こんにちは。これです。今回のブログは映画の感想になります。


今回観た映画は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(略して『ワンハリ』)。かの有名なクエンティン・タランティーノ監督の最新作です。さらに、キャストもレオナルド・ディカプリオにブラッド・ピッドと超豪華。さっそく初日の夜に観てきました。そして、結論から申し上げますととても面白く、好みの映画でした。警戒していた分かりにくさもあまりなくキャッチ―でしたしね。


では、感想を始めます。拙い文章ですがよろしくお願いいたします。




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―目次―


・主演三人が最高!
・ひたすら現実のことであると印象付ける前半
・でも、フィクションなんだよ





―あらすじ―


ラスト13分。映画史を変えるのは―この二人


リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)はピークを過ぎたTV俳優。映画スターへの道がなかなか開けず焦る日々が続いていた。そんなリックを支えるクリフ・ブース(ブラッド・ピッド)は彼に雇われた付き人でスタントマン、そして親友でもある。目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことで精神をすり減らし情緒不安定なリックとは対照的に、いつでも自分らしさを失わないクリフ。この二人の関係は、ビジネスでもプライベートでもまさにパーフェクト。しかし、時代は徐々に彼らを必要とはしなくなっていた。そんなある日、リックの隣に時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と新進の女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が越してくる。落ちぶれつつある二人とは対照的な輝きを放つ二人。この明暗こそハリウッド。リックは再び俳優としての光明を求め、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をするが―。

そして、1969年8月9日―それぞれの人生を巻き込み映画史を塗り替える【事件】は起こる。

(映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。












・主演三人が最高!


この映画の最大の売りは、レオナルド・ディカプリオブラッド・ピッドの、公式曰く初神共演にあります。この二人のかっこよさがこの映画を進めるうえでの最大のエンジンになっていると感じました。まず、白黒で二人が映されるんですけど、もうかっこよすぎて。いきなり死ぬかと、かっこよさで殺す気かと思いました。


まず、落ちぶれたTVスター・リックを演じたレオナルド・ディカプリオなんですが、トラのように鋭い眼光が最高にかっこいいわけですよ。そこから吐き出される渋い声の魅力。ぶっちゃけ最初は落ちぶれた感はゼロなんですが、徐々に弱いところも見せていって。子役の少女のシーンで自分を振り返る時の弱気な演技はそれまでのギャップで、グッときました。さらにこの映画では、いろいろな映画や番組に出演しているので、それぞれ異なる表情を見ることができます。ファンにはたまらない作品ですね。


続いて、リックの相棒であるスタントマン・クリフを演じたブラッド・ピッド。こちらはリックと対照的に、落ち着いた優しい視線が印象的でした。現実を改めて突き付けられ自棄になるクリフを抱きかかえる優しさよ。ここだけで千円分の価値はあります。一方で、ブルース・リーやヒッピーとの対決時にはキリっとした目元と、キレのあるアクションを披露していて、こちらもそのギャップにやられましたね。ラリっている時の狂気的な笑いも流石でした。


そして、この二人の関係性がまた抜群に良いんですよね。リックは落ちぶれてくるのは悪役のオファーばかり。新進の若手俳優の踏み台としての価値しかなくなりつつある。一方、クリフも年齢を重ねて今までのようなアクションはできない。どちらにも希望に満ちた未来はなく、坂を下っていくのみ。この一人では崩れそうなところを互いに支えあう関係性ですよ。軽口をたたきながらも、本音を言うことができる、心から信頼しあえているんだなと尊さ爆発でした。


さらに、この映画のキーであるシャロン・テートを演じたマーゴット・ロビーもこれまたいいんですよね。これまで『スーサイド・スクワット』や『アイ,トーニャ』で襲撃する側にいた彼女が、この映画では襲撃される側に回っているんですけど、儚さみたいなものは抑え目に、ひたすらに華やかで。スラリと伸びた脚からくるスタイルの良さはもちろん、自分が注目される女優という一種の驕りを感じさせる演技が出色で。希望の未来を約束されていて、祝福を全身に浴びているんだと思わずにはいられません。でも、自分の出演した映画を観る際は周囲の反応が気になっていて。そういういじらしいところもありましたね。最高です。




