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両チームメンバー

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前半キックオフ!


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山雅はこの日、まず#9高崎選手に当てる攻撃を目指します。しかし、山雅の3バックがボールを持つと、徳島は前線から#10杉本太選手#50ピーター・ウタカ選手が激しくプレッシャーに来ており、ロングボールを蹴らせないようにしてきます。このとき山雅は一度#6藤田選手や#47岩上選手にボールを預け、相手選手をそちらにひきつけておいて、CBをプレッシャーの少ない状態にして、ロングボールを入れてきていました。


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徳島は立ち上がりからディフェンスラインを高く保ち、#9高崎選手には徹底して3バックの中央の#5石井選手が高さでは劣るもののしっかりと体を当てて自由にさせません。そして#9高崎選手のサポートをする#7前田選手#8セルジーニョ選手には、それぞれ#15井筒選手#4藤原選手がサイドと中央の間のハーフスペースに立って、二人の使いたい3バックとWBの脇を消します。


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これに対し山雅の前線は斜めの動きを多用することで崩そうとします。斜めの動きで相手の前に入り、誰がつくのかを迷わせることで一瞬の隙を生み、そこを突こうとしてきます。前半9分には#9高崎選手が斜めの動きから#20石原選手のスルーパスを受けシュートし、前半10分には#7前田選手が斜めの動きでサイドに流れてCKを獲得するなど、立ち上がりにいくつかチャンスを生み出していました。


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前半9分の動き


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徳島は攻撃時に後ろから丁寧にボールを繋ぎます。3バックの右と左の選手が大きく開き、山雅の選手がなかなかプレッシャーに来ないコーナーフラッグ付近まで行くときもあるほどです。これにより山雅の前線の選手に長い距離を走らせ披露を狙うとともに、低い位置から確実に一歩ずつ攻撃を組み立てていこうとします。山雅の選手がプレッシャーに来た時には#8岩尾選手がディフェンスラインまで下がり組み立てに参加し、ディフェンスラインでボールを失うリスクを軽減します。


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基本的には徳島はボールを回すことでリズムを生み出していきますが、ただボールを回すことに終始しません。WBが下がって山雅のWBを釣りだし、空いたスペースに前線の#50ピーター・ウタカ選手#10杉本太選手を流して、サイドで裏を取ることを狙います。ただ、山雅の選手もWBが素早く戻りCBと挟んで対応することで、時間を掛けさせて中での迎撃態勢を整えていたので、シュートにはなかなか繋がりません。


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それに加え、この日の山雅はボランチの#6藤田選手#47岩上選手の守備が効いていました。#23前川選手#32小西選手のどちらかが下がってボールを受けるところを激しく潰しに行き、前にボールを出させません。徳島はなかなかボールを前に運べ、中盤を省略したロングボールを多く出させられていました。


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なお、他会場では前半19分に大分が山形相手に先制。この時点で大分が首位に立ち、山雅は2位となりました。


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山雅は攻→守の素早い切り替えでチャンスを作ります。前線でボールを奪われてもすぐに寄せ、球際を激しくすることで、奪えなくとも時間を稼いで守備陣形を整える時間を作り、相手に苦し紛れのパスを出させて、カットするなど攻撃につなげることができていました。この日の山雅はゴールから60mほどの位置からプレスをかけ始めており、前線からの積極的な守備でペースを掴もうと目論みます。


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守備時には山雅は5-4のブロックを引いて守ります。


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WBをハーフスペースに置き3バックを中に絞らせることで、中央を固めてきます。前線で#50ピーター・ウタカ選手#10杉本太選手がボールを受けたときに複数人が寄せて自由にさせません。特に#50ピーター・ウタカ選手はこれを嫌がり、5-4のブロックの外にまで下がってボールを受けるようになりました。#50ピーター・ウタカ選手の高いキープ力や体の強さ、高いシュート技術はゴール前でこそ最大の持ち味を発揮するので、山雅としてはゴール前から#50ピーター・ウタカ選手を追い出すことに成功した形です。


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#50ピーター・ウタカ選手をブロックの外に締め出す


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となると、徳島は山雅が中央を固めているため、サイドに活路を見出そうとします。しかし、サイドにボールが入った時にも、山雅はSBとそのサイドのCB、シャドーにボランチと多くの選手がサイドに密集を作るため、スペースを作らせず、数的優位を作ることでボールを奪いにいきます。このときハーフスペースも中央のCBともう一方のボランチが埋めているため、徳島はなかなか有効に使うことができません。このとき、山雅の選手たちはピッチ半分に寄せていたため、逆サイドに大きなスペースが生まれています。徳島はサイドチェンジも交え山雅の守備陣を揺さぶりにかかりますが、滞空時間の長い浮き球のボールが多かったため、その間に山雅の守備陣が素早くスライドを完了。穴を作りません。

