Subhuman

ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203

2020年04月



こんにちは。これです。


新型コロナウイルス、まだ収まる気配を見せませんね。新規感染者数もなかなか減りませんし。緊急事態宣言も5月6日に解除できるのか怪しくなってきました。たぶん延長すると考えたら、映画館はますます苦境を強いられそうです。果たして、コロナ禍が終わるまで映画館は持ってくれるのでしょうか。映画の灯を消さないためにも、引き続きミニシアターエイド基金のリンクを張っておきます。


未来へつなごう!!多様な映画文化を育んできた全国のミニシアターをみんなで応援
ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金
https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid


さて、そんないま私たちができることと言えば、とにかく家にいること。ステイホームです。家にいてこれ以上感染を広げないことが大切です。今ですら医療機関はパンクしそうなところまで来ていますしね。最前線で働く方々にこれ以上負担をかけないためにも、不要不急の外出は控えるべきです。


ただ、家にいろと言われても何をしていいのかわかりませんよね。私もそうです。なので、今回は前回に引き続き、自宅で見られるおすすめの映画を紹介したいと思います。条件は前回と同じ以下の3つ。


・私がブログを始めた2018年以降公開の作品であること
・ブログに感想を書いてある作品であること
・Netflix、もしくはAmazon Prime Videoで見られる作品であること


そして、今回も前回と同じ15本を紹介したいと思います。この記事が少しでも皆さんの暇つぶしのお役に立てるなら、これほど嬉しいことはありません。ぜひご笑覧いただき、お役立てください。何卒よろしくお願いします。


前回紹介した15本はこちら↓





ー目次ー

・愛しのアイリーン
・チワワちゃん
・がっこうぐらし!
・生きてるだけで、愛。
・アクアマン
・翔んで埼玉
・ROMA/ローマ
・ブラック・クランズマン
・21世紀の女の子
・ラ・ヨローナ~泣く女~
・ホットギミック ガールミーツボーイ
・ハッピー・デス・デイ&ハッピー・デス・デイ 2U
・失くした体
・映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ
・37セカンズ










・愛しのアイリーン


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Amazon Prime Video:〇



とにかく強烈な映画が見たいならこの映画。容赦のないラブとバイオレンス。42歳の童貞男・宍戸岩男が貯金をはたいて、フィリピン人の嫁アイリーンを買うえげつない内容。安田顕さんの怪演も見事ですが、注目してほしいのが、木野花さん演じる岩男の母のツル。子供を思うあまり、アイリーンを追い詰めていくという役柄なのですが、そのあまりに強烈な鬼母ぶりは見た後、しばらく頭から離れないほど。「愛しい」という言葉の「かわいそうだ」という意味がクローズアップされた衝撃作です。



感想はこちら↓











・チワワちゃん


gfb


Netflix:〇



東京湾で起こったバラバラ殺人事件。その被害者は20歳の女子大生。かつて彼女と遊んだミキが、彼女の正体を探っていくうちに思いもよらない姿が浮かび上がる―。前半の10代の行き場のない感情の爆発は、浮遊感のあるEDMに乗せられて、まるでミュージックビデオを見ているよう。青い日々を振り返る彼ら彼女らは、まだ感傷から抜け出せていない様子。青春を自爆に例えるのが秀逸ですし、そこからの脱却は文句なしにエモい。R15でキスや行為のシーンも多くありますが、平気なら。



感想はこちら↓











・がっこうぐらし!


gfc


Amazon Prime Video:〇



公開当時、その宣伝手法やキャスティングその他諸々で、やたらと燃えたこの映画。心配する声も分かります。実際にラストアイドルの4人は演技未経験で、序盤は「本当に大丈夫?」と危惧してしまうほどです。ただ、演技は徐々にうまくなっていきますし、何といっても特徴なのが、れっきとした青春映画であること。〇〇からの脱出を、成長の儀式と上手く重ね合わせていて、青春の先すら見据えた展開に思わず私は涙してしまいました。思わぬ掘り出し物です。



感想はこちら↓











・生きてるだけで、愛。


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Netflix:〇



社会と折り合いが合わず、生きづらさを感じている男女の暮らしを、ありのまま描いた映画です。本当に特別なことは何もしていなくて、徐々に追い詰められていく二人を克明に追っています。アップを多用するカメラワークなど、アーティスティックな印象も強く、正直合う合わないはあります。それでも、人とのつながりを希求する人間の様を描いた映画であり、ラストの感情の爆発はなかなかのもの。なにより「意味分からないけど美しいもの」で、映画全体が満たされています。ニューヒロイン・趣里さんの登場も見どころですよ。



感想はこちら↓










・アクアマン


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Netflix:〇



単純明快な娯楽映画の登場です。バットマンやジョーカー等を擁するDCコミックスの映画化ですが、他の映画との関連性は薄いので、一見さんにもおすすめです。見どころはとにかくアクション。水の抵抗を感じる海中戦は新感覚。名跡を舞台にした地上戦もサービス満点。そして、小難しい話になりかけたら爆発。爆発に次ぐ爆発でアドレナリンは出っ放し。キャラクターの思想も戦って決着をつけるというマッチョイズム溢れるものですし、ステイホームで疲れた頭にはちょうどいい映画です。



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・翔んで埼玉


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Amazon Prime Video:〇



去年、最も話題をさらった邦画です。テレビなどで人気が沸騰した魔夜峰央先生の同名漫画の実写化で、埼玉県をとにかくいじりまくります。「埼玉県人にはその辺の草でも食わせておけ!」という台詞はあまりにも有名。また、衣装やセットにも意外なほどこだわられており、ギャップによる笑いを誘います。ただ、その実この映画は多様性を謳った映画であり、どの都道府県にも価値があるということが声高に叫ばれています。愛郷心のある人ほど刺さりまくるのではないでしょうか。私はぶっ刺さって泣きました。
 


感想はこちら↓











・ROMA/ローマ


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Netflix:〇


Netflixオリジナル映画としては、初のアカデミー賞外国語映画賞を受賞したこの映画。タイトルはローマですが、映画の舞台は1970年代のメキシコ。このころのメキシコは政治的混乱の真っただ中。そのなかでもささやかに力強く生きた一つの家族と家政婦の物語です。モノクロ映画ということで、敬遠する方もいるかもしれませんが、家政婦クレオとソフィア家の子どもたちの交流が、とにかく尊い。互いに互いを支えている描写がそこかしこにあって、辛い中でも心が温まります。音楽もけっこう流れていたりとポップな側面もあります。



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・ブラック・クランズマン


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Amazon Prime Video:〇



黒人映画監督のパイオニア、スパイク・リー監督の怒りがぶちまけられた映画です。黒人刑事が白人至上主義団体KKKに潜入捜査をするという内容なのですが、主人公の悩まない性格やウィットに富んだ会話、いつ発覚するか分からないという緊迫感を持って、きちんとしたエンタメ映画に仕立て上げられています。アメリカの黒人差別の状況がよくわかりますが、重大なのは日本でも全く同じだということ。差別は日本にだって間違いなくあります。この機会に立ち止まって振り返ってみてはいかがでしょうか。



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・21世紀の女の子


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Amazon Prime Video:〇



気鋭の女性監督15人による短編映画集です。テーマは「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」。このテーマをそれぞれの監督が噛み砕いて、多種多様な6~8分程度の短編に仕立て上げています。個人的には、竹内愛紗監督の『Mirror』と枝優花監督の『恋愛乾燥剤』が好きです。そして、主宰者である山戸結希監督の『離ればなれの花々へ』は別格。これだけは見ていただきたいという圧倒的な作品です。男性優位がいまだ残る社会のありようさえ考えさせられる、意義の大きい短編集です。



