとついていけてないけどこういう芸風の人たちなのかな。いい意味でウザいですね。



3.「シャングリラ」/ねごと

久しぶりにねごとを聴く人は少し戸惑うと思うんですけど、最近のねごとってかなりシンセシンセしてて初期とはだいぶ違うんですよ。これが今のねごとなんです。最近のムードからももっとしっとりとした曲をやるのかなとも思ってたけど「シャングリラ」という王道チョイスで来ました。もうイントロから浮遊感が溢れててまさに最近のねごとって感じですよね。原曲にはほとんどなかったアウトロを長めにとることで余韻がめっちゃ残ります。蒼山さんの歌声も沁み込んでくる感じでとても好きです。



4.「初日の出」/People In The Box

何て言ったらいいか分からないんですけど不思議なアレンジですよね。何かが漂ってる。原曲にも僅かにあったアンニュイさが20倍ぐらいに増幅されてる。インタビューでも言われてますけど、間奏に「世界が終わる夜に」のフレーズが挿入されていて。「初日の出」っていう始まりの曲に入れてきたってことは「始まりと終わりは表裏一体。チャットモンチーは完結するけど、それは新たな始まりでもある」ってことなんですかね。歌詞にも「初めては終わらせていく」ってありますし。少なくとも私はそう感じました。



5.「惚たる蛍」/Homecomings

チャットモンチーの中でも隠れた名曲として知られるこの曲。今回Homecomingsのカバーで原曲の儚さを残したままより力強くなってますね。でもって「夜」っていうのがより前面に出てて情景が浮かんできますよね。夏の夜の川に舞う蛍の群れが。幻想的。ギターの福富さんからのコメントからもそれは伝わってきます。Homecomingsを知らなかったので、今回YouTubeで曲を何曲か聴いてみたんですけど普段は英詞の曲を歌ってる人たちなんですね。今度アルバム借りてちゃんと聴いてみようかな。



6.「こころとあたま」/ペペッターズ


一般公募の2曲のうちの一曲目。今回のトリビュートの詳細が発表されたときに公式HPに上げられた長文を見て「うわっ、この人たち凄いな。チャットモンチーガチ勢や」って思って、どんなカバーなのか楽しみにしてたんですよね。それで聴いてみると想像以上に良くて。原曲の疾走感はだいぶ落ち着いてはいるんですけど、代わりに揺るぎのない泰然自若さみたいなものが付与されていて、安心して聴ける。原曲とはだいぶカラーが違いますけどどちらも好きです。コメントからもチャットモンチー愛があふれ出てますね。最後の方は「ハイビスカスは冬に咲く」のオマージュかな。好きだから好きだって胸を張ってる、そんなカバーです。



7.「バスロマンス」/YOUR SONG IS GOOD


インスト。原曲の幸福感がYOUR SONG IS GOODというエフェクターで増幅されてます。優しい世界。歌を担当してる鍵盤ハーモニカの音が温かみを感じていいですね。要所要所で入ってくるトロンボーンも効いてます。銀河系っていう設定なので浮遊感だったり掴みどころのなさもあったり。アルバム全体の中でもある種のクッションとして素晴らしい役割を果たしてると個人的に思います。



8.「きらきらひかれ」/フジファブリック

私自身フジファブリックにそんなに明るいわけじゃないんですけど、そんな私でも「凄い。もうイントロからフジファブリック感がカンストしてる」って感じました。始まった瞬間に音のシャワーがブワッとおりてきて爽快感が凄いです。インタビューにも「チャットにはなむけの言葉を贈ってくれてるのかな」とあるようにすごく前向きなカバーで、明るい気持ちになれますね。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード全てから愛がこれでもかというほど伝わってきて素敵です。



9.「世界が終わる夜に」/集団行動

まず個人的な話になっちゃうんですけど、昔ぷりんと楽譜でこの曲のピアノバージョンの楽譜を買って一人で夜な夜な弾いてたんですよ。なので「世界が終わる夜に」は個人的に結構思い入れがある曲でして。その思い入れの強さもあって今回のトリビュートの中でも1,2を争うくらい好きです。ボーカルの齋藤さんの歌声が飾り気が無くて純粋でそこに引き込まれました。ドラムがところどころマーチみたいになってるのも好きですし、ラストのサビに入る前で最初のフレーズがまた出てくるっていうのもポイント高いです。このカバーで「世界が終わる夜に」は完全体になっちゃった。もう手が付けられない。



