Subhuman

ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203



こんにちは。はじめましての方ははじめまして。そうでない方はお久しぶりです。これです。


今年の下半期もまた大変でしたね。夏になって少しはコロナが収まったかと思えば、寒くなり始めてまたぶり返しはじめて。全国で数千人規模で新規感染者が増え続け、東京だけでも一日千人に近づく勢いです。公開延期が相次いだ春先よりも数字だけ見れば、深刻な事態なのに、一部洋画大作以外は公開延期もほとんどなく、関係者の皆様が尽力してくれたおかげで、私はこの半年も映画館ライフを満喫することができました。この場を借りて御礼申し上げます。本当にありがとうございます。


さて、私はというと特にコロナに罹ることもなく、体調も崩すこともなく、人生に絶望して自殺することもなく、何事もなく一年を終えることができようとしています。特筆すべき出来事は27年連続で起こらなかったのですが、今年ばかりは一年を終えられたことにホッとしていますね。


でも、ブログの更新頻度はガクンと落ち、この記事も最後の更新から二ヶ月ぶりという体たらく。文学フリマをはじめとして、一次創作をがんばりたいと思って、最初は意図的に更新頻度を落としていましたが、今では「映画の感想ってどうやって書くんだったっけ?」というモードになってしまいます。怠惰とは恐ろしいものですね。誰も期待していないとは思いますが、申し訳ない気持ちでいっぱいです。


と、暗くなるような近況報告はこの辺にして、そろそろ本題に移りましょう。今回のブログはこの時期恒例の映画ベスト10。そのなかでも今回は2020年下半期の個人的映画ベスト10を発表したいと思います。


選出基準は以下の二点です。


・2020年7月1日~2020年12月30日までに映画館で鑑賞した映画であること
・私個人の好きを最優先にすること




今年はステイホームもあり、配信という鑑賞スタイルがますます浸透し、私も何本か見ましたが、やはり見るたびに、映画館の大スクリーンが恋しくなってしまうんですよね。逆説的に、映画館で映画を観ることの喜びを今までにないほど感じた一年だったので、今年も映画館で鑑賞したという条件を設けさせていただきます。


それと、個人の好みを優先した方が、大作映画がズラーッと並ぶランキングよりも多様性が出て楽しいと思うので、今年も色眼鏡満載でお送りさせていただきます。どんな偏ったランキングになろうとも、それはそれでいいじゃないですか。ねぇ?


では、ランキングを発表する前にまずはノミネート、すなわち2020年下半期に鑑賞した映画のタイトルを挙げさせていただきます。


※2020年上半期に鑑賞した映画、およびマイベスト10については、をご覧ください。




2020年下半期に鑑賞した映画一覧

・娘は戦場で生まれた
・MOTHER/マザー
・私がモテてどうすんだ
・透明人間
・マルモイ ことばあつめ
・悲しみより、もっと悲しい物語
・ステップ
・ドロステのはてで僕ら
・劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ~映画になってちょーだいします~
・コンフィデンスマンJP プリンセス編
・君が世界のはじまり
・#ハンド全力
・アルプススタンドのはしの方
・映画ドラえもん のび太の新恐竜
・ぐらんぶる
・劇場版 ごん GON, THE LITTLE FOX
・はちどり
・糸
・思い、思われ、ふり、ふられ(実写)
・弱虫ペダル
・2分の1の魔法
・のぼる小寺さん
・許された子どもたち
・青くて痛くて脆い
・事故物件 恐い間取り
・なぜ君は総理大臣になれないのか
・宇宙でいちばんあかるい屋根
・リスタートはただいまのあとで
・僕たちの嘘と真実~Documentary of 欅坂46~
・映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者
・窮鼠はチーズの夢を見る
・カセットテープ・ダイアリーズ
・ミッドウェイ
・劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン
・思い、思われ、ふり、ふられ(アニメ)
・れいこいるか
・TENET/テネット
・映像研には手を出すな!
・ミッドナイトスワン
・浅田家!
・実りゆく
・8日で死んだ怪獣の12日の物語‐劇場版‐
・パブリック 図書館の奇跡
・星の子
・望み
・ソワレ
・きみの瞳が問いかけている
・スパイの妻
・みをつくし料理帖
・劇場版鬼滅の刃 無限列車編
・朝が来る
・罪の声
・とんかつDJアゲ太郎
・おらおらでひとりいぐも
・羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来
・さくら
・ホテルローヤル
・魔女見習いをさがして
・STAND BY ME ドラえもん2
・ジオラマボーイ・パノラマガール
・泣く子はいねぇが
・本気のしるし《劇場版》
・水上のフライト
・佐々木、イン、マイ、マイン
・君は彼方
・友達やめた
・ガンバレとかうるせぇ
・歩けない僕らは
・魔女がいっぱい
・天外者
・滑走路
・約束のネバーランド
・アンダードッグ 前編
・アンダードッグ 後編
・私をくいとめて
・82年生まれ、キム・ジヨン
・空に住む
・劇場版ポケットモンスター ココ
・ジョゼと虎と魚たち
・映画 えんとつ町のプペル
・小さなバイキング ビッケ



2020年下半期は計81本の映画を鑑賞しました。去年の下半期が70本だったので、コロナ禍にも関わらず10本以上増えていますね。暇だったのもありますけど、感想を書かなくなったらこれくらいいってしまいますよ。一日に複数本観ることも増えましたしね。


それでは、いよいよ2020年下半期映画ベスト10を発表したいと思います!果たしてどの映画がランクインしたのでしょうか!?