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・ラ・ヨローナ~泣く女~


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Netflix:〇


著名なホラーシリーズ『死霊館』シリーズの一作ですが、他作品とはわりと独立しており、予備知識なしで楽しめる映画です。子供を溺死させようとする悪霊、ラ・ヨローナさんが主演なのですが、彼女が驚かせ方を分かっていて、恐怖を小出しにして焦らしていくんですよね。ここまではよくあるホラー映画ですが、この映画の真骨頂は中盤の対決。なんと呪術師が登場するんですよ。悪霊vs呪術のパワフル大決戦はオカルト好きにはたまりません。ギュイーンってなりますからね。ギュイーンって。決着の付け方も良きです。



感想はこちら↓

















・ホットギミック ガールミーツボーイ


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Netflix:〇


先ほども少し触れた山戸結希監督の作品。言葉に表せないほどすさまじく、青春恋愛映画の殻をぶち破るようなパワーを持った映画です。目まぐるしく変わるカットに変幻自在の演出。ずっと流れている音楽により、台詞がまるで歌っているように聞こえます。今見ているのは映画なのかと疑問に思ってしまうほど。ストーリーも男性のあり方によって規定されていた女性が、主体性を持つまでを描いていて、今まで見たことのない境地へと観客を誘う。青春恋愛映画を受け付けない方にも見ていただきたい傑作です。



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・ハッピー・デス・デイ&ハッピー・デス・デイ 2U

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dqa


Amazon Prime Video:〇


どちらも90分程度と短めなので、すっと見られるホラー映画です。この映画を一言で言うと「時をかけるビッチ」
。何度も殺される誕生日を繰り返すタイムリープホラーとなっています。そのバラエティ豊かな死に様は思わず笑いがこみあげてきてしまうほど。脚本もツイストが効いていて、敵役の倒し方や真相も見事。タイムリープの理由が明かされる『2U』まで見てほしい映画です。自分勝手なツリーの成長は思わぬ感動を呼びますよ。ホラー要素は少し弱いですが、気軽に見られるのでおすすめです。



感想はこちら↓












・失くした体


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Netflix:〇


いきなり右手が切断されるというショックな展開。その右手が行方を求めてさまよう過程はおぞましくもありますが、良く動きアニメーションの快楽に満ちています。また、主人公のナウフェルのなんでもない日々との対比も見事。ガールミーツボーイの要素があるのも好感度高いですね。しかし、この映画は運命という重大なテーマを扱っていて、「運命がなんぼのもんじゃい、未来は俺の手で切り開く」という実存主義に
基づいているのが最高です。ショッキングなシーンはありますが、耐性があるなら90分にも満たないので観てみてください。


感想はこちら↓










・映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ


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Amazon Prime Video:〇



去年、彗星のごとく現れて一気に話題をさらったこの映画。まず安心なのが、すみっコぐらしを知らない人にもちゃんと冒頭で説明してくれること。誰も置いてけぼりにしません。すみっコたちが絵本の世界に吸い込まれ、迷子になったひよこをもとの話に戻してあげるというストーリーなのですが、想像以上に笑いどころも多く、終始楽しく見ることができます。しかし、中盤からの展開はなかなかきつい。しかし、皆を思いあう優しい世界が息づいているので、その結末に私は号泣してしまいました。
外出できなくて、気持ちがささくれ気味になっている方にこそ見ていただきたい映画です。


感想はこちら↓













・37セカンズ


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Netflix:〇


今年公開されたばかりのこの映画。脳性麻痺の貴田ユマを主人公に障害と性、自立という重大なテーマを扱った映画です。この映画の最大のポイントは、実際にユマ役に脳性麻痺を持つ佳山明さんを起用していること。中盤の這いずる動きなど健常者には決してできない演技で、見るものを惹きつけます。ユマの目線に立つなどの撮り方や、心無い一言に代表されるような障害を取り巻く空気も特筆すべき点。最後の開放感あふれる景色はユマのことを追いかけてきて良かったと思わせてくれます。今年の邦画でも指折りの作品だと断言できるほどの素晴らしい映画です。


感想はこちら↓
















以上でこの記事は終了となります。いかがでしたでしょうか。見たい映画はありましたでしょうか。まだまだ続く外出自粛期間。何卒お体に気をつけて、映画などを楽しみながら、暗くなり過ぎずに過ごしてくださいね。


では、またいつかお会いしましょう。その時までお元気で。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい

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こんにちは。これです。


いよいよコロナウイルスに対する緊急事態宣言が全国に出されてしまいましたね。まずはコロナウイルスの一日でも早い収束を願うばかりです。そして、医療や救急の現場に限らず、最前線で働いている方々には敬意しかありません。本当にありがとうございます。


そして、映画館も軒並み休館してしまい、行き場のない日々を私は送っています。何もすることがないと落ち込みますね。失って初めてわかる映画館で映画を観られることのありがたみ。本当に早く事態が収束して、また映画館で映画を観られる日が来ることを願ってやみません。一つでも多くの映画館がこの危機を無事に乗り越えられますように。


とりあえずできることの一として、ミニシアターエイド基金のURLを貼っておきます。


未来へつなごう!!多様な映画文化を育んできた全国のミニシアターをみんなで応援
ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金
https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid


そして、できることの二。それは、とにかく外出自粛して自宅待機をすることです。不要不急の外出を避け、できる限り家にいること。そうすることで感染拡大を防ぐことができ、助かる命も出てきます。


でも、家にいたってあまりすることがない。家にいることも飽きてきた。そんな方々のために、私ができること。それは映画を紹介することだと考えつきました。なので、今回のブログはいつもと趣向を変えて私のおすすめ映画を紹介したいと思います。


ただ、私の知っている映画の範囲はそんなに広くありません。正直、旧作もあまり見ません。なので、今回は


・私がブログを始めた2018年からの作品であること
・ブログに感想を書いてある作品であること
・Netflix、もしくはAmazon Prime Videoで見られる作品であること



の3つの条件の下、おすすめ映画を紹介していきたいと思います。レンタルショップも混雑していて感染の恐れがありますから、自宅で見られる配信サービスを利用するのが今は最適です。繰り返しになりますが、今はできる限りでいいので家にいるべきかと。


それでは映画の紹介を始めたいと思います。今回紹介するのは15作品です。いずれも自信を持っておすすめできる作品です。この記事が少しでも皆様の暇つぶしに貢献できたのなら、これほど嬉しいことはありません。


何卒よろしくお願いします。




―ラインナップ―

・勝手にふるえてろ
・パーティーで女の子に話しかけるには
・映画ドラえもん のび太の宝島
・映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~
・アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
・blank13
・万引き家族
・羊と鋼の森
・僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ―2人の英雄―
・家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。
・カメラを止めるな!
・ペンギン・ハイウェイ
・志乃ちゃんは自分の名前が言えない
・クワイエット・プレイス
・日日是好日













・勝手にふるえてろ


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Netflix:〇
Amazon Prime Video:〇



江藤ヨシカは中学での同級生イチにもう10年も片想い中。しかし、会社の同僚であるニからアプローチされて……。2人の間で葛藤するパワー溢れるラブコメディです。この映画の魅力と言えば、何といってもこの映画で初主演を飾った松岡茉優さんでしょう。笑って泣いて千変万化の演技を披露。何を差し置いてもチャーミング。映画冒頭からその魅力にやられること間違いなしです。また、中盤のとある展開がとてもきついので、そこもご覧いただきたいですね。