10.「真夜中遊園地」/川谷絵音

今回のトリビュートアルバムの中で一番変化度が大きいカバーなんじゃないでしょうか。シックでグンと大人っぽくなってて、構成も結構変わってますし。初めて聴いたときは「え、2回目とBメロ被せるの」ってなりました。でもそれが気にならないくらい盛り沢山ですよね。緩急が凄くて意表を突かれたり、「どこに向かっていくんだろう」っていうBメロが雑踏の中で消え入るように聴こえてきて胸が締め付けられそうになったり、最後は振り落とされそうになる。ここまで変えてしっくりくるって川谷さんのセンスがもう凄すぎるなって。もっとちゃんと聴いておくべきだった。



11.「湯気」/Hump Back

165km/hの火の玉剛速球がど真ん中に飛び込んできました。ド直球だなあ。前の曲がかなりの変化球だったので余計ストレートさが際立ちますね。聴いていて気持ちいいし、すんごいリスペクトしてるんだなあっていうのが伝わってきます。こういう真っすぐなカバーもいいですね。青臭さもあってそこがたまらない。それとボーカルの林さんの歌声にはどこかGO!GO!7188っぽさも感じます。絶対私の好きな部類のバンドだと思うし、今度CD借りてみようかな。置いてあったらいいな。



12.「恋愛スピリッツ」/グループ魂


これも変化度大きいですね。何しろコント入ってますからねコント。コメントにもある通り「恋愛スピリッツ」って重い曲なんですけど、こういう勢いがあって軽快なアレンジも意外とアリですね。振り切れてて今までの「恋愛スピリッツ」のイメージが覆りました。渚さんの酔っ払ったような歌い方も、割と重めのコントも含めていい大人が真剣にバカやってる様が大好きです。スナック「チャットモンチー」行きたい。群馬にあるらしいから割と近いぞ。



13.「余談(スチャットモンチー ver.)」/スチャダラパー


チャットモンチーとスチャダラパーの相性がこんなにいいなんて。ライムがすごい心地いい。個人的には「行間にロマン 時事放談」が好きです。原曲のリミックスも相まってなんかクラブで流れてるような感じがします。それとBoseさんのコメントに「本当それ」って思いました。「哀しさや憂い」「妬みや嫉み」いいですよね。私みたいなモンにはそういう陰の部分の方が共感性高いです。「CAT WALK」とかね。



14.「染まるよ」/きのこ帝国

「染まるよ」ってチャットモンチーで一番好きな曲に上げる人も多いですし、相当難しいチャレンジですよね。でもそんなハードルを軽々と飛び越えていきました。とても切実で悲しくて心を揺さぶられる。最初から原曲にもあった陰の部分がより鮮明に出ているんですけど、そんな中でも微かな希望がちゃんと見えるというか。陰鬱な夜を一歩一歩懸命に越えていく感じがします。「でも もう いら ない」からの感情の昂りも原曲と同じかそれ以上に感じて名カバーだなと。あととにかく佐藤さんとあーちゃん(Perfumeみたいだ)のツインギターがいい。いやーきのこ帝国ええわあ。



15.「小さなキラキラ」/月の満ち欠け


一般公募の2曲のうちの二曲目。ボーカルとキーボードとストリングという少ない単位で構成されていてとても素朴です。本当にこのまま海に流れていきそうな、海を揺蕩っていそうな儚さがあります。熊谷さんのボーカルも可愛くて掴みどころのない魅力がありますね。今井さんもここまで原曲の良さを残したまま、キーボードとストリングスだけのアレンジにしていて凄まじさがあります。「さよなら」が連呼されるのがどうしようもなく私の胸を締め付けるので、それも含めてこの曲を選んだセンスがマジ凄い。この二人天才なんじゃないか。