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徳島の攻撃はサイドからのクロスに頼るものではなく、ショートパスをつないで崩していくものでしたが、この日の山雅にはそれにも万全に対応。まず、選手間の距離を近づけ、徳島が使いたい中のスペースを消します。ゾーン守備を敷きだれがどのエリアを担当するのかを明確にし、深追いはしません。徳島は選手のポジションを頻繁に入れ替える攻撃が特徴で、マンマークディフェンスだったら穴が生まれやすいのですが、この日の山雅はそれぞれのエリアを明確に守っていたため、穴を生むことは少なく、徳島の攻撃を封じ込めることに成功していました。

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ゾーン守備


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これを打開するために徳島は#10杉本太選手#23前川選手のポジションを入れ替え。ドリブルが得意でテクニックのある#10杉本選手に低い位置でボールを触らせることで攻撃のリズムを生み出し、#23前川選手に裏抜けをさせることで、山雅のディフェンスラインを下げさせることを狙います。


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守備でリズムを作った山雅は前半の中ごろから攻めるシーンが多くなっていきます。徳島は守備時には5-3-2で守っていましたが、#23前川選手#32小西選手が下がる前に、1アンカーの#8岩尾選手の脇のスペースを狙ってロングボールを入れます。


山雅のシャドーの選手やボランチの選手が高い位置を取り、セカンドボールを拾うのですが、ここでシャドーの選手が中に絞ってボールを貰う動きをすることで徳島のCBとWBが釣られ、サイドのスペースが空きます。


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この日の山雅は中央にばかり急ぐのではなく、サイドを使う柔軟性も持ち合わせていて、特に右WBの#3田中選手が高い位置を取ることが多くなっていました。#3田中選手はサイドに開きボールを受けますが、当然相手のWBもついてきます。ここでその外を#50今井選手が上がり(#50今井選手は右SBが本職なのでオーバラップの動きは心得ている)、クロスで終わることができていましたね。ただ、ここで気がかりだったのは逆サイドの#20石原選手のポジション。リスク管理を念頭に置いていたのかあまり上がる機会がなく、いつもより低めのポジションを取っていました。#20石原選手は攻撃に特徴がある選手なので、リスク管理は#6藤田選手#47岩上選手に任せて、もっと高めのポジションを取ってほしかったかなというのはあります。


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ロングボール攻勢で#9高崎選手が収めるシーンも多く、また、#7前田選手が繰り返し裏抜けを狙うことにより、徳島のディフェンスラインは下がり、中盤との距離が広がってしまっていました。山雅はこれを利用しシャドーの#7前田選手#8セルジーニョ選手が広くなったスペースでボールを受けることで、前線での起点を増やすことに成功しています。さらに中盤が下がると、今度は中盤と前線の間が広がり、#6藤田選手#47岩上選手が少し余裕を持ってボールを持てるようになり、前線に質の高いボールを供給できるようにもなっています。


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さらに徳島は自陣でのファウルが多く、山雅に多くFKを与えてしまっていて、前半17分と前半22分には#9高崎選手にフリーでのシュートを許してしまっていました。これも山雅が攻めていたことの証拠となっていますね。


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そんななか前半39分。#8セルジーニョ選手が前線からプレスに行った際に足をひねってしまい、プレー続行が不可能に。代わりに#13中美選手がシャドーのポジションに入りましたが、山雅としては貴重な3つの交代枠のうちの一つをアクシデントで使ってしまったのは大きな痛手です。


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その後スコアが動くことはなく前半は0-0で終了。山雅のゾーン守備が上手くハマって徳島にシュートチャンスを作らせない、実際前半の徳島はシュート0本と山雅のペースで試合が進んだ前半でした。ただ、決定機を決め切れなかったのも事実で、優勝を狙うためには後半での得点が必要になってくるので、どう攻めるかというのが課題として残った前半でもありました。


なお、前半が終了しての他会場の結果は、大分1-0山形、町田0-0東京V、甲府0-0横浜FC。このままいくと大分1位、山雅2位、町田3位、横浜FC4位と大分が優勝、山雅が2位でこの2チームがJ1に昇格となりました。


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ハーフタイムには山雅後援会の皆さんとドリタンがピッチを一周していました。激戦の中の束の間のあオアシスです。


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両チーム選手交代のないまま後半キックオフ!


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前半途中から徳島は#10杉本太選手#23前川選手の位置を入れ替えてきていましたが、後半が開始すると#10杉本太選手がさらに下がり、攻撃の組み立ての際には#8岩尾選手との2ボランチに近い状態になります。前半には#8岩尾選手一人だったので山雅の選手もプレッシャーをかけやすかったのですが、後半になると中盤でのパスの基点が二つに増えたことで山雅のプレッシャーが分散し、徳島が有意義にボールを持てるようになります。


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後半の徳島の攻撃の組み立て

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さらに、後ろに人数が多く揃っているということで、徳島の#14杉本竜選手#36表原選手の両WBが高い位置を取るようになっています。山雅のWBの上がりを抑え、横に大きく開いて幅を取ることで、山雅の選手たちの距離を開かせて、プレッシャーを弱めようとします。実際に山雅のWBは前半には締めていたハーフスペースを開けることも多くなり、#23前川選手#32小西選手#10杉本太選手といった面々に空いたハーフスペースを使われ、シュートにまで繋げられるシーンもありました。


