こんばんは。これです。
2021年上半期もコロナ禍は続きましたね。三度の緊急事態宣言が出て、映画館も休刊になるなど、主に都市部に大きなダメージが行ってしまいました。公開延期となった映画も数多く、相変わらず映画業界は苦境に立たされていますが、ワクチン接種も始まったりと少しずつ光も見え始めています。これから公開延期になった映画も続々と公開されるので、応援するためにも多く映画館に通いたいですね。
さて、今回のブログは恒例の振り返り企画。これ的!2021年上半期映画ベスト10です。私の住んでいる地域では、映画館が休館になることはなく、今年の上半期は107本の映画を鑑賞することができました。去年の上半期と比べても3割増しくらいで、多く観てますね。逐一ブログに感想を書かなくなったせいです。
※ちなみに鑑賞映画のリストは以下の月間ランキングをご覧ください。
これ的!2021年1月映画ランキング!
これ的!2021年2月映画ランキング!
これ的!2021年3月映画ランキング!
これ的!2021年4月映画ランキング!
これ的!2021年5月映画ランキング!
これ的!2021年6月映画ランキング!
順位の発表をはじめるにあたって、ここで二つの個人的な選考基準を説明します。
1.2021年1月1日~2021年6月30日までに映画館で鑑賞した映画であること
2.個人的な好きという気持ちを最優先にすること
私は地方に住んでいるので、ミニシアター系の映画は公開されるまでにタイムラグがある場合が多い印ですよね。また、近年では映画の配信がますます盛んになっていますが、そもそも私はそこまで家で映画を観ないのと、家出のテレビやスマートフォンでの鑑賞は、映画館と同じ体験足りえないと考えていますので、今回も選考からは外させていただきました。
それと、個人の感情を第一にした方が、ベスト10の顔ぶれにもバラエティが出て面白いですしね。今回も世間的な評価を無視して、主観まるだしで10作品を選出させていただきました。
果たして、どんな映画がランクインしたのか。1位に輝いたのはどの映画なのか。
それでは、何卒よろしくお願いします。
第10位:劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト
Filmarksの初日満足度が1位で、ファンしか観ていないとはいえ、その評価の高さが気になって、その次の日にたまたま時間が合ったので、完全初見にも関わらず観に行きました。フライヤーに「初見でも分かります」と書いてあったので、「本当だな?その言葉信じるぞ」と思いながら観たのですが、全くもって一ミリも分かりませんでしたね。とにかくバキバキに決まった映像にぶっ飛ばされました。こんなもの初見で分かるわけがありません。でも、観終わった後の興奮が凄かったですね。とんでもないもの観たなと。
この映画の舞台は、私立聖翔音楽学園という演劇を学ぶ学校。今思い出してもわけが分からないオープニングの後には、メインキャラクターが進路相談という名目で、次々に自己紹介をしてくれます。まあ初見で9人を把握するのは難しいですけど、一見さんへの配慮ですね。それからは主人公の愛城華恋とその幼馴染の神楽ひかりの回想を挟みながら、それぞれの進路を考えていく話なのかなと思わせといての、電車のシーンですよ。
いきなり電車がステージに変形したと思うと、画面には「ワイルドスクリーンバロック」という謎の文字列が。がっちりとした歌も流れて、大場ななというキャラクターが、仲間たちに攻撃を仕掛けるという、一目見て飲み込めるはずがない映像が展開されます。この映画では生徒同士の諍いや感情を、レヴューという演劇に乗せて語ります。
デコトラ、清水の舞台、オリンピック、ハラキリ、東京タワーなど何でもありのやりたい放題です。システム自体は、観ていると何となく飲み込めてくるものの、なぜ武器を持って戦っているのかは、全く分かりません。だけれど、アクションも冴えてるし、何より面白いからヨシ!と、ねじ伏せられてしまいました。口上もかっこいいですし、何度でも観たくなる魅力がありましたね。
