こんにちは。これです。いきなりですが、今回のブログも映画の感想になります。


今回観た映画は『見えない目撃者』。吉岡里帆さん主演の映画です。評判がかなり良くて、気になったので観てきました。で、実際観たところぶっ刺さりましたね。めっちゃ好きです。


では、感想を始めたいと思います。拙い文章の上、最後の方は変なテンションになっていますが、何卒ご笑覧いただければ幸いです。よろしくお願いします。




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―目次―

・俳優さんはいいけど、作品自体は正直あまり…
・インザダークの人々の物語になっているのが超好き!
・私はこういう映画が観たいんだよ!!





―あらすじ―

日本中を震撼させる女子高生連続殺人事件。
唯一の手がかりは、目の見えない目撃者だった――


警察官として将来を有望視されながら、自らの過失による事故で視力も大切な弟も失い、失意の底にあった浜中なつめ(吉岡里帆)は、ある夜、車の接触事故に遭遇。なつめは慌てて立ち去る車の中から助けを求める少女の声を耳にするが、彼女の訴えは警察には聞き入れてもらえない。視覚以外の人並外れた感覚、警察学校で培った判断力、持ち前の洞察力から誘拐事件だと確信するなつめは、現場にいたもう一人の目撃者高校生の国崎春馬(高杉真宙)を探し出す。

事件に気づきながら犯人を見ていない目の見えないなつめと、犯人を見ていながら少女に気づかなかった高校生の春馬。
“見えない目撃者”たるふたりの懸命の捜査によって、女子高生連続猟奇誘拐殺人事件が露わになる。
その真相に近づくなつめたちに、犯人は容赦なく襲いかかる。絶命の危機を前に、彼女らは、誘拐された女性を助けることができるのか。

「わたしは、あきらめない」



(映画『見えない目撃者』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。






※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。










・俳優さんはいいけど、作品自体は正直あまり……


まずはじめに。『見えない目撃者』は2011年の韓国映画『ブラインド』のリメイクとなります。主人公・浜中なつめの目が見えないという設定や、事件をもう一人の目撃者と共に解き明かしていくという基本構造は一緒ですが、『見えない目撃者』では、多くの部分に改変が加えられていました。まず、最初のシーンからして違いますしね。オリジナル版では、最初はダンスバトルのシーンなんですけど、この映画では、なつめの警察学校での訓練の様子が描かれています。


夜中に出歩いている弟を連れ戻しに行くなつめ。しかし、そこで事故を起こしてしまい弟と自らの視力を失ってしまいます。ここはオリジナル版と大体同じですね。この映画で、主人公である浜中なつめを演じたのは吉岡里帆さん。これまではどちらかと言うと明るい役が多く、コメディエンヌといった印象でしたが、この映画ではそれが一変。真面目な面持ちで真相に迫ろうとする姿には、今までの面影は感じられず、まさに新境地といった印象を受けました。


視覚障害者の演技もよかったですし、見えないのにこちらを見透かされているような目力の強さ。『ホットギミック』でもそうでしたけど、吉岡さんにはもしかしたらシリアスな役柄の方が、見た目から受ける明るさとのギャップがあっていいかもしれませんね。あと、オリジナル版のキム・ハヌルに雰囲気がよく似ていますし、スリラー映えするという意味でもよかったと思います。


夜道を歩くなつめ。車から「助けて」という女性の声を聞きます。しかし、車は走り去ってしまい、女性は誘拐されてしまいます(ここオリジナル版ではひき逃げでした。事件の入り口からして違います)。警官に証言をするなつめですが、見えていないということもあってイマイチ信用されません。もう一人の目撃者を探し出して、証言を補強しようとしますが、もう一人の目撃者・国崎春馬となつめの証言は食い違い、事件の捜査はいったんは終えられてしまいます


しかし、確かに助ける声を聞いたと納得がいかないなつめ。春馬と一緒に事件の真相に迫り始めます。今回、なつめとコンビを組む国崎春馬を演じたのは、高杉真宙さん。オリジナル版では、あまりかっこよくなかったもう一人の目撃者でしたが、リメイクに当たってイケメンに改変されていますが、抜擢された高杉の演技がまたよかったんですよね。振り回されている間、付き合わされている感満載で。小さくない悩みも抱えていますし。でも、映画が進むにつれて主体的に参加するようになっていって。顔つきも凛々しい方向に変わっていったのが好きでした。