第10位:ジョゼと虎と魚たち


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1984年に発表され、2003年には実写映画化された同名小説が、2020年の最後になってアニメ映画化されました。あっさりとした味わいだった実写版に加え、アニメ版は恋愛色を色濃くし、最後も明確なハッピーエンドで結ばれます。


予告の印象から、一人で観るのは少しキツイかなとも思いましたが、主眼が夢を目指すことの痛みと喜びに移っていたので問題なかったです。家の中という狭い世界に囚われていたジョゼが、恒夫と出会うことで外の世界を知り、最後には心が折れかかった恒夫を励ます。そして、ジョゼ元らと戦うことを決意するという流れは実写映画にはなく、見事な再構成です。劇中作に自分たちの状況を乗せて、希望を語るというのはオタクなら全員好きなはず。


清原果耶さん演じるジョゼも実写版とはまた違った可愛さがあります。まだまだ上映中ですので、年末年始にご覧ください。











第9位:僕たちの嘘と真実~Documentary of 欅坂46~


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感想はこちら↓




欅坂46(現櫻坂46)を全く知らない状態で観に行き、度肝を抜かれたドキュメンタリーが第9位にランクインです。まず特筆すべきは随所にちりばめられた欅坂46のパフォーマンスでしょう。グループアイドルにとんと疎かった私は、その計算されつくしたダンス、歌、それに伴う表現性にスクリーン越しに魅了されました。


ただ、この映画で描かれるのは、バックステージの苦悩。メンバーのインタビューで構成されていますが、メインとなったのは絶対的センターである平手由梨奈さんと他メンバーの対立です。というか平手さんのインタビューがないので、肝心なところは分からないのですが、大黒柱である平手さんが不在になるケースが増え、メンバーの動揺が見ていて辛い。


さらに、観ていてキツかったのが平手さんvs他メンバーの対立をプロデュースする大人たちが提供し、ファンが文句も言わず受容しているという構図です。望まない方向にショーアップされていく。「大人たちに支配されるな」と歌う本人たちが大人の言いなりになっているという皮肉。特にラスト付近の『黒い羊』は観ていて顔をしかめてしまうほどおぞましいものでしたが、それを求めたのは他ならぬファンなのです。共犯関係。


このように色んな人たちをグサグサ刺した『僕たちの嘘と真実~Documentary of 欅坂46』、Blu-ray&DVDは2月3日発売です。いや、正気か。












第8位:パブリック 図書館の奇跡


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感想はこちら↓






大寒波が街を襲い、行き場を失くしたホームレスが図書館を占拠?さて、司書のグッドソンはどうする?というこの映画。ホームレス問題という社会問題を扱っていますが、大事なのはそのエンタメ性の高さ。数人のネームドキャラは全員キャラが立っており、占拠をやめさせたい刑事との取引もあります。事態を悪化しかさせない検察官のおかしさも好きですが、何より良いのがそのオチです。一度見たら忘れられない、それでいて誰も傷つけないあの解決方法は見事というほかありません。


ですが、この映画の根底に流れているのは確かな怒りです。書物に記されることのないホームレスたちが自分たちを記録に残そうと声をあげる。その声に応えて映画にしたエミリオ・エステベス監督はとても良い仕事をしたと思います。私、観た後に日本のホームレスの方にできることはないかとビッグイシュー基金に寄付しましたからね。鑑賞した人の行動を変えるのが良い映画だとすると、この映画は間違いなく良い映画です。

















第7位:魔女見習いをさがして


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『おジャ魔女どれみ』は断片的に見ていた私。とはいえ、成人してしばらくたちその存在を完全に忘れていたところで現れたのがこの映画です。大人になったどれみたちを描く、のではなくかつて『おジャ魔女どれみ』を観ていた年齢も住む場所も違う三人が、『どれみ』の聖地を旅するというお話です。ポップなアニメーション的な表現が随所に盛り込まれていて、キャラクターも表情豊かで観ていて楽しいのがまずポイント高いですね。


