こんにちは。これです。第二十九回文学フリマ東京ありがとうございました。大変でしたけど、良い体験になりました。今は初めての長編を準備中ですので、そちらの方もよろしくお願いしますね。今年中にnoteで出せたらと思っております。
それはさておき、今回も映画の感想です。今回観た映画は『サンタ・カンパニー~クリスマスの秘密~』と『コルボッコロ』の二本立て。どちらも糸曽賢志監督が手がけたアニメ映画です。
それでは、感想を始めたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いします。
―目次―
・『コルボッコロ』
・『サンタ・カンパニー~クリスマスの秘密~』
※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。
・『コルボッコロ』
―あらすじ―
世界の様々な文化や宗教の起源となった街で、巫女の家系に生まれた14歳の少女「鈴」。ある日、街の遥か上空に存在する禁断の「開かずの間」に足を踏み入れる。そこで不思議な種を拾ったことがきっかけで、街の隠された秘密を知ってしまい、自分の進むべき道を模索していく。
(映画『コルボッコロ』公式サイトより引用)
映画情報は公式サイトをご覧ください。
この映画は『サンタ・カンパニー』とは違い、今回が初公開の完全オリジナル作品となっています。描かれたのはある14歳の女の子の成長。線が薄く淡めの和風の画面が、ほっとして、どこか不穏な空気を感じさせる独特の仕上がりとなっていました。
主人公の鈴は、代々続く巫女の一族。14歳の彼女は将来人々を導く役割を期待されていますが、本人は特に乗り気ではない様子。それどころかやりたいことが分からないという普遍的な悩みを抱えています。この鈴に声を当てたのが、元乃木坂46の女優・西野七瀬さんです。一つ言っておきたいのは、西野さんは『コルボッコロ』のみの出演で、『サンタ・カンパニー』には出てこないので、そこだけはご承知おきください。
正直、その後の『サンタ・カンパニー』での本職声優さんと比べてしまうと、経験不足は否めませんが、それはこちらも分かっていたこと。慣れていない中でも基本溌剌と、でも迷いを抱えている鈴の心境を表現しようとしていました。ぶっちゃけ上手くはないのですが、でも物語を邪魔するほど下手でもなく、ある程度はスムーズに見ることができたと思います。その分、本職の茶風林さんがノリノリで演じていたので良かったですね。あのはっちゃけっぷり、波平のイメージは影も形もないです。
ある日、鈴は天高い塔の頂上にある鳥居の前で不思議な物体を拾います。球体に棘がついたそれは、見るにさながらモヤっとボール。鈴は仲の良い男の子・すいかから「それは種子ではないか」と言われ、土に埋めて水をやります。水を上げたその瞬間から見る見るうちに育っていったそれは、自ら動き出し薄い緑色の不思議な生命体・コルボッコロへと姿を変えました。
このコルボッコロ、ポケモンみたいにコロとしか喋りませんでしたが、声を当てた大森日雅さんの演技のおかげで実に愛くるしく見ることができました。あと、意外と飛びます。コルボッコロに掴まって、鈴が今まで観たことのない街を見ていくのは、この映画で一番ワクワクするシーンでした。どうも現代ではなく50年くらい前みたいな感じでしたけども。
その後は都市開発の功罪や環境破壊へのアンチテーゼというジブリっぽいテーマも挟みつつ、最後には鈴はコルボッコロに掴まって旅に出ます。結果的に鈴は母親と同じ道を選びますが、それは消極的なものではなく、彼女の主体的な決断なんですよね。事実を知らされ、それでも乗り越えていくために同じ道を選んだという。『コルボッコロ』は鈴がやりたいことを見つけようと決意するまでの物語なんですよね。それをコルボッコロという少しふしぎな存在との邂逅を通して描いていて、大変に好みの物語でありました。こういうSF(少しふしぎ)に私弱いんですよね。40分くらいでしたが、観終わった後には確かな満足感がありました。
あと、ぜひ観ていただきたいのがオープニングとエンディングの版画のようなアニメーション。黒を基調として、原色を大胆に用いていており、本編の淡い画面とは対照的で実にインパクトがあります。天月さんの主題歌もよかったですし、ここは映画館で確かめてほしいところです。
・『サンタ・カンパニー~クリスマスの秘密~』
―あらすじ―
ノエルはクリスマスが大嫌い。両親は離婚し、
一緒に住む父親も仕事に大忙し。
友達も遊んでくれず、今年もひとりぼっちかと憂鬱な気持ちで
横浜の自宅に帰ると、なぜかそこには
「サンタ・カンパニー」という
会社が広がっていました。
なんとサンタクロースは会社組織に属していたのです。
驚くノエルの目の前を飛んでいく大勢のサンタクロースたち。
そしてクリスマスにおける様々なカラクリを知るノエル。
そこで出会った同年代の子供達に感化され、
サンタ・カンパニーに入社することを決めます。
入社するための試験、プレゼントを配る冒険、
途中に迫りくる恐ろしいムックとの戦い、
様々な困難の中でノエルが導き出した働く意味とは……!