だけれど、ぶっ飛んでいるようで、骨格的には卒業後どうするかという進路の話なので、意外と地に足はついています。最後は清々しい気分になります。初見でも分かるとはとても言えませんが、映画館で見るべき映画だと思うので、興味があればぜひ観てほしいですね。
第9位:まともじゃないのは君も一緒
公開規模は大きくないものの、朝ドラにも主演中で、飛ぶ鳥を落とす勢いの清原果耶さんが出演しているということで期待していたこの映画。観ている間、いい意味でずっとニヤニヤが止まりませんでした。
数学好きで普通の恋愛が分からない予備校教師と、知ったかぶる癖に恋愛経験に乏しい教え子が織りなす会話劇がメインのこの映画。成田凌さんの不器用な演技が愛らしく、清原果耶さんのあーだこーだ作戦を考える姿が微笑ましい。序盤のシーンに代表されるように、会話自体のテンポも良く、上質なコントのような笑いを提供してくれます。軽やかな劇伴も最大限マッチしていましたし、ストレスフリーで何時間でも観ていたくなりました。
それでも短くまとめて、この二人の先をもう少し観てみたいと思わせるところで終わっていて、気持ち良く映画館を後にすることができました。日本語ならではのリズムを大切に練られた脚本は、邦画の一つの方向性を示したと私は思います。こういう邦画ばっかり観ていたいですね。本音を言うと。
また、少しずれた二人の視点から、社会にはびこる「普通」という呪縛を皮肉っているのもポイント高いです。結婚ができなくても、普通じゃなくても、世界は素晴らしいんですよね。私もまともな人間ではないので励まされました。ちょっと埋もれているのがもったいない傑作だと思います。
第8位:女たち
タイトル通り、2020年の現代に翻弄される女性たちを描いたこの映画。主演の篠原ゆき子さんをはじめ、倉科カナさんや高畑淳子さんなどの女優さんが新境地を開拓しています。なかでも倉科カナさんが良かったですね。特に終盤の長回しのシーンはイメージとは全く違う表情を見せていて、びっくりしました。もっと出演作チェックしておくべきだったなと思いました。
また、この映画の一番の特徴は、映画の中にコロナ禍を取り入れていることです。この映画では冒頭にニュースでコロナ禍であることがはっきりと示され、登場人物たちはマスクをし、手が触れるところを消毒し、二枚のアベノマスクが配られます。私は常々、映画はもっとコロナ禍を取り入れてもいいなと思っているのですが、それはあとで見返したときに「あの時はこうだったな」という記録的価値が出るためなんですね。しかし、映画は制作期間が長いため、なかなか難しい部分もあります。ただ、この映画は企画から公開までに一年ほどしかかかっていない。このスピード感は称賛されるべきだと思います。
そして、今もなおコロナ禍の真っ最中のこの時期に公開したことで、この映画は時代との計り知れない同時性を獲得しています。登場人物が私たちと同じようにコロナ禍に置かれることで、現実と少しも変わりないように思えるのです。苦しみや憤りがダイレクトに伝わってくるのです。
いつになるかは分かりませんが、この映画が配信等される時には、社会はどうなっているか分かりません。ワクチンが行きわたってコロナ禍が終息しているかもしれないし、変異株がさらに猛威を振るっている可能性もあります。だからこそ、『女たち』はまだコロナ禍真っ最中の今、映画館で観ることに大きな意味があると思います。内容的にも素晴らしいですし、ぜひ観ることをおすすめします。今一番、観るべき映画ですよ。
第7位:ダニエル
トラウマから生み出した空想上の友達に、主人公が苦しめられていく。いわゆるイマジナリーフレンドの映画なのですが、今まで観た映画の中でもトップクラスに怖い映画でした。