また、別々の人生を歩んでいた三人が共通の思い出のアニメでつながるというのも二十年が経ったから出来るお話。『どれみ』が導いた縁で三人の抱える問題にも希望の兆しが見え、『どれみ』に限らず何かに夢中だったあの頃を肯定してくれます。最後のメッセージもすごく素敵。観終わってから数日は予告編と「おジャ魔女カーニバル!」をヘビロテする生活が続きました。


今ならまだギリギリ映画館で観られると思うので、『どれみ』を知っている人も知らない人も興味があるならぜひ観てみることをお勧めします。もしかしたらハンカチを持っていった方がいいかもしれません。










第6位:アンダードッグ


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前後編で四時間半以上の長編ボクシング映画が第6位にランクインです。描かれるのは三人のボクサーとそれを取り巻く周囲の人生模様。落ちぶれて負けっぱなしの燃えカスボクサー。将来を有望視させるも黒い過去を持つ天才ボクサー。番組の企画でボクシングに挑戦する燻る二世芸人。映画で描かれるのも、デリヘル、別居、虐待、復讐、殺人未遂、乱痴気騒ぎと観ていて勘弁してくれよというような展開が続きます。


だからこそ、リングに上がるまでが暗ければ暗いほど、リングに上がった男たちの輝きが増すのです。前編のショー含みの対決ですら火傷するような熱さを含んでいて、後半のラストバトルはまさに魂と魂の応酬。『百円の恋』のチームが製作したとあって嘘のないボクシングシーンは見物です。激しい熱に思わず拳を握りました。少し長いのがネックですが、前後編通して観ていただきたい映画です。


そして、『アンダードッグ』は2021年1月1日からドラマ版が配信開始。全8話で映画よりも長くなっていますが、それに見合うだけの見ごたえはあると思いますので、映画館に行けない方はぜひ配信でもお楽しみください。


それと、石崎ひゅーいさんの主題歌『Flowers』が最高オブ最高でしたので、そちらも注目していただきたいです。前編が終わった後の歌い出しで電流が走りました。個人的最優秀主題歌賞です。

















第5位:滑走路


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たまたま行った東京で、偶然観た映画です。32歳の若さで命を絶った歌人・萩原慎一郎さんの唯一の歌集を映画化したもので、お話もそちらに寄り添ったものになっています。一見関係がないように見える三つのストーリー。それぞれが独立してままならない日々を描いていきますが、ある点で三本が交差する。その時の虚を突かれたような衝撃を私は今でも忘れられません。


それは言ってしまうと、自殺した少年が繋いだものなのですが、これは間違いなく萩原さん自身も差しているでしょう。いじめや非正規雇用に追い詰められて自ら命を絶った萩原さん。この映画でなされたのはそんな孤独な魂の救済なんです。たとえ忘れられたとしても、一緒に過ごした時間は消えない。誰にだって必死に生きた日々がある。そういった目線が自死した全ての方に向けられているように感じて、目頭が熱くなりました。


観終わった後は即歌集を買いましたし、あまりランキングにいれる人はいないかもしれませんが、この魂の叫びはなんとしてでも残しておかなければならないと思って、ランクインさせました。











第4位:アルプススタンドのはしの方


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感想はこちら↓






今年の邦画界のダークホース。舞台は甲子園(という設定)。全校応援で連れてこられてテンションの上がらない四人の学生が主人公となっています。グラウンドを映さずに全編観客席のみという構成ながら、清々しい青春映画となっていました。


インフルエンザ(だったと思う)というしょうがない理由で演劇の大会に出られなかった安田と田宮。その二人が、試合に出れず野球部を辞めてしまった藤野や帰宅部の宮下と喋りながら野球を観戦しています。相手は強豪校で勝てる見込みは薄い。なのに、「しょうがない」と言わず立ち向かう野球部の姿を見て、がんばれと声をあげる。腐っていることなら誰にでもできるけれど、応援することも誰にだってできる。たとえ、顧みられることはないその他大勢であっても。その必死な声に私は心を動かされました。


また、グラウンドを描かない代わりに、学校の中心人物であるブラスバンド部の久住の苦悩を描くことで、野球部の苦闘を想起させる仕組みも上手いです。物語の中心人物だって悩んでいるし、闘っている。応援というのはその物語に参加し、共闘する行為なんだと感じました。コロナ禍で声を出しての応援が制限される今の時代だからこそ、響く映画だと思います。


Blu-rayは1月20日発売。また、現在DVDレンタルやAmazon Prime Video等での配信もなされています。76分とそこまで長くないので、年末年始のお供にいかがでしょうか。













以上、第10位から第4位の発表でした。いかがでしたでしょうか。邦画が多いですね。


ここでベスト3を発表する前に、惜しくもランクインすることがなかった第20位~第11位を一気に発表します。



第20位:なぜ君は総理大臣になれないのか
第19位:のぼる小寺さん
第18位:コンフィデンスJP プリンセス編
第17位:罪の声
第16位:朝が来る
第15位:ミッドナイトスワン
第14位:思い、思われ、ふり、ふられ(実写)
第13位:娘は戦場で生まれた
第12位:映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者
第11位:本気のしるし《劇場版》





それでは、いよいよベスト3の発表です。果たして2020年下半期映画ベストに輝いたのは、どの映画なのでしょうか!?