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・ひたすら現実のことであると印象付ける前半


さて、この映画は実際にあった事件、シャロン・テート殺人事件をモチーフにしています。


シャロン・テート殺人事件―

1969年8月9日に起こった実際の事件。本作でマーゴット・ロビーが演じるシャロン・テート。駆け出し女優であり、ロマン・ポランスキー監督(後に「戦場のピアニスト」でアカデミー賞監督賞を受賞)の妻でもあった彼女は、1969年ハリウッドの自宅で惨殺される。犯行は、狂信的カルト集団の指導者チャールズ・マンソンの信奉者によるものだった。事件当時、彼女は26歳で妊娠8か月だった―。この事件は今もハリウッドの史上まれに見る悲劇として語り継がれ暗い影を落としている。


(映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』公式サイトより引用)


そして、この映画を観るにあたっては、この公式サイトの情報だけでもいいので、シャロン・テート殺人事件を知っておいた方が絶対にいいと断言できます。なぜなら、事件を知っているとゴールが意識でき、映画を観る際に緊迫感が生まれるからです。


この映画は落ちぶれたTV俳優リックと、スタントマンのクリフを主人公にして描いています。しかし、二人に大きな事件というのはあまり起こりません。リックは番組の撮影に臨み、クリフはアンテナを直すなど家事をこなす他は、映画のセットに暮らすヒッピーを訪ねるのみ。そこにあるのは二人の単なる日常であり、物語性はそこまで高くありません。


一方のシャロン。こちらは映画館で自分の出演した映画を観ています。あとはほとんど何もしません。映画を撮るシーンはゼロで、クラブで踊るのみです。しかし、事件を知っていれば彼女が殺されるというゴールが見えます。そうなると起伏に欠けるこの映画に緊張感が生まれます。特に半年経ってからの逐次、時刻を表示する演出が効果的でしたね。いつ殺されるんだろうとハラハラしました。この緊張感があったおかげで、2時間40分の上映時間も思っていたよりは長く感じず、引き寄せられるように観られました。




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また、シャロン・テート殺人事件は実在した事件です。なので、最終的に彼女を殺すとなると、映画の中は現実であることを要求されます。フィクションだと思わせては緊張感に欠けてしまうからです。そして、この映画では描かれていることが現実であることを印象付けるために、様々な取り組みがなされていたと感じました。例えば、ロサンゼルスの雰囲気。その時代を生きていない私は、めっちゃ映画館多かったんだなぐらいにしか思いませんでしたが、タランティーノ監督が「人生をかけてリサーチ」したのだから、当時を生きた人には分かるようになっているのでしょう。実際私もどことなく60年代にタイムスリップしたように感じましたしね。


続いて、音楽の使い方。この映画では数々の陽気な音楽が使われていて、映画を明るく盛り上げていましたが、ここで注目したいのは曲の始まり方と終わり方です。この映画ではキャラクターたちが、レコードに針を落とす、カーステレオをつけるなど、実際の動作を伴って音楽が流れるシーンが多かったと感じます。終わる時もクリフがスイッチを切るのと連動していましたしね。いかにも映画的な音楽のかかり方ではなく、キャラクターが自ずから音楽をかけることが、この映画にリアリティを与えていたと感じました。


さらに、映画の中で番組を撮影する、映画を観るというシーンが多用されていたのもこの映画の特徴です。まず私が生きる現実。そして、映画の中というフィクション。この二つの次元のみの場合は、私は映画を現実として認識することができません。しかし、この映画は「フィクションの中のフィクション」というもう一つの次元を用意することで、私に映画というフィクションを現実のものとして認識させることに成功していると感じました。映画の中に入り込んだような感覚に囚われ、魔法にかけられたようです。


そして、私が特に印象的に残ったのが、中盤に登場したあの子役です。プロ意識が超高く、ませている態度がイラつきつつも可愛かったのですが、この子役とリックが会話するシーンがとても重要だと感じていて。リックは本を読んでいるんですよね。で、子役にどんな本かを聞かれてあらすじを語るんですけど、昔は華々しいスターだったのに、今ではすっかり落ちぶれてしまったと自分のことを喋ってしまうんです。ここに、私はフィクションではない現実であるリックの人生を感じて、架空の存在であるはずの彼が現実であるとの認識をより強くしました。


あと、余談ですけど、子役はその話を聞いて怪訝な顔をするんですけど、リックは彼女に「15年後になれば分かるよ」って言うんですよ。これは、あれかよと。この映画にも出演しているダコタ・ファニングのことかよと。子役時代に『アイ・アム・サム』で脚光を浴びながら、以後は妹のエル・ファニングに水をあけられてしまっている(※主観です)ダコタ・ファニングへの当てつけかよと。彼女自体は可愛らしいのですが、存在がとても意地が悪いなと思うのと同時に、移り変わりの激しい芸能界を象徴しているようでもありました。ダコタ・ファニングは脚本を読んだ時どう思ったんですかね。




