Subhuman

ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203

2019年05月



前節、INAC神戸レオネッサに0-4の大敗を喫してしまったAC長野パルセイロレディース。2勝2分4敗の勝ち点8で8位と苦戦が続いています。なんとか順位を上げたいところですが、今節の相手は4連覇中で、W杯にも代表選手10人を送り出している日テレ・ベレーザ。今シーズンも首位を走る絶対女王相手ですが、パルセイロレディースも代表に選ばれた#10横山選手を気持ちよく送り出すために、勝利を掴みたいところです。


では、観戦記を始めます。今回もよろしくお願いいたします。













この日はキックオフ2時間前の11時ちょうどに長野Uスタジアムに到着。レディースの試合なので大丈夫だろうと高を括っていましたが、2時間前にもかかわらず、第一駐車場の一般エリアは満車になっていました。こんなに来場があるとは。正直舐めてました。すみません。でも、多くの方が来てくれるというのはとても喜ばしいことですね。


臨時駐車場である、第二学校給食センター様に車を停めさせていただき、歩くこと20分。長野Uスタジアムに到着しました。


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この日のUスタ周辺の天気は、綺麗に晴れていて、夏と見間違うほどの日差しが降り注ぎます。長袖ではすでに暑すぎますね。ただ、風が心地よく吹いていたので、外は涼しかったと思います。


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この日も第2、第3ゲートからの入場です。中央にはベレーザのタオルマフラーが飾られていますね。普段なら入場開始の11時にはライオーがお出迎えしてくれるのですが、この日は30分遅れてしまったため、ライオーには会えず。次はもっと時間に余裕を持って来たいと思います。


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30分遅れでは、この日のイベント「輪~るど杯」という名の輪投げも既に終了していました。成績上位者には試合前に代表選手に花束を渡す権利が与えられていましたね。なんとも緩い決め方です。


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ホームゴール裏、バックスタンドに向かう途中にはテープで書かれた「VAMOS!」の文字が。ハートと星でできたびっくりマークがかわいいですね。「VAMOS」はブラジル語で「がんばれ」という意味です。再確認。


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反対側にはホームゲームのアンケートがありました。この前来た時にはなかったはずで、いつの間に設置されたんでしょうか。令和になってからかな。


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ピッチはこの日も安定した緑を誇っています。変わらぬ景色に気持ちが落ち着きます。


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この日のマッチデ―プログラム。


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内面はまず、W杯メンバー発表後に行われた#10横山選手の記者会見の模様がレポートされています。高倉監督下では途中出場も多い#10横山選手ですが、やはりスタメンで長い時間プレーしているところが見たいですね。


また、ホームタウンページは千曲市の紹介です。千曲市といえばやはりあんずと棚田ですよね。あと、最近『4月の君、スピカ。』という映画が公開されたのも記憶に新しいです。いい映画だったので観てください。と言いたいところなんですけど、もうやってる映画館がないんですよね...。3,4か月ぐらいしたらソフトが出ると思うので、レンタルでも何でもいいので見てもらえればと思います。ちなみに、千曲市がロケ地めぐりを紹介しているので、そちらも参考にしてみてください。


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ホームゴール裏のグッズ売場もこの日は盛況でした。11時30分過ぎになると混みだすようですね。


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バイカラーTシャツやギンガムチェックシャツなど、これからの季節に打ってつけのアイテムも取り揃えております。


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パルガチャブースも健在です。この日は千社札シールとユニフォームクッションのガチャガチャがありましたね。


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バックスタンドに回ってみると、ガールズサッカーフェスティバルの参加者が記念写真を撮っていました。INACみたいなユニフォームですね。


では、ここで本日のスタジアムグルメのコーナーです。この日はスタジアム外に出店していた2点を攻めてみました。


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まず1品目はトップチームの試合にも出店していたダイナマイト関西さんの、


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ホットドッグ(600円)です。ソーセージが2本と玉ねぎが載ったこの一品。注文してからパンとソーセージを鉄板で焼いてくれて暖かい状態で提供してくれ、ケチャップとマスタードで味を調整できます。それは嬉しいのですが、何も特別なところはないので、これで600円は少し高いのではないかと感じます。見ての通り、いい意味でも悪い意味でも普通のホットドッグでした。


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2品目は今までも何度かお世話になっているスマイルツリーさんの


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プーティン(500円)です。フライドポテトにモッツアレラチーズとグレービーソースをかけたこの一品(何度でも説明しますよ)。しょっぱさと甘さが融合していて美味しいのですが、飽きるペースが次第に早くなってしまっている自分がいました。次は奮発してソーセージやベーコンも載せてみようかと思います。


11時45分頃。選手のアップ前に大型ビジョンでは、事前番組カウントダウンNPが始まりました。いつもは旗手運営担当と大橋営業担当の二人でお送りしていますが、この日は旗手運営担当がトップチームの試合会場である福島に言っているため、大橋営業担当1人でのオープニングとなりました。が、まもなくゲストが紹介されます。


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登場したのは先日加入が発表され、長野に来てまだ4日目という#26八浪選手。イケメンで声も低くてかっこよかったです。本人は元日本代表の川島選手に似ていると言われると語っていましたが、個人的には去年までパルセイロに在籍していた萬代選手(現青森)にも似ていると思います。


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輪投げの映像。


大橋営業担当が段取りを間違えるなど、グダグダになりかけますが番組はなんとか進行。#16山岸選手の紹介がなされます。


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#16山岸選手のプロフィールは以上の通り。須坂市出身で、開志学園JSCでは元パルセイロの諏訪雄大コーチの指導を受けていたようです。


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ビジョンには前撮りしたVTRが流れます。#4鈴木里選手#16山岸選手にインタビュー。#4鈴木里選手のノリがよかったのが印象的です。#16山岸選手は須坂市のオススメスポットを「臥竜公園」と答えていました。音が割れていたので聞き取れたのはそれくらいです。


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VTRも終わり、平井大さん(この前味スタで見た)の「tonight」が流れたところで、#26八浪選手の紹介に移ります。


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#26八浪選手はU-14ナショナルトレセンの際に本田監督から指導を受けていて、それが縁で今回の入団に至ったようです。他にも様々話していましたが、一番知りたかったポジションや得意なプレーについての話はありませんでした。大橋営業担当にはそのへん聞き出してほしかったです。


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雇用企業はみすずコーポレーション。#26八浪選手はボニータ時代に商社で働いていて、その際にみすずさんの商品も取り扱っていたらしいです。


一通りトークも終わり、再び音楽のコーナーに。2曲目は#26八浪選手のリクエスト、ではなく2011W杯に澤さんが聴いていた曲が流れました。


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GReeeeNの「ビリーブ」です。一般的。


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かっこええ...。


カウントダウンNPも終わり、しばらく空白の時間帯を過ごした後、12時15分頃選手がピッチに登場しました。


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両チームのアップの様子というのは対照的で、パルセイロはミドルレンジのパス交換で体を温めているのに対し、ベレーザの選手はショートパスを中心にアップを進めていきます。両チームのスタイルの違いが見えますね。


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では、ここで両チームのスターティングメンバーです。





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パルセイロレディースは前節からスタメン1人を入れ替え。#5大河内選手に替わり#9鈴木陽選手が10ヵ月ぶりに公式戦復帰即スタメンです。フォーメーションは4-4-2。

一方のベレーザは前節からスタメン2人を入れ替え。#11小林選手#14長谷川選手がスタメンを飾りました。また、このスタメンにW杯メンバーが7人いるほか、ベンチにも#18遠藤選手#19植木選手の2人の日本代表が控えています。フォーメーションは4-3-3。













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「南長野」のチャントを歌って、選手入場です。


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パルセイロサポーターは中央よりやや入り口側に固まっています。目視で200人と言ったところでしょうか。やはり日陰の方が人口密度が高いですね。よく声が出ていました。


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一方のベレーザサポは比較的近いこともあり、50人ほどが来場。声出しサポもそれなりにいました。大旗もありますね。


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選手が入場してきてタオルマフラーも回され、スタジアムの熱気も高調していきます。ちなみにこの日のUスタにはかの有名な"全力さん"も来場していました。日の丸のゲートフラッグを上げている白シャツの人物がその人です。大きな身振りでの全力の応援は長野の血でも健在で、選手と同等に目を引く存在でした。


試合に先駆けて、W杯の壮行セレモニーが行われます。


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まずは、国際主審としてW杯にも派遣される山下良美さん、手代木直美さん、坊薗真琴さんの3人の審判に花束が手渡されました。W杯でもなでしこリーグと同じように高精度のレフェリングをお願いします。


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次々と名前が読み上げられるベレーザの選手たち。10人ともなるとその多さに笑ってしまうほどです。そして最後に#10横山選手の名前がコールされ、Uスタに拍手が起こりました。


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#10横山選手とベレーザからは代表で#2清水選手が花束を受けとります。


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W杯メンバーでフォトセッション。このときパルセイロゴール裏からは日本コールが起こり、それに触発されてベレーザゴール裏からも日本コールが立て続けに起こりました。チームの垣根を超えて日本という共通の旗印のもとに団結したシーンで、とても感動的でしたね。


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円陣を組んで...