感想↓











・パーティーで女の子に話しかけるには


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Netflix:〇
Amazon Prime Video:〇



一風変わったボーイミーツガールが見たいならこの映画。主人公エンが出会ったザンは宇宙人。二人の恋模様をパンクロックが彩ります。けっこう観念的なところもあったりするのですが、それを補って余りあるエル・ファニングの魅力よ。特にエンの顔を舐めるところはヤバかったです。エンの成長も宇宙人側の変容も描かれていたりと、少し変わっているようでしっかりツボが抑えられているところが好きですね。宇宙人が不気味なのもポイント高いです。



感想↓











・映画ドラえもん のび太の宝島



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Amazon Prime Video:〇



Amazon Prime Videoには新作の『月面探査記』を除き、ドラえもん映画がそろっていますが、今回お勧めしたいのが『のび太の宝島』。この映画の最大の魅力と言ったら「楽しい」ドラえもん映画になっていることだと思います。登場するひみつ道具もかなり多く、ドラえもん映画のお約束を存分に盛り込み、ミニドラがシリーズでも一番の活躍。外出自粛に疲れている方ほど見て楽しんでほしいですね。もう一つの主軸である親子の物語も心に響き、オオッとなるセリフもあります。


感想↓









・映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~



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Amazon Prime Video:〇



しんちゃん映画もAmazon Prime Videoには多数取り揃えられていますが、今回紹介したいのはこの映画。タイトル通りしんのすけたちがカンフーを習うというお話なのですが、個人的には近年のしんちゃん映画では『ロボとーちゃん』に次ぐ傑作だと思っています。ポイントは、ストーリーの意外性。想像にしない方向にストーリーが展開していき、しかもそれが現代的な問題をもはらんでいるのですから見事としか言いようがありません。マサオくんにスポットライトが当たっているのも好きですね。



感想↓











・アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル


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Netflix:〇
Amazon Prime Video:〇



フィギュアスケート界で実際に起こったナンシー・ケリガン襲撃事件を描いたこの映画。主人公であるトーニャがライバル選手のナンシーが傷を負うように仕向けたという衝撃的な事件を描いていますが、注目していただきたいのがトーニャを演じたマーゴット・ロビーの再現性。エンディングに実際のトーニャの映像が流れるのですが、ほとんどそのままだと驚愕させられます。超鬼母ラヴォナや全てを自分が操っていると錯覚しているデブ・ショーンなど強烈なキャラクターも多数登場しますよ。



感想↓














・blank13


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Amazon Prime Video:〇


俳優としても活躍する齊藤工監督の初監督作品です。亡くなった父の本当の姿を子供たちが知っていくというストーリーで、高橋一生さんやリリー・フランキーさん、松岡茉優さんなど豪華俳優陣が出演しています。この映画はやっぱり役者の映画で、芸人さんなども多く出演しているのですが、それが全くノイズになっておらず、齊藤監督の配置の巧さを感じます。じわじわ来る面白さがありました。人間の価値はその人の葬式に来た人数では決まらないということですね。本編71分と時間も短めです。



感想↓











・万引き家族


geg


Amazon Prime Video:〇



カンヌ国際映画祭で最高金賞パルムドールを受賞したこの映画。万引きで生計を立てる家族を描いています。ずっと家族を題材に描いてきた是枝裕和監督の極致ともいえる作品で、リリー・フランキーさんを始めとした俳優さんたちの演技が映画に静かな熱を与えています。特に印象的だったのが、終盤の安藤サクラさんですね。あの涙の演技は未だに頭から離れません。後ろめたさはあまりなく、あくまで楽しそうに暮らしている彼らの姿がよりいっそう胸に刺さる。近年の日本映画を代表する作品です。



感想↓











・羊と鋼の森


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Amazon Prime Video:〇



宮下奈都さん原作のこの映画。ピアノ調律師とピアニスト、ピアノにまつわる人々を温かな目線で描いた優しい映画です。主演の山崎賢人さんは等身大の青年を演じていて、新しい一面が垣間見えますし、三浦友和さんなど脇を固めるベテラン俳優さんたちがとくかく落ち着いていて最高です。また、ピアノの映画らしく音楽が主役の映画でもあり、特にショパンの子犬のワルツには泣きそうになりました。劇伴もよく、森などのイメージで視覚的に音楽を伝えてくれるのも映画ならではで好きですね。



感想↓











・僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ―2人の英雄―


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Netflix:〇



週刊少年ジャンプで連載中の『僕のヒーローアカデミア』、通称『ヒロアカ』の初の映画。まず凄いのが作画。最初からガシガシ動き、終盤の盛り上がりでは、言葉を失くしてしまうほどのバトルが展開されます。また、デクとオールマイトとの共闘という原作でも見られない展開が見られるのは、ファンにとっては嬉しいところ。もちろん、ヒロアカ初見の方でも最初にしっかりと説明してくれますし、"個性"と呼ばれる能力を使ったバトル物とだけ押さえておけば問題ありません。熱くなれること請け合いです。


感想↓











・家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

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Netflix:〇
Amazon Prime Video:〇



タイトルが映画の内容をそのまま表しているこの映画。まずとにかく死んだふりをする榮倉奈々さんが無邪気でキュートなんですよね。死んだふりのバリエーションもやたらと豊富ですし。夫の安田顕さんも頼りない姿が印象的でした。とても明るくポップで軽い気持ちで見ることができます。でも、実は死と生という重いテーマをも扱っていて、後半の展開には一緒に考えてしまうことも。死んだふりは生きていなくちゃできないし、誰かに見られて初めて成立する。チャットモンチーの主題歌も良きです。



感想↓
















・カメラを止めるな!


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Netflix:〇
Amazon Prime Video:〇



2018年に最も話題をさらったのがこの映画。本当はネタバレなしで今すぐ見て!と言いたいですし、それぐらい魅力にあふれた映画です。その真髄はなんといっても圧倒的なエンタメ性。伏線がいくつも張られ、それが回収されていく様子は快感であり、観たときには大きな笑いが起きていました。またモノづくりの苦労や喜びを描いた映画でもあり、ある人はこの映画に自分の人生を重ねてしまうかも。話題になったけど今更…なんて敬遠せずに、この機会に是非とも見ていただきたい映画です。



感想↓











・ペンギン・ハイウェイ


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Netflix:〇
Amazon Prime Video:〇



2018年、個人的に最も好きだったのがこの映画です。瑞々しい少年のジュブナイル。夏の空気が爽やか。ある日突然、ペンギンが出現するようになった街。その謎を主人公・アオヤマくんが解き明かしていく様子は、知的好奇心に満ちていて、まるで子供に戻ったかのようにワクワクします。蒼井優さんが声を当てたお姉さんの奔放かつミステリアスな雰囲気も最高。ペンギンパレードのシーンで絵的な爽快感も確保していますし、この空気で塞ぎこみごちな方にはぜひ見ていただきたいですね。



感想↓










・志乃ちゃんは自分の名前が言えない


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Netflix:〇



吃音症の大島志乃と周囲から浮き気味だった岡崎加代の二人が「しのかよ」というデュオを結成するこの映画。とにかく大島志乃を演じた南沙良さんと加代を演じた蒔田彩珠さんという二人の若手女優さんが素晴らしいんですよ。光も影も見事に表現していて。音楽も素晴らしかったですし、南さんが歌うthee michelle gun elephantの「世界の終わり」はその映像とともに、心に残っています。自分のアイデンティティを探し求める映画だというのも刺さる。私は自分の名前が言えるのかと今も考えています。



