こんばんは。これです。


今回のブログは、「平畠啓史Jリーグ54クラブ巡礼 ~ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方~」の感想になります。結論から言うと素晴らしい本でした。Jリーグファン・サポーター全員が読んだ方がいいと思えるくらいに。


では、前置きもそこそこにここから感想を始めます。拙い文章ですが最後までお付き合いいただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。




~目次~

・はじめに
・本の構成について
・AC長野パルセイロと松本山雅FCのページの感想
・全ページ読んでほしい
・おわりに



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・はじめに

まず、現在サッカーの本は様々出ていますよね。戦術本や選手の個人本など数え始めたらキリがありません。その中には少数ではありますが、試合以外をメインに据えて書かれた本も存在します。中村慎太郎さんの「サポーターをめぐる冒険」、津村記久子さんの「ディス・イズ・ザ・デイ」。これらの本はJリーグのファン・サポーターに重点を置いて書かれたもので、「これ分かるわー」という共感が散りばめられていて、どちらもJリーグのファン・サポーターにとっては必読といってもいい素晴らしい本です。そして、先日の10月5日にまた新たなJリーグファン・サポーター垂涎の本が発売されました。それが「平畠啓史 Jリーグ54クラブ巡礼 ~ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方~」です。


ある程度Jリーグに詳しい、またはスタジアムに足しげく通っている人たちのなかで著者の平畠啓史さんを知らない人はあまりいないでしょう。かつてスカパー!でやっていたJリーグハイライトで10年近くMCを務め、現在もNHKBS1の「Jリーグタイム」に時おり出演。またJリーグ公式番組「ひらちゃんねる」やDAZNでのJ3実況も担当。仕事とは関係のないプライベートでもスタジアムに足を運ぶなど芸能界一のサッカー通として知られています。その平畠さんが今回満を持して出版した本が「平畠啓史 Jリーグ54クラブ巡礼~ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方」というわけです。


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(平畠啓史さん)









・本の構成について

この本はJリーグ54クラブにそれぞれ4ページが割り振られており、前半の2ページが「54クラブおすすめ紹介」、後半の2ページが「54クラブ巡礼コラム」となっています。


前半の「54クラブおすすめ紹介」は主に3つのパートに分かれていて、まずチーム、スタジアム・マスコットの紹介がされます。スタジアム紹介には平畠さんの一言メモが添えられ、色鉛筆で書かれたアクセスマップには何とも言えない味わいがあります。さらには、Jリーグの大きな魅力であるマスコットもページを彩ります。クラブの公式に乗っている写真ではなくちゃんと現地で撮った写真が載せられ、平畠さんとの2ショット、3ショットの写真も多くありました。栃木SCのトッキーの耳には「S」と「C」が描かれていることや、Y.S.C.C.横浜にはときどきスポンサーのキャラクター「グリーンベア」がやってくることなんて初耳ですし、ギラヴァンツ北九州のギランさんの「出演料高いよ」というボード芸が笑いを誘います。


そして次に紹介されるのがJリーグ初ゴールを決めた選手。ジーコ(鹿島)やマイヤー(東京V)、ウィル(大分)に風間八宏さん(広島)など懐かしの名選手から、渡辺亮太選手(沼津)や藤本憲明選手(鹿児島)といった最近の選手まで多くの選手がその時の様子とともに紹介されています。そのなかには佐藤昌吉選手(大宮)や関口圭亮選手(岡山)や他チームのサポーターはおろか、そのクラブを熱心に応援しているサポーターでもあまり知らないんじゃないかというような選手もおり、チームの歴史を教えてくれます。


そして3つ目。左1ページ丸々使って紹介されるのが「ひらちゃんのおすすめTOP5」。スタジアムやイベント、チャントやスタジアムグルメ、お土産に観光名所、果ては「村林いづみ」さん(仙台)や「三村ロンド」さん(湘南)、全力さん(東京V)やじゃんけんマン(鹿児島)など個人名までさまざまが紹介されています。これが凄いのはチャントやスタジアムグルメなど実際にスタジアムに足を運ばないと分からないことが多く書かれていること。そのチームのファン・サポーターはあるあると共感でき、他チームのサポーターは「今度行ったらここに注目してみようかな」と新しい気づきを得ることができます。正直「書くことなんてあるのかな」と思っていたY.S.C.C.横浜でさえも、納得できるようなおすすめTOP5が挙げられており、その理解と愛情の深さにただただ驚嘆するばかりです。「平畠啓史Jリーグ54クラブ巡礼 ~ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方~」は観戦者目線からのJリーグのガイドブックとして抜群の出来を誇っています。
 