そして、ここからはなつめと春馬とのコンビが事件を捜査していくのですが(春馬暇すぎじゃない?というツッコミはある)、一つ言っておくと、この映画ってR15+なんですよね。これはどういうことかと思っていたんですけど、映画の中で耳だったり鼻だったり手だったり、人体の一部がえぐり取られた後の姿が映るんですね。これちゃんと理由があってのことなんですけど、まあまあグロかったので、これはR指定入るなと。ただ、個人的にはPG12でもいい気はしましたけどね。直接的なシーン1つしかなかったわけですし。


また、この映画はオリジナル版とはかなり違っているんですけど、要所要所で同じところもありまして。まず地下鉄のシーンですね。あのシーン、春馬がなつめの目になって犯人から逃げるといったシーンなんですけど、ここオリジナルと同じように手に汗を握りました。さらに、犯人とのラストバトルの構図も大体一緒。刑事二人がやられてしまうのも既定路線ですし、春馬が刺されてもなお犯人に抵抗しようとしがみつくのも一緒です。ちなみに、ここ停電の時に犯人がかざすのが、オリジナルではライターの火なんですけど、この映画ではスマートフォンの懐中電灯アプリで、現代風にアレンジされていましたね。こういった諸々含めてオリジナルの再現度は40%ぐらいといったところでしょうか。基本別物です。


ただ、なつめと春馬のコンビが事件を追っていくという展開はいいのですが、いかんせん説明が多すぎます。警察でのシーン全般とか、欠損したぬいぐるみとか。特に犯人が明らかになる時の國村隼さんの説明は要らなかったんじゃないかなぁ。いかにも結論ありきで進めている感じはどうしてもしてしまったので、ミステリーとしては正直あまり良いものではないと思います。サスペンス要素はいいですけど、犯人が分からない以上完全なサスペンスではないし...。緊張感はあって、吉岡さんをはじめとした俳優さんも概ねよかったんですけど、ただ作品自体の評価はそこまで高くないかと...。


でも、私はこの映画が好きなんですよね。それはこの映画で描かれた物語が好きだからです。




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・インザダークの人々の物語になっているのが超好き!


この映画とオリジナルの大きな相違点。それは、この映画がインザダークの人々の物語であるということです。この映画って光を求めて暗闇の中でもがいている人の物語なんです。


オリジナル版からこの映画に付け加えられた要素として、被害者のパーソナリティへの言及と言うものがあります。この映画での被害者は、家出少女でした。親に関心を向けてもらえず、家出をしてネットカフェで暮らし、風俗に辿り着く少女たち。犯人は、殺しても身元が明かされることはない彼女たちを狙って誘拐と殺害をしていました。親に認めてもらえず、その日暮らしの彼女たちには、明るい未来なんて見えるはずもありません。光が見えず、暗闇の中にいます。


そして、これは春馬も同様でした。この映画で新たに付け加えられたシーンとして、春馬の三者面談のシーンがあります。ここで春馬の親は登場せず、春馬自身にもやりたいことは特にありません。先生からは「ほっとけば社会のレールから外れるお前みたいな人間には構いたくない」と言われてしまいます。春馬もまた未来への展望が描けず、暗闇の中にいます。


目の見えないなつめと、未来の見えない春馬や家出少女たち。ここで、両者が「見えない」という点で疑似的ではありますが、同一の存在になっているんですよ。この構造が、私めちゃくちゃ好きで。オリジナル版に「機能の障害ではなく、心の障害」というようなセリフがあったんですけど、まさにこれなんですよ。「見えない」というのは、春馬や家出少女にとっては心理的な現象で、本当のバリアは心の中にあるんですよね。この映画ではそれに対する言及はなかったですけど、この点でオリジナル版の精神を踏襲していると感じました。


ただ、家出少女たちにも救済が訪れます。それは「救様」といって自らを風俗の世界から連れ出してくれる存在。暗闇の中にいる彼女たちにとってはようやく見えた光で、そこに向かっていくのは至極当然のことです。ただ、結果的に彼女たちは殺されてしまうんですよね。救いの光なんてない。お前らはずっと暗闇の中にいるしかないと突き付けられているも同然のきつい展開です


ちなみに、この事件は儀式殺人で「六根清浄」という仏教や神道の概念に基づいていました。目、口、鼻、耳、手、意識の六つを清らかにすることで、完全に調和した理想的状態に至るという。ここ非常に日本っぽいなって感じましたね。だって、オリジナル版が作られた韓国って儒教ですもの。日本ならではの改変ですね。




