Subhuman

ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203

2021年12月



こんにちは。これです。


コロナ禍は今年も収まりませんでしたね。ワクチン接種が進み、やっと落ち着いてきたかと思ったら、オミクロン株が出てきて、欧米ではこのタイミングで感染者数の過去最多を更新したりして。年末年始は人の移動も多いですし、年明けが今から心配です。このコロナ禍はいったいいつ終わるんでしょうか。来年には終わって、マスクなしで外出できるようになるといいですね。


さて、映画界も今年は引き続きコロナの影響を受けまくりました。いくつかの映画は延期になり、また大作洋画などは数度の延期を経てようやく公開したり。さらには、ここ数年のトレンドである配信サービスの躍進も今年はより印象的で、多くのNetflix映画が映画館で上映されました。まだまだステイホームが推奨されるなかで、映画館にも少数の大作映画を除いて、なかなか客足が戻ってこず寂しい限りです。


ただ、そんな中でも私は下半期も相変わらず、映画館に足を運び続けました。今年観た映画は201本。キリがいい200本から少しはみ出してしまいました。去年は137本だったので、およそ1.5倍ですね。ブログをなかなか書かなくなった分、映画鑑賞に避ける時間が増えたのはなんとも皮肉なことです。


では、発表をはじめるにあたって、ここでいつもの選考基準の説明をしたいと思います。


1.2021年1月1日~2021年12月31日までに映画館で鑑賞した映画であること
2.個人的な好きという気持ちを最優先にすること



今の時代いつまで映画館にこだわってんだと言われるかもしれませんが、個人的にはパソコンやスマートフォンの画面で見る映画って気分が乗らないんですよね。他の物にも目が移ってあまり集中できないですし。その点映画館は映画にだけ集中できる環境が整っていますし、音響も自宅よりずっといい。没入感が段違いなわけですよ。だから、映画館での鑑賞とそれ以外での鑑賞を同じ土俵に乗せて考えるのは、私にはまだできません。なので、今回も「映画館で」という条件をつけさせていただきます。


それと、二つ目については個人的な感情を最優先にした方が、バラエティに富んでいて面白いなというただそれだけの理由です。興行ランキングと個人的なベスト10っていうのは違いますからね。今回もあまり興行ランキングには顔を出さなかった作品を中心に、個人的嗜好丸出しで選考させていただきました。


それでは、ランキングの発表を始めます!果たして1位に輝いたのはどの映画なのでしょうか!?


※ちなみに去年および今年の上半期と下半期のベスト10は以下の記事をご参照ください。











第10位:明け方の若者たち


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第10位にランクインしたのは、まさに今日、大みそかに公開された邦画です。はじめに言っておきますと、この映画を選んだのは大みそか公開だから年間ベスト10に選ばれるのが難しくて不利だな、という同情心からではありません。純粋に大好きな映画だからです。後述しますが、今年を締めくくるにふさわしい良作でした。


この映画は「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」という16文字から始まった<僕>と<彼女>との沼のような5年間を描いています。この映画で<僕>を演じたのは、今年も『東京リベンジャーズ』や『砕け散るところを見せてあげる』など数々の映画で活躍した北村匠海さん。大学時代は夢を語り、就職してからは理想と現実のギャップに打ちのめされる<僕>を、持ち前の乾いた雰囲気で演じています。特に失恋してからの佇まいが良かったですね。ベッドの上で独白をするシーンでは涙腺が刺激されました。


でも、それ以上にこの映画で印象的だったのは<彼女>を演じた黒島結菜さんです。<僕>の誘い方から、公園での飲み方。明るく振る舞っていながら、秘密を抱える<彼女>は、もはやいわゆる男性の理想の具現化ではないかと思うくらい、あざと可愛すぎました。特に前半は黒島さんのキュートさに網膜が焼かれまくり、全ての感情が死滅して「黒島さん可愛い」としか考えられなくなりました。滑り込みですが、今年の日本アカデミー賞などの主演女優賞争いもなかなか良いところまでいくのではないかと思います。というかいかなきゃおかしい。