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前半キックオフ!


試合の立ち上がりは、やはりベレーザがボールを握ります。ベレーザは#15宮澤選手#11小林選手のウィングを大きくサイドに張り出していて、パルセイロの陣形を横に広げようとしてきます。これはとても効果的で、パルセイロレディースはサイドで1対1を作られ、決定的なクロスを上げられるというシーンが立ち上がりに何度かありました。すんでのところで合わなかったので失点は免れましたが、ここで失点していたら大量失点も大いにあり得たと思います。


この日のベレーザはサイド攻撃が中心で、SBとIH、ウィングの3人でサイドを崩すことを狙いとしていました。パルセイロのSBの裏のスペースをウィングに突かせることを狙いとしていて、パス交換からプレッシャーの少ない状態でスルーパスを通そうとするシーンが度々繰り返され、パルセイロレディースは苦しい展開を余儀なくされます。


ベレーザのウィングがサイドに張り出すことで、SBが寄ってこなければそのままウィングを使う。SBが外に引き出され、CBとSBの間が空いたところをIHが突くというのがベレーザの主な攻撃パターンです。ただ、パルセイロレディースは中の#9田中選手に対し、CBの#2野口選手#3五嶋選手の両方が見るのではなく、どちらを余らせておくことで跳ね返すことができていました。




また、パルセイロレディースは暑い天候もあり、前線からプレスに行くことはなく、ブロックを作って待ち構えています。ただ、ここでの問題はベレーザのアンカーの#8三浦選手を誰が見るのかということ。#9鈴木陽選手#10横山選手はカウンターに備えて高めのポジションを取っているので、#8三浦選手には主にボランチの#20大久保選手がついています。しかし、#20大久保選手が引っ張り出されたことで、中盤にスペースが生まれてしまいます。ベレーザはフォーメーションの噛み合わないところを最大限に利用してきていました。


パルセイロレディースの攻撃は、#10横山選手の個人技で中央突破を図るというパターンが中心です。#9鈴木陽選手もボールをキープしたら#10横山選手を見るようにしていましたね。しかし、ベレーザは攻撃時に#8三浦選手をリスク管理に専念させ、#10横山選手が持ったらすぐにチェックに行けるように設計していました。それでも、この日の#10横山選手の調子自体は良く、キープ力の高いドリブルでペナルティエリア前まで侵入することが出来ていました。最後のところでカットされてはいたものの、シュートを打つシーンもあり、何かしてくれるかもという雰囲気があります。




さて、試合はベレーザペースで進んでいきますが、立ち上がりのようにチャンスを作れなくなってきています。それはまず#7小泉選手#15原選手が、対面するウィングの選手に慣れて、負けなくなってきたことが一つ。さらに、#14滝川選手#17瀧澤選手のSHの守備意識が高かったのがもう一つです。ベレーザはSBをオーバラップさせることが多いのですが、SHがしっかりとついて行っていたので、フリーでクロスを上げさせるということはあまりなかったです。


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守備からリズムを作ったパルセイロレディースは前半の終盤にかけて、ベレーザを押し込む時間帯も見られましたが、双方にゴールは生まれず、0-0で前半は終了しました。守備が集中できていて、とても素晴らしい出来と言えますね。ただ、勝てているわけではないので、後半はベレーザをどう崩すかも求められます。


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ハーフタイムにトップチームの途中経過が映されるとUスタにどよめきが起こりました。2-0でリードと上々の前半だったようです。










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後半が始まる際にベレーザは選手交代を行ってきました。#11小林選手に替えて#19植木選手を投入。#11小林選手は前半終了間際に痛んでいたので、大事を取っての交代かもしれないし、戦術的な交代かもしれない。どちらかは分かりません。




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後半キックオフ!


後半に入っても依然ベレーザのペースで試合は進んでいきます。ベレーザはウィングやSBの選手が中にドリブルした時に、IHがサイドに出ていくように設計されていて、パルセイロレディースのディフェンスは中に引きつけられ、このIHを誰も見ていないことが多く、易々とクロスを上げられてしまいます。中で跳ね返せていたため大事には至りませんでしたが、ベレーザの得点の匂いは徐々に高まっていきます。




得点を奪いたいベレーザが前がかりになっていきますが、逆にそれはパルセイロレディースのチャンスでもあって。ベレーザのラインはどんどん高くなっていたので、パルセイロレディースは裏を取る動きを増やすことで、ベレーザのラインを押し下げ、中盤とディフェンスラインの間にスペースを作ります。


ベレーザは守備は即時奪回をコンセプトにしていて、パルセイロレディースのボランチに二人のIHが行くようにしているので、ただでさえアンカーの#8三浦選手の脇にスペースが空くことが多く、ここに#10横山選手#9鈴木陽選手が下がって受けるシーンが複数回見られました。


さらに、パルセイロレディースは中央突破を主としているので、SHが中に絞ってきて、裏に抜け出すという攻撃をしています。合わなかったり、#1山下選手に処理されるシーンが大半だったのですが、#9鈴木陽選手のシュートに繋がったシーンもあり、ベレーザの脅威になることはできていたように思えます。


しかし、ボールを保持するベレーザとカウンターを狙うパルセイロレディースという構図は変わることはありません。そんな中、後半18分。#19植木選手が負傷してしまいます。#19植木選手は担架で運び出され、代わりに#18遠藤選手が投入されました。日本代表が退いても日本代表が出てくるというのは脅威でしたが、ベレーザにとっては痛い交代ですね。それに#19植木選手の怪我も気がかりです。ちょっとW杯は厳しい気が...。軽傷で済んでほしいんですけどね。


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アクシデントによる交代があり、この辺りからベレーザの攻撃は少し変わっていきます。ウィングが少し中央に近いポジションを取るようになり、#9田中選手とIHの3人での中央突破が増えていきます。パスコースが空いた瞬間に縦パスを通され、密集でも構わずにパスを出され、何度もシュートチャンスを作られますが、素早くシュートコースを防いで、何とか守ります。試合は0-0のまま終盤に突入していきます。


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なお、この日の入場者数は2,195人。ボランティア参加者は46人でした。どちらも今年の平均よりも多いですね。有難いことです。


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ベレーザは後半36分に#15宮澤選手に替えて、#6有吉選手を投入。#5宮川選手を前に出し、サイド攻撃を今一度強化します。パルセイロレディースの選手たちにもさすがに疲れが見え、特にSHの戻りが遅くなるシーンが増えていっていました。ベレーザがさらにチャンスを作りますが、パルセイロレディースはサポーターの鼓舞もあり、体を張って防ぎます。ベレーザの選手のシュートはこの日は枠外ばかりでしたが、これもパルセイロレディースの最後のプレッシャーの結果でしょう。疲れもあったでしょうけど。