第3位:マルモイ ことばあつめ


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感想はこちら↓






アカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』や『はちどり』など、韓国映画が大きな話題を集めた今年。その中で私はこの『マルモイ ことばあつめ』を推したいです。


舞台は1940年代、当時の韓国は日本統治下に置かれ、朝鮮語を話すことは統制されていました。朝鮮語を話すことができない子供もいたり、無理やり日本名に変えられるなど、見ていて気分が悪くなるほどの日本化政策。言葉を奪い、魂からして日本人に染め上げようとするその動きは、教科書では一文に収まってしまいますが、フィクションとはいえ実態を知ると、大きな反感を抱いてしまいます。


この映画は辞書を作って朝鮮語を残そうとした人々の反抗の記録です。お調子者のパンスと真面目なジョンファンというバディ要素を含ませながら、言葉に宿る人々の誇りを描いています。言葉を知っていくパンスが陽気に街を歩くシーンは、彼の世界が広がったことを示す名シーンの一つでしょう。だけれど、言葉を奪うというのは見える世界がまた一つ奪われてしまうということ。一つの物差しでしか世界を測ることができなくなるということ。


それに抵抗しようとした人が何十人もいる。この事実だけで計り知れない熱さがあります。映画の終盤には銃も登場しますが、言葉は命に匹敵するくらい大切なものということでしょう。世界から消えてしまった、または消えようとしている言葉たちに目を向けることができる傑作でした。














第2位:佐々木、イン、マイマイン


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一年の終わりが見えてきた時期に公開され、一気に今年の邦画を代表する作品となった傑作です。もともと注目度はあまり高くなかったように記憶していますが、予告編を見たときから、いい感じにダサくて、格好悪くて、みっともなくて、私の好みだと感じていましたが、想像以上に心にねじ込んできました。


佐々木コールがなされれば、どこでも服を脱ぐお調子者だった佐々木をめぐるお話なのですが、なんてことはない学校の日々が描かれていて、好感度が高いです。もうファーストカットからして大好きですし、全てのシーンが愛おしくてたまりませんでした。


ただ、この映画の主人公は東京で売れない俳優をしている石井です。別れた彼女と未だ同棲していて、アルバイトで生計を立てている燻った男ですが、彼が俳優を志したのって、佐々木に勧められたからなんですよね。自分は片親の家庭で、その父親も全然帰ってこないし、やりたいことができない。その影を垣間見た瞬間に、私たちは立体的に佐々木という人物を知るのです。私たちと何ら変わらない人間であると。


「さよならだけが人生だ」とは、もう誰が言い始めたのか分からないくらい有名な言葉です。石井が演じる戯曲のタイトルも「ロング・グッドバイ」。この映画は青春にさよならを告げる物語なんです。言えなかった「さよなら」を胸に抱いて生きていく。「さよなら」を言える人間がいることの僥倖。別れを告げても、青春めいたものは確かに心に残っていて、ふとした瞬間に自分を励ましてくれる。悲しいばかりではない「さよなら」に私は終盤、涙が止まりませんでした。三回観て、三回とも泣きました。


人生に別れは不可避なのだから、多くの人が自分のこととして受け取れる映画だと思います。

















第1位:れいこいるか


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下半期の1位も同じく「さよなら」を描いた作品です。松本で一回しか上映されなかった作品ですが、他のどの映画にも負けない強い印象を残しました。


主人公はある一組の夫婦。仲睦まじく、というわけではないながらも一緒に暮らしていた二人は、阪神淡路大震災で一人娘のれいこを亡くしてしまいます。この映画は夫婦の二十三年間という長い期間を描いた映画となっています。


この概要だけ聞けばお涙頂戴ものに思われるかもしれませんが、本編は全くそんなことはなく、人々がお酒を飲んで、笑って、平凡に暮らしている様子がかなりの長い時間映されます。まるで震災なんてなかったかのように。被災者というと、いつまでも悲しみに沈んでいるといった姿がイメージされるかもしれませんが、この映画はそれを軽やかに裏切ってきます。最初はストーリーの希薄さに戸惑いもしましたが、どんな大きな災害があろうとも人々の暮らしまでは奪えないという力強さを感じてからは一気に好きになりました。


ただ、娘を亡くした夫婦に代表されるように悲しみは、底の方で横たわっています。ただ、それでも生活はあるし、生きていかなければならない。この映画は度々時間が飛びますが、その間にけっこう大事なことが起こっていて、それを見せずに感じさせるといった映画的省略にセンスを感じました。