またストーリーも良くて。言ってしまえば、二人の関係はインモラルなものだったんですけど、そこに遅れてきた青春の全てがあったんですよね。公園で飲んで、一緒にバッティングセンターに行って、あてもない旅行をして。それが実は薄氷の上に成り立っていたことが、映画の中盤で明かされるのですが、<僕>にとっては外からは刺激的に見える日々も、ひどく退屈なものに映っていて。青春って後から振り返ればかけがえのないものですけど、渦中にいる間は案外つまらないものでもあるんですよね。でも、それは夜を経て朝が来るように、人生には必要な時間で。そのことを体現するラストはベタではあるんですけど、エンディングの入り方も含めて、グッときました。


さらに、この映画は音楽も素晴らしい。劇伴はもちろん、挿入歌の選曲が抜群で。キリンジとかきのこ帝国とか、頭の中を覗かれたのかな?というぐらい私にハマりまくりました。それもただ曖昧に使うのではなく、ちゃんと映画に沿った選曲にしている。とくにマカロニえんぴつの挿入歌が流れるシーンは、明け方の街を駆け出す同僚も含めた三人の姿に思わず泣きそうになってしまいました。サントラが出たらぜひほしいですね。


それにこの映画は大みそか公開なんですけど、図らずとも今年の邦画を振り返るのにベストなタイミングでの公開だったんですよ。明大前で出会うのは『花束みたいな恋をした』っぽいですし、下北沢が出てくるのは『街の上で』っぽい。RADWIMPSやヴィレッジヴァンガードなどサブカルの出し方は『ボクたちはみんな大人になれなかった』と通じる部分がある。でも、これら今年を代表する邦画のどれにも負けない出来栄えで、松本花奈監督、よくぞ撮ってくれたと思います。惜しむらくはもう一日早く公開されていれば、もっと多くの人に今年中にこの映画を観てもらえたのに。それだけが少し心残りですが、終わり良ければすべて良しです。まさに今、全国の映画館で公開中ですので、年明けにもぜひご覧ください。










第9位:劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト


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上半期の10位が年間ベスト10に生き残りました。今年一番観た(3回)映画です。


Filmarksの初日満足度が1位で、ファンしか観ていないとはいえ、その評価の高さが気になって、その次の日にたまたま時間が合ったので、完全初見にも関わらず観に行きました。フライヤーに「初見でも分かります」と書いてあったので、「本当だな?その言葉信じるぞ」と思いながら観たのですが、全くもって一ミリも分かりませんでしたね。とにかくバキバキに決まった映像にぶっ飛ばされました。こんなもの初見で分かるわけがありません。でも、観終わった後の興奮が凄かったですね。とんでもないもの観たなと。


この映画の舞台は、私立聖翔音楽学園という演劇を学ぶ学校。今思い出してもわけが分からないオープニングの後には、メインキャラクターが進路相談という名目で、次々に自己紹介をしてくれます。まあ初見で9人を把握するのは難しいですけど、一見さんへの配慮ですね。それからは主人公の愛城華恋とその幼馴染の神楽ひかりの回想を挟みながら、それぞれの進路を考えていく話なのかなと思わせといての、電車のシーンですよ。


いきなり電車がステージに変形したと思うと、画面には「ワイルドスクリーンバロック」という謎の文字列が。がっちりとした歌も流れて、大場ななというキャラクターが、仲間たちに攻撃を仕掛けるという、一目見て飲み込めるはずがない映像が展開されます。この映画では生徒同士の諍いや感情を、レヴューという演劇に乗せて語ります。


デコトラ、清水の舞台、オリンピック、ハラキリ、東京タワーなど何でもありのやりたい放題です。システム自体は、観ていると何となく飲み込めてくるものの、なぜ武器を持って戦っているのかは、全く分かりません。だけれど、アクションも冴えてるし、何より面白いからヨシ!と、ねじ伏せられてしまいました。口上もかっこいいですし、何度でも観たくなる魅力がありましたね。


