こんにちは。これです。長野は巨大台風の後も雨でした。マジふざけんなよと思います。もう雨はいいだろ。台風一過の青空なんて嘘だ。「空、クッソ青い」と言わせてくれよって感じです。


でも、そんな中でも私は映画を観に行ってしまいました。今回観た映画は『メランコリック』。小規模公開ながらも絶賛が相次ぎ、徐々に上映館を増やしている映画です。割と盛り上がっていたので気になって観に行ってきました。


では、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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―目次―

・本来好きなはずなのに…
・共感を拒む作りになっているのが合わなかった





―あらすじ―

バイトを始めた銭湯は、
深夜に風呂場で人を殺していた――!?

名門大学を卒業後、うだつの上がらぬ生活を送っていた主人公・和彦。ある夜たまたま訪れた銭湯で高校の同級生・百合と出会ったのをきっかけに、その銭湯で働くこととなる。そして和彦は、その銭湯が閉店後の深夜、風呂場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知る。そして同僚の松本は殺し屋であることが明らかになり…。

(映画『メランコリック』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください










※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。










・本来好きなはずなのに…


公開されるやいなや、映画ファンの間で絶賛の嵐を巻き起こした映画『メランコリック』。その高い評価に後押しされ、今回観に行ったわけですが、正直私にはあまりハマりませんでした。いや、描かれていることは本来、かなり好きなはずなんですよ。絶賛されるのも良く分かるんです。私も観た後には、なんでこれがハマってないんだろう?って不思議に思ったくらいですし。


なので、この感想ではまずはこの映画の好きなところを上げて、その後になぜハマらなかったのかを少し上げていきたいと思います。


まず、この映画で光るのは銭湯を「人殺しの場所」として貸し出すというアイデア。確かに銭湯であれば血は水で流せますし、遺体は釜戸に入れて火葬することができます。その一方で、昼間には一般客も出入りする場所である以上、証拠を残してはいけないという緊張感もあります。なので、このアイデア自体は非常に面白いですし、思いついた時点である程度の出来は保証されている気がしました。


続いて良いのが、主役の和彦を演じた皆川鴨二さんと、後に相棒的なポジションとなる松本を演じた磯崎義知さんの二人。皆川さんは慌てふためく感じが良い意味で社交性のなさを感じましたし、磯崎さんはがっちりとした体格が逆に不安を煽ります。この映画のプロデューサーは皆川さん自身で、自らと磯崎さんの特徴を熟知しているからこそ、一番ハマる役柄を持ってきた印象がありますね。それが、この映画の大きな長所になっていたと感じます。




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さて、映画序盤では小寺というキャラクターが、主に人殺しを行っていました。しかし、映画途中でその小寺は命を落としてしまいます。依頼主の田中(ヤクザ)は元々は人殺しをしていた松本を引き抜こうと画策。そして、人殺しのことを知っている和彦を自分も人殺しができるようにするか、口封じのために殺すかと、店主の東に迫ります


ここで、松本は和彦のもとに行き、今の仕事についての自覚、覚悟はあるか尋ねます。煮え切らない和彦にキレる松本。話し合いの結果、元凶である田中を殺せば、全てチャラになるという結論に達します。ここからのっぽ眼鏡の和彦と、ガタイの良い松本のバディムービーの様相もこの映画は呈してきました。実際これは観ていて楽しく、二人が銃の練習をするシーンは思わず笑いがこみあげてきてしまうほどのコミカルなシーンでした。本人たちは真剣なんですけど。


で、この後のシーンが超好きでして。二人は一転して定食屋にいるんですよね。酒が飲める飲めないだの童貞だのそうじゃないの馬鹿なトークを展開しています。で、ここで交わされる会話が良くて。


和彦「人生に何も楽しみないの?
松本「人生って楽しみがなくちゃいけないんですか?


松本「なんで東大卒でこんなことしてんですか?
和彦「東大出て、いい会社入って、幸せな生活送ってなきゃいけない?


(すべて意訳です)


というものだったんですけど、これって世間の「こうあるべき」像なんですよね。人生には楽しみがないといけない。東大卒はいい会社に入らないといけない。この映画のチラシの裏には「人生、こんなはずじゃなかった。」と書いてあるんですが、まさにこういう人たちの映画で。人殺しも、東大卒で二―とも「すべきではない」。世間の圧力に言葉に出さずとも苛まれているのが、和彦と松本の共通点だったと思います。この辺り、私も常日頃感じていることなので、共感はかなりしましたね。