映画冒頭、ダニエルは主人公をそそのかして、主人公の母親を殺そうとします。ですが、そのたくらみは失敗に終わり、ダニエルはおもちゃの家に封印されてしまいます。雷雨の中でドンドンとドアを叩くダニエル。このドアを叩く音が主人公が成長してからも、うっすらと聞こえてくるほど強烈なものでして。本格的に登場する前から、私の心臓はキュッと縮まっていました。
そして、ダニエルの封印が解かれてからは、いよいよ本番。最初は内気な主人公にアドバイスをすることで、女性と仲良くさせたりと良いこともしているのですが、ダニエルを演じたパトリック・シュワルツェネッガーの妖気のある雰囲気が、全く安心させません。何かやばいことをしでかしそうな予感に、心臓は早鐘を打ちます。
また、映画の中盤で少しだれてきそうなところで、主人公の人格を乗っ取ることができるという新要素を出して、興味を引き付ける脚本も見事。『寄生獣』かと思うほどのグロテスクなCGは見ごたえがあり、物語に緊張感を与えます。終盤では思わぬ伏線回収もあったりと、最後まで興味を引き付けてくれる仕掛けも十分。人を選びそうな狂った映画ですが、私はハマりました。思わぬ掘り出し物でしたね。
第6位:ディエゴ・マラドーナ 二つの顔
一位は言わずと知れた名サッカー選手、ディエゴ・マラドーナのドキュメンタリーです。私がサッカー好きで、隔週で地元のスタジアムに行っていることを抜きにしても、この映画は本当に凄まじく、観ながら何度も心の中で「もうやめてくれ」と叫び、観終わった後にはロビーで思わず頭を抱えてしまいました。去年の『Documentary of 欅坂46~僕たちの嘘と真実~』に匹敵する地獄ドキュメンタリーでした。
この手の映画になると、マラドーナについて知っておかなければならないのかと構える方もいるかもしれませんが、それは大丈夫。公式サイトに年表がありますし、極端な話「なんか凄い選手」ぐらいの認識で問題ないです。
この映画はマラドーナの中でも主にナポリ時代の7年間を追ったもの。バルセロナで思うような実績を残せなかったマラドーナはナポリに移籍します。最初は上手くいきませんが、見事ナポリをセリエA優勝に導き、ファンからは神として崇められる。その崇拝はあまりにも強烈なもので、熱狂的を通り越して、狂気的でした。この映画の前半はそんなマラドーナの活躍がたっぷり見られるので、特に海外サッカーが好きな人は観て損はしないと思います。かの有名な神の手ゴールと5人抜きもちゃんとやってくれますし。
ですが、活躍の裏ではマフィアとのかかわりやコカインの服用など徐々に怪しい影が。この映画のタイトルにもなっている二つの顔とは青年ディエゴとサッカー選手マラドーナのことを指していて、マラドーナがディエゴを侵食していく様が観ていて辛い。そして、それは1990年イタリアワールドカップで決定的になります。
マラドーナが所属するアルゼンチン代表は準々決勝でイタリアと対戦。そして、その舞台はホームとして慣れ親しんだナポリのスタジアム。結果はマラドーナがPK戦でPKを決めたこともあり、アルゼンチンの勝利。こっからの手のひら返しがもう5ちゃんねるなんて目じゃない苛烈なもので。イタリアで一番嫌われた人物となったマラドーナはどんどん精神を追い詰められていきます。ですが、ナポリはボロボロになったマラドーナとの契約を延長し……。
最近、『花束みたいな恋をした』や『あの頃。』、小説では『推し、燃ゆ』など好きな者との距離感を問いかける作品が増えていますが、この映画はその最北にあるような映画です。ぜひとも多くの方に観ていただいて、できればサッカーファン以外からの感想を聞きたいなと感じました。
第5位:14歳の栞
とある中学校の2年6組35人に密着した、ドキュメンタリーを謳うこの映画。クラスの中心にいる者、はしっこにいる者。部活に燃える者から、目標を見いだせない者。車いすの子や教室に入れない子まで35人全員に等しくカメラが向けられており、表面上は学校生活をありのまま見せてきようとします。