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パルセイロレディースは後半44分に、この試合の唯一の交代。#9鈴木陽選手に替えて、#13中村選手を投入します。#9鈴木陽選手は長期離脱から帰ってきたばかりで、こんなに長い時間出られるとは正直予想していませんでした。前線でよく体を張っていましたね。ただ、#10横山選手との距離感が少し遠く感じたので、そこを修正できればゴールも近いと思います。


後半アディショナルタイムもパルセイロレディースはベレーザの攻撃を凌ぎ、0-0で試合は終了。得点こそ奪えなかったものの、前節4失点した守備を修正できたことには及第点以上の評価ができると思います。本当、90分間よく走り切ってくれました。感動する試合でしたね。


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試合後にはこの試合を最後にチームから離れて、W杯に臨む#10横山選手から意気込みが今一度語られます。「長野魂で活躍出来たら」とのことでした。得点王を取っちゃうぐらいの活躍を期待しています。


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勝てはしなかったものの、ベレーザを無失点に抑えてのドローに、選手の顔にも充足感が見えます。多くの選手が笑顔でしたね。


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トップチームも1点は返されたものの、2-1で逃げ切って見事連勝を飾ったようです。


試合が終わって少し間を置いてから、スタジアムの外に出ると、#14滝川選手#9鈴木陽選手がハイタッチでお見送りをしていました。100人以上が列を作っていて、たいそうな人気ぶりでした。まるで勝ったかのようですね。

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お疲れ様でした!








〈試合動画〉








公式記録(なでしこリーグ)

なでしこリーグ1部順位表(なでしこリーグ)

2019プレナスなでしこリーグ1部 第9節 vs 日テレ・ベレーザ|試合結果
(長野公式)


2019プレナスなでしこリーグ1部 第9節 - AC長野パルセイロ・レディース vs 日テレ・ベレーザ
(ベレーザ公式)
















ベレーザ相手に勝ち点1を掴んだパルセイロレディースでしたが、2勝3分3敗の勝ち点9で8位と順位自体は変わりません。なでしこリーグはここからカップ戦が始まり、パルセイロレディースは次戦は5月25日(土)。13:00~アウェイ・ニッパツ三ツ沢球技場で、日体大FIELDS横浜と対戦します。その後もアウェイでの連戦が続き、次のホームゲームは6月15日(土)の17:00~。またもや日テレ・ベレーザとの対戦になります。間隔は空いてしまいますが、ぜひともUスタにお越しください。


頑張れ!AC長野パルセイロレディース!!


お読みいただきありがとうございました。


おしまい





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こんにちは。これです。今回のブログも昨日の『居眠り磐音』に続いて、二日連続の映画感想です。


今回観た映画は『岬の兄妹』。片山慎三監督の初監督作品です。三月に東京で公開されてから、じわりじわりと口コミで人気を集め、上映規模も拡大。そして、5月も中旬を迎えた今日、長野にも上陸しました。今回私が観た回では片山監督の舞台挨拶もあって有難かったです。


そして、実際に映画を観てみたんですが、面白いし人気になるのも頷けると感じた一方で、個人的にはあまりハマらなかったかな...という印象を抱きました。その面白かったところとハマらなかったところをこれから書いていこうと思います。今回はいつもと文体が違っていますが、何卒お付き合いいただければと思います。


では、始めます。




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―あらすじ―

また、真理子が居なくなった・・・

自閉症の妹のたびたびの失踪を心配し、探し回る兄の良夫だったが、今回は夜になっても帰ってはこない。
やっと帰ってきた妹だが、町の男に体を許し金銭を受け取っていたことを知り、妹をしかりつける。
しかし、罪の意識を持ちつつも互いの生活のため妹へ売春の斡旋をし始める兄。このような生活を続ける中、今まで理解のしようもなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れ、戸惑う日々を送る。
そんな時、妹の心と身体にも変化が起き始めていた…。ふたりぼっちになった障碍を持つ兄妹が、犯罪に手を染めたことから人生が動きだす。

2019年、日本映画界に新たな衝撃、新たな伝説が生まれようとしている。

(映画『岬の兄妹』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。








※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。










私達はなんて恵まれているのだろう。家に帰れば適温に調節された部屋で、テレビを見てアハハと笑うことができる。映画を観て泣くことだってできるし、本を読んでなるほどと頷くことだって容易だ。一日の終わりに温かい布団でぬくぬくと寝て、また保障された明日を迎えることが出来る。今月ピンチだとはいっても、それは最低限の生活が約束された幸運なピンチだ。


だが、『岬の兄妹』の道原兄妹は違う。彼らには逃げ場がない。海が近くに迫っている圧迫感と閉塞感。雑多な部屋には、テレビも映画も本もない。彼らは私達と違って、フィクションに逃げ込むことができない。フィクションは心を潤す。貧すれば鈍するとはよく言ったもので、生活に困窮していれば、フィクションに回すお金などあるはずもない。結果、心はどんどん追い詰められていき濁っていく。清貧なんてものは存在しないのだ。それは恵まれている私達の、貧乏で心も汚いなんて救いがなくて可哀想という傲慢でしかない。『岬の兄妹』はそのことを痛烈に突きつけてくる。


道原兄妹には、現実しかないのだ。どうしようもない現実に体一つでぶつかっていくしかない。勝ち目のない孤独な戦いこそが、『岬の兄妹』で描かれた道原兄妹の生であると私は感じた。素晴らしくなくても最悪でも、戦って生きていくしかない。恵まれていながら「死にたい」などと口にする人間を、道原兄妹は蹴り上げる。『岬の兄妹』は生きることを力強く肯定している。




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主人公・道原良夫は生まれつき足の不自由な障害者だ。そのことが原因で造船所のリストラに遭ってしまう。『岬の兄妹』で良夫を演じたのは、松浦祐也さん。髭をたっぷり蓄えたワイルドな出で立ちながら、情けない目線が印象に残った。売春の斡旋をしているときの慣れない営業トークはとても頼りなく、時折見せる粗暴な一面とのギャップが魅力的だった。


収入の手立てがなくなってしまった良夫は、妹・真理子が他人の車から降りてきたことを思い出す。真理子は自分の体を売って一万円を得ていた。『岬の兄妹』で真理子を演じたのは和田光沙さん。自閉症であることを印象付けるために、精神遅滞のあるであろう自閉症者を仔細に演じていた。嫌という感情を押し殺すかのように、ニコニコ笑いながら売春を行う姿は堪えるものがあった。ただ、天真爛漫さも兼ね備えていて、片山監督はオーディションで和田さんを選んだ理由を「可哀想だと思わなかった。笑える雰囲気があった」と語っていたが、その明るさが重い映画を、重くなり過ぎないようにしていたように思う。


道原兄妹は良夫が仕事を失ったことで、生活の苦しさに拍車がかかる。電気は止められ、ゴミから食べられそうなものを探して貪りつく。長髪で顔の見えないホームレスに、ゴミ袋から見つけたピザを横取りされる瞬間もあった。ついにはティッシュを美味いと言って食べだしてしまう。明日の暮らしもままならず、友人の肇に泣き落としを使い、金を借りようとするほど追い詰められた兄妹が取った手段は、真理子を売春させること。れっきとした違法行為だが、売春で得た金で貪り食うマクドナルドはたいへん美味しそうで、段ボールを剥ぐことで差し込んだ光が眩しく切なかった。


後ろめたそうに売春を斡旋する道夫の一方で、笑顔で売春を行う真理子。そのコントラストが胸に迫る。行為の相手も、トラックの運転手に妻を亡くした老人、いじめられている学生など様々だ。この一連のセックスシーンには、「今何時?」「おやじ」やプールバトルなど笑える要素も多く、そのウェット感が余計悲痛なものとして売春を見せている。













正直に言って、私はこの映画を、道原兄妹を受け入れられたとは言い難い。それは後述する理由の他にも、彼らを同じ日本に住む者として、この世のものとして認めたくないと感じてしまったからだ。生活に困窮して売春に手を出す人間は、およそ私の世界には存在しておらず、綺麗なものだけが見たくて、彼らをいないものとみなしたくなる。しかし、現実の日本にはこういった人間が確かに存在しているのだ。平成29年の厚労省のデータでは、年間所得が100万円以下の世帯が日本の5.6%を占めているという。人口に換算しておよそ600万人。そのうち何人が道原兄妹のような生活をしているのだろうか。