だけれど、ぶっ飛んでいるようで、骨格的には卒業後どうするかという進路の話なので、意外と地に足はついています。最後は清々しい気分になります。初見でも分かるとはとても言えませんが、映画館で見るべき映画だと思うので、興味があればぜひ観てほしいです。まだ東京の方の映画館ではやっているようですし。それと、ソフトが絶賛発売中で、Amazon Prime Videoなどでも配信中ですので、年末年始もしお時間があるようでしたらぜひどうぞ。










第8位:女たち


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こちらも上半期の8位だったのですが、年間ベスト10に選出させていただきました。公開規模はあまり大きくなかったのですが、素晴らしい映画だったと思います。


タイトル通り、2020年の現代に翻弄される女性たちを描いたこの映画。主演の篠原ゆき子さんをはじめ、倉科カナさんや高畑淳子さんなどの女優さんが新境地を開拓しています。なかでも倉科カナさんが良かったですね。特に終盤の長回しのシーンはイメージとは全く違う表情を見せていて、びっくりしました。もっと出演作チェックしておくべきだったなと思いました。


また、この映画の一番の特徴は、映画の中にコロナ禍を取り入れていることです。この映画では冒頭にニュースでコロナ禍であることがはっきりと示され、登場人物たちはマスクをし、手が触れるところを消毒し、二枚のアベノマスクが配られます。私は常々、映画はもっとコロナ禍を取り入れてもいいなと思っているのですが、それはあとで見返したときに「あの時はこうだったな」という記録的価値が出るためなんですね。しかし、映画は制作期間が長いため、なかなか難しい部分もあります。ただ、この映画は企画から公開までに一年ほどしかかかっていない。このスピード感は称賛されるべきだと思います。


そして、今もなおコロナ禍の真っ最中のこの時期に公開したことで、この映画は時代との計り知れない同時性を獲得しています。登場人物が私たちと同じようにコロナ禍に置かれることで、現実と少しも変わりないように思えるのです。苦しみや憤りがダイレクトに伝わってくるのです。


いつになるかは分かりませんが、この映画が配信等される時には、社会はどうなっているか分かりません。ワクチンが行きわたってコロナ禍が終息しているかもしれないし、変異株がさらに猛威を振るっている可能性もあります。だからこそ、『女たち』はまだコロナ禍真っ最中の今、映画館で観ることに大きな意味があると思いました。


映画館での上映は終わりましたが、現在ソフトが発売&レンタル中。内容的にも素晴らしいですし、興味があればぜひどうぞ。

















第7位:映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園


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ここ数年安定して良作を生み出しているしんちゃん映画が今年も7位にランクインです。


今年のしんちゃん映画は学園を舞台にした本格風ミステリー。エリート学校・天下統一カスカベ学園、通称天カス学園に体験入学したしんのすけたち5人。その学校はAIによって管理された近未来的な学園でした。良い行いをするとエリートポイントがたまっていき、そのポイントに応じてクラス分け等がされています。ミステリーで興味を引き付けておいて、管理社会やエリート層・非エリート層で二分された世界を痛烈に皮肉る様は、まさに爽快の一言。そこを打破していくのが、しんのすけと風間くんの友情であるのもまたアツい展開です。


天カス学園では、おしりを吸う吸ケツ鬼の噂がまことしやかに囁かれていました。その吸ケツ鬼の被害に遭っておバカになってしまった風間くん。しんのすけたちは吸ケツ鬼の正体を探していくというのがこの映画のストーリーなのですが、素晴らしいのが複数のゲストキャラが全員キャラが立っているということなんですよね。ポスターにも数人生徒キャラがいますけれど、観ればその全員に愛着が湧くようになっている。しかして、一人残らず怪しいという。この映画は本格「風」を謳っていますけれど、お話に出てきた手掛かりでちゃんと犯人を推理できるようになっているんですよね。伏線の張り方も巧みで、「風」を外してもいいんじゃないかと思うくらい。そして、犯人を突き止めた後はストーリーは予期せぬ展開へ。当初の中目標を達成したら、違う大目標が出てくるというストーリーのツボを押さえていて、これを104分で収めているというのは、正直訳が分からないです。今年のベスト脚本賞と言ってもいいんじゃないでしょうか。うえのきみこさんマジ凄い。