別れた夫婦が再会する終盤も、悲しみを表に出さずに明るく振る舞っている姿には、感動しましたし、本当に何でもないようなセリフで号泣してしまいました。最後も復興のシンボルを映すことで、希望を提示していて最高です。


ずっと心に残るであろう映画となった『れいこいるか』が、下半期のマイ・ベスト・ムービーです。






2020年下半期映画ベスト10一覧

第10位:ジョゼと虎と魚たち
第9位:僕たちの嘘と真実~Documentary of 欅坂46~
第8位:パブリック 図書館の奇跡
第7位:魔女見習いをさがして
第6位:アンダードッグ
第5位:滑走路
第4位:アルプススタンドのはしの方
第3位:マルモイ ことばあつめ
第2位:佐々木、イン、マイマイン
第1位:れいこいるか
















以上、2020年下半期映画ベスト10でした。いかがでしたでしょうか。


詳しい総括は明日の年間ベスト10に譲るとして、割合で見れば邦画8本、洋画2本と今年も邦画が優勢となりました。なんか映画好きたるもの洋画を評価してナンボみたいな風潮がありますが、それに逆らうように邦画ばかり選んだ私のランキングはなかなか独特なものではないでしょうか。特に中小規模の公開作品に傑作が目立ちましたね。偶然観てランクインした映画もあるので、2021年も大作ばかりではなく、ミニシアター系の作品も少しはチェックしてきたいと思います。


今年のブログ更新もこれにておしまい。みなさん、よいお年を!と言いたいところですが、まだ年間ベストが残っています。これを書いている現時点では、まだ全く手を付けていませんが、なんとか明日投稿できるように頑張りますので、今しばらくお待ちください。


それでは、また明日!お読みいただきありがとうございました!


おしまい 



ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)
田辺 聖子
KADOKAWA
2014-01-08






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こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想になります。


今回観た映画は『きみの瞳が問いかけている』。吉高由里子さんと横浜流星さんが共演したラブストーリーです。本公開は10月23日なのですが、15日に1日限定で先行公開されたので、観に行ってきました。


そして、観たところなかなか興味深い映画でしたね。20年代の邦画はどうなるのか、吉高由里子さんとはいったい何なのか、考えさせられる内容でした。意外と重要な映画かもしれないです。


それでは感想を始めたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いします。




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―あらすじ―

視力を失くした女と、罪を犯し夢を失った男。暗闇で生きてきた2人が初めて見つけた、ささやかな幸せ。だが、あまりに過酷な運命が彼らをのみこんでいく──。

目は不自由だが明るく愛くるしい明香里(吉高由里子)と、罪を犯しキックボクサーとしての未来を絶たれた塁(横浜流星)。小さな勘違いから出会った2人は惹かれあい、ささやかながらも掛け替えのない幸せを手にしたかに見えた。
ある日、明香里は、誰にも言わずにいた秘密を塁に明かす。彼女は自らが運転していた車の事故で両親を亡くし、自身も視力を失っていたのだ。以来、ずっと自分を責めてきたという明香里。だが、彼女の告白を聞いた塁は、彼だけが知るあまりに残酷な運命の因果に気付いてしまっていた。

(映画『きみの瞳が問いかけている』公式サイトより引用)






映画情報は公式サイトをご覧ください













『きみの瞳が問いかけている』、映画を観た後にツイッターのフォロワーさんから指摘されて知ったのですが、この映画は2011年の韓国映画『ただ君だけ』のリメイクなんだそうですね。確かに地下闘技場なんてアイデアはなかなか邦画(特に恋愛映画)では出てこないような気がします。


しかし、私はそれ以上にこの映画の展開に既視感を抱きました。明香里と塁が出会い、仲を深めていく。明香里の視力を回復させるために、塁が地下闘技場での違法ファイトに赴く。予告編から推測できたストーリーから何一つ外れることなく、映画は進んでいくのです。


なので、吉高由里子さんと横浜流星さんの演技は良かったのですが、正直かなり終盤まで微妙かな......と思いながら観ていました。それでもラストの10分~15分くらいは予想を超える「ああこれがやりたかったのね」という展開が待っていて、一気に巻き返してくれたんですけど。この展開には涙を流す人がいるのも納得でした。ただ、最後まで観て、私の既視感は確信に変わりました。


この映画は2020年のケータイ小説だ」と。


ケータイ小説 - Wikipedia




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Wikipediaによると、ケータイ小説のブームは2002年~08年頃だといいます。私が小学生~中学生だった頃ですかね。当時の私は携帯電話は持っておらず、小説を読む習慣もなかったため、蚊帳の外にいましたが、何となく流行っていた記憶はあります。私の持つ勝手なイメージだと、ケータイ小説には悲惨な出来事が次々と襲い掛かり、特に死またはそれに準ずるものが安易に用いられ、感動を誘うような印象があります。それは、この映画でも多く見られました。