感想↓











・クワイエット・プレイス


gen


Amazon Prime Video:〇



こんなときだからこそホラーが見たいという方におすすめなのがこの映画。音を立てたら襲ってくる怪物との戦いを描いたワンシチュエーションホラーです。正直ツッコミどころは多数あります。こんな状況で子供産むなやとか。でも、それを上回る緊迫感があり、怪物のデザインも良く、手に汗握ります。それでいて、純粋な家族愛の物語になっているのもいいですね。熱い展開も用意されていますし。なお、続編が5月8日に公開予定だったんですが、公開延期となってしまいました。残念です。







・日日是好日


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Amazon Prime Video:〇



茶道にのめり込んでいく女性が主人公のこの映画。主演の黒木華さんと多部未華子さんの二人は対照的な役どころで良かったのですが、それ以上にこの映画は樹木希林さんの映画でした。含蓄のある言葉ににじむ温厚な人柄。樹木希林さんがお亡くなりになられて、最初のタイミングで公開された映画とだけあって、映画も一期一会なんだと感じました。気の持ちようで人間は大きく変わるというメッセージを伝えてくれた映画です。映像や音など自然の描写も細に穿っていて、安心して見ることができますね。



感想↓




















以上で記事は終了となります。いかがでしたでしょうか。この記事をもとに皆様がここで紹介した映画を観てくれたら、これほど嬉しいことはありません。一緒にコロナ禍を映画を見ながら乗り越えましょう!そして、収まった暁にはまた映画館に行きましょう!


なお、紹介したい映画はまだまだあるので、もしかしたら第二弾があるかもしれないし、ないかもしれません。でも、もしまた記事をアップしたら、お読みいただけると幸いです。これからもよろしくお願いしますね。私もできる限りがんばりますので。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 


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こんにちは。これです。とうとう首都圏を始めとした1都6府県に緊急事態宣言が出てしまいましたね。外出自粛により、映画を始めとする娯楽もかなり制限されるみたいで。感染の拡大もそうですけど、このパンデミックが終わった後に、映画館が果たしてどれだけ残るのか、とても心配です。


なので、私は今日も映画館に行ってきました。こっちの方はまだ開いているので、対策をしながらもう行けるだけ行こうと。批判されるのも承知の上です。


そして、今回観た映画は、去年Netflixで配信されたフランス製アニメーション『失くした体』です。実はこの映画、私(と顔も知らない複数人)が映画館にリクエストしたものであり、念願かなってようやく映画館で観ることができたんですよね。Netflixじゃいつでも見れますけど、怠惰な私はいつまでも観ませんから。そういう意味じゃ時間を決めて上映してくれるのはありがたいです。


そして観たところ、観終わった後には体がじんわりと汗をかく、そんな緊迫感あるアニメ映画になっていました。さらに、時間が経った今はこの映画のラストに深く胸を打たれています。81分という濃密な鑑賞体験をすることができました。やっぱり映画館で観る映画はいいですね。


では、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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―目次―

・右手のパートとナウフェルのパートの対比が見事
・この映画におけるハエの意味についての簡単な考察
・サルトルの実存主義の影響を受けていると思う






・右手のパートとナウフェルのパートの対比が見事


この映画はハエの羽音で幕を開けます。ハエが飛び回るグレーの世界。主人公・ナウフェルの右手が切断されています。ハエは窓から出ることができず、羽音をブンブン言わせるのみ。描き込まれた右手とその断面がグロテスクで、なかなかショッキングな始まり方です。でも、ここで私は一気にこの映画に引き込まれましたね。


映画は過去回想へ。ナウフェルは家族と暮らしています。チェロを弾いたり、ピアノを弾いたり、マイクでラジカセに様々な音を録音したりと、特に右手でありふれているけど、幸せそうな生活を送っています。この右手が切断されるんですから、より辛いものがありますね。幸せだった彼の思い出も、失くなってしまったようで。モノクロの映像なのがより心に迫ります。


そして、この過去回想でもハエが登場。ハエを捕まえるにはどうしたらいいか、父親に聞くラウフェル(私だったらそんなこと絶対にしたくないな)。ハエはすばしっこくて手を被せても、なかなか捕まえられません。父親のアドバイスは「ハエがどう行動するか先を読むこと」。といっても昆虫の思考回路をラウフェルが持っているわけもなく、ハエは捕まえられません。


この映画には、他にも様々な局面でハエが登場しました。羽の模様や複眼まで精緻に描き込まれたハエは、見る度に気持ちが悪く、それでいて引き込まれていったのですが、まあこれだけ登場するんだから絶対に意味があるだろうと。映画を観ているときも、ずっとそのことばっかり考えていました。そして、私が思うこの映画でのハエの意味は、また後で述べたいと思います。




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さて、切断されたナウフェルの右手は冷蔵庫に保管されています。しかし、独りでに開く冷蔵庫。目玉がグロテスクに転がります。そして冷蔵庫から右手が勝手に動き出しました。理由は分かりません。この時点では。そして、部屋の外に出ようとするも、外は人の往来があります。しかし、部屋の窓から出ようとすることを右手は思いつき(という表現も変ですが)、職員の目を免れて、脱出に成功します。ここ、飛び出す目玉の中身がこれまたグロテスクでした。
 

この映画は、この右手のパートと、右手が切断されるまでのナウフェルのパートを交互に挟んでいくという構成になっています。まずは右手のパートについて書いていきましょう。何かを求めてさまよう右手。この右手のパートは、台詞は全くありません。映像と音楽のみで状況を伝えています。しかし、右手のパートはこの映画の動の部分、ダイナミズムを一手に担っていて、そのあまりの緊迫した展開にじっと見入っている自分がいました。


この右手の不思議な冒険は、ハラハラする展開の連続。鳩に突き落とされそうになり、ゴミ収集車に巻き込まれかけ、缶を被って人目を忍んで移動。線路とホームの間でネズミに襲われ、やってきた列車になんとかしがみついて難を逃れます。挙句の果てには上昇気流に乗って、傘で空まで飛んでしまう始末。絵もカメラも良く動き、スピード感と臨場感に溢れる展開が続きます。今こうして書いていても、手に汗が滲んできそうなほどです。


バレるかバレないか、無事目的を果たせるかという緊迫感があり、アニメーションの快楽みたいなものがありました。たぶん頭の中でドーパミンでも出ていたんだと思います。さらに、重厚な音楽も乗っかり嫌でも記憶に残ってしまう。この右手のパートだけでも十分にお釣りが来るほどで、アヌシーの長編映画賞を受賞したのも納得がいきました。


また、印象に残ったのが色彩。この右手のパートではグレーが多く使われているんですよ。雨樋、地下鉄の駅、水中。右手そのものや、周囲の物体にもどこかグレーが混じっていたような気さえします。さらに、ハトやネズミ、アリにハエなどグレーの生物を多く絡ませることで、切断された右手の悲しさを強調。ナウフェルの元に戻れたとしても、もう元には戻らないという事実を否応なしに突きつけてきました。



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一方の、ナウフェルパート。こちらも展開的には、あまり見ていられるものではありません。両親を事故で亡くし、孤児となったナウフェルは縁もゆかりもない他人の家に引き取られますが、そこでもあまり構ってはもらえていない様子。仕事も全く向いていないピザの配達をしており、時間に間に合わずに店長に怒られる有様です。彼が置かれた状況は良いとは言えません。