さらに、私がこの映画で一番好きなのが、「別れ」の予感を漂わせているということ。言うまでもなくしんちゃん世界はサザエさん時空ですから、しんのすけたちは永遠に年を取ることはありません。しかし、お受験家庭の風間くんと他の4人では、別の小学校に通うであろうことはなんとなく察しがつきます。そう察しがついてしまうからこそ、風間くんの「いつかはバラバラになってしまうんだ」(意訳)という言葉が胸に響く。私もそれなりの年齢ですから、いくつかの別れは経験しているので、ものすごく共感してしまいました。これは大人だからこそ響きますよ…!


というわけで、今年のしんちゃん映画も傑作でした。来年の『もののけニンジャ珍風伝』も超楽しみです。










第6位:すくってごらん


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第6位にランクインしたのは、今年一番ぶっとんでいたこの映画です。


目立ちこそしませんでしたが、実は公開前からひそかに期待していた映画でした。『魔女見習いをさがして』で百田夏菜子さんには良いイメージを持っていましたし。ただ、シネコンでやる勝算が見えないなと心配しながら、観に行ったのですが、そのぶっとんだ内容に完全ノックアウトされてしまいました。今年一番狂っていた映画だと思います。


金魚すくいを題材にしていて、左遷されてきた銀行員が地方に馴染んでいくという良くあるストーリーなのかと思いきや、その味付けの仕方が独特で。なんとミュージカル仕立てなのです。どの曲も抜群に良く、メインの俳優さんも歌が上手く、百田さんのピアノも様になっていて、飽きる隙を与えません。最初は心の声を字幕にすんなや、歌詞出すなやMVちゃうねんぞと乗り切れていなかったのですが、だんだんと基準が壊れていく様は、観ていて気持ちが良かったですね。まあ90分ほどの映画なのにもかかわらず、休憩があるのは謎ですが。


演出はかなり奇抜ですが、小赤を脱落組に見立てたり、ポイの破れと人生における失敗を上手く被せていたり、メッセージ性もちゃんとあり、考えられているのもポイントが高い。起と承はしっかり(?)してるんです。転でマサルさんになって、結でボーボボになるだけで。それでも、タイトルの出し方は格好良かったですし、今年あと何本映画を観ても、この映画のことは忘れないだろうというインパクトがありました。記録よりも記憶に残る映画です。


この映画を上位に置くことでシネフィルな人たちから、総スカンをくらっても本望だと思いました。こちらも現在ソフトが発売&レンタル中。唯一無二のイカれた世界をぜひどうぞ。










第5位:きまじめ楽隊のぼんやり戦争


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今年単位で見ても、確実にベスト争いをするのではないかと観終わった直後に思った大傑作が5位にランクインです。


舞台は9時から5時まで規則正しく戦争をしている町。ロボットみたいにガチガチに動くキャラクターに、お役所仕事で融通が利かない軍隊。どんな脅威かも忘れて戦争をしている。盗みをしたのに、市長の息子だからと警察になれる。打たれて片腕を失っても、感情に大きな変化はなし。女性は子供を産む道具としか見られていない。平坦な話し方は癖になり、そのブラックユーモアに思わず笑いが込み上げてしまいますが、冷静に考えたら笑えるところなんて、こぼれ落ちる白米ぐらいしかない。今の二本や世界を痛烈に皮肉っていて、その刃の切れ味が最高でした。


主人公は前線に出て、銃を打っていましたが、ある日楽隊への移動を命じられてしまいます。この楽隊に辿り着く過程も面白かったのですが、楽隊に辿り着いてからはきたろうさんのキャラクターもあり、面白さのギアが一段階上がっていきます。しかし、楽隊の仕事は軍隊を勇気づけること。かつて、日本でも戦時中に映画は国威発揚の道具として用いられていましたが、歴史は繰り返すのだと思わずにはいられません。