それでも、目を背けてはいけないのだ。ヤクザに真理子のセックスを強制的に見せられた良夫のように。彼らが日本に存在していて、同じ時間を生きていることを認めなければならない。それは恵まれた人間にはたいへん辛いことでもある。自分がいかに恵まれているかを実感し、罪悪感に溺れてしまうからだ。ただ、『岬の兄妹』は現実を否応なく突きつけてくる。これがお前らが黙殺している人間の姿だと言わんばかりに。格差が拡大していく一方の現代において意義の大きい映画だと感じた。認めたら自分が崩れてしまいそうで、自衛本能が働いてしまった私は上から目線の偽善者だ。




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物語は中盤に差し掛かり、真理子の妊娠が発覚してしまう。良夫が父親の候補として思い当たったのが、小人症を抱えた中村(演じたのは実際に小人症者である中村祐太郎さんだそうだ)。良夫は責任を取って結婚するように申し立てるが、男は「好きではない」と言って却下する。そこに現れた真理子。仕事に行こうとするが、良夫に止められる。恐らく真理子には小人症者に対する恋愛感情もあったのだろう。道路に横臥して吐き出される慟哭は『岬の兄妹』で、最も胸に迫るものだった。


中絶と出産の間で揺れる良夫と真理子。ある夜、良夫はブロック塀を真理子の腹に叩きつけ、流産させようとする。ブロック塀を掲げる良夫。しかし、振り落とすことが出来ない


前のシーンで、良夫は肇に「最低だ」と糾弾されるシーンがあった。お前には人の心がないのかと。否、良夫には明確に心があったのだ。妹である真理子を思う心が。『岬の兄妹』は目を背けたくなるような地獄の映画だったが、奥底には人間の善心が流れている。生きていくことを否定しないという道徳的正しさ。人間のこうあってほしいという理想が描かれているからこそ、『岬の兄妹』は多くの人に受け入れられ、今日まで興行を続けることが出来ているのではないのだろうか。












今回、上映後に片山監督の舞台挨拶があったのだが、そこで印象深いやり取りがあった。それは終盤での産婦人科医院のシーンでのこと。真理子が出産をしているのだが、そこで風祭ゆきさん演じる産婦人科医が「逃げないで」と語りかける一幕があった。片山監督曰く、真理子から生まれてくる子供は中村のような障害を持った子供かもしれない。いや、その可能性が高い。でも、「生きることから逃げないで」と、産婦人科医は生まれてくる子供に語っていたのだと。うろ覚えだが。


これは、子供だけでなく、真理子に良夫、『岬の兄妹』に登場した全ての人物。いや、映画を観ている私たちに言っているように私には思える。辛いことも悲しいこともあるけど生きるしかない。言葉にするとひどく綺麗事だが、結局そういうことなのだ。生を肯定する映画は強度を持って、私達に訴えかけてくる。『岬の兄妹』には生のエネルギーが迸っているから、描かれたことがどんなに最悪でも、ある種の爽やかさを持って心に残るのだ。


『岬の兄妹』のラストでは真理子が岩場の先端に佇んでいる。それを見つけた良夫の携帯に電話がかかってきて終わりという幕引きになっている。ここで電話をかけてきたのは新たな顧客かもしれず、二人の売春は続いていくのかもしれない。ただ、私は電話をかけてきたのは中村で、一緒に暮らす決心がついてきたために電話をかけてきたのだと信じたい。その方がこの映画の「生きていく」というテーマと合致しているように思えるからだ。彼らのこれからの人生に幸あれと願わずにはいられない、切実な映画だった。




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さて、映画は良かったが一つ疑問に思ったことがある。それは「どうして良夫や真理子はハローワークに行かないの?」ということだ。これを言ってしまっては映画が成立せず、身も蓋もない話なのは分かっている。しかし、あえて言いたい。


なぜなら私が現在、障害者雇用で働いているからだ。私は再就職活動には苦労しなかったのだが、日々同じ職場で働いている障害者の方を見ていると、正直イラっとくる場面もあるが、それでも一緒に頑張ろうと心の中で語りかけている。平成30年の雇用障害者数は53万4,769.5人。.5人となっているのは短縮勤務によるハーフカウント(0.5人とカウントすること)によるものだが、働いている障害者がこれだけいるのだ。もちろんこれは障害者手帳を持っている人数のみで、障害を公表していない、もしくは診断を受けていない人間も含めれば、これ以上いることは言うまでもない。


しかし、良夫はどうだろうか。良夫は造船所を首になった後、ハローワークにも行かず、内職に精を出している。良夫は足を引きずっているので、肢体不自由の診断が得られれば、身体障害者手帳を申請することが出来るかもしれない。真理子についても同様だ。自閉症の診断を得て、精神障害者手帳を申請すべきだったのだ。障害者手帳を交付されれば、障害者採用の求人に応募することが出来る。この正攻法を二人は考えつかなかったのだろうか。


いや、もしかしたら単純に知らなかったのかもしれない。良夫にも真理子にも障害者雇用のことを教えてくれる人間は、肇を除いていなかったように思える。それはそれでリアリティのある話だ。


ただ、二人が知っていた可能性も考えられる。しかし、たとえ知っていたとしても障害者手帳の申請には医師の診断書が必要になる。二人の経済状況では病院にかかるなどできず、診断書も得られなかったに違いない。よって、知っていても二人が障碍者雇用で働かなかった、否、働けなかったのも十分に正当性のある話といえる。


それでも、全ての観客が私のように自己解決できるわけではない。事実私も上記のような考えに思い至ったのは映画を観て帰る最中だった。映画を観ている時には「ハロワ行けよ」と思い、集中することが出来なかった。


私が思うに、序盤で二人がハローワークや役所に行くシーンがあればよかったと感じる。それは1分に満たなくてもいい。二人が正規の仕事で働くことが出来ないことを見せるだけで、この後の展開の印象も違っていたはずだ。二人には売春以外道がないという印象をより強烈に持たせることができたならば、より迫真に受け入れることが出来たに違いない。もう一シーン二シーンあれば、私のこの映画に対する評価ももっと良好になっていたはずで、その点では『岬の兄妹』は非常に惜しい映画であるように感じた。説明しすぎないのが『岬の兄妹』の良さだが、この説明は最低限あってもよかったのではないのだろうか。




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以上で感想は終了になります。なんか偉そうな感じになってすみません。私にはあまりハマらなかったんですけど、『岬の兄妹』は今見るべき映画だとは思います。まだまだ上映しているところはあるので、よろしければ観てみてください。


お読みいただきありがとうございました。

おしまい






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こんばんは。これです。早速ですが、今回のブログも映画の感想になります。


今回観た映画は『居眠り磐音』です。佐伯泰英先生の人気シリーズを松坂桃李さん主演で映画化した今作。普段観ない時代劇というジャンルに久しぶりの挑戦です。公開前にはトラブルもありましたが、それでも公開されて、観られてよかったと心の底から思える映画でした。だって超面白かったもん。


では、感想を始めたいと思います。いつにも輪をかけてまとまっていない駄文ですが、何卒よろしくお願いいたします。



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―目次―

・松坂桃李さんがハマってた!
・とても取っつきやすい!
・柄本明さんが最高!
・芳根京子さんがヤバい!