そうした迎えたとある日も、ナウフェルはスクーターで事故ってしまい、宅配の時間に遅れてしまいます。それでも、なんとか配達先であるマンションに到着。マルティネズという女性にピザを届けようとしますが、結局届けることができません。一人ぐちゃぐちゃになったピザを食べるナウフェル(マルティネズとインターホンで話しながらですが)。そこに、住人の老婆がやってきて、マルティネズの本名がガブリエルであることと、図書館に勤めていることが判明します。このガブリエル、昔のクレヨンしんちゃんみ、それこそ『オトナ帝国』の辺りの、があって私はけっこう好きでしたね。


そこからのナウフェルは、陰キャしぐさが全開。ガブリエルに会いたいと電話帳を調べ、勤務先の図書館に着いたはいいものの、声をかけられずに後をストーキングしてしまいます。木工職人の弟子になって、彼女の住むアパートに住めたのはいいのですが、密かに彼女との話に出てきたイグール(イヌイットの移動式の家)を作り、届けられなかったピザを用意します。もう本人はロマンティックだと思っているだろうけど、そういうとこだぞと、私は心の中で叫んでしまいました。案の定振られてしまいますし、陰キャしぐさは、どこの国でもいつの時代でも(1994年設定だったと思う)共通なんだなと思ってしまいました。


このナウフェルパートで印象的だったのも色彩ですね。特にガブリエルと出会ってからの、ナウフェルパートは比較的色鮮やかになっているんですよね。個人的には黄色が混ざって、少し派手になった感じがしました。スクーター、ピザ、そして血の赤も印象的でしたし、右手パートとの対比が視覚的に感じられました。ストーリーもですけど、映像に長けていた印象です。




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・この映画におけるハエの意味についての簡単な考察


さて、気になるこの映画におけるハエの意味ですが、私は大きく分けて3つの意味・モチーフがあると思います。まず一つ目は、ハエは死の象徴であるという考えです。


言うまでもなく、ハエは死を想起させる昆虫です。死体が放つ腐臭にハエが集まってくるのは、定番の演出と言っていいでしょう。この映画でも、ハエが死を感じさせるシーンで多く登場しています。家族との想い出はナウフェルにとっては、もう二度と手に入れることができない失われてしまったもの。また、父親が避けようとして事故になってしまったヤギの角にもハエがついていました。さらに、終盤右手が動かなくなったシーンでもハエが登場しています。このことからもハエが死の象徴や予兆であったというのは明白なように思えます。


また、これに関連して語りたいのが、この映画の色彩ですね。この映画では右手パートや過去回想にグレーが用いられていたりと、死を想起させる場面でグレーが多く用いられていました。灰色の動物が多く登場したのも、もう戻ることはないナウフェルの右手を表すのにうってつけです。さらに、ラファエルの右手を切断した刃も灰色でした。


色彩についてお決まりのイメージとしては、黒=死白=生というものがありますが、この映画におけるグレーは、どちらかというと死の意味合いが強かったのではないかと私は感じます。ずっとグレーで通してきたからこそ、最後に雪景色=白=生という映像が、映えるんですよね。赤ちゃんの手とか。この映画って、ずっと悲しみを背負っているように見せかけて、最後は生を肯定するようになっていたと思います。このことは、また次の項で書きますね。



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次に、私が考えるこの映画のハエの意味二つ目。それは「ハエ=運命そのもの」ではないかということです。


なんでこのように思ったかというと、それはナウフェルがガブリエルに、運命について話していたからなんですね。ナウフェルが言うには「運命は変えられない」と。過去の悲しい経験からそう悟ってしまっているんですね。無力感が切ないです。でも、こんなもの運命論ですよね。


運命論―

一切の出来事は運命によってあらかじめ決定されており、人間の意志や選択は無力であるとする考え方
(三省堂スーパー大辞林3.0より引用)



ここで言う運命は、ずばり死ぬことです。それは上で書いたとおり、死の予兆としてハエが登場したことにも表れていると思います。人間は死という運命からは逃れられません。では、人間の意志や選択は必ずしも無力なのでしょうか。


実は、ナウフェルは明確にこのことに対して、NOと言っています。「想定外の行動をすれば、運命は変えられる。奇跡は起こせる」と。お前、どっちやねんと言いたくなりますが、それはナウフェルの意地であり、宿願であったのでしょう。実は、このナウフェルの台詞がこの映画のテーマを表していると私は思うんですよね。それは、人間が現実に存在しているということ。略して、実存です。



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・サルトルの実存主義の影響を受けていると思う


この映画のメインビジュアルにある赤い手形。砂に、雪に刻まれた手の形。それは、いずれ消え去ってしまうものであるとしても、その時には確かに存在していた。生きていなきゃ手形は残せないんだなと、私はこの映画を観終わって真っ先に感じました。


さらに、この映画でもとりわけ強烈な印象を残したのが、白いスプレーで書かれた「我ここにあり」という落書き。全く脈絡のない言葉でしたが、それでもこのメッセージ性の強さには、何か考えざるを得ません。


そして、手元の電子辞書でちょっとハエについて調べていたところ、この二つを結びつけるワードに出会いました。『失くした体』はフランスの映画ですよね。実は、1943年にパリで初演を迎えた戯曲があるんです。タイトルもずばり『』。フランスの哲学者、文学者であるサルトルの作品です。調べていくうちに、この映画ってサルトルの影響を受けているんじゃないかなって思ったんです。


サルトルの思想として代表的なものとして挙げられるのは、何といっても実存主義でしょう。


実存主義―

世界における人間の実存(現実存在)を説明しようとする哲学の一派。

直接の先駆者であるキルケゴールは人間の自由選択の意義を強調し、未来の一部分はこの選択にかかっており、閉鎖的な合理的体系によって予知しうるものではないとし、このような人間存在を実存と呼んだ。

特殊な意味で人間が存在するということは、みずからの選択と行動で決めた未来が開かれていることを意味する。

(ブリタニカ国際大百科事典より引用)



というわけで、本当はもっと長ったらしい説明を、無理やり以上の三点にまとめましたけども、これを読むだけでも、実存主義は運命論と対立する思想だということが分かってもらえると思います。「みずからの選択と行動で決められた未来が開かれている」ですからね。ナウフェルの「想定外の行動を起こせば、運命は変えられる」と同じことだと思います。何でも運命で決められているという運命論とは本当に真逆ですよ。



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映画に沿ってみていきましょう。さまざまなピンチがありながらも、ナウフェルのもとに辿り着いた右手。このままくっつかないにしても、触れ合うのかなと思いきや、ナウフェルはそうしません。家族との幸せな想い出が詰まった右手。しかし、それはもう元に戻ることはないのです。眠っているという無意識下の行動は、ナウフェルがそのことを深層心理で分かっていたように私には思えます


そして、行方をくらますナウフェル。時間が経って、ガブリエルが部屋を訪ねると、棚には角砂糖で作られた白いイグール。屋上に出ると、雪が積もり灰色のイグールにも、雪が降りかかっています。そして、木材の下には再生機に入ったカセットテープが。ナウフェルの幸せな想い出が詰まったカセットテープ。しかし、ナウフェルはその想い出を上書きして、自分の行動を録音します。


そのナウフェルの行動とは自殺、かと思いきや向かいの建造物(名前は失念)に飛び乗るという、見ている私にとっては想定外のものでした。そして、歓喜の声を上げ、笑うナウフェル。ここで映画は幕を閉じます。最初に観たときには「これで終わり?」と思ったものですが、今考えるとこれが最良の終わり方だったと思います。なぜなら、ナウフェルが運命を変えたからと思うからです。