明香里は事故で両親を失い、視覚障害を抱えてしまいます。一方の塁も母親が入水し、孤児院に預けられています。塁には罪を犯した過去があり、許されていないと葛藤を抱えている様子。他にも、明香里に関係を迫ろうとする上司や、半グレ集団との接触など悲劇的な出来事には事欠きません。発生した困難を解決するのが物語の一つの類型とはいえ、若干多すぎるくらいです。少し悲劇が安易に用いられている気もしてしまいます。


また、最終的には純愛ものだというのもポイント。明香里は姿の見えない塁に好意を持ち、塁が消えたときには塁の顔を模した彫像まで作って悲しんでいます(少し怖かった)。また、塁も明香里に手術を受けさせようと、高額なファイトマネーを得るために地下闘技場に赴いているわけですし、二人の間には邪心は見られません。悲劇を乗り越えつつ、最後にはハッピーエンドで物語は締めくくられる。これも私が考えるケータイ小説のイメージです。


前述したようにケータイ小説のブームは2002年~08年頃です。そして、ブームは循環するものです。タピオカだって最近は陰りが見えていますが、1990年~、2008年~を経ての第三次ブームでしたからね。きっと干支が一周以上して、再びケータイ小説的純愛ものブームが来始めているのかもしれません。


だって、ケータイ小説ブームの時の中高生はもう20代後半~30代ですし、ブームが去ってからネットに触れたのが今の中高生です。前者には懐かしさを、後者には新鮮さを持って受け入れられるでしょう。この映画のような00年代のケータイ小説的恋愛ものをリバイバルする路線は、もしかしたら20年代前半のトレンドの一つになるかもしれません。そうなると、20年代の邦画を考える上では、この映画はひょっとすると重要な映画になるかもしれないですね。










繰り返しになりますが、ケータイ小説の読者だった中高生は20代後半~30代に。Wikipediaにはケータイ小説は女子主人公が多いと書かれています。当時の中高生は、主人公に自分を重ねて読んでいたのでしょう。でも、年を取った今はそういうわけにはいきません。では、どうするか。この映画は大人の女性を主人公にするという方法を取ってきました。


劇中の明香里の年齢は明言されてこそいないものの、事故発生が2015年でその当時大学生だったという描写から考えると、おそらく25~27歳あたり。これは2006年~の第二次ケータイ小説ブーム時は高校生だった計算になります。さらに、明香里を演じた吉高由里子さんは現在32歳で、これは2002年~の第一次ケータイ小説ブームにピンズド。年齢的にはケータイ小説の少女主人公が、大人になったのが明香里であるともいえそうです。


現在20代後半~30代の女優さんは何人もいます。それでも、明香里は吉高さんでなければ務まらなかったと私は映画を観終わった後に感じました。それは人気があるという理由だけではなく、女優としての吉高さんの特性ゆえです。


結論から申し上げますと、明香里が吉高さんでなくてはいけなかった理由。それは、そのリアリティの薄さです。映画を観てもらえば分かると思うんですが、あんな明るい喋り方する人、現実にはあまりいないじゃないですか。自然体とは真逆で、めちゃくちゃ作っている感じがしたんですよね。例えば、「でも大丈夫」の言い方。あれは完全に三井住友銀行のCMのソレですよ。






この映画の吉高さんって、厳密に言えば柏木明香里を演じてはないんですよ。いや、視覚障害の描写には力を入れていましたけど、それ以外では「パブリックイメージとしての吉高由里子」を演じているように私には見えました。でも、それを全うできること、フィクションをフィクションとして演じられることが吉高さんが今ドラマなどに引っ張りだこな理由かなとも思いました。


なぜかというと、ここにも近年の傾向があると思うんですが、最近ってやったらめったらリアリティが重視されるじゃないですか。現実性、整合性、自然体というものが持て囃されている感じが私にはするんですよね。CGだって壮大なものとリアルなものに二極化していますし、また共感をより重視する時代になって、感情移入のためにリアルな演技というものが追求されがちです。


でも、これだけライフスタイルや嗜好が多様化した現代に、万人が共通的にイメージするリアルなんてものはもう存在しないわけですよ。それならフィクションの方が、現実から離れているという部分では共通しているのかもしれないです。で、この映画を観て感じた吉高さんの優れている部分って、ある程度現実離れしているところなんじゃないかって感じました。


何しろ表情筋の使い方が上手いんですよね。笑顔だけで何種類バリエーションがあるんだという感じです。さらに、少し上ずった感じの口調がリアルとリアルじゃない間の絶妙なラインを突いていました。「こんな人現実にはいないよ」と思わせつつ、最後には共感させて泣かせる。そのバランス感覚が抜きん出ているんですよね。若手俳優さんだとどっちかに振りきれがちになるので、さすがの演技だなと感じました。