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そして後半では「54クラブコラム」が書かれています。そこに書かれているのは様々な「人」との交流。選手やスタッフと、スタジアム内のファン・サポーターと、さらにはスタジアムにとどまらず、町の地域の人々との胸温まる交流が描かれています。そしてどのクラブにも共通しているのが「クラブが好きだ」という思いで溢れていること。楽しんでスタジアムに来ている人はもちろん、辛い状況、艱難辛苦の中にいる人たちが平畠さんとの交流でクラブに対する熱い思いを吐きだしていきます。そこにはとてつもない熱量があり、幾度となく涙腺を刺激してきます。個人的にはベガルタ仙台や栃木SC、ファジアーノ岡山、愛媛FC辺りがやばかったです。他にも結構くるものがあったりして20回ぐらい泣きそうになりました。


そしてこの本の凄いところは、そのとてつもない熱量を持つコラムがJリーグ54クラブ全てにあること。「クラブが好きだ」という熱い思いの集合体がこの本なんです。全てのクラブにそのクラブだけの物語がある。それが平畠さんの追体験できるような細やかな気取らない書き方に載せられて私たちの心に届けられます。「平畠啓史Jリーグ54クラブ巡礼 ~ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方~」は読み物としてのコラム集という意味でも出色の出来栄えとなっています。


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(裏表紙)










・AC長野パルセイロと松本山雅FCのページの感想

おそらくですが、この本を手に取る人はほぼほぼどこかのJリーグクラブのファン・サポーターでしょう。そしてその人たちがどこから読み始めるかというと、川崎フロンターレのサポーター以外は自分の応援しているクラブのページから読み始めると思います。私もその例に漏れず応援しているAC長野パルセイロと松本山雅FCのページから読み始めました。


AC長野パルセイロのJリーグ初ゴールを決めたのは現群馬所属の高橋駿太選手。確かホーム扱いで東京の味の素フィールド西が丘での試合でしたね。その頃はまだパルセイロの試合観に行ってなかったなあ。そしておすすめTOP5は「長野Uスタジアム」「北陸新幹線」「善光寺」「AC長野パルセイロレディース」「悲願のJ2昇格へ」。長野Uスタジアムは毎試合行っていて、その度にいいスタジアムだなあって思うんですけど、いつの日かそれが当たり前になってるんですよね。でもこう外部の人から評価してもらえると嬉しくなって、また外からの目から見ないと分からないこともあって新しい気づきをもらえます。当たり前のことが当たり前じゃないという気づきが。


そしてコラムでは平畠さんが初めて長野Uスタジアムに訪れたときのことが書かれていました。長野Uスタジアムの素晴らしさが書かれていて、津田知宏選手の「テンションが上がる最高のスタジアムですよ」という長野Uスタジアム評には泣きたくなるほどうれしかったです。それと意外だったのが隣の長野オリンピックスタジアムについても言及されていたこと。普段は何も考えず通り過ぎるだけですが、初めて見た人にはインパクトがあるんだなと。これも内の人間だけじゃわからないことですね。


4ページたっぷり堪能したんですけど、唯一注文があるとすれば「AC長野パルセイロレディース」のところ。ここで使われている写真がよく見ると、INAC神戸レオネッサの選手たちの写真なんですよね。胸に小さく「黒糖ドーナツ棒」と書かれていますし。なので増刷時にはここの写真を正しくAC長野パルセイロレディースの選手たちの写真に差し替えてくれると幸いです。あと善光寺にはぜひ来てください。


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(長野Uスタジアム)