最後に雪が降っているということは、季節は冬でしょう。言わずもがな変温動物であるハエはいないはずです(冗談めいてナウフェルが挙げた北極にも)。そして、傘もない右手がナウフェルのもとに行く手段はもうありません。カセットテープを上書きし、右手と決別したナウフェル。幸せな想い出を過去のものと認識し、そこから離れることで、ナウフェルは運命を変えることが、少しでもできたのだと思います。


正直言えば、右手を失ったナウフェルはあそこから降りられないと思いますし、ゆっくり死んでいくだけだとは思います。なんでナウフェルが飛び乗ったのかは、私には分かりません。でも、それでいいんだと思います。電子辞書によると「実存主義者は人間の選択には合理的な理由がないとしている」とありますから。最後のナウフェルの笑み。そして、その決断を祝福するかのように降る雪。最後の白い空間は生へのエネルギーで溢れていたように、私には見えました。ポスターにもある「映像が織りなす人生讃歌」とはよく言ったものですね。




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というわけで、終盤の展開について考えてきましたが、実はこれ、サルトルの『蠅』と似ているんですよね。電子辞書にも


『蠅』―

アイスキュロスの『オレステイア』を粉本に、(中略)原作の運命悲劇を自由と行為の選択の劇に変えている。
(ブリタニカ国際大百科事典より引用)



とありますし、実存主義の影響を受けてかつてフランスで盛んになった実存主義演劇も、


実存主義演劇―


登場人物の性格や心理に劇的契機を求めず、神をも含め確固とした価値観が否定された絶望的な状況のなかで、自由意思によって自らの価値観を選択する主体的な存在としての人間の姿を表現する。
(ブリタニカ国際大百科事典より引用)



ものらしく、これも『失くした体』にぴったり合致するのではないかと思います。また、サルトルの戯曲には『汚れた手』というタイトルのものもあり、これはもはや偶然とは思えません。やっぱり結論としてはフランスですし、サルトルの影響を色濃く受けてそうですね。この映画におけるハエの意味三つ目、というかモチーフはサルトルの『蠅』だと私は考えます。


運命がなんじゃ、未来は俺の手で切り開いたるんじゃというこの姿勢には、個人的には好感と憧れしかありません。アニメーションの躍動も合わさって、傑作となっていると思います。またNetflixで見返してみようかな。そう思うくらいには、私はこの映画好きですね。



gdb














以上で感想は終了となります。映画『失くした体』。決して明るい!楽しい!となる映画ではないですが、緊張感と感慨が味わえる映画ですので、外出自粛の今、Netflixで観てみてはいかがでしょうか。オススメです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 


失くした体
ダン・レヴィ
Rambling RECORDS
2020-02-26



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こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想になります。コロナウィルスが大流行しているこんな状況下で、映画館に行くのは本当は良くないことなんでしょうけど、私は映画館を潰したくないので。手洗いやアルコール消毒などを万全にしたうえで、今日も映画館に行ってきました。


今回観た映画は『スウィング・キッズ』。今年の頭に公開された韓国映画です。朝鮮戦争とタップダンスという相反する要素をモチーフとしているようで。今年は韓国映画に勢いがありますし、期待も高まります(韓国での公開自体は2018年でしたけど)。


では、感想を始めます。最初に断っておきますけど、映画の途中で寝てしまいました。なので、かなり内容の薄い感想となっています。また文章自体も相変わらず拙いです。それでもよろしければどうぞ。



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―あらすじ―


1951年。朝鮮戦争当時、最大規模の巨済(コジェ)捕虜収容所。新しく赴任した所長は収容所の対外的なイメージメイキングのために、戦争捕虜たちによるダンスチーム結成プロジェクトを計画する。収容所で一番のトラブルメーカー ロ・ギス、4か国語も話せる無認可の通訳士 ヤン・パンネ、生き別れた妻を捜すために有名になることを望み、愛に生きる男 カン・ビョンサム、見た目からは想像できないダンスの実力を持った栄養失調の踊り手 シャオパン、そして彼らのリーダーであり元ブロードウェイのタップダンサー ジャクソンまで、紆余曲折の末、一堂に会した彼らの名前はスウィング・キッズ!それぞれ異なる事情を抱えてダンスを踊ることになり、デビュー公演が目前に迫っていた。国籍、言葉、イデオロギー、ダンスの実力、全てがちぐはぐな寄せ集めダンスチームは前途多難でしかないが…。

(映画『スウィング・キッズ』公式サイトより引用)



映画情報は公式サイトをご覧ください













この映画はまず、時代背景の説明から入ります。時は1951年。朝鮮戦争の真っただ中。韓国と北朝鮮間の戦争は、アメリカと中国という大国の代理戦争と化していました。そして、両国から何万人もの捕虜が北と南の収容所に分けて収容されています。ただ、条約のおかげで捕虜といえども基本的人権の保護は成されている様子。『大脱走』とは大違いですね。


しかし、同じ収容所の中に韓国からの人と、北朝鮮からの人が収容されていて、自由主義と共産主義という二つのイデオロギーが混じっている様子です。まさに、南北朝鮮の縮図といった感じです。実際、この映画の舞台となる巨済捕虜収容所の所長は、北朝鮮側の過激派に襲撃を受けていましたし、北の収容所に比べて、南の収容所は少し荒んでいるといった紹介が、映画の冒頭になされます。


これに腹を立てたのが、新しく赴任してきた所長です。所長は巨済収容所のイメージを作るために、捕虜たちに何かをさせる事を思いつきます。そこでまず白羽の矢が立ったのが、所内一のトラブルメーカーであるロ・ギス。彼は朝鮮戦争の英雄を兄に持つ、共産派の憧れのような存在でした。映画はじめは。


ギスはある日、アメリカ軍のパーティに乗じて食料を持ち出そうとします。パーティの前にはこっそりタップダンスを踊る黒人が。これがダンスチームのリーダーとなるジャクソンでした。しかし、パーティーの楽しそうな様子に我慢ができず、踊りに参加してしまいます。当然、怪しい空気になりますが、そこは今作のヒロインであるヤン・パンネが助け舟を出します。このパンネは両親を亡くしていて、生活のためにお金を稼がないといけないというキャラクターでしたね。


さて、ジャクソンは所長からダンスチームを結成するように命令を受けていて、簡単なオーディションを開きます。そこからメンバーを絞っていく過程で、妻と離れ離れになったカン・ビョンサムと、太った見た目のわりにダンスが上手いシャオパンと出会います。そして、5人が集まりタップダンスチームが結成されました。




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ここまでの話はあらすじをなぞった程度のものしかなく、ここから本編の話をしていきたいと思うのですが、正直あんまり覚えていないんですよね……。何度もうつらうつらしてしまって。今自分が寝たなと感じた瞬間も何度もありましたし。そんなに複雑な映画じゃないと思うんですけど、対立の構図とかそれぞれのイデオロギーの把握が全然できなくて……。


映画を観ている最中はメンバーがどっちの国の火とかさえもわかっていなかったですからね。で、それを考えるのに頭を使って眠くなるという……。本当に残念な頭ですよね。この程度で眠くなるなんて。もう私は映画を観るのに根本的に向いていないことがありありと分かりました。本当に駄目な人間です。