私自身、暗い学生時代を過ごしたので、もっと憎悪渦巻く地獄みたいな環境を想像していましたが、映画の中では、意外と学生たちが明るく振る舞っていて、まずそこに驚きました。だって、誰も「死にたいです」とか言わないんですよ。「自分が嫌い」レベルに留まっている。言ってもカットされたのかもしれないですけど、話したこともない(ほとんどの)人たちが、何を考えて生活を送っているのか、知ることができたのは良かったですね。
また、この映画の特徴は音楽がガンガン鳴っているということ。さらに「子供は子供で悩んでいるけど、それでも前に進もうとしているんだよ」と、観客を誘導する編集もひどい。凄く恣意的で、作った大人の視線を感じて、胸糞悪くなりましたが、その胸糞悪さがかえって私は好きでした。
本当にリアルを知りたいなら、無断で定点カメラを仕掛けて、撮影と同時にライブ配信すればいい話なんですよ。でも、ドキュメンタリー映画として出すには、編集が必ず必要になる。そこには作り手の意図が必ず入り込む。この映画はマイクが写っているポスターからして、その介入に自覚的で、有名な「ドキュメンタリーは嘘をつく」という言葉通りの映画だと感じました。リアリティーショーを好んで見る人の気持ちが少し分かった気がしますね。
主題歌であるクリープハイプの「栞」も映画に合ってましたし、冒頭の謎の馬の件を差し引いても、観終わった瞬間に、上半期ベスト10に入るなと確信した映画でした。
第4位:花束みたいな恋をした
『カルテット』や『大豆田とわ子と三人の元夫たち』など、テレビドラマで活躍する名脚本家・坂本裕二さんの初映画脚本。監督も去年『罪の声』で着実な評価を得た土井裕泰さんですし、主演も菅田将暉さんと有村架純さんという名実ともに日本トップクラスのお二人。ここまでの布陣を組まれたら、私にとってはもう観る以外の選択肢はありません。さっそく初日に観ましたしね。
まず特筆すべきは、主人公の二人がオタクであるということでしょう。天竺鼠のチケットを持ち、押井守さんを目撃して大興奮し、きのこ帝国の「クロノスタシス」で盛り上がれる。顔面偏差値以上のサブカル偏差値の高さに、観ていて心が躍ります。サブカルワードが優に百個以上盛り込まれていて、ツボは人によって多種多様。観た後の会話が盛り上がりそうだなと感じました。特にTOHOシネマズやピカデリーじゃなくて、テアトル新宿でこの映画を観ることを選ぶ人たちには直撃でしょう。荻原みのりさんやオダギリジョーさんなど邦画好きにはピンとくる俳優さんも多く出演していますしね。
ストーリーは難病や親の反対エトセトラなど特別な障害があるわけではなく、ただ二人の生活を描いているだけなのですが、練り込まれたキャラクター描写のおかげで破壊力が高い。順調な時もキーッとならず、反対に別れに至る流れは恋愛をしたことがないのに共感を覚えてしまいます。仕事で忙しくなってサブカルに触れることができなくて、徐々に距離が離れていく描写には観ていて心を痛めました。
そして、真骨頂は終盤のファミレスのシーンですよね。お互い別れようとは思っているんだけれども、なかなか離れられない。だけれど、ある光景を目の当たりにしてしまって、自分たちの関係が終わってしまったことに気づく。なんでもないようなファミレスの内装と合わさって、グサグサ胸を刺してきます。
だけれど、二人の別れはあくまでも爽やかなもので、ラストも清々しかったですし、邦画の恋愛映画の新たな地平を切り開いた感がありました。もう何回でも観たいです。観て感情を揺さぶられたいです。一月に観た映画ですが、今年の年間ランキングにも食い込むのではないかなと思います。今村夏子さんの『ピクニック』を読まなければ。
第3位:すくってごらん
目立ちこそしませんでしたが、実は公開前からひそかに期待していた映画でした。『魔女見習いをさがして』で百田夏菜子さんには良いイメージを持っていましたし。ただ、シネコンでやる勝算が見えないなと心配しながら、観に行ったのですが、そのぶっとんだ内容に完全ノックアウトされてしまいました。今年一番狂った映画だと思います。