16.「東京ハチミツオーケストラ」/ギターウルフ

これはもう笑うしかないですよね。ホントぶっ飛んでる。今までの余韻をすべて吹き飛ばすほどの圧倒的なパワー。曲が始まったときの高揚感といったらもう。正直聴く前はハマるのかなって思ってたんですけど、セイジさんの荒っぽい歌い方とエモーショナルなギター、ヒカルさんのあいもたしかにかんじられて、躍動感のあるベース、トオルさんの熱のこもったドラム、どれもがばっちりハマってますね。流石。聴き終わった後、顔を上げて前を向くことができて、最後を飾るにふさわしい曲です。愛も確かに感じられて、なによりメッチャかっこいい。








さて今年5月にはチャットモンチーとしてのラストアルバムの発売が控えています。
インタビューでも「たぶん、今までのチャットでは全然ないアルバムになりそうです」「ある意味、完結にふさわしいアルバムかもしれないですね。最後の最後まで最新というか、“今やりたいことはこれです”って言える感じにはなりそうだなって」とあるので、どうなるのか全然分からないけどドキドキしながら待っていようと思います。
そして7月4日には日本武道館でのラストワンマンライブ、7月21,22日は地元徳島でチャットモンチー主催のフェス「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018~みな、おいでなしてよ!」が開催。いよいよチャットモンチーとしての完結が間近に迫ってきています。

今までたくさんの名曲と思い出をくれたチャットモンチー。

わたしの届かぬあなたへ。栄光の結末を願ってます。





おしまい






こんばんは。これです。Jリーグ順位予想も終わったので、今回は終わったらやろうと考えていた好きなバンドの話第4回:チャットモンチーです。前回のnoodlesから1カ月ぐらい開いちゃったんですけどしょうがない。あんまりポンポンとやってたらすぐにネタ切れ起こしちゃいますしね。
というわけで久しぶりの第4回。どうぞよろしくお願いいたします。







 

私の好きなバンドの話

4回:チャットモンチー



pic

 

 

“チャットモンチー (chatmonchy) は、徳島県出身の日本のロックバンド。所属レコード会社はKi/oon Music2018年中に解散することを発表している。(本人たちはこれを「完結」と称している)。”

Wikipediaより引用)

 

 

というわけで、第4回はチャットモンチーです。橋本絵莉子(Vo.Gt.)、福岡晃子(Ba.Cho.)、高橋久美子(Dr.Cho.3人で活動していたんですが、20119月で久美子さんが脱退して、橋本さんと福岡さんの2人になってしまいました。それからは二人だけで様々な楽器を演奏してアルバムを出したり、サポートメンバーを迎え入れたり、また二人に戻って打ち込みを多用した「チャットモンチー・メカ」を試みたりと、様々な活動をしてきましたが、去年、今年7月で完結することが発表されました。悲しい。東京にいたときにライブ行っとけばよかった。



私がチャットモンチーを知ったのも「the pillows 山中さわおのPOISON ROCK’N’ROLL」ですね。さわおさんがたまにチャットモンチーの話出してたんですよね。とくに「染まるよ」がいいって言ってたような記憶があります。そうでなくても有名でテレビで流れる回数も少なくなかったので、それでベストアルバムを借りて聴いてみたところ一発でハマりました。5年ぐらい前のことです。久美子さんが脱退した後ですね。



大学のころバンドサークルに2年くらいいたんですけど、そんな激しくないサークルだったからかチャットモンチー好きな人多かったなあ。いろんな人がいましたけど、このサークルの最大公約数はチャットモンチーになるんじゃないかなって思ってたくらい。いつも誰かがコピーしてましたもん。男女問わずね。



もちろん私にとってもチャットモンチーは憧れでした。私のロックアイドル(ここでのアイドルっていうのは偶像という意味で憧れや崇拝の対象)は、まず初めて知ったという意味でピロウズのさわおさんだったんですけど、男性がさわおさんだとするならば女性はチャットモンチー、特に橋本さんだったので解散は寂しいし悲しいです。 



でも本当のところはショックはそこまでなくて。いや、ショックはショックですよ。でも何故かって言うとチャットモンチーは終わるけど二人とも音楽活動を続けていくんだろうなというのがあったからです。二人ともチャットモンチーの他にも「波多野裕文橋本絵莉子」や「くもゆき」など手広くやってますし、二人とももう音楽から抜け出すことはできないだろうという確信めいたものがあったからです。
本人たちも“完結”発表時のコメントで「これから先、長くなるであろう音楽人生を思うと、チャットモンチーというバンドにとどまらなくても、私たちには新しくてワクワクするような音楽が待っているような気がしているのです」って言ってますしね。バンドを解散して音楽活動を辞めてしまう人もいるわけじゃないですか。それに比べたら続けてくれるっていうのはなんてありがたいことなんだろうと思います。
チャットモンチーはいなくったとしても、二人、いや三人、いやそれ以上が私たちに残してくれた思い出はずっと生き続けるわけですし。