でも、観ていて楽しくはあったんですよ。それもひとえに音楽とダンスのおかげで。この映画って、タイトル通り、スウィング、楽器の演奏が多いんですよ。パーティーのシーンもそうですけど、個人的に好きなのが、ギス、ビョンサム、シャオパンの三人が覆面をつけて踊るシーン。このシーン途中でレコードの音楽が止まってしまうんですけど、三人が踊り続ける様子を見て、バンドが音楽を奏で始めるっていう。粋なシーンだなと感じます。他にも、明るい音楽が多くて、観るだけじゃなくて、聴いているだけで楽しくなる時間がこの映画にはたくさんありました。


そして、音というと忘れてはならないのが、この映画のモチーフであるタップダンスですよね。乾いた靴音はとても軽快なもので、イデオロギーの対立や分断という重いテーマを扱っているこの映画を、重くなり過ぎずエンターテインメントとして見せていました。タップダンスシーンも多く、観ている途中も足を動かしたくなったほどです。観終わった後に足で軽くリズムを刻むことは間違いなしです。


さらに、それ以外にもこの映画ではダンスのシーンが多い。アメリカ軍人とジャクソンを除く4人の、ダンスバトルはその象徴的なシーンでしょう。ここ最終的には暴力になってしまいましたけど、その前のダンスバトルは意外性もあって観ていて楽しかったです。他にも最初のパーティのシーンはもちろん、練習風景や決意のシーンなどバラエティ豊かなダンスシーンもこの映画の大きな見どころの一つだと思います。最後の盛り上がりは、それまで多くのシーンを見逃してきた私でも、感動しましたしね。この音とダンスが合わさって、れっきとしたエンターテインメント映画にこの映画はなっていました。


あと、お勧めしたいのがギスとジャクソンの友情ですね。ギスからしてみれば、アメリカ軍人のジャクソンは決して受け入れてはならない存在です。でも、ダンスの前では1人対1人の人間同士。そこに国籍も言葉も関係ありません。二人は徐々にお互いを理解していきます。その極めつけは崖の上のシーンですね。ジャクソンがギスにカーネギーホールの写真を見せるんですよ。ここで踊っているところを想像しろみたいに。で、ギスもお前の踊りはまだまだだなみたいに答えるんですよ。言葉は通じていなんですけど、心は通じているシーンですよね。その後にロングショットで二人が踊るシーンを映すのが、また心憎い演出です。



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※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。









クリスマスコンサートの出演が決定した5人。しかし、ここで戦争の英雄であるギスの兄が捕虜収容所にやってきます。さらに、戦争で負傷した元軍人?に焚きつけられ、共産派は熱を取り戻してしまいます。祖国万歳という旗の元、アメリカ軍を襲い、とうとう反応の悪いギスに「所長を襲撃しろ」とまで持ち掛けてしまいます。映画が終わりに向かう一方で、徐々に危険なムードが醸し出されていきます。


でも、5人は<スウィング・キッズ>と自らを称して、クリスマスコンサートの舞台に立つわけですよ。このコンサートのシーンは問答無用で盛り上がるシーンで。尺的にもタップダンスをしっかり見せてきますし、俳優さんたちの練習の成果をヒシヒシと感じます。また、バンドとの掛け合いも楽しく、乾いた靴音が気分を上げてくれます。このあたりでようやく目が覚めた私も、このシーンでは思わず泣きそうになってしまいましたね。


それは、その前のシーンでパンネとジャクソンが話すシーンがあったからです。この二人は自由主義、共産主義というイデオロギーはクソだと話すんですよね。元を辿れば二つの国は同じ民族ですし、新しい捕虜が来るたびに、自らの知り合いではないかと両国の人が殺到するシーンは、同一性を大きく印象付けます。でも、人間の思想と違って、タップダンスはタップダンスでしかないんですよね。自由主義も共産主義も関係なく、ただ踊っている人間がいるだけで。イデオロギーなんて関係ない、クソだと彼らは踊って主張しているようで、その祈りにも似た願いに私は泣きそうになってしまったんですよ。


本当にこのシーンは、それまでのドラマの積み重ねを見過ごしてきた私でも印象に残るシーンで良かったですし、<スウィング・キッズ>のダンスが終わって、ギスが一人で踊るシーンなんて、カーネギーホールをだぶらせて見せる演出に、素直に感動しました。だからこそ、この後の展開がですね……。辛いんですよ……。はい……。


ギスがバックヤードに戻ると、そこにいたのはギスの兄。この兄貴がステージに出てきて、銃を乱射してしまうんですよ。所長を襲撃する目的で。所長は間一髪助かるんですけど、帰り際に下した命令が「黄色いアカどもを全員殺せ」というものでして。5人に銃口が向けられてしまうんですよね。パンネ、ビョンサム、シャオパンの3人はあっけなく撃たれて死んでしまいますし、ギスも製紙はぼかされていましたけど、下半身を撃たれてしまいます。


もう、このシーン本当にきついんですよ。だって、タップダンスに意味がなかったってことになるじゃないですか。いやもともと意味なんてないんですけど、そこに意味を見つけるのが人間の心の働きであり、創作の存在理由でしょう。イデオロギーの対立の前に、創作は何の役にも立たないし、何も変えることはできない。厳しい世界です。


確かに、創作じゃ何も変わらないですよ。いくら世界平和を訴える映画を観たところで、外に出てみれば平和になってるかといえば、全く状況は変わらない。憎悪や怨嗟が渦巻いています。創作じゃ人生はあまり変わらないですし、そんなことは分かり切ったことです。


でも、それを映画で見せる必要があるのかなってことなんですよ。映画の中でぐらいハッピーエンドが見たいと思うのは、子供な私のわがままでしょうか。でも、現実がきついからこそ、創作の中では希望を見せてほしいと、私は勝手に託してしまっているんですよね。現実は何も変わりませんよって、そんなこと映画館を出れば否応なしに思い知らされるんですから、わざわざ映画の中で突き付けてこなくてもねぇ。いや、誠実な態度ではあるんですけど......。


ほら、今ってコロナウィルスが流行しているじゃないですか。東京ももう感染爆発寸前で。創作なんて完全に不要不急のものですし、エンタメやイベント産業は窮地に立たされていますよね。映画もどんどん公開延期になっていて。本当に悲しくて心配です。私はこんなご時世だからこそ希望が見たいって思ってしまっているので、この映画は希望を見せてくれた半面、絶望も突き付けてくれて、何とも言えない後味が残りました。いい映画で観て良かったとは思っているんですけどね......。難しいです。




gcb















以上で感想は終了となります。お読みいただきありがとうございました。


おしまい 


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Jared Grimes
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2019-06-18



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こんにちは。これです。3月も過ぎて、今年も就職活動が始まりましたね。テレビでマイナビなんかがCMを打ち出しているを見るといよいよかと思います。でも、今年はコロナウィルスの影響で合説などが中止になっていて、就活も普段とは違う様子です。一日でも早く収まって、元の生活に戻れたらいいですね。


さて、今回観た映画は、そんな就活をテーマにした映画『新卒ポモドーロ』です。私は50社くらい落ちて、新卒で入った会社も半年で辞めたダメ人間なので、就活のことはあまり振り返りたくないのですが、この映画は採用側の視点から就活を描いたものらしく。どんなことを考えて落としやがったんだろうと、少しの意地悪さを持って観に行ってきました。