あの、この映画で凄く、分かる!ってなったセリフがあったんですけど。それが映画の終盤で犯人が言った「俺は世の中にも自分にも絶望している」というもの。分かるわー、めっちゃ分かるわー。私もヘイトが渦巻くこの世界が嫌いですし、何より世界を嫌っている自分が嫌いですからね。


それに、今ってコミュニケーション能力が人間にとって、一番大事な能力みたいに捉えられているじゃないですか。でも、私全然人と話せないんですよね。というか人が全く信頼できなくて。失礼なこと言って殴られるんじゃないか。どこに怒りのツボがあるか分からない点で、すぐ噛みついてくる野犬と同じだよなーとか思っているので。人が信じられる人ってどんな人生歩んできたんだろうって疑問に思うんですよね。だって私にとっては人が信頼できないのが普通ですし。あと、単純に人の話し声がうるさくて嫌ですし。


でも、話している人を見ていると自分が置いてけぼりになっている感じがバリバリにするんですよ。話せてるからチャンスもらえて、成長できんだろうなーみたいな。暗闇の中にいる感覚がずっとあるんですよね。たぶん生まれた時からずっと。仕事も単純作業で給料低いし、この先上がる見込みもそんなないし。何のスキルも身につかないで、年ばっかり取って。坂を転げ落ちている感覚があって、これからも落ちる一方なのだから、一番高いところにいる現時点で終わらせた方がいいのではないかということはいつも思っています。明るい未来なんて全く見えてないですし、春馬や家出少女の気持ちが痛いほどわかるんですよね。




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・私はこういう映画が観たいんだよ!!


しかし、この映画ではその犯人の台詞に対する返答としてなつめが「私は諦めない!世の中も自分も!」って言ってるんですよね。これマジで強くないですか。弟を失って盲目になって、この映画で一番辛い思いをしているなつめが!私なんかよりずっとずっと辛い思いをしているなつめが!「諦めない!」って言ってるんですよ!光が無くても、救済が無くても「諦めない!」ですからね!もう最高のシーンでしたよ!


で、またいいのが最終的になつめが誘拐された家出少女を救っていることなんですよね!救いなんてはねのけたなつめが、救いを求める家出少女を救っているこの構図!諦めとはまた違う現状の受容と、それを上回る強い意志が、人の命を救っているんです!その後の手を握って「ありがとう」というシーンは言葉にならないくらい良くて!しかもこのシーンオリジナルにはないので、本当にナイス改変ですね!


それにラストシーンも最高で!春馬が「俺、警察官になる」って言うんですよね!これオリジナルと同じ展開なんですけど、春馬のバックボーンを描いたこの映画では感動が段違いですよ!暗闇の中でもがいていた春馬に、光が差した気がしてとてもいい!なつめも壁を一つ乗り越えていて、二人の心のバリアが取っ払われたシーンでめっちゃいい締め!盲導犬も死んでない!好き!




これは暗闇にいる私だからこそ思うんですけど、明るいところにいる人間なんていないのでは?みんな暗闇の中でもがいているのでは?そういった意味では盲目のなつめと私たちは何も変わらないのでは?私たちは世界をちゃんと見られている?半径5メートルの世界じゃなくて、スマートフォンの画面に映る世界じゃなくて、もっと広い世界を!見る世界が広がれば、光ももしかしたら見つけられるのでは!?


もうね、この映画は「私は諦めない!世の中も自分も!」というセリフに集約されると思うんですけど、私が観たいのってまさにこういう映画なんだよ!自分も世界もいいものでは決してないけど、それでも諦めず生きていくっていうのが!文句なんてあるはずもないわ!作品自体の評価は100点満点中60点くらいだけど、きわめて個人的な謎の加点+20000点がついて、結果的には100点満点中20060点!大好き!作ってくれてありがとう!


これを読んでいるあなたも、自分が暗闇にいると感じているなら、必ず響くはず!ぜひ観てね!オススメ!!




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以上で感想は終了となります。映画『見えない目撃者』、気になるところはありますが、刺さる人にはぶっ刺さる映画だと思うので、これを読んでいるあなたが刺さる人かどうかは分かりませんが、興味があれば観てみることを勧めます。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい


見えない目撃者 (小学館文庫)
豊田 美加
小学館
2019-09-06



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