これはクリスマスにまつわる、ちょっと不思議で、
それでいてとってもとっても輝ける、秘密の物語。
(映画『サンタ・カンパニー~クリスマスの秘密~』公式サイトより引用)
映画情報は公式サイトをご覧ください。
2013年に短編アニメーションとして制作されたこの作品。今回の映画版はその2014年版に大幅なシーン追加を行った作品となっているようです。私は当然、2014年版は未見なので今回初めて『サンタ・カンパニー』を観た形になります。結論から申し上げますと、これからの時期にぴったりな安心して見ることのできるアニメーションでした。何の知識も必要なく見られるのが結構貴重だなって。
まず何といっても声優さんが豪華なんですよね。花澤香菜さんに、梶裕貴さんに、戸松遥さんに、釘宮理恵さんなどなど。アニメは普段映画でしか見ない私でも知っているくらいの有名な声優さんが勢ぞろいしていて。映画の存在を知った瞬間に「あ、観よ」ってなりましたもん。よくアニメ映画である芸能人声優さんたちも決して悪くはないのですが、やっぱり本職の声優さんたちがメインを固めていると安心感がありますよね。まるで実家にいるようでした。
まあそのなかで唯一のゲスト声優だった小藪千豊さんの強さには笑いましたけど。いつもの、というかなんなら少し盛られているくらいの小藪節がこの映画でも炸裂。完全に顔が見えましたもん。周りが本職声優さんばかりだからその浮きっぷりたらなかったです。たぶん普段のままでとかオーダーされてたんだろうなぁと。
また、ストーリーの方も変に気を衒わず、安心して見ることのできる優しい設計になっていました。小学生の女の子・ノエルは毎年クリスマスを一人で過ごしています。冒頭のシーンから華やかなクリスマス(舞台は横浜)の中をノエルが一人歩いていて、彼女の寂しさを印象付けていました。このノエルの声を演じたのが花澤香菜さんですね。ほんわかボイスで優しくて癒されます。同僚の女の子・ミントと手をつなぐシーンなんて天使や、天使がおるって感じました。
一人寂しく家に帰るノエル。タワーマンションのエレベーターを降りると、そこにはベルトコンベアーに運ばれるプレゼントの数々が目に飛び込んできます。外では雪が降っていて明らかに横浜ではありません。なんと彼女が辿り着いたのはまさかのフィンランド。そこはサンタ・カンパニーというサンタの会社でした。尺は1時間ほどなので展開もスピーディ。いささか唐突感は否めませんでしたけどね。
ここでノエルは同じ年頃の男の子・ベルと出会います。ベルはサンタ・カンパニーの先輩で、ノエルを会社の新人と勘違いして迎え入れます。このベルの声を演じたのが梶裕貴さん。クールになり切れていない年頃の男の子という感じで好感が持てます。ベルがノエルを連れて行ったのは、大学のキャンパスみたいな教室。そこには大勢の子供たちが座っていました。彼らはトントゥといい、サンタの手伝いをしています。
そこでノエルは、元気印の女の子・ミント、引っ込み思案の男の子・トーマスと出会います。この二人を演じた戸松遥さんと釘宮理恵さんはもう言わずもがなの好演を見せていましたね。特に釘宮さんの男の子の声は『ペンギン・ハイウェイ』のウチダくんを想起させるほどのいじらしさで最高でした。めっちゃいいです。
教室で行われるのはメインイベントであるクリスマスイブを前にしてのホームルーム。そこで確認の意味も込めて会社紹介ビデオが流れました。よく疑問に上がりますよね。サンタはクリスマス以外は何しているの?って。ビーチで日焼けしているイメージが私にはあるんですけど、この映画ではそれに対する回答がなされているんですよね。それが面白いなーって。
ビデオ曰く、サンタ・カンパニーはクリスマス以外は世界一の警備会社として知られているそうです。そこで得た情報を元に子供にプレゼントを届けることができるという設定でした。ぶっちゃけ「え、何それ怖っ」でしたけどね。また、サンタ・カンパニーは大手通販会社も運営したり、地図アプリや同時翻訳アプリなどを開発するなど手広く色々やっている様子。世界はサンタ・カンパニーの手のひらの上といった感じでしたが、まあ世界中の子供にプレゼントを届けるという目的のためにはそれくらいやらないといけないのかも知れません。