また、主人公は向こう岸の住人と音楽で心を通い合わせますが、最終的にはそれも何の役に立たず。今の文化芸術が真っ先に制限されているコロナ禍の状況さえも、意図的にではないにしても反映していて、その先見性に身震いがしました。文化芸術で世の中は変えられないというショッキングなラストは、観終わった後思わず放心状態になってしまうほどインパクトのあるもの。最悪に最悪を塗り重ねたあの終幕は、しばらくは忘れようとしても忘れることができないでしょう。


ユーモアを隠れ蓑にして、戦争の愚かさ、醜さ、滑稽さを描き切ったこの映画は、一人でも多くの方に観てもらいたいです。こちらの映画も現在ソフトが発売&レンタル中ですので、よろしければぜひ。










第4位:彼女が好きなものは


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第4位は年末になってダークホースのように現れた、ゲイと腐女子の相互理解の映画です。


高校生の安藤純。彼はゲイであることを隠しながら、日々を送っていました。ある日彼は書店でクラスメイトの三浦紗枝がBL漫画を購入しているところに出くわします。紗枝もまたBL好きを隠していて、誰にも言わない代わりに二人の距離は近づき始めます。自分も"ふつう"の人生を歩めるのではないかと期待する純。しかし、事はそううまくは運ばず…。


このストーリーを見ると、昨今雨後の筍のように制作されているLGBT映画の一つと思われるかもしれます。ただ、この映画が秀でているのはまず単純に映画としての出来が良いことが挙げられます。伏線回収も嫌味ったらしくなく、『世界でいちばん長い写真』で注目を浴びた草野翔吾監督の手腕が冴え渡っています。また、主演の二人も素晴らしい。純を演じた神尾楓珠さんは揺れ動く純の心の機微を細やかな表情や挙動の違いで表現していましたし、紗枝を演じた山田杏奈さんも、今まで暗めな役どころが多かったせいか、この映画では解放されたように明るく、でもその中に一匙の影を混ぜるバランス感覚が巧みでした。全ての出演作を見られているわけではありませんが、2人ともキャリアベスト級の演技を披露していた気がします。


でも、この映画は好きであることには間違いないんですが、正直ベストに入れるかどうかは迷ったんですよね。現代は大分LGBTの人たちの存在が知られるようになってきていて、10年ほど前よりは状況は改善してきています。ただ、異性婚をして子供を設けるという動物的な規範は未だに根強くて。LGBTの人には、そんな"ふつう"や"当たり前"から自分が疎外されているように感じている人も多いと思います。理解しているというのも、理解してやっているというマジョリティ側の思い上がりでしかなくて。劇中でも描かれたように半端な理解は、かえってLGBTの人たちを、自分とは違う存在だと外から眺めるありがた迷惑なんですよね。私だって、そう考えないようにはしていますけど、無自覚に動物的規範を押し付けていることが絶対にないとは言い切れないですし。


ぶっちゃけた話をしますと、私にはこの映画を観てLGBTの人が何を感じたなんて分からないわけですよ。この手のLGBT映画って結局は「私はマイノリティのことを理解している」ってマジョリティを気持ちよくさせる罪深い効果も多分に含んでいますし。彼ら彼女らを追い詰めているのは、まぎれもなく私たちマジョリティなのに、この映画を純粋に評価していいのかは今でも私には分かりません。でも、それすら考えていない人たちもまだまだこの世にはいることを思うと、やっぱりこういう映画が出てきたことを私は評価したいですし、一人でも多くの人に見られるべきだとも思います(単純に映画としての出来が素晴らしいですし)。そう考えて、迷った挙げ句この映画を下半期の第3位に選出させていただきました。まだまだ全国の映画館で上映中なので、興味のある方はぜひご覧ください。オススメです。















第3位:彼女は夢で踊る


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上半期のマイベスト映画が、年間ベスト10でも3位にランクインです。公開自体は去年ですが、観たのは今年なので、今年のランキングに入れました。わけ分かんないくらい泣きました。嗚咽を漏らさないようにするのに必死で、今まで映画館で観た映画の中でも、間違いなく一番泣きました。