―あらすじ―

友を斬り、愛する人を失った。
男は、哀しみを知る剣で、悪を斬る。


坂崎磐音(松坂桃李)は、故郷・豊後関前藩で起きた、ある哀しい事件により、2人の幼なじみを失い、祝言を間近に控えた許嫁の奈緒(芳根京子)を残して脱藩。全てを失い、浪人の身となった―。

江戸で長屋暮らしを始めた磐音は、長屋の大屋・金兵衛(中村梅雀)の紹介もあり、昼間はうなぎ屋、夜は両替屋・今津屋の用心棒として働き始める。春風のように穏やかで、誰に対しても礼節を重んじる優しい人柄に加え、剣も立つ磐音は次第に周囲から信頼され、金兵衛の娘・おこん(木村文乃)からも好意を持たれるように。そんな折、幕府が流通させた新貨幣を巡る陰謀に巻き込まれ、磐音は江戸で出会った大切な人たちを守るため、哀しみを胸に悪に立ち向かう――。

(映画『居眠り磐音』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。









※ここからの内容は映画のネタバレをやや含みます。ご注意ください。












・松坂桃李さんがハマってた!


今回、『居眠り磐音』で主演を務めたのは、昨年『孤狼の血』で日本アカデミー賞最優秀助演賞を獲得した松坂桃李さん。ある事件で幼馴染を失くして悲しみを背負う浪人・坂崎磐音を演じていましたが、これが完璧にハマっていました


まず、映画の冒頭で磐音は、二人の幼なじみ琴平と慎之輔と仲良く笑いあっています。ここでの磐音はとても穏やかで、松坂さんの持つ爽やかさが最大限に引き出されています。冒頭の豊後(今の大分県)の晴れやかな眺望で二人と談笑するシーンには癒されましたね。芳根京子さん演じる奈緒との回想シーンも、まるでメロドラマのように甘かったです。


しかし、磐音はあることをきっかけに幼馴染二人を失い、豊後を脱藩させられてしまいます。磐音は江戸で浪人をしています。ここからがこの映画の第二幕ですね。ここでも磐音の表情は基本的には穏やかで、優しい雰囲気をまとっています。鰻屋に来る子供たちともフレンドリーで、蒲焼をおごったりもしていました。ただ、幼馴染二人を失った喪失感は確実に磐音に影を落としていて、第二幕での松坂さんの表情は第一幕よりも微かに暗く、オーラもやや陰湿なものが混ざっています


でも、松坂さんも三十路を迎えて、近年は『孤狼の血』や『娼年』というダークでハードな作品にも出演しています。そこで培ったものなのか、近年の松坂さんには危険な雰囲気が増しているように見えるんですよね。ほら、今フジテレビで『パーフェクト・ワールド』が放送されているじゃないですか。私はチラ見しかしていないんですが、そこでは、比較的爽やかな松坂さんが画面に映っていて。「そんなんじゃないだろ」って思ってしまいます。『孤狼の血』の松坂さんを知っているから、猫被りやがってとか考えちゃうんですよね。松坂桃李の魅力は危険で怪しい香りなんだよ、もっと激しい作品に出せって見る度に感じます。


で、その危険な香り、底知れない感じが磐音にバッチリ落とし込まれているんですよ。磐音の喪失感と松坂さんの危険な香りが融合して、言語化不能のフェロモンを出していました。ちょっと言葉に詰まるところとか最高なんですよね。


さらに、磐音は剣の達人。『居眠り磐音』は殺陣のシーンがメチャクチャ見やすくてよかったんですが、そこでの松坂さんの佇まいですよ。腕を下げて脱力した構えが、松坂さんの優しい雰囲気に合っていて、安心感がある。そこからキレのいい殺陣が繰り出されるギャップね。単純にかっこよさを感じますし、斬った後の「また人を斬ってしまった...」みたいな後悔の表情にグッときます。
 

そして、今回の松坂さんで一番好きなのが、映画が進むにつれてどんどん影が占める割合が大きくなっていくところです。磐音の剣は哀しみの剣で、人を斬る度に琴平と慎之輔のことが思い出される。それは呪縛のように磐音を締め付けていく。だから、松坂さんの演技もダークサイドに引っ張られて行って、和やかな場面でも明るい表情をすることはなくなっていくんです。私が松坂さんに求めている危険で怪しい香りがプンプン香ってきてゾクゾクしました


ただ、ダークサイドに落ちたままだと救いがないので、最後に磐音は明るい表情をわずかにですが取り戻します。ここでの松坂さんの表情がまた絶妙で。今まで溜まっていた負の感情が溶けていくような表情なんですよね。最後になって観客と磐音が一体化すると言いますか、観ているこちらも爽やかな気分になります。


以上、本当にどこをとっても最高の松坂桃李さんでした。他にも印象に残った役者さんはいましたが、『居眠り磐音』の個人的MVPです。主役がMVPなんて当たり前だろと思うかもしれませんが、『居眠り磐音』での松坂さんはマジで素晴らしいので、ぜひ観てみてください。




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・とても取っつきやすい!


『居眠り磐音』は松坂桃李さんらをはじめとした俳優陣の演技が素晴らしいだけでなく、ストーリーも良かったように感じます。その最大の特徴は分かりやすさです。『居眠り磐音』は取っつきにくいであろう時代劇の特性を、分かりやすさを押し出すことで乗り越えていました。


まず、『居眠り磐音』の優れている点は豊後での第一幕にあります。江戸での剣術修行を経て、3年ぶりに豊後に帰ってきた磐音、琴平、慎之輔。ただ、慎之輔は叔父の十三から、妻の舞が山尻なる男と浮気をしているとを聞かされます。怒り心頭で舞のもとに乗り込む慎之輔。慎之輔は問答無用と舞を斬り伏せる。舞は琴平の妹で、駆けつけた琴平は慎之輔と十三を斬り捨ててしまいます


ここでのポイントが、男女間の問題を取り扱っていることです。これが家老と侍の主従関係だったら、現代には存在しないので、時代劇に馴染みのない人間には分かりにくい。ただ、浮気という現代にもある問題を扱うことで、時代劇に馴染みのない人間にも共感できるようにし、興味を引き付けていました


妹から事の真相を聞かされる磐音。山尻は最初に奈緒に惚れ、アプローチを仕掛けていました。舞はそれを止めさせようとしていましたが、十三に誤解されてしまう。舞は浮気などしていなかったのです。そのことを琴平に伝えに行く磐音。ただ、琴平は藩による上意討ちを返り討ちにしていて、すでに八人を殺した後でした。琴平は磐音を見るなり、尋常の勝負を申し入れます。


この豊後での第一幕で特徴的だったのが、日本刀を用いた殺陣が多かったということ。切れ味鋭く、触っただけで怪我をしてしまいそうな緊張感のある日本刀。大きく振りかざされ、緊迫感は十分です。また、日本刀での殺陣は時代劇の華ともいえるシーン。これをいきなり見せることで、観客の関心を惹く工夫が『居眠り磐音』ではなされていました。カメラワークも全身を映すショットが多く、何をしているのか分かりやすかったことも大きな長所でした




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磐音は琴平と慎之輔という幼馴染二人を失い、江戸へと流れ着きます。けっこう現代的な言葉遣いをする木村文乃さん演じるおこんや、その父親の金兵衛の厚意で長屋で暮らす磐音。今回、金兵衛を演じたのは中村梅雀さんでしたが、大層なべらんめえ口調で、登場すると一気に時代劇感増すなーと思いながら観てました。


さて、磐音は金兵衛に紹介され、強請を撃退したことも見込まれて、両替屋・今津屋の用心棒として働くことになります。そのころ江戸では田沼意次により、南鐐二朱銀(なんりょうにしゅぎん)という新貨幣が発行されていました。この南鐐二朱銀は、金を使う江戸と銀を使う上方のどちらでも使えることが特徴。ここで両替屋の中では南鐐二朱銀の発行によって、もしかしたら損をするかもしれないということで、南鐐二朱銀に反対する勢力も現れました。その代表が両替屋・阿波屋です。


映画の中の説明を繰り返しますが、例えば、金一両=南鐐二朱銀八銭というレートだったとしますよね。これが南鐐二朱銀の価値が暴落して、金一両の交換に南鐐二朱銀十二銭が相場になったとします。ただ、今津屋は金一両=南鐐二朱銀八銭というレートを守っているので、今津屋で交換したとすれば、金一両に加えて南鐐二朱銀四銭が手に入るわけです。ここで得た金一両を金一両=南鐐二朱銀十二銭でやっている阿波屋に持っていけば金一両と引き換えに、南鐐二朱銀十二銭が手に入ります。そして、再び今津屋に持っていけば、不思議と南鐐二朱銀四銭が増えている。こうすれば労せずとも財産を増やすことができ、今津屋は潰れてしまうという寸法です。


まあ心配しなくても映画の中ではこのことを図解で説明してくれますから安心です。現在でも為替というものはありますし、第二幕に入っても現代に通じる分かりやすさはきっちりと確保されていました。この分かりやすさが『居眠り磐音』の個人的に絶賛するところ。時代劇ということで構える必要が全くないのは素晴らしいと思います。




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・柄本明さんが最高!