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前半は#50ピーター・ウタカ選手が下がって前線で起点になれないというのが徳島の課題でした。しかし、後半は#23前川選手#50ピーター・ウタカ選手の縦関係の2トップにし、下がってボールを受ける役目を#23前川選手が代わりに担うようにしたため、#50ピーター・ウタカ選手は前線に残るようになっていました。他の選手が#50ピーター・ウタカ選手へのパスコースを開けるように動き、中盤で前半よりも余裕を持ってボールを持てている#8岩尾選手#10杉本太選手から#50ピーター・ウタカ選手への縦パスが後半は多く入っていました。#50ピーター・ウタカ選手は高いキープ力を生かして前線で起点となり、味方選手の上がりを助けるとともに、山雅の選手たちを自陣に押し込み、カウンターの開始位置も下げることにも貢献していました。徳島は布陣変更によって徐々に自らのもとにペースを手繰り寄せていきます。


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ポジションを下げられた山雅の選手は前半よりもロングボールに傾倒した攻撃になっていきます。#9高崎選手が競るのですが、#9高崎選手にもやや疲れが見え、競り合いに勝てなくなっていきます。加えて前半には#9高崎選手のサポートに入れていたボランチの選手が上がってこれなくなり、セカンドボールも中盤で厚みを増した徳島に拾われてしまい、シュートまで持ち込めない苦しい展開が続きます。


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さらにディフェンスラインも下げられた山雅は前線からのプレッシャーも控え、自陣に引くことを選択せざるを得なくなります。徳島の選手たちはさらにディフェンスラインで自由にボールを持てるようになり、持ち前のパスワークも冴え、山雅は守勢に回ることとなりますが、ゾーン守備はまだ機能し続けており、徳島に得点を許しません。


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後半21分、CKから#3田中選手のシュートがバーを叩いた後、徳島が選手交代を行います。#50ピーター・ウタカ選手に代えて#26バラル選手を投入。前線で起点となっていた#50ピーター・ウタカ選手を変えるのはやや意外な判断ですが、パワーが落ちてきたと感じたのでしょう。#26バラル選手はシーズン途中からの加入にも拘らず9ゴールを記録しているので、山雅にとっては引き続き気を抜けない展開が続きます。


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なお、他会場では後半26分に横浜FCが甲府相手に先制。山雅は相変わらず2位ですが、負けると得失点差により3位以下に転落する可能性がかなり大きくなってきました。


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後半29分。山雅が二人目の選手交代を行います。#9高崎選手に代えて#38永井選手を投入。#9高崎選手はこの日も前線でターゲットとなって、体を張ってボールを収めてくれていました。自身の得点がなかったのは残念ですが、十分チームに貢献する働きをしていたと思います。#38永井選手はそのまま#9高崎選手のいた1トップに入りました。


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#38永井選手が入り、山雅の攻撃はさらにロングボールの傾向が強くなります。徳島のWBの裏、3バックの脇のスペースに快速の#7前田選手を走らせ、高い位置でボールを持とうとし、1点をもぎ取ろうとします。フレッシュな#38永井選手も競り合いに勝ってチームに活力を加えていました。


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後半31分、他会場が動きます。町田対東京Vで東京Vが先制。なお、この時点での山雅の暫定2位は変わりません。


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勝って昇格を決めるためになんとしても1点が欲しい山雅は、後半になって控えていたハイプレスを後半30分辺りから再開。コーナーフラッグ付近まで開いたCBにも積極的にプレスをかけていき、前線でボールを奪ってのショートカウンターを狙います。徳島の選手は後半ハイペースで入ったことで少し足が止まってきており、山雅のハイプレスに苦しめられ、山雅がもう一度試合のペースを握り返します。


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後半30分過ぎ頃に発表されたこの日の入場者数は19,066人。噂されていた2万人には届きませんでしたが(というか本当に2万人行ったら消防署に怒られる)、今シーズン最多の入場者数です。


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後半36分。他会場がまたしても動きます。町田が東京V相手に追いつき、勝ち点を暫定で76に。ただ山雅の勝ち点は暫定で77なので未だ自動昇格圏内の2位をキープしています。


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後半37分。徳島が二人目の選手交代を行います。#23前川選手に代わり、長身で空中戦にも強い#18佐藤選手を投入。前線でボールキープの基点を作り、試合を決める得点を狙ってきます。


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後半43分頃のことでした。#3田中選手がベンチからなにやら指示を受けています。すると山雅は攻撃は前線の3人に任せ、残りの選手は自陣に引いて徳島の攻撃に備えるように。リスクを最小限にし、0-0のまま逃げ切るという構えを見せます。


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それを如実に表していたのが#5岩間選手の投入。#7前田選手に代えて#5岩間選手を投入し、中盤を厚くすることで、点を取って勝利よりも逃げ切りを図るという姿勢を明確にします。


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そして、試合はいよいよ後半アディショナルタイム4分に突入。泣いても笑っても残された時間はあと4分。山雅の未来を決める4分間です。さて、その結果や如何に...



後編に続く