こんにちは。これです。今日Jリーグ開幕ですね。私はサッカー観戦も趣味にしているので、Jリーグが始まると映画があまり見れなくなるのが心残りです。1月2月に比べたら3月以降はペースは落ちると思いますが、それでも映画感想は続けていきたいと思いますので、その際はよろしくお願いしますね。


さて、今回の映画は『アリータ:バトル・エンジェル』。木城ゆうと氏のSF漫画『銃夢』を『タイタニック』『アバター』などのジェームズ・キャメロンが映画化した作品です。今回感想を始めるにあたってこれだけは言っておきたいのですが、私は『銃夢』は未読ですので、そのつもりで読んでいただければ幸いです。


では、始めます。





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―目次―

・映像がすごい!
・アクションがすごい!
・人間ドラマが中心のストーリー
・あまりハマらなかったかな...




―あらすじ―

天空に浮かぶユートピア都市"ザレム"と、ザレムから排出された廃棄物が堆積して山をなす"アイアンシティ"。大戦後の世界は"支配する者"と"支配される者"の二つに分断されていた。
"アイアンシティ"に暮らすサイバー医師のイドは、クズ鉄の山から少女の頭部を発見し拾い上げる。彼女はなんと300年前のサイボーグだった。奇跡的に脳は生きていたものの、長い休眠状態により過去の記憶を失っていた。イドによって新しい機械の体を手に入れたその少女は、アリータと名付けられ、イドの元で大切に育てられる。
ある日、アリータは襲ってきた敵からイドを守るために戦った際、自分の中にコントロールできないほどの戦闘能力があることに気づいてしまう。実は彼女は、300年前大戦中に失われたテクノロジーによって作られた"最強兵器"だったのだ。果たしてアリータと分断された世界の過去に隠された秘密とは……。
人々の温かさに触れ、感情が芽生えた心を持ったサイボーグの少女アリータは、自分の命の意味を見つけるため、そして大切な人たちを守るため、二つに分断された世界の秩序に立ち向かう。
(映画『アリータ:バトル・エンジェル』公式サイトより引用)











※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。















・映像がすごい!


『アリータ』の舞台は26世紀の未来(最初におおっとなる演出がある)。300年前に勃発した「ザ・フォール」という戦争が、世界を空中都市ザレムとゴミクズの街アイアンシティの二つに分断しました。映画はまずザレムの下部が映るのですが、幾何学模様で剥き出しになった金属がただならぬ雰囲気を与えて来るんですよ。一つ一つのCGが丁寧で細部までこだわって緊張感を生み出していました。


アリータはイドに拾われ、亡くなった彼の娘がつけるはずだった機械のボディを取り付けられます。起きたアリータは外に出てアイアンシティを目にするわけですが、このアイアンシティがこれまたリアル。建物の一棟からパイプの一管に至るまで作りこまれていて、遥か未来のはずなのにどこか昭和な懐かしさを感じられます。なのでセンチュリアンが現れた時のミスマッチさったらなかったですね。この四足歩行のロボットが出てきたときに私は未来を感じました。


他にもハンター登録所やモーターボールスタジアムなども無骨な感じがあってとてもよかったんですけど、『アリータ』でジェームズ・キャメロンらスタッフのこだわりが最も強く見えたのが水中のシーン。透き通っているけど決して透明ではなく質感を持った水色が浮遊感を感じさせます。アリータの口から出る泡もリアルでしたし、その後の船内の暗い室内もまたいい。紫の光がアンニュイな感じを醸し出していて、記憶を取り戻そうとしているアリータの不気味な一面を際立てていました。


で、今回私は『アリータ』を3Dで観たんですけど、3Dで観るとこれらの映像がより説得力を伴って視覚に訴えかけてくるんですよ。2Dとはなんといっても奥行きが全然違う。近く物はより近くに、遠くのものはより遠くに映ることで、実際にアイアンシティの中にいるような気分になりましたしね。すべての映像が3Dで観られることを前提として作られているので、300円の追加料金を払ってでも3Dで観るのがこの映画を一番楽しむ方法だと思います。



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・アクションがすごい!


そうですね。アクションは間違いなく『アリータ』の一番の見どころでした。アリータは300年前の「ザ・フォール」で作られた戦闘兵器という設定です。人型の戦闘兵器といったら体の各所に中が搭載されていて、それをバババババと撃ちまくるイメージがあるじゃないですか。でもアリータは違います。アリータが用いるのはパンツァークンストと呼ばれる格闘術。身軽な身のこなしで蹴って殴っての大暴れです。


まず、この映画最初のアクションはアリータが自分に秘められた戦闘能力に気づくシーンです。アリータは3人に囲まれるわけですが、まずは蹴りでヒャッハーな雑魚を粉砕。敵の女の刃物を使った攻撃を間一髪のところでかわし続け、パンチ一発で相手の顔をドアにめり込ませて体を切断。ごついグリシュカ相手にも蝶のように軽やかに舞い、アイヤーとかかと落としで相手の腕をブチぎります。カメラも次々に切り替わって臨場感があり、観客を一気に『アリータ』の世界に引きずり込みます。私はこうやって肉弾戦で戦う女キャラクターは好みなので、こういったアクションシーンを見せられて素直に今後の展開が楽しみになりました。