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繰り返しますが、この映画の吉高さんはリアルすぎていません。きっとそれがリアル志向の10年代へのカウンターとして機能しているんだと思います。飽和するリアリティに疲れた現代の人が欲している絶妙なリアリティとフィクションのバランス。それを今日本で一番体現できるのが吉高さんなんだと感じます。時代が求めているとも言えそうですね。だからドラマ等の出演が途切れないんだと思います。


でも、吉高さんが活きたのは、相手役の横浜流星さんが徹底的にリアルに演じていたからというのを忘れてはいけません。この映画の横浜さんは静かで繊細な演技を心掛けていて、特にまだ明香里に戸惑っている前半の靴を気にしたりとか、距離を測りかねている感じが良かったです。受け身の演技が光っていました


しかし、映画の後半からは攻めに転じるので、そのギャップも見どころ。鋭い目つきと鍛えられた肉体は誰が見てもきゅんとすること間違いなしです。やはり横浜さんは20年代の主役の一人になりそうな俳優さんですね。




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長くなってきたので、この辺でまとめると『きみの瞳が問いかけている』は、


・00年代のケータイ小説的純愛ものを主人公を大人にしてのリバイバル
・10年代のリアル志向へのカウンター



という二つの要素が含まれている映画だと、私は感じました。この二つの潮流は20年代前半の邦画の一つのトレンドになりそうな予感がします。よくある純愛映画に見えて、後々振り返ってみたら大きな意味を持つ映画だった、ということになるかもしれないですね。既視感はあるかもしれませんが、興味のある方はご覧になってはいかがでしょうか。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想です。


今回観た映画は『パブリック 図書館の奇跡』。7月に公開されてからいくつか好評が届いていたので、観てみたいリストには入っていたこの映画。10月になってようやく地元でも公開されたので観に行ってきました。


結論から申し上げますと、傑作ですね、この映画。いっぱい笑いましたし、最後には泣きそうになりました。今年観た洋画の中でも一二を争うくらい好きです。


それでは、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。





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―あらすじ―

米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、実直な図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)が常連の利用者であるホームレスから思わぬことを告げられる。「今夜は帰らない。ここを占拠する」。大寒波の影響により路上で凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターが満杯で、行き場がないというのがその理由だった。
約70人のホームレスの苦境を察したスチュアートは、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。それは“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張やメディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられてしまう。やがて警察の機動隊が出動し、追いつめられたスチュアートとホームレスたちが決断した驚愕の行動とは……。

(映画『パブリック 図書館の奇跡』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください







※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。







あらすじにもある通り、『パブリック 図書館の奇跡』は一言で言うと、大寒波で行き場を失ったホームレスたちが図書館を占拠する映画です。ユーモラスな雰囲気で包まれていますが、切実な問題提起がなされていて、観終わった後にはホームレスのことについて調べたくなるような、何かしたくなるような映画となっていました。


そして、調べてみたところビッグイシュー基金のHPによると、日本のホームレスと呼ばれる方々は2020年1月時点で3,992人いるとのこと。これは2007年から8割ほど減っていますが、ネットカフェ難民と呼ばれる方々は東京都だけでも一晩に4000人いるとのこと。このコロナ禍で失業したであろう数多くの人も含めると、日本でもまだまだ貧困問題は解決されているとは言い難いですね。


この映画でなされたのは、そんなホームレス問題、貧困問題への問いかけです。象徴的だったのが市長選のPRですね。印象悪く描かれていた検察官のデイヴィスはもちろん、善人っぽく描かれていた牧師も実はホームレス支援については何も語っていなくて。まあ住所がないと選挙の際に投票所入場券が届かないので、投票できないんですよね。政治家の身になってみれば、いくらアピールしても票が見込めないのでは、その時間や労力を他の政策に回した方が得策です。


そんな事情から職を失い、政治や公的扶助にも救われず、大寒波に震えるホームレスたち。図書館で暖を取っていましたが、閉館した夜には外に放り出されてしまいます。そして、寒さにさらされ凍死する者まで出てきてしまう。こんな状況にはもう耐えられないと、ジャクソンという黒人のホームレスをリーダーに公共図書館に居座ります。政治から見放された彼らが、公共の場に救われることには何かメッセージめいたものを感じてしまいますね。


彼らの事情を察して、図書館に居座ることを許可するのは一介の職員に過ぎないグッドソンです。もちろん、彼に夜間開放を認める権限はなく、刑事のラムステッドの説得に遭ったり、イメージを上げて選挙戦での逆転を狙うデイヴィスに、グッドソンが起こした立てこもり事件だと事をややこしくされてしまいます。


その中でも悪い意味で印象に残ったのが、中継をするリポーターですね。局の意向かもしれませんが、グッドソンを人質事件の犯人へと仕立て上げ、事実を正しく伝えません。ありのままの事実を伝えれば、事態は良い方に向かうにも関わらずです。