南鐐二朱銀反対派筆頭の両替屋・阿波屋。『居眠り磐音』で、その主人有楽斎を演じたのが名優、柄本明さんです。柄本さんはどうにかして南鐐二朱銀に賛成する今津屋を潰そうとするという役柄だったんですが、この悪いジジイの演技がマジのガチで最高だったんですよ!超いい味出してました。なお、『居眠り磐音』には息子の柄本佑さんも出演しています(両者の共演するシーンはなし)。よって、ここからは「柄本さん」と言ったときには柄本明さんを指すと考えてください。


で、この柄本さんなんですが話し方がとにかく粘っこい。ゆっくり喋っていて老獪さがありましたが、どこか抜けた印象を与えるんです。磐音が有楽斎に話しかけようとするシーンで「伺いまひょー」と言うんですが、その力なく伸びる語尾がとても危なかったです。コーヒーを口に含んでいたら、吹き出してしまうところでした。あれはずるい。


でもって、話している内容が物騒なんですよ。要約すると「てめえら潰してやる」という感じなんですが、その強面に粘りっこい話し方が打ってつけ。時代劇における悪いジジイの理想そのもので、不意にときめいてしまいました。たまんねぇなって。まさかジジイでときめくことになるとは。


さらに、有楽斎が小判を数えるシーンが挿入されたりしながら(ここでの柄本さんのあくどい顔が最の高)物語は進んでいき、金一両=南鐐二朱銀十二銭という狙い通りのレートになります。とうとう阿波屋が今津屋を嵌める展開になるかと思いきや、阿波屋に高額の両替が次々と訪れます。魚河岸に、劇場の主人、果ては吉原の花魁まで。ここ一組終わったら、間髪入れずに次が来るというのが3回ぐらい繰り返されるんですが、完全に天丼ボケを用いたコントでした。あんなに色物が次々に押し寄せられるともう笑うしかないです。


ニタニタしながら迎えた4組目。ここで現れたのは勘定奉行です。阿波屋がニセ金を使っているのがバレて、阿波屋は取り潰しになるのですが、観てほしいのがこのシーンの最後の有楽斎。タンスに入った小判を必死にかき集めて一両でも多く持って行こうとしてるんですよ。小物感が凄くてとても微笑ましかったです。こういう悪役の最後のあがき大好き。


そして、極めつけは有楽斎の退場シーン。刺されて斬られてまだ生きていることも驚きですが、粘っこい話し方はここで最高潮を迎えます。言っていることは磐音の根幹にかかわる重要なものなのですが、柄本さんの盛りに盛られた演技に思わず笑いがこみあげてしまう。もはや悪ノリの域にまで達しており、私はシリアスなシーンなのにニヤニヤしながら観ているという不思議な感覚に陥っていました。


登場シーンから退場シーンまで強烈なインパクトを残した柄本さん。観ながら私は『邦キチ!映子さん』で取り上げてほしいなーと感じました。『居眠り磐音』での柄本さんの怪演は『邦キチ』との親和性も高そう。『哭声』の國村隼さんみたいな感じでどうにかならないですかね。暴れん坊将軍を出した『邦キチ』ならできるはず。是非ともご検討のほどをお願いします。


正直、柄本さんのインパクトが強すぎて、後半部分はあまり覚えていません。早くツイッターとかに書きたくて。それでも終盤、柄本さんのインパクトを超える俳優さんが『居眠り磐音』には控えていました。芳根京子さんです。




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・芳根京子さんがヤバい!


日本のファンは『花子とアン』から、『べっぴんさん』『累』まで出演作を見てくれていて、これ以上お願い事はとてもできない

けど、今作で芳根さんがある格好をしていて、それがファッキン美しいんだ

.........…………

もう一回見ちゃえよ



いや、『居眠り磐音』の芳根さん、びっくりするぐらい素晴らしかったんですよ。最初の崖のシーンはもちろん、一人豊後に残った後も、芯の強さを感じられる演技で。家老に「それがしが面倒を見てやってもよいぞ」と言い寄られるシーンがあるんですが、ここでまっすぐ前を見て「私には心に決めたお方がおります」と返すんですよね。その目がとても力強くて。流れる涙がとても美しく見えました。


その後も芳根さんは泣いたり落ち込んだり、あまりいいシーンはありません。でも、豊後にいるので出番は少なめ。このまま終わってしまうのかなーと思った矢先の終盤。芳根さんはとある出で立ちになるんですが、これが、これが...


うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


ヤバい!あれはマジでヤバい!(語彙力の喪失)。あれを見て刺さらない男がこの世におるんか!?で、振り返って見せる表情が毅然としたようで、儚さも併せ持っていて、たまらなかった!もうこれは芳根さんのファンのみならず、全員観た方がいいです。あれを見て芳根さんを好きにならない男はいない!本当グッジョブだよ!観ろ…観ろ...


観ろ!!!




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最後は変なテンションになりましたが、以上で感想は終了です。『居眠り磐音』、刺客との決着もつけてないですし、終わり方が続編作る気満々の終わり方なので、次もあればぜひ観てみたいなと思います。そのためには一人の多くの人に見てもらいたいですね。オススメです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい





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こんばんは。これです。元号が令和になってから、もうしばらく経ちますね。私はまだ一回も令和と書いたことがないので、まだ平成にいるような気分です。今日も平成31年って言っちゃったよ。


それはさておき、今回のブログは令和初の移籍記事になります。情報が少ないため細かいことは書いていませんが、何卒よろしくお願いします。




―今回のラインナップ―


・八浪直香選手が静岡産業大学磐田ボニータより完全移籍で加入













AC長野パルセイロレディース

・八浪直香選手が静岡産業大学磐田ボニータより完全移籍で加入

八浪 直香選手 静岡産業大学磐田ボニータより完全移籍加入のお知らせ
(長野公式)


八浪直香



シーズン途中のパルセイロレディースに新加入選手が来ました。八浪直香選手が静岡産業大学磐田ボニータから加入です。


八浪選手はJFAエリートプログラム女子U-14にも選ばれるなど、ユース世代から将来を嘱望されてきた選手。熊本から女子サッカーの名門・藤枝順心高校に進学すると、3年次には10番を背負い、インターハイ2回戦ではロングシュートも決めています。





そして、卒業後の武蔵丘短期大学でも10番を背負って、関東2部では2年間で9ゴール。3位に躍進した2016年のインカレのメンバーにも入っています。武蔵丘短期大学は2年制なので、卒業した後は静岡産業大学磐田ボニータに加入。2018年のなでしこリーグ2部ではリーグ戦に2試合、カップ戦に4試合出場していますが、最後の試合では前半25分で交代してしまった様子。負傷してしまったのでしょうか、その影響もあり、今シーズンは未だに出場なしです。


それにもかかわらず、今回パルセイロが加入を発表したということで、怪我は大分癒えたとみていいでしょう。ボニータ時代にはMFのみならずFWでも起用されていたので、やや攻撃的な選手と言えるでしょうか。なでしこリーグガイドブックにも、得意なプレーは「ゴールに向かうプレー」(2018)、「シュート」(2019)とありますしね。ライバルは多いですが、1年ぶりに試合に出場して活躍しているところを見たいですね。頑張ってください。


そして、これでパルセイロレディースの在籍人数は二種登録、特別指定登録選手を合わせると24人。シーズン開幕当初は紅白戦もできない人数でしたが、気づいたら増えましたね。新戦力も入ってリーグ戦8位からの巻き返しに期待です。次節は5月19日の13:00~、日テレ・ベレーザとの対戦。よろしければ、長野Uスタジアムにお越しください。




2019AC長野パルセイロレディース(5月15日現在)


監督:本田美登里(留任)
ヘッドコーチ:小笠原唯志(新任)
GKコーチ:堤喬也(留任)
コンディショニングコーチ:藤田ひかる(留任)
トレーナー:菊地美里(新任)


GK 池ヶ谷夏美
GK 風間優華 
GK 伊藤有里彩(特別指定登録)
DF 野口美也
DF 五嶋京香
DF 鈴木里奈
DF 大河内友貴 
DF 小泉玲奈
DF 原海七 
DF 神津萌(二種登録)
MF 國澤志乃
MF 古舘知都
MF 山岸夢歩
MF 瀧澤千聖
MF 濱本まりん
MF 巴月優希
MF 大久保舞
MF 八浪直香(←静岡産業大学磐田ボニータ/完全移籍 ←New!!