イドの反対を押し切ってハンターになったアリータ。ハンターの集まるバーに行き、ザレムに守られているグリシュカを協力して捕まえようと呼びかけます。しかし、周囲の反応は芳しくなく剣を持ったザパンに煽られる始末。まあここで煽り返すアリータは面白かったからいいんですけど。


その後はザパンと軽くバトって、剣を顔の横に突き刺すというおなじみの演出をした後、「お前ら全員かかってこいや」とハンターを一人残らず挑発。ビールの瓶を蹴って相手の顔にぶつけるジャッキー・チェンのような技を披露し、バー内は乱闘へ突入しました。バッタバッタと相手をなぎ倒していくアリータに合わせてご機嫌なロックンロールがかかる様子は、まさに私がこの映画に求めていたものです


ここで、イドが現れて場内は鎮まるんですけど、アリータとイドが少し話しただけで爆発が起こるのはスピーディでとてもよかった。「お前らこういうの欲しいんだろ」というメッセージをひしひしと感じました。ここでグリシュカが現れて第二ラウンドに突入するわけですが、床を壊して穴を開けて「俺の世界に来い」とか言っちゃうグリシュカも、まんまと飛び込んでいくアリータも、どちらもIQ低くて最高でしたね。


そして、先端が鋭い爪になっている鎖を手に入れたグリシュカとアリータの第二ラウンドが始まります。グリシュカの攻撃をアリータが避けまくるわけですが、ここで採用されたのがスローモーション。爪を体をのけぞって避けるアリータの姿は、マトリックスそのものでした。あの有名な弾除けのシーンがそのまま再現されていて思わず笑ってしまうほどです。あと、この一連のシーンではメカワンちゃんの活躍もよかったなぁ。敵を取ってくれた感じがして。



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映画は進んで、アリータはザレムに行くためにモータボールのトライアウトに参加します。しかし、他の参加者は全員アリータを殺すために送り込まれた刺客。イドの忠告も聞かずにモータボールはスタートするわけですが、ここのローラースケートを使ったスピーディなアクションよ。走りながら敵の攻撃をかわし、打撃を加える。そこに暇の入り込む余地はありません。とにかくテンポ良く敵が倒されていき、爽快感があります。


ここで、さらにアリータの友人のヒューゴがザパンに襲われるといった展開が同時発生しており、アリータはビジョンを突き破って外に出ます。パイプの上で続く追いかけっこ。不安定な足場でも難なく滑っていくアリータに惚れますし、追手を蹴落とす様子もバラエティに富んでいて面白い。屋根を飛び回って最短距離で集合場所に向かう忍者のようなアリータも見れましたし、最高でしたね。




そして、これらのアクションが3Dで繰り出されるわけですよ。もう大興奮ですよね。アリータのパンチやキックが客席まで飛んできますし、モータボールのシーンなんか目にもとまらぬ勢いでアクションが畳みかけられて、息つく暇がありませんでした。上映が終わって明るくなって、気づいたら手の平が汗ばんでいたのは、とてもハラハラしながら観れた証拠です。これだけでもプラス300円払う価値はあるので、観れる方は是非とも3Dで鑑賞することをお勧めします。「映画観たなぁ」って感じますよ。



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・人間ドラマが中心のストーリー



イドに拾われてボディを与えられたアリータ。初めて目にするオレンジを皮ごとかじり、マズそうな顔をします。街に出ると犬をかわいがり、チョコレートを美味しそうに食べる。周囲との人間関係もちゃんと構築していて、サイボーグではなく一人の人間らしさがありました


アリータの目はビジュアルから分かる通りかなり大きくて、また黒目が占める面積も多くまるで爬虫類のようです。正直初めは気持ち悪いと思ってたんですけど、観てみたら意外とすぐに慣れたんですよね。それは細かな挙動でアリータの人間らしさを演出していたから。一挙手一投足が本当の人間のようで親しみを持って観ることができました。




アリータはイドと街に出た途中に、少年ヒューゴと遭遇します。アリータとヒューゴはすぐに仲良くなり、一緒にストリートモーターボールに興じたり、一輪のバイクに2ケツしたりしていました。青春かよ。


ヒューゴは自らのお気に入りの場所だという大聖堂にアリータを連れて行き、夢を語ります。それはザレムに行くこと。アリータもそれに賛同し、実際に映画後半の彼女の目的はヒューゴをザレムに行かせることになっているんですよね。そのためには自らの心臓を差し出して売ることも厭わない意志の強さを見せています。


私、この映画を観るときにはもっとバトルをはじめとしたアクションシーンが多いと思っていたんですよ。でも、実際観てみたらそれは全く異なっていて。アリータとヒューゴの描写にかなりの時間が割かれていたんですよ。ヒューゴとの交流で起こるアリータの心情の変化を丁寧に描いていて、ラブストーリー的な要素も『アリータ』は多分に含んでいました