私にはこの報道は、自分たちが選んだ政治家が、ホームレスに支援をしなかったせいで、このようになってしまったという事実から目を背けているように感じました。自分たちにもほんの少しですが責任があるという真実を受け止めたくなくて、事件という分かりやすいストーリーにしているのかなと。




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でも、ホームレスがこの世界にいるのは事実で、本当は全員に定住する場所があることが理想なんですよね。健康で文化的な最低限度の生活に、衣食住の三要素が含まれているのであれば、ホームレスがいることは国の政策としては失敗なんですよね。映画でも、ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』から「全ての成功を帳消しにする失敗」(うろ覚え)というような言葉を引用していましたけど、まさにそれですよ。


そして、失敗は誰しも直視したくないものです。駅や道路に座るホームレスに声をかける人間が果たして何人いるでしょうか。私も東京に住んでいたころに、立川に行くとホームレスの方が毎月ビッグイシューを配ってましたけど、一度も受け取ったことなんてなかったですからね。こうやってこの映画を観なければ、わざわざこうしてホームレスの方に思いを馳せることもなかったでしょうし。


この映画は、そんな直視されない、見られないホームレスが「ここにいるぞ」と声を上げる映画なんですよね。俺たちの存在を知らしめるんだという。もう本当にのほほんと生活している自分を恥じたくなりましたよ。


最近の映画でLGBTを扱った映画が増えているじゃないですか。これも今まで顧みられなかったLGBTの方々の存在を知らせるという意味があるでしょうし、最近で言うとBLT(Black Lives Matter)運動もそうです。この運動も、人種差別の意識が薄い私たちに、いまだに人種差別が存在していることを強烈に訴えかけていました。


この映画の脚本が書かれたのは大体3年位前なんでしょうが(HPには制作に11年かかったと書かれている)、「(デイヴィスのイメージアップのために)何か事件起こらないか。黒人が射殺される以外で」というセリフがあったのにはビックリしました。そう考えると、ジャクソンが黒人であることも重要な意味を持ってきそうですね。


最近、某監督が「社会問題は誰も見ない」と呟いて物議を醸していましたけど、私は映画には記録装置という意味合いもあるので、どんどんと社会問題を扱ってほしいなと思います。普段目の届かない人に目を向けるきっかけになりますし。まあ、社会問題が入っているから高評価するっていう傾向は危ないとは思ってますけどね。ほら、多様性を必須条件としたアカデミー賞の新基準が話題になってましたし。









と、ここまで書いてきた限りでは、この映画はホームレス、貧困問題という社会問題を扱ったお堅い映画なのかなと思うかもしれません。でも、社会問題だけを伝えているのではなく、この映画はエンタメ性も十分に兼ね備えているんです。


まず、説得を狙うラムステッドと応じるわけにはいかないグッドソンとの駆け引きは手に汗握りますし、占拠中も次から次へと問題が発生して飽きさせません。事態をややこしくするデイヴィスの顔芸も見どころですし、何より映画に登場するホームレスがみんな明るい。誰一人として、必要以上に悲愴感を漂わせることなく、占拠はあくまで平和な雰囲気の中で行われているので、映画の雰囲気も決して重くなることはありません。血もほとんど流れないですし。


そして、最高だったのが、その落とし方です。警察の機動隊が突入する。もう悲劇的な結末しかない。そう思わせといてのアレにはびっくりしました。カメラが見えなくなったところで、「あ、これ全員いなくなってるヤツだ」と思ったんですが、全然違いました。初見では戸惑いとともに笑いがこみ上げてきます。まさか今年の某邦画を上回る映画を今年中に見られるとは思ってなかった。


でも、考えてみるとこれ以上ない平和的な解決方法だと思うんですよね。万国共通でインパクトも十分ですし、あれを見た住人はきっと忘れられない光景になったと思います。私もあの光景はしばらくは忘れることができないですし、ポスターの「忘れられない夜になる」という言葉の意味に思わず膝を叩いてしまいました。最後にセリフだけですけど、「低体温症になる温度は?」とか「ホームレスの人数は?」と聞かれていて、「ああこの出来事は住人の心を動かしたのだな」と感動してしまいました。


そして、私の心も動きました。もしこの映画を観ていなければ、最初に述べたようにホームレスの方々の現状を軽くでも調べることはなかったでしょう。それに、何かできることはないかとビッグイシュー基金にも少しですが協力させていただきました。今は微々たるものですが、人の役に立つことをしたという爽快感でいっぱいです。本当にこの映画を観てよかったなと思います。


参考までにビッグイシュー基金のURLを貼っておくので、映画を観たりしてホームレス問題を何とかしたいと考えた方は、寄付を検討してもいいのではないでしょうか。

https://bigissue.or.jp/how_to_join/donate/





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以上で感想は終了となります。映画『パブリック 図書館の奇跡』。社会問題をエンタメに乗せて届けている傑作です。上映している映画館はもう少なくなりましたが、興味のある方はぜひご覧ください。お勧めです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい






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