FW 鈴木陽
FW 横山久美
FW 三谷沙也加
FW 中村恵実
FW 滝川結女
FW 川船暁海(二種登録)



GK:3人 DF:7人 MF:8人 FW:6人 計:24人















お読みいただきありがとうございました。


おしまい






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こんにちは。これです。


週の中日の水曜日、私はこの日も映画を観に行っていました。今回観た映画は『チア男子!!』。朝井リョウさん原作の青春小説の映画化です。私は朝井先生原作の映画は『桐島、部活やめるってよ』(以下『桐島』)と『何者』を観ていて、まあ正直『桐島』の方はよく分かっていないんですが、『何者』は好きでして。今回『チア男子!!』を観たのも朝井先生が原作と知ったからですしね。原作小説は未読ですけど。あと、こういうイケメンがたくさん出ている映画も見とかなきゃなと思ったのも一因です。


そして観たところ、令和の時代(書かれたのは平成だけど)に、ここまでのものがあるかというくらいの、ド王道の青春ストーリーでした。安定して面白く、万人受けしそうだなと感じます。


では、感想を書いていきたいと思います。今回は褒め半分、批判半分ぐらいのバランスでお送りしていくので、何卒よろしくお願いいたします。




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―目次―

・清々しいほどの王道
・前半は少しハマらなかった
・後半は好き
・『桐島』とは正反対






―あらすじ―

道場の長男に生まれ、幼い頃から柔道を続けてきた晴希。しかし、連戦連勝の姉・春子と比べて自分に才能がないことに悩んでいた。怪我をきっかけに柔道から距離を置いていた晴希に、幼なじみで親友の一馬は「一緒に新しいことを始める」と宣言する。なんと、それは前代未聞の"男子チアリーディング部"の創設だった―!

(映画『チア男子!!』公式サイトより引用)




映画情報は公式サイトをご覧ください。








※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。












・清々しいほどの王道


まず、『チア男子』を見て思ったのが、清々しいほどの王道であるということでした。奇をてらった展開というのが一つもなく、「こうなるんだろうな」という想像が全て現実のものとなる。話の展開も読みやすく、ここまでネタバレが意味を持たない映画と言うのも珍しいくらいです。でもさすがは王道といったところか、安定した面白さはありました。たぶん、この映画をクソミソに貶す人って少ないんじゃないでしょうか。


ネタバレOKですし、最初に展開を言ってしまうと


・学園祭での初舞台は成功するよ!
・晴希の姉は、柔道を辞めた晴希を許すよ!
・一馬の祖母は認知症で、一馬のことも忘れていくよ!
・翔がスタンツをしないのは、人を怪我させてしまったからだよ!
・トンをからかってた奴らはトンを認めるよ!
・溝口は自分の言葉で喋るよ!
・みんな自分のためにチアやってるよ! 



という感じです。『チア男子!!』が凄いのはこれを隠そうともしていないことなんですよね。あからさまにフラグを立てておいて、きっちり回収。ミスリードとかも一切なくまあ清々しいですよ。上記のことも映画を観てれば本当に誰でも想像できるレベルのことです。


でも、『チア男子!!』はこれらのネタバレを見ても十分に面白いんですよね。分かっていてもカタルシスを得られるような展開を複数用意していて、外すことは一切していません。求められているものをそのまま出していて、安心感はあります。映画を見慣れてる人からしてみたら、予定調和すぎるという批判もあるかもしれませんが、私は感動しましたし、肯定したいです。王道の力を馬鹿にしないでほしいです。




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・前半は少しハマらなかった



『チア男子!!』は、チア全く関係ない柔道場でのシーンから始まります。姉である坂東晴子を応援する坂東晴希。晴子は晴希の応援で勝利しますが、晴希自身はあっさりと敗れ、肩を負傷してしまいます。映画では非常に重要なこのオープニングシーンなんですが、晴希が道場には場違いなくらいの勢いで「頑張れー!姉ちゃんー!!」と叫びます。


正直言っていいですか。引きました。今思えばこのシーンは「これくらいストレートにいくよ」という表明だったのですが、そのうるささと直球過ぎる声援に違和感を感じてしまい、映画に入り込むことが出来ませんでした。個人的には今年観た映画の中でもワーストのオープニングで、ここで傍観者のような態度になってしまったのが、この後の展開にとってもものすごく痛かったです。




さて、次のシーンでは晴希は大学構内を歩いています。今回晴希を演じたのは『初めて恋をした日に読む話』で有名な横浜流星さん。まず、「横浜流星」って名前が凄すぎですよね。「横浜」と「流星」というカッコいいワードが互いを損ねることなく合わさっていますもん。で、その横浜さんなんですが、この映画で印象に残ったのは、その生気のない雰囲気です。怪我をした失意が顔や佇まいにダイレクトに出ていて、いい意味で生き霊のようでした。もちろん話が進むにつれて生気を取り戻していくんですが、浮遊感みたいなものは残っていてたまらなかったです。


構内を歩く晴希に話しかけるのは、親友の橋本一馬。この一馬を演じたのが『ジュウオウジャー』にも出演していた中尾暢樹さん。こちらはしっかりと地に足の着いた雰囲気があり、横浜さんといいコントラストになっていました。映画後半で、前述の祖母の件でどんどん弱っていくんですが、晴希に励まされて、復活する過程は素晴らしかったですね。


で、この二人がかなり序盤で、自転車に二人乗りしているわけですよ。この映画のメインターゲットであろう、俳優を見たい10代20代女性にはまさにうってつけ。映画に釘付けにするという意味では、十分に機能しているように感じました。


そして、ここから『チア男子!!』はどんどんとイケメンを投入していきます。真面目系な溝口渉浅香航大)。彫りが濃い鈴木総一郎菅原健)。やんちゃ系の長谷川弦岩谷翔吾)。極めつけにあどけなさの残る徳川翔瀬戸利樹)。眼鏡を取ったサンボマスターのような遠野浩司:通称トン小平大智)以外は、イケメンのオンパレードです。


そんなイケメンたちが、前半はワイワイ練習しています。成功したら大盛り上がり、失敗したら元気に励ますなど、雰囲気はめちゃくちゃいい。男同士の仲間意識を見たいという要望にバッチリお答えしています。さらに、中盤には銭湯で溝口以外が裸になるシーンも。菅原さんの筋肉質な体が印象的でした。腹筋が割れていてカッコよかった。正直、銭湯である必要性は全くありませんが、サービス精神をヒシヒシと感じます。




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でも、この前半が私はハマれなかったんですよね。ウェイ感を感じてしまって。最初で引いてしまって傍観者的に態度になっていたのもあると思うんですけど、内輪的なムードが強すぎるんです。気分はまるで帰宅部ですよ。部活でワイワイやっている人たちを見下し、その一方で憧れも抱いている帰宅部。自分がこの輪に入っていくのは無理なんだろうって僻んでしまいました。