舞台は広島第一劇場。そこでは、何十年もの間ストリップが公演されていました。しかし、今はスマホで簡単にアダルト動画を見ることができる時代です。当然ストリップに人は来なくなり、広島第一劇場は閉館することになります。もう時代に取り残されて消えゆくものという設定だけで、私の大好物なのですが、支配人であるこの映画の主人公は、口では何事もないように言っていても、本心では閉館を受け入れられていません。閉館に抗おうとあがく姿が、どうしようもなく涙を誘います。


主人公がそこまでストリップ劇場に固執していたのは、かつて広島第一劇場で見たストリッパーに恋をしてしまったからなんですね。しかし、劇場のスタッフとして働き始めた主人公はそのストリッパーと付き合うことができません。それでも、惹かれていく主人公。しかし、そのストリッパーは公園が終わると、広島を離れていってしまいます。いつか好きだったストリッパーが戻ってくるために、劇場を守り続けようと決めた主人公。この映画では現代と回想がシームレスにつながるという特殊な構造をしていて、その構造が主人公の健気さを強調していて、私はボロボロ泣きました。


また、かかる音楽もよかった。特にレディオヘッドの「Creep」が何度もかかっていて、曲のパワーだけでも泣きそうになりますし、私は二回目あたりで、既にヤバかったのですが、最後に歌詞の訳が空かされたらもう大号泣ですよね。彼女は特別だけれど、僕は気持ち悪い奴なんだ。彼女がどんどん離れていく。映画の内容と見事にマッチしていて、加藤雅也さんの謎の踊りも気にならないくらい泣きました。


それに、ストリップ自体もよくて。劇中の言葉を借りれば「人間の美しさ」を見せつけられたんですよ。現役トップストリッパーである矢沢ようこさんが出演していて、踊りにも説得力がありますし、心の底から美しいなと思って涙が止まりませんでした。私は人間が嫌いで、醜悪な存在だと思っているのですが、ここまで人間を美しく感じたのは、生まれて初めてのことでした。


それに、一番の勝因は観たシチュエーションですね。私はこの映画をミニシアターで観たのですが、これが大正解。映画と一緒に、映画館の持つ歴史を感じて、ミニシアターが好きでよかったなと思ったことも、涙を流させた一つの要因です。私も四半世紀は生きているので、好きだった場所がなくなった経験も何回かしています。この映画が出した結論は、そんな今はない場所への最大級の賛辞で、もうたまりませんでした。最高の映画です。


現在ソフトが発売&レンタル中なので、ぜひぜひぜひご覧ください。










第2位:あらののはて


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第2位にランクインしたこの映画は、もしかしたらご存知ない方も多いかもしれません。8月に池袋シネマ・ロサにて3週間限定公開されたのち、各地のミニシアターでぽつぽつと上映されただけの映画ですから。だけれど、断言します。この映画は大傑作です。


そう思う理由の一つがこの映画独特の演出方法です。この映画は長回しが多く、照明の加減でキャラクターの顔が見えないシーンも少なくありません。また、喋っている人間が画面外にいるという手法も多用されています。ともすれば、奇をてらった映画とも取られるかもしれませんが、この映画はその全てがちょうどいい塩梅なんですよね。長回しも長くなりすぎない絶妙な長さですし、あえて大事なところを見せない演出方法に想像力が掻き立てられます。大作映画では決してできないような方法論を採用した演出の数々は「こういうのが見たかった!」と、私にとっては垂涎ものでした。今年観たどの映画にも負けない豊かさがあります。朝焼けの道を歩くシーンなど画が素晴らしい、「これだけでこの映画を観てよかった」と思えるシーンがいくつもありました。メインどころの俳優さんの表情も全て痺れますしね。