で、その二人が、元凶である田中と、自分たちに人殺し及びその後処理をやらせていた東のもとへと殴り込み。最初に言った松本は二人の策略に騙され、ピンチになるも後から駆け付けた和彦が、二人を討ち取ります。ここの何がいいかっていうと、二人が主体性を持ったことで、状況が変わったのがいいんですよね。


映画の中で、二人は仕事を「やらされて」いました。なんでその人が殺されるのかもわからず、仕事だからと自らを納得させ、淡々と後処理をします。でも、二人は自らの主体性を持って、元凶である田中を殺すことを決意したんですよね。そして、紆余曲折ありながらもそれは成功。自らの意志で動けば状況は好転するという非常に前向きなメッセージを伝えていると感じました。


それは虐げられていた奴隷が主人を倒して自由を手に入れるようでもあり、自分たちの意志で努力を重ねた弱小スポーツ部が大会を勝ち抜いていくような爽快感がありました。映画の中で、和彦の家で田中の愛人だった外国人女性も含めて、囲む食卓がとても暖かったのが印象的ですね。それまで、ろくな生活をしてこなかった松本が初めて恵まれたシーンで、感動してしまいました。



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そして、最後には営業時間外の銭湯で、人殺しではなく飲みを開くシーンでこの映画は締め。外国人女性と和彦の彼女である百合と4人で交わす酒の席はとても楽しそうで、彼らが笑顔で本当によかったと感じずにはいられません。そして、映画はこういったナレーションで締めくくられます。


人生の中で何回かある、この時間がずっと続けばいいのにと思う瞬間。人生は、それがあるだけでいいんだと思う」(意訳)


これが定食屋のシーンで語られた世間の「こうあるべき」像の答えになっているのがいいんですよね。「こうあるべき」像じゃなくても、自分たちが良ければそれでいいんじゃないかと。それは、主体性を持って動き、自分の力で何かを成し遂げた人間にしか、口にできない答えでもありました。自分で掴んだ最高ではなくても、良好な現実。とても清々しくて、本来これは私の大好物でもあります。


でも、前述の通り、私はこの映画にあまりハマらなかったんですよね。それはどうしてかということを、次に書いていきたいと思います。




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・共感を拒む作りになっているのが合わなかった



この映画が私にハマらなかった理由。それは銭湯で殺人をするというグロさにあったわけではありません。むしろ、この銭湯のシーンは、逸脱した行為を無理やり納得させ、淡々と処理するという狂った感じがあって好きでした。私がハマらなかったのは、むしろ銭湯の外のシーンです。


まず、特徴的だったのが和彦が家で食卓を囲むシーンです。ここ、両親があまりにも和彦の現状を受容しすぎるんですよね。「ご飯おいしいね」ぐらいしか言っていなくて、和彦は生返事。このあまりの需要っぷりが、定点カメラでの撮影と合わさって逆にとても不気味でした。


さらに、彼女となる百合も和彦のことを否定しません。現状にかなり理解を示してくれています。この映画正直思っていたよりも恋愛パートが多くて。百合がきっかけで和彦が銭湯で働くことになりましたし、必要なキャラクターであることは分かるんですよ。ただ、あまりに多い。悪くはなかったものの、そこが少し退屈に感じてしまった部分はありました。


で、この二つに共通しているのが、世間の「こうあるべき」像と乖離していることなんですよね。なんかもっと「お前何してんだ」って責められてしかるべきだと思うんです、和彦は。私も「働けや」と思いましたし、誰も和彦のことを責めないのはかなり違和感がありました。そして、ここが私がこの映画にハマらなかった最大のポイントだと感じました。この映画って共感を拒む作りになっているんですよね、


これは私の悪いところなんですが、私ってどうしても映画の評価を「どれだけ共感できたか」で決めてしまいがちなんですよね。全く共感できない映画でもいい映画はあるのに、そのことがまだ分かっていない。この映画で言えば、「お前何してんだ」という視点があった方が、私は和彦に感情移入できていたと感じます。そっちの方が和彦が置かれている境遇がはっきりするので。めちゃくちゃ自分勝手な考えですね。ごめんなさい。


いや、それが狙いだっていうことは分かるんですよ。「お前何してんだ」を観客に任せて、その疑問を最後の最後で回収するという構成は見事ですし、食卓のあの不気味さが、終盤の温かみをより際立たせていました。この点で『メランコリック』は特筆すべき出来なのですが、残念ながらわがままキッズである私には合いませんでした。これ、映画全然悪くないですね。わがままキッズな私が一方的に悪いだけです。もうちょっと大人の観方を出来たらなと深く反省しています。誠に申し訳ありませんでした。




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以上で感想は終了となります。『メランコリック』、キッズな私には合いませんでしたが、大人な皆さんなら楽しめる映画だと思います。機会があればぜひご覧ください。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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