その後、ノエルは部長に会ったこともあり、トントゥとしてサンタ・カンパニーで働くことを決意します。サンタ・カンパニーの仕事の様子は、茅原実里さんのふわりとした歌に載ってハイライトのように映されます。この映画一番の楽しいシーンで、夢を作っているという感じがして好みでしたね。
しかし、全てのプレゼントの配達が終わったものの、配達以来の手紙が一通遅れて届いていまいます。規則だからとプレゼントは届けられないという部長。しかし、ノエルたち4人はプレゼントを届けるために立ち上がります。
そこで4人を待ち受ける困難とは……?
果たして4人はプレゼントを無事に届けることができるのか……?
この先はぜひ映画館でお楽しみください。
『サンタ・カンパニー』はそのクリスマス、サンタという題材からおそらく子供向けを想定していると思われます。実際、楽しく手に汗握るシーンもあり、子供は喜びそうだなと思うのですが、内容は意外と大人でも楽しめる話なんですよね。それはこの映画が「お仕事讃歌」という側面も持っていたからです。
基本、仕事ってあまり楽しいものではないじゃないですか。どんな仕事でも成果の裏にはその何十倍もの艱難辛苦がありますし。楽しいことは少なく、辛いことばっかり。私みたいに給料のために、食べるために仕事をしている人も少なくないと思います。
さらに、会社には規則というものがあり、行動は制限される。全体を優先しないと会社が回らないのは承知の上なのですが、個人が希薄化してどうしてもストレスを感じてしまいます。それは、サンタ・カンパニーでもそうでした。部長はことあるごとに規則を持ち出し、会社や社会の厳しさを小学生のノエルに突き付けてきます。それにノエルは納得がいかずに、自らの手でプレゼントを運び出そうとするわけです。
ただ、会社が存在しているのって言ってしまえば、顧客のためなんですよ。顧客を満足させて笑顔にするためなんですよ。それは、サンタ・カンパニーがクリスマスにプレゼントを届けて、子供たちを笑顔にするというところに存分に表れていると感じます。規則は顧客である子供たちの笑顔のために必要なものなんですよね。この映画はそういった会社や規則を肯定しているのが良いんですよね。そこから発生する仕事を賛美しているのが良いんですよ。
これは私だけかもしれないんですけど、私はサンタ・カンパニーにアニメ制作会社を見たんですよね。辛いこと大変なこともあるけれど、それでも頑張ってプレゼントを届けようとするのが結構似通っているなと。そして、それは世の中のすべての会社に言えることだとも思います。私は事務職で普段顧客と接することは全くなく、パソコンに向かってばかりの仕事なのですが、それでももしかしたら、誰かの笑顔を作っているのかもしれないと思えました。今は月曜日からの仕事がんばろうという気持ちです。ひょっとすると『サンタ・カンパニー』は仕事に就かれた大人を癒す映画なのかもしれないですね。
以上で感想は終了となります。『サンタ・カンパニー~クリスマスの秘密~/コルボッコロ』。強くオススメとまではいきませんが、リラックスして観られる貴重なアニメ映画だと思います。
ただ、口惜しいのが同日に『人間失格/HUMAN LOST』や『幸福路のチー』、『GのレコンギスタⅠ』(ガンダムの映画)などアニメ映画が多く公開されており、注目度があまり高くなさそうな点。早朝の上映とはいえ、映画館に私含め二人しかいなかったのはなかなか来るものがありました。個人的にはこのまま埋もれてしまうのはもったいない二本だと思うので、よろしければ映画館に足を運んでください。安定して面白いですよ。
お読みいただきありがとうございました。
おしまい
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