さらに、演出だけでなく大本となったストーリーも一級品。25歳の野々宮風子はつつがない日々を送るフリーター。だけれど、彼女には忘れられない出来事がありました。それは8年前の高校生の時、絵画モデルをしているときに感じた得も知れぬ絶頂感です。しかし、モデルを頼んだ美術部の大谷荒野とは、彼が退学したこともあって、それ以来会っていません。友人にそそのかされ、8年ぶりに風子は荒野にまた自分をモデルにして絵を描いてくれと頼む。風子は学生時代の出来事を引きずっていて、未だ青春を終わらせることができていません。それは絵を完成させることができなかった荒野も同じ。この映画はその絵を完成させることによって、青春の終わりを印象的に描いているのです。言うまでもなく、人生は青春時代だけではありません。この映画は青春が終わっても、まだ人生は続く。いや、青春が終わってこそ本当の人生が始まるのだと、さりげなく主張しています。ラストシーンがもう大好きで。しかも、たった73分しかないんですよ、この映画。その短い時間で青春の終わりと人生の始まりを感じさせるストーリーは見事という他ありません。


というようにこの映画は、演出と物語ががっちり噛み合った大傑作なのです。正直どうしてこの映画が話題になっていないのかが私には分かりません。『カメラを止めるな!』のしゅはまはるみさんも出てるのにな…。配信もされていないし、ソフトが出るかどうかも分からない。まさに映画館でしか観れない作品であり、コロナ禍で家で映画を楽しむ人も増えた中で、映画館で映画を観ることのかけがえのなさを改めて感じましたね。本当にもっと観られるべき映画だと思います。マジで。










第1位:東京クルド


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今年のベストは入管問題を扱ったドキュメンタリー映画です。観た直後からこの映画を今年のベストにすることは決まっていました。はっきり言って、全ての日本人が見るべき映画だと思います。


思えば今年は入管問題が大きな話題となりました。3月にはスリランカ人女性にはウィシュマ・サンダマリさんが入管に収容中に亡くなり、5月には入管法改正案への反対論がネットを中心に巻き起こりました。この映画が描いているのは、そんな入管問題の只中にいる二人のクルド人男性、オザンとラマザンの虐げられながらも、懸命に生きる姿です。


一応説明しておきますと、クルド人というのは主に中東で暮らす民族を指しています。彼らの多くはトルコで暮らしているのですが、この映画がまず映しだすのはクルド人とトルコ人の対立です。2015年のトルコ大統領選挙で大使館前に集まった両者が衝突するのですが、これが想像を絶するほど苛烈なもので。ギプスをつけるほどのけが人まで出ているんですよ。これが現代日本で行われていた光景なのかと、言葉を失ってしまいました。


日本ででさえこうなのですから、トルコでの状況の芳しくなさは言うまでもありません。オザンとラマザンは危険な故郷から、辛くも日本に逃げてきましたが、その日本でも非正規滞在者の烙印を押されてしまっています。難民申請を続けているものの、一向に受理される気配はなく、住民票もなければ働くこともできない。「ただ、いること」しか許されていないんです。グローバルを謳う英語の専門学校にも入れてもらえないし、せっかく入学した自動車学校でも本名で呼んでもらえない。よく「日本には差別がない」ってしたり顔で言う人がいますけど、こんなの立派な差別じゃないですか。基本的人権の侵害ですよ。


彼らは何も悪いことをしていないのに、ただ法律だからってだけで差別的な扱いを受けて、入国管理局に入れられているのだとこの映画は描きます。この映画を観て、悪い意味で一番印象に残ったのが中盤で起こった事件ですね。入管に収容されている人が体調不良になったんですけど、救急車を呼んだのに搬送されず、30時間経ってからようやく医療を受けられる。これが日本で起こった出来事なのかと愕然としましたよ。ひどい仕打ちを受けているせいで、主人公2人のうち1人が「人生楽しくない」「自分には価値がない」って言っていてすごく悲しくなりましたよ。そう言わせているのは無関心のままでいる私たちなんだと身につまされました。


本当にこの映画は全ての日本人が観て、入管問題を少しでも知ることが必要だと思います。映画の中で入管の職員が「別の国行ってよ」と言っていました。それを言われた彼の心情はいかほどだったのでしょうか。私たちがこんなことを言わないようになるためにも、この映画はもっと観られるべきだし、観られなくちゃいけない。これが私がこの映画を今年のベストに選んだ理由です。