ページをめくってその次は松本山雅FC。ここではJリーグ初ゴールの選手ではなく、様々な行き違いが重なったらしく、「Jリーグ初勝利の決勝ゴールの選手」として現在も山雅に在籍する飯田真輝選手が紹介されていました。そしておすすめTOP5として紹介されていたのが「アルウィン(現サンプロアルウィン)」「喫茶山雅」「松本駅」「チャント」「山雅切れ(山雅ロス)」。ザスパクサツ群馬サポーターの話は山雅を応援している人たちにとっては大変喜ばしいものではないのでしょうか。他チームのサポーターがくるって相当ですよね。嬉しいです。それと私は松本に電車で行くので、今度行くときはイヤホンをつけずに松本駅の到着アナウンスをちゃんと聞いてみたいなって感じました。


そしてコラムは愛すべき山雅サポーターの話。本当にさまざまな人に山雅は支えられているんだなと、そしてこんなにも山雅は松本に根付いているんだなと温かい気持ちになります。隠し味で笑いのエッセンスが入っているのもほっこりするポイントです。


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(サンプロアルウィン)









・全ページ読んでほしい

このように自クラブのページを読み終えた人達が次にどこに進むのかといえば、たぶん多くは冒頭の中村憲剛選手(川崎)と平畠さんの対談に進むのではないでしょうか。川崎と言えばJリーグの中でも特にファンサービスやスタジアムイベントに力を入れているチームです。ピッチ外に大きく力を入れているチームがピッチ内でも優勝という結果を出したことは大きく、中村選手のファン・サポーターに対する思いが熱く語られていたり、チャントが受け継がれている様が冒頭から涙腺にジャブを放ってきます。


そしてページをめくって目次に進みます。ここで注目していただきたいのが54クラブ巡礼コラムの目次です。自クラブのコラムで感じた熱い思いがずらーっと54クラブぶん並んでいる。そこにはそれぞれクラブに対する愛情が溢れていて、もう目次を読んでるだけでも泣けてきます。「栃木SCが存在することの意味」(栃木)や「ファジアーノ岡山は『家族』だ」(岡山)などタイトルも胸に迫ってくるんですよね、これが。





この本を手に取った人のなかには自クラブとあとはライバルクラブのページをいくつか読んであとは読まない、なんて人ももしかしたらいるかもしれません。私は声を大にして言いたい。それではあまりに悲しいと。宇都宮が「ジャズとカクテルと餃子の街」なんて、大宮が「盆栽の街」なんて知っていましたか。町田市立陸上競技場に行くときには実は永山駅が便利で、ミクニワールドスタジアム北九州が5時間24,300円で借りられることなんて知らなかったでしょう。これらの他にも一般的なガイドブックには書かれていない情報が満載で、ページをめくるたびに新たな発見があります。どのスタジアムにも、地域にもそれぞれの楽しみ方があることをこの本は教えてくれます。読み終わってここに書かれたすべてのスタジアム・地域に行ってみたいと私は感じました。


そしてコラムには54通りの温かな交流、クラブの物語が綴られています。読み進めるうちにほっとしたり、クスッとしたり、もしかしたら涙を流すかもしれません。クラブに愛情を抱いているのは自分だけではないことが分かるはずです。遠くの顔も知らない人と私たちはJリーグでつながっている。それはとても素敵なことのように私には思えます。



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・おわりに


よくJリーグの試合は地域のお祭りに例えられます。賑やかなイベントに美味しい食べ物、人との交流がいっぱいです。この本は「90分間だけがサッカーだなんてもったいない」という言葉で始まります。この本を読み終えたときその言葉に心から頷くことができるでしょう。試合を楽しむことはもちろんですが、試合以外のイベントやスタジアムグルメ、アウェイで訪れた地域の観光を楽しむことが日本独自のサッカー文化の更なる深化と熟成につながっていくのではないでしょうか。「平畠啓史Jリーグ54クラブ巡礼 ~ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方~」はそれをこの上なく推し進めてくれる本だと思います。ぜひ買って読んで、スタジアムに、訪れた地域にこの本を持って行ってください。Jリーグとそしてそれに関わる人たちの心に残る一冊です。



おしまい