では、感想を始めます。拙い文章ですがよろしくお願いします。



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―目次―

・現在の就活を知ることができたのはよかった
・映画としては少し……






―あらすじ―

福岡で急成長しているベンチャー企業、アイセンス。だが、ある日、社長の北村創次の強引なやり方についていけなくなった社員たちが一同に退職。競合となるGIファクトリーを設立する。1年後、GIファクトリーの商品により案件をいくつも奪われ、未だ退職者たちの穴も埋まらぬアイセンスは危機的状況に陥る。
北村は社運を賭け、社内横断のプロジェクトチームを結成し、中途採用から一転、会社初となる新卒採用に乗り出す。そのプロジェクト・リーダーに大抜擢されたのは、大学時代に学んだ社会心理学を活かし、高い営業成績をあげている若手社員の川島美沙だった。
新卒採用の知見も豊富な予算もない中、優秀な学生をどう採用すればよいのか?
会社の立て直しを目指し、新米採用リーダー・川島と社長・北村の挑戦が始まる。

(映画『新卒ポモドーロ』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください








※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。










・現在の就活を知ることができたのはよかった


『新卒ポモドーロ』は「#観る就活」プロジェクトの一環として制作された映画です。去年の『40万分の1』(未見)に続いて、今年も制作されたこの映画。前作は大手広告代理店への就職を目指す学生たちの物語でしたが、今作はITベンチャー企業の採用側から見た就職活動を描いています。そこで描かれたのは新たな就職活動の形でした。


それは自己PR動画WEB面接に現れています。履歴書ではなく、実際に喋っているところを伝える自己PR動画は、私が就職活動をしていた4年前にはまだあまり見当たらなかったもので(もしかしたらベンチャー企業ではもうなされていて、目に入らなかっただけなのかもしれないけど)、時代の移り変わりを感じましたね。


また、スーツ姿ではなく、自宅でラフな格好で撮っている学生もいたりして、セルフプロデュース能力が求められて、大変そうだなと感じました。彼らも自分を売り込むことに必死で、いくら売り手市場とはいえ、学生は今も考えることが多いんだなと同情してしまうほどです。私が今、就活生じゃなくてよかったと思ってしまいました。


さらに、就職活動で学生の負担になるのが交通費です。私も東京の大学に通いながら、就職活動は地元でしていたので、けっこう交通費がかかっていましたが、この映画でもそのことは描かれていて。福岡在住の学生が広島や愛知、川崎などにまで面接を受けに行くって言うんですからね。LCCがあるとはいえ、交通費はバカにならないです。


その解決策として導入されたのが、WEB面接。アプリでつないで現地に行かずとも面接ができるという。便利ですよね。ここ最近で急に普及してきたのかな。これ、私が学生のときにもほしかったなと思います。対面でしか分からないこともありますが、学生の負担を減らすためにはいい案で、現在の就職活動の一端を見ることができました。


この映画が言うには、近年の就職活動って学生ファーストになってきているんですってね。なるべく学生の負担を減らそうという向きになっているらしいです。まあまだまだ売り手市場で、学生の立場も強くなっていますしね。ホームページもターゲットとなる学生に合わせて、広告ブランディング?をして、ガラッと変えていかなければいけないみたいな話もありましたし、この映画ではこうした企業側の苦労も描かれていました。


現場での会社説明会などといった旧態依然の採用活動をしていても、来てくれる就活生は少なく(私4人よりももっと少ない説明会体験したことある)、オンラインでの説明会など様々な工夫を凝らして、良い学生を採用しようとしても、会社が求めるような優秀な学生には、既に内定が出ていて内定辞退されることもある。この映画でも面接辞退もありましたし、にっちもさっちもいかない採用側の苦闘も感じ取ることができました。


さらに、どこの会社も優秀な学生を採用しようと躍起になっていますから、インターンや早期採用などは当たり前。それに、この映画ではそれ以上にえげつない、社内秘の情報を会社の人間がライバル会社に漏らして、ライバル会社が学生をかっさらうみたいなことも行われていましたし、過熱化する企業側の競争も見ることができました。公正さなどあったものではありません。実際がどうなのかは知りませんが、そういう裏側を感じ取ることができたのは、この映画を観て良かったところの一つですし、「#観る就活」プロジェクトの看板に嘘偽りのない作品になっていると思いました。



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・映画としては少し……


ただ、『新卒ポモドーロ』は、映画としては個人的にはあまりハマらなかったんですよね。それはもう最初から出ていて。この映画って福岡が舞台で、登場人物が博多弁で話すんですけど、その博多弁がどうも取って付けた感があるんですよ。


正直、この映画の博多弁ってあまり上手くないというか、わざとらしさがありまして。予算や時間があまりなかったのかもしれないですけど、もう少し自然にできなかったのかなとはどうしても感じてしまいました。俳優さんの演技も不自然な博多弁に引っ張られてしまって、フラットな評価はできないですし、ここはちょっともったいなかったのかなと思います。いっそのこと、標準語でやってくれた方が、個人的には良かったです(そう考えると方言ってけっこうリスク高いですよね。上手くできて当たり前で、少しでも違和感があると批判されるっていう)。


また、ストーリーの方もちょっと平坦な感じはしました。前半はまだしも、中盤からはただ就職活動の流れを追っているだけな感じは否めないんですよね。登場人物が全員良い人すぎるというか、トラブルらしいトラブルも情報漏洩ぐらいしか起こりませんでしたし、それもストーリーに波風立てるにはちょっとパワー不足かなと……。


入ってくる者に対して、去る者も描いているのは良かったのですが、もう少し深刻な事態になってほしいなとは思いながら観ていました。いや、映画の中では大変なんでしょうけど、それがイマイチ伝わってきづらいというか……。もう少しストーリーに山が欲しかったかなというのは正直なところです。


それに、終わり方も唐突で。それまで採用活動の苦労を描いているのは良かったんですけど、ラストシーンでいきなり新入社員が入社していて、ライバル会社から受注を取り返しているんですよ。確かに、ライバル会社に水を開けられているという描写はありましたけど、それを取り返すだけの描写ってこの映画の中ではなくて。あまりに急すぎて、あれ?寝ちゃった?と思ったほどです。こういったこじつけ気味の終わり方じゃなくて、普通に採用できました、さてこれからだみたいな終わり方の方が、この映画では自然だったんじゃないかなと思ってしまいます。



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そして、実を言うと一番ハマっていないのが「#観る就活」プロジェクト自体なんですよね。この映画って、旧態依然の採用活動をしていた人たちは上手くいかなくて、担当を外されて、一人は信頼されていないことがショックでライバル会社に移籍してしまいます。ネット等を活用した新しい就職活動の形みたいなものを描きたかったにしても、ここはちょっとぞんざいに扱い過ぎている気がします。


で、さらに言うと、この映画自体が旧態依然の採用活動から抜け出せていない気がするんですよね。ほら、最近では2022年から新卒一括採用が見直され、通年採用に切り替えるみたいな話が出ているじゃないですか。すでに外資系の企業とかでは、通年採用が広く普及していますし。ベンチャー企業とかって大企業よりもその辺身軽に動けそうなものなんですけど、アイセンスは新卒一括採用をしているわけですよね。つまり、新しいことをしているようで実はそうじゃないんですよ。この中途半端な立ち位置が、もしかしたら私がこの映画にハマらなかった一番の理由だったのかもしれません。


まあこうして映画として見せてもらう機会がないと、就職活動のことは意識しないので、「#観る就活」プロジェクトにも意義はあると思うんですけど、もし来年も映画が制作されるのであれば、この新卒一括採用廃止による変化というテーマに向き合ってほしいとは思います。じゃないと来年見るかどうかは正直……。でも、このテーマでやってくれたら、私は来年公開されて観にいける機会があれば、観に行きたいなとは思います。もし来年も制作されるのなら、もう企画も固まっていそうなものですが、どうなんでしょうか。



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以上で感想は終了となります。お読みいただきありがとうございました。


おしまい 






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