2021年年間ベスト10結果一覧

第10位:明け方の若者たち
第9位:劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト
第8位:女たち
第7位:映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園
第6位:すくってごらん
第5位:きまじめ楽隊のぼんやり戦争
第4位:彼女が好きなものは
第3位:彼女は夢で踊る
第2位:あらののはて
第1位:東京クルド















以上で2021年映画ベスト10の発表は終了となります。いかがでしたでしょうか。あなたの好きな映画や気になる映画はありましたでしょうか。


今回、ランキングを作成していて気づいたことがあります。それは「女」という漢字がタイトルに入る映画が多かったこと。10本中4本に「女」が入っていますからね。でも、それは何も私だけではなく、今年公開された映画に「女」がタイトルに入る作品が多い傾向があったように思えます。今回取り上げた4本以外にも


・逃げた女
・水を抱く女
・野球少女
・彼女(Netflix)
・海辺の彼女たち
・1秒先の彼女
・モロッコ、彼女たちの朝
・うみべの女の子
・アーヤと魔女
・科捜研の女 劇場版
・僕と彼女とラリーと
・彼女はひとり
・美少女戦士セーラームーン Eternal 前編/後編


と優に10本以上はあります。今年ここまでタイトルに使われた漢字もないのではと思うくらいです。さらに、洋画では『プロミシング・ヤング・ウーマン』『17歳の瞳に映る世界』『最後の決闘裁判』『ラストナイト・イン・ソーホー』など、男性に虐げられた女性のやるせなさや逆襲を描いた映画が数多く見られました。このことからもやはり、今年の映画は「女」ないし女性がキーワードになっていたと思います。


今まで男性優位の社会で見過ごされてきた、彼女たちの苦しみや悲しみ。それがようやくクローズアップされてきたと言っていいでしょう。私も一応は男性なので、嫌な気持ちを与えないためにもなるべく女性とはかかわりを持たないようにしているんですが、それでも無意識のうちに女性を虐げてはいないか、傷つけてはいないかと内省する機会も多くありました。確かに、日本にはまだまだ大きなジェンダーギャップがありますし、男女平等は推し進めなければならない施策の一つであることには間違いないでしょう。


ただ、あまりにも男女平等だったり、フェミニズムに終始している人を見ると、私は少し違和感も感じてしまうんですね。まるで男女平等が唯一の信条になっているようで。でも、もっと他に解決しなければならない問題も日本には数多くあるでしょう。たとえばホームレスの人たちにどうやって住処を用意するだとか、在留資格を持ちたくても持てない人をどうするかとか。何も女性問題や男女平等だけを特別視する必要はないんですよね。


そのことを教えてくれたのが、2021年マイベストに選ばせていただいた『東京クルド』です。もがき苦しむオザンとラマザンの姿は、今年最も切実で、一番私の心に響きました。私は「知らなかったことを教えてくれること」や「見たこともない世界を見せてくれること」を映画に求めているので、そういう意味では私が見えていなかった世界を、身を切るような痛みとともに見せてくれた『東京クルド』は1位以外ありえません。何とかしたいと思って、実際に難民支援協会に寄付もしましたしね。観た後に行動を起こさせてくる映画は間違いなく傑作と呼べるものだと思います。来年も観た後に思わず行動を起こしたくなる映画にたくさん出会いたいです。


それではそろそろこの記事を結ばせていただきたいと思います。来年も相変わらずコロナ禍は続きそうですが、皆さんがどうかたくさんのいい映画に出会えますように。色々大変だとは思いますが、何とか生き抜いて、また年末に年間ベスト10を発表しあいましょう。そのときはこのブログのことも少しでも気にかけてくれると幸いです。


それでは一年間の感謝を込めて…


本当にありがとうございました!!!

来年もお元気で!!!


おしまい




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こんにちは。これです。


コロナ禍は今年も収まりませんでしたね。ワクチン接