とりあえずは3月発売のトリビュートアルバム、そして彼女たちの集大成であるラストアルバムを、そしてチャットモンチー完結後も続く二人の音楽活動を楽しみに日々を過ごしているところです。武道館にも行きたいんですけどチケット取れるかなあ。秒殺されるのは間違いないから難しいかな。何とか行きたいんですけど。



 

そんなことを思いながら曲紹介に移ります。いつものように5曲です。

 

 

・ハナノユメ



デビュー曲にして彼女たちの伝説の始まりを告げる大名曲です。いきなり「薄い紙で指を切って
赤い赤い血が滲む」で始まるんですよ。「何言ってるんだろう」って一気に引き込まれますよね。全体を通して歌詞がすごい切実で等身大で久美子さん凄いなぁって。それと福岡さんのベースが結構目立ってていいですよねこの曲。フワフワすることなく地に足がついてるというか。これを聞かずしてチャットモンチーを語るべからずという1曲です。1stミニアルバム「chatmonchy has come」・1stアルバム「耳鳴り」に収録。

 


・シャングリラ



たぶんチャットモンチーで一番有名な曲なんじゃないかなと思います。初めて聴いたときにもがいて苦しんでそれども前を向くという歌詞に衝撃を受けて。特に「希望の光なんてなくったっていいじゃないか」にはハッとさせられました。サビに手拍子が入ってるところも好きです。あと、ベストアルバムの解説に「携帯電話を落としたら、笹船のようには流れていかず、沈むんじゃね?」みたいなことが書いてあって「確かに」って思った。説得力。
2ndアルバム「生命力」に収録。

 


・風吹けば恋



まず
MVがすごくいい。なにこのカッコよさ。惚れる。チャットモンチーの中では割とストレートなラブソングだとは思うんですけど、ただ真っすぐなだけじゃなくて少しひねくれてるところもいいですね。「はっきり言って努力は嫌いさ」で始まりますからね。一筋縄ではいかない感じ。イントロでドラムから始まる高揚感も好きです。この疾走感がたまらない。というかチャットモンチーの中でも個人的には結構上位の方に入ってくるドラムですね。3rdアルバム「告白」に収録。

 


・染まるよ



個人的にはチャットモンチーの中で
1番好きな曲です。切ない失恋ソングでエモいことはエモいんですけど、エモいなんて軽い言葉で片付けたくなくて。これ作詞がベースの福岡さんなんですよね。3人それぞれがこんな凄い歌詞を書けるなんてチャットモンチーはなんて素晴らしいバンドなんだろうと。もし、聴いたことがなかったのならぜひ聴いてほしい。強く勧めます。終盤の「でも もう いら ない」なんてもうエクスタシーが頂点に達して最高ですよ。3rdアルバム「告白」に収録。

 


・こころとあたま



久美子さんが脱退した後のチャットモンチーの中で個人的に一番好きな曲です。ハイテンポでかっ飛ばしていくある種の吹っ切れた感、清々しさが感じられて一発で好きになりました。ギター、ベース、ドラム全てがかっこいい。ちなみにドラムはハイスタの恒岡さんが叩いてます。さすが。それと、シンセがうねりを加えてるのも個人的にはとても好みです。あと
PVが狂気なのでそちらも見てほしい。説明文を読んでもわけわからんくてとてもいいです。6thアルバム「共鳴」に収録。











~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






というわけで、「私の好きなバンドの話第4回:チャットモンチー」でした。いかがでしたでしょうか。気持ち悪くなかったですか(私の文章が)、大丈夫でしたか(私の文章が)。拙い文章でしたが、お読みいただきありがとうございました。

次回、第5回:Base Ball Bear に続きます。

おしまい



チャットモンチー BEST~2005-2011~
チャットモンチー
KRE
2012-02-15


このページのトップヘ