金魚すくいを題材にしていて、左遷されてきた銀行員が地方に馴染んでいくという良くあるストーリーなのかと思いきや、その味付けの仕方が独特で。なんとミュージカル仕立てなのです。どの曲も抜群に良く、メインの俳優さんも歌が上手く、百田さんのピアノも様になっていて、飽きる隙を与えません。最初は心の声を字幕にすんなや、歌詞出すなやMVちゃうねんぞと乗り切れていなかったのですが、だんだんと基準が壊れていく様は、観ていて気持ちが良かったですね。まあ90分ほどの映画なのにもかかわらず、休憩があるのは謎ですが。
演出はかなり奇抜ですが、小赤を脱落組に見立てたり、ポイの破れと人生における失敗を上手く被せていたり、メッセージ性もちゃんとあり、考えられているのもポイントが高い。起と承はしっかり(?)してるんです。転でマサルさんになって、結でボーボボになるだけで。それでも、タイトルの出し方は格好良かったですし、今年あと何本映画を観ても、この映画のことは忘れないだろうというインパクトがありました。記録よりも記憶に残る映画です。
この映画を上位に置くことでシネフィルな人たちから、総スカンをくらっても本望だと思いました。まだ公開中ですので、イカれた世界をぜひどうぞ。
第2位:きまじめ楽隊のぼんやり戦争
今年単位で見ても、確実にベスト争いをするのではないかという超絶大傑作です。
舞台は9時から5時まで規則正しく戦争をしている町。ロボットみたいにガチガチに動くキャラクターに、お役所仕事で融通が利かない軍隊。どんな脅威かも忘れて戦争をしている。盗みをしたのに、市長の息子だからと警察になれる。打たれて片腕を失っても、感情に大きな変化はなし。女性は子供を産む道具としか見られていない。平坦な話し方は癖になり、そのブラックユーモアに思わず笑いが込み上げてしまいますが、冷静に考えたら笑えるところなんて、こぼれ落ちる白米ぐらいしかない。今の二本や世界を痛烈に皮肉っていて、その刃の切れ味が最高でした。
主人公は前線に出て、銃を打っていましたが、ある日楽隊への移動を命じられてしまいます。この楽隊に辿り着く過程も面白かったのですが、楽隊に辿り着いてからはきたろうさんのキャラクターもあり、面白さのギアが一段階上がっていきます。しかし、楽隊の仕事は軍隊を勇気づけること。かつて、日本でも戦時中に映画は国威発揚の道具として用いられていましたが、歴史は繰り返すのだと思わずにはいられません。
また、主人公は向こう岸の住人と音楽で心を通い合わせますが、最終的にはそれも何の役に立たず。今の文化芸術が真っ先に制限されているコロナ禍の状況さえも、意図的にではないにしても反映していて、その先見性に身震いがしました。文化芸術で世の中は変えられないというショッキングなラストは、観終わった後思わず放心状態になってしまうほどインパクトのあるもの。最悪に最悪を塗り重ねたあの終幕は、しばらくは忘れようとしても忘れることができないでしょう。
ユーモアを隠れ蓑にして、戦争の愚かさ、醜さ、滑稽さを描き切ったこの映画は、一人でも多くの方に観てもらいたいです。
第1位:彼女は夢で踊る
公開自体は去年ですが、観たのは今年なので、今年のランキングに入れました。わけ分かんないくらい泣きました。嗚咽を漏らさないようにするのに必死で、今まで映画館で観た映画の中でも、間違いなく一番泣きました。
舞台は広島第一劇場。そこでは、何十年もの間ストリップが公演されていました。しかし、今はスマホで簡単にアダルト動画を見ることができる時代です。当然ストリップに人は来なくなり、広島第一劇場は閉館することになります。もう時代に取り残されて消えゆくものという設定だけで、私の大好物なのですが、支配人であるこの映画の主人公は、口では何事もないように言っていても、本心では閉館を受け入れられていません。閉館に抗おうとあがく姿が、どうしようもなく涙を誘います。