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・でも、フィクションなんだよ



ひたすら現実のことであると印象づけてくるこの映画。しかし、映画が進むにつれて徐々に私は「これって映画を撮影している体での映画なんじゃ...?」と思うようになりました。リックがイタリアでトントン拍子で行きすぎですし、ヒッピーたちが馬に乗るシーンはいくら50年前とはいえ、あれだけ馬に乗れる人間いるか?とも感じました。しかも、テレビの中の場面がこのヒッピーのシーンで意図的に繰り返されるんですよね。あ、これ見たやつだってなり、ここで私は「これ映画なんだ」と確信しました。


ただ、シャロン・テート殺人事件を知っているので、シャロンが殺されるという展開は目に見えています。どうやって殺されるのだろう。私はそれを直視できるのかなと思っていたところに、ヒッピーたちが再登場。包丁や銃を持っています。それ来たと思いましたね。ちょうど日付も変わって8月9日になっていましたし。


ここで、仲間由紀恵さんっぽい雰囲気の女性が「世の中の大体の映画は人を殺している。私たちに殺しを教えた相手に、殺しを教えてやろう」(意訳)というセリフを吐きます。フィクションが人を殺すという大変辛い展開です。


このシーンには伏線となっていたシーンがありまして。それは大事な部分だけ隠せればいいと言わんばかりのエロい格好をしたヒッピーが「映画で人を殺しているのに」とクリフに言うシーンと、冒頭でカーラジオからベトナム戦争の死者の報道が流れてくるシーンです。現実では人が死ぬことに心を痛めていても、フィクションではそれを当然のものとして受け入れてしまう。スプラッター映画等では人が死ぬのを待ち望んでいるなど、人の死をエンタメとして消費している自分に気づいてゾッとしました。序盤のリック出演の番組がそのおぞましさをさらに強化していますね。


ここで、「人が殺される」=フィクションという図式ができ、現実とフィクションはごちゃ混ぜになります。今私が見ているのは現実?それとも映画?みたいな感じですね。その混乱状態が終わってみれば気持ち良かったです。


でも、彼ら実行犯の中にも、かつて活躍していたリックを知っている子がいたんですよね。で、彼女はナイフを取りに帰ると言って、車を走らせて彼らの退路を断ってしまう。フィクションが彼女を犯罪者にすることを防いだ瞬間で(未遂に問われるかどうかは知らん)、フィクションが一人の人を救う展開は緊迫した展開の中でひと時の清涼剤でした。




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そこからは、謳い文句であるラスト13分。映画史を変えるのは―この二人。という展開に突入し、犬怖っ!大味な解決!リックの結婚相手何言ってるか分かんねぇ!となり、映画はフィナーレを迎えます。予想外の展開で、これは映画じゃなきゃできないなーとか、回想が多いのも映画だったからかーと一人思う自分がいました。この映画であることを最大限に押し出した、この映画の姿勢は私は好きですね。「昔々」という意味の「ワンス・アポン・ア・タイム」というタイトルにもちゃんと理由がありますし。


それと、私はこの映画の最後のセリフは「はい、カット」なのかなと思いながら観てたんですけど、この映画では最後まで「はい、カット」がないんですよね。エンドロールにはありましたけど、この想像の余地を持たせる姿勢、「はい、カット」は自分の中で言うのだ見たいな感じも凄くいいなと。言うならば、「はい、カット」のない「カメラを止めるな!」、または、ミルドラースが出てこない「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」のような映画だと個人的には感じました。あくまで個人的にはですよ。


あと、最近も『ボヘミアン・ラプソディ』や『ロケットマン』に批判があったじゃないですか。でも、これらの映画ってドキュメンタリー映画ではなく、劇映画なので別にいいと思うんですよね。当時を知ってるわけじゃないですし。この映画もきっと同じような批判あると思うんですけど、フィクションって間違ったことも書けるので。それを損なってしまったらフィクションの魅力も減じてしまうので。どうか目くじらを立てずに見てほしいと思いますね。この映画って明確にフィクションなんですから




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以上で感想は終了となります。映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。前半で現実であると印象付ける演出と、後半の展開がコントラストになっていて、とても面白い映画です。ご覧になってみてはいかがでしょうか。オススメです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい





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