でも、私がこの映画に期待していたのって『アクアマン』のようなド派手なアクションだったんですよね。もっとアリータが無双するのかなって。でも映画は予想以上にしっとりしていて思っていたのとだいぶ違っていたので肩透かしを食らったような気分になりました。


たぶん『アリータ』は戦闘兵器にある冷たいイメージと、人間の暖かな交流によって生み出されるギャップというものを狙って描いていたと思います。でも、それにしてはアリータの葛藤が少し弱い気もします。もっと自分が兵器と知った後の精神的な葛藤を見たかったのに、それが全くない。あまりに真っすぐなのは清々しさを感じさせますが、もっと悩んで傷ついて成長していく方が個人的には好みなのでそういった描写が見られなかったのは少し残念でした。アリータは最初から成熟している大人なんですよね...。うーん惜しい。



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・あまりハマらなかったかな...


さらに事前のイメージと違っていたところは他にもあります。それは終わり方。最近は称えて終わるのがブームなのか分かりませんが、続編作る気満々の終わり方をしてるんですよね。それはこの映画が持っていた「生死」というモチーフ(ザレムが生者の場所で、アイアンシティは死者の場所。アイアンシティからザレムに行けないというのは生命の不可逆性を表しているという解釈)にも合っていて納得できるものではあるんですけど、一個の映画の終わり方としてはちょっとどうなんだろうというのは正直あります。




ただ、このようなことはこれから書くことの前では些末な問題に過ぎなくて。この映画ってとにかく分かりやすすぎるんですよね。演出も展開も。捻ったことは何もしていないですし、よく言えば王道、悪く言えば特徴のないストーリーです。ここで『アリータ』は王道だ!面白いよ!って言いたいんですけど、まあストーリー面ではこれといって取り上げることのない映画と言わざるを得ないかなと。


それは、この映画があまりにも直接的すぎたからなんですよね。隠したり仄めかしたりはしない。「私は何なの?」と聞かれれば、「お前は戦闘兵器だ」と答える。それもひどくストレートな言葉で。観客が求めるものをあっさり提示しすぎるんですよ。これはどういうことだろうかと考えたくなる展開が少ない。アクションや映像美で何とか興味を引き付けてはいますけど、それがなかったら本当に平凡な映画になっていたと思います。


それが最も現れていたのがセリフ。まあ捻りもなにもあったもんじゃない。一言でいうとオシャレじゃないんです。アリータは本当に直接的なセリフが多くて、「あなたは〇〇を知っていますか?」と聞かれて「はい、知っています」と言っているようなものです。しかも、これが全編を通して続く。こういったセリフは普通の会話の中で使われるセリフであって全く映画的ではないです。私が映画に求めてるのってこんなんじゃない。


私が映画に求めてるセリフっていうのは「あなたは〇〇を知っていますか?」と聞かれたら、「君は××という男の話を知っているかね。彼は~」とよく分からない回りくどい答えを返すとか、そういったものなんですよ。関係のない話をして質問には明確に答えない。でも、言葉の裏に込められた意味が質問の答えになっている。そういうオシャレなセリフ回しを見たときに、私は「映画観てるなぁ」と感じるんです。でも、『アリータ』にはそれがなかったので、私はこの映画に映画っぽさは残念ながらそれほど感じることはできませんでした。



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不満は続きます。私は今回『アリータ』を吹替で観ました。アリータ役の上白石萌音さんをはじめ多くの人はいい演技をしていたと思うんですけど、ただ一つ古舘伊知郎さんの実況だけが不満でした。古舘さんが強すぎるんですよこの映画。四字熟語を頻繁に用いてまくしたてる実況を聞いてみてください。もう日本そのものですよ。26世紀が舞台のSFを観ていたはずなのに、21世紀の日本に戻されるんですよ。ぶっちゃけ興醒めです。


というか、そもそも実況要る?って話ですよ。字幕版にも実況が入ってるならまだいいですけど、これが吹替版だけならはっきり言って改悪だと思います。そこまで実況されなくても何が起こってるかくらい分かるっつーの。というか別に分からなくても「あー凄いこと起こってんな」ぐらいで十分です。それを逐一説明されると冷めてしまいます。「バトル・エンジェル」とか言わないでほしかったですね。そこでタイトル出されちゃうかってがっかりしました。分かりやすさを優先しすぎっす。




『アリータ』の舞台は26世紀なんですけど、そのSF感に直接的なセリフや演出が全く合ってないんですよ。まるで現代の話のように感じてしまって。近未来SFの名作といわれる『2001年 宇宙の旅』や『ブレードランナー』ってよく分からない演出やセリフで未来感を出していますよね。個人的には『アリータ』にもそれくらいやってほしかったです。26世紀感をもっと味わいたかった。SFとしてみるのはあまりいい見方とは言えませんね。人間ドラマです。『アリータ』は。
 


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以上で感想は終了となります。『アリータ:バトル・エンジェル』。私にとっては現時点での今年のベスト10にも入らないくらいハマらなかったんですけど、映像やアクションには一見の価値があります。興味のある方は映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。しつこいようですが、その際には3Dで観ることをオススメします。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい





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