主人公がそこまでストリップ劇場に固執していたのは、かつて広島第一劇場で見たストリッパーに恋をしてしまったからなんですね。しかし、劇場のスタッフとして働き始めた主人公はそのストリッパーと付き合うことができません。それでも、惹かれていく主人公。しかし、そのストリッパーは公園が終わると、広島を離れていってしまいます。いつか好きだったストリッパーが戻ってくるために、劇場を守り続けようと決めた主人公。この映画では現代と回想がシームレスにつながるという特殊な構造をしていて、その構造が主人公の健気さを強調していて、私はボロボロ泣きました。
また、かかる音楽もよかった。特にレディオヘッドの「Creep」が何度もかかっていて、曲のパワーだけでも泣きそうになりますし、私は二回目あたりで、既にヤバかったのですが、最後に歌詞の訳が空かされたらもう大号泣ですよね。彼女は特別だけれど、僕は気持ち悪い奴なんだ。彼女がどんどん離れていく。映画の内容と見事にマッチしていて、加藤雅也さんの謎の踊りも気にならないくらい泣きました。
それに、ストリップ自体もよくて。劇中の言葉を借りれば「人間の美しさ」を見せつけられたんですよ。現役トップストリッパーである矢沢ようこさんが出演していて、踊りにも説得力がありますし、心の底から美しいなと思って涙が止まりませんでした。私は人間が嫌いで、醜悪な存在だと思っているのですが、ここまで人間を美しく感じたのは、生まれて初めてのことでした。
それに、一番の勝因は観たシチュエーションですね。私はこの映画をミニシアターで観たのですが、これが大正解。映画と一緒に、映画館の持つ歴史を感じて、ミニシアターが好きでよかったなと思ったことも、涙を流させた一つの要因です。私も四半世紀は生きているので、好きだった場所がなくなった経験も何回かしています。この映画が出した結論は、そんな今はない場所への最大級の賛辞で、もうたまりませんでした。最高の映画です。
2021年上半期映画ベスト10結果一覧
第10位:劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト
第9位:まともじゃないのは君も一緒
第8位:女たち
第7位:ダニエル
第6位:ディエゴ・マラドーナ 二つの顔
第5位:14歳の栞
第4位:花束みたいな恋をした
第3位:すくってごらん
第2位:きまじめ楽隊のぼんやり戦争
第1位:彼女は夢で踊る
以上でランキングの発表は終了となります。いかがでしょうか。個人的には上半期も良い映画にたくさん出会うことができて、満足していますね。特に1位と2位の2本は突出して素晴らしかったです。3~10位はほとんど横一線なので、日によって順位は変わるかもしれませんが、今の気分ではこれで。
まとめると、今年の上半期は個人的にはイカれた映画が強かった印象です。10位の『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』と7位の『ダニエル』、さらに3位の『すくってごらん』とぶっとんだ映画が3本もランクインしていますからね。今までにはなかった傾向です。
私もたまに創作みたいなことをしたりしますが、どうあがいても普通のことしか出てこないんですよね。だから、自分にはないぶっとんだものを求めているのかなと思いました。下半期も負けず劣らず、ぶっとんだ映画が出てくることを期待したいですね。まあ、着実な映画もそれはそれで好きなんですけど。
あと、邦画ばっかりなのはいつもの傾向です。私、洋画より邦画の方が断然好きなタイプですので。去年の年間ベスト10も9本が邦画で、残りの1本が韓国映画でしたし。洋画も観たいなとは思っているんですが、ビビッとくるものが少なく……。でも、下半期は邦画と洋画を、せめて6:4くらいのバランスで観ていきたいですね。できる限りがんばります。
では、そろそろこの記事を終わりにしたいと思います。また半年後、2021年下半期映画ベスト10および、2021年映画ベスト10でお会いしましょう。それまでお元気で。
お読みいただきありがとうございました。
おしまい
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