『チア男子‼』は、0から部を興したり、行きつけの店があったり、事情で競技から離れている経験者が途中加入するなど、青春スポーツものの要素を次々とクリアしていきます。この一つ一つの要素はすごい好きなんですが、それでも過剰な内輪感が邪魔をして、深くハマることはできませんでした。この後落とされることは分かっていたので、何とか持ちこたえましたけど。


それに、トントン拍子で物語が進んでいきすぎてしまうのもマイナス。メガネの学友会長がやたら場を用意してくれて、スムーズに物語は進んでいきます。実はこれにはちゃんと理由があって、それは別によかったんですけど、それにしても失敗しなさすぎだなって。


私がこういう青春もので見たいのって、友情とかキラキラした成功じゃないんですよ。挫折から再び立ち上がる姿が見たいんです。現実は挫折だらけですし、その挫折からキャラクターが復活することで、私たちは勇気を貰うことができるんです。確かに『チア男子!!』にも挫折と復活はありますよ。でも、それは後半だけで、前半には全くない。もっと前半にも小さな挫折、それこそ初披露が上手くいかなかったり、があった方がより物語に引き込まれるのになと感じました。




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・後半は好き


男子チアリーディングチーム「BREAKERS」は、学友会長の計らいによって、学園祭に出演できることになります。思えば彼女は早い段階から彼らを取材したり、女子チアチーム「DREAMS」との共同練習の場を用意したりと、やたらBREAKERSに協力的でした。「BUILDERS」に改名を迫ったり、


が、この彼女もただで動いていたわけではありません。実は彼女は就活の自己アピール、「私は学友会長として、学園祭を盛り上げ過去最高の動員を記録しました。この企画力や行動力は御社でも生かせると思いますと企業に自分を売り込むために、BREAKERSを応援していました。ここ本当に大好きなシーンなんですよね。天地がひっくり返ったようで。この腹黒さ最高かよって、思わず膝を打ってしまいました。『何者』っぽさを強烈に感じましたね。ぶっちゃけ『チア男子!!』で一番好きなシーンです。


このシーンは本筋には関係ないようで、実はこの映画のテーマに通じています。『チア男子!!』のテーマは「自分のためというエゴが人のためになる」ということです。彼女が自分のアピールの材料のために行動していなかったら、BREAKERSの活躍の機会はなかったわけですしね。


映画の中で、BREAKERSのメンバーも壁にぶち当たります。待望していた落とすパートの始まりです。一馬は祖母の認知症が進み、自分を覚えていていないということが分かって、チアを一旦辞めてしまいますし、総一郎は肩を怪我したにもかかわらず、周りを頼ろうとしません。映画の中盤に登場した車椅子の女の子・高城さくらは、翔が怪我させてしまったその人です。


話は逸れますが、このさくらを演じたのが唐田えりかさんなんですよね。『寝ても覚めても』や『21世紀の女の子』でも感じたことなんですけど、やっぱり唐田さんはいいです。透明感があって、意志の強さもあって。庇護されるだけのヒロインに収まらないのが唐田さんの魅力なんですよね。リハビリしながら「私すぐ歩けるようになるから」って言うシーンなんて最高ですよ。「お前そんなこと思ってへんやろ」感にやられました。不満があるとすれば、後半からの登場なのでシーンが少ないことですか。もっと出てほしかったです。


で、このシーンのさくらは自分のために行動しているわけですよ。でもそれが翔をスタンツに向かわせる力になって、他者のためになっています。この現象は他の二組にも適用されていて。弦の「俺に支えさせてくれよ」という激白が総一郎の心を動かしていますし、一馬は晴希の「今は俺がお前とチアやりたいんだ」(要約)というセリフによって、BREAKERSに戻ってくるんですよね。どちらもエモーショナルなセリフで、俳優さんのファンでなくてもグッときました。この後、晴希と一馬が序盤の意趣返しをしているのもよかったなぁ。




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考えてみると、社会って「自分のため」で動いてますよね。私たちはどうして仕事をすると思います?自己実現のため?人の役に立ちたいから?確かにそれもあるでしょう。でも、生きていくためにはお金が必要で、そのお金を得るために仕事をするという側面は捨てきれないのではないでしょうか。


このとき、仕事は「自分のため」にすることとなっています。しかし、仕事には「人のため」にするものも多い。こういった仕事に従事しているとき、「自分のため」は「人のため」に変換されます。私たちは人の助けがないと生きてはいけず、社会では行為の対象の変換が常に起こっている。だからこそ、『チア男子!!』が描いた応援という行為は、大きな普遍性を持って、私たちの心に入り込んでくるのではないでしょうか。


それが結実したのが最後のチアシーンですよね。劇中の年月と同じ、3か月間の特訓の成果が表れていて、カタルシスを得られます。晴希の姉との和解や、トンをからかっていた人たちのいいヤツ化などは分かっていても感動してしまう。ただ、チア自体は良かったんですけど、キメ技でのスローモーションの多用や、いかにもな音楽や、長すぎる喝采など演出に少し疑問を持ってしまったのも確かです。


あと視点をバシバシと切り替えていく編集に戦隊ヒーロー的なものを感じました。一馬がチーム名をBREAKERSに決めたシーンは、後ろで爆発が起こってもおかしくないなと。この辺は識者の方に意見を伺いたいところです。




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さらに、『チア男子!!』ではもう一つ「自らが選び取ることの重要性」も示されていました。BREAKERSは晴希以外の全員が自ら加入したわけですし、晴希は実家の道場に話をつけて、溝口は家業を継ぐのを辞めて就職を選んでいます。そして、『チア男子!!』は「自らが選び取ったことにより、もたらされる成功」も力強く描いています。この映画がハッピーエンドで終わったのがその証ですね。


これはとても理想的なことです。現実ではこう上手くはいきません。でも、映画と言う虚構の中で成功させることで、観客にも「自らが選び取るのはいい事だ」とその気にさせてくれるんですよね。実際、映画を観終わった後には「何かをしてみたい」という気持ちになりましたし、そういった意味では『チア男子!!』は青春スポーツものとして成功を収めていると言い切っていいと思います。




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・『桐島』とは正反対


『チア男子!!』は面白かったんですけど、ただ、『桐島』や『何者』のように一部の人に深く刺さる映画かと言われるとそうではないと思います。


その最大の要因は説明的すぎるということ。翔が人を怪我させてしまったことや、一馬の祖母が認知症だということ、その他諸々の事象が、この映画ではご丁寧にセリフで全て説明されます。言わなくても大体の人が察することが出来るようなことをあえて言語化すること。これは映画のテンポや風味を損なっているように感じました。その最たるものがBREAKERS行きつけの店の店主の「青春だなぁ」というセリフです。


ここで提案したいんですが、いい加減青春映画で大人に「青春だなぁ」としみじみ言わせるのもう止めにしませんか。そんなものはこっちが勝手に感じ取ることで、言葉にされると萎えます。「青春」という言葉を使わずに、青春を感じさせるのが優れた青春映画だと私は考えていて、「青春だなぁ」はその挑戦に対する逃げですよ。もっと自らの描写を信頼してもいいんじゃないかと感じますね。


いずれにせよ『チア男子!!』は全てを言語化することで、万人に受ける大衆性を獲得し、それと引き換えに、一部の人に深く刺さる専門性を失ってしまったと私は考えています。これはどちらが良い悪いということではないですし、両方を書ける朝井先生が凄いのは間違いありません。


ただ、説明を最小限に抑えた『桐島』とは対極に位置するような映画なので、『桐島』を想像すると肩透かしを食らうのはほぼ確定的。なので、『チア男子!!』に『桐島』を期待してはいけません。これから観に行く方にはそこだけを肝に銘じてほしいなと思います。まっさらな頭で見た方が面白く感じる映画ですよ。




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以上で感想は終了となります。『チア男子!!』、褒めたり貶したりしてきましたが、真っすぐな王道の面白さがありますし、見て損をするということはまずないので、よろしければ観てみるのもいいかと思います。オススメします。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい


チア男子!! (集英社文庫)
朝井 リョウ
集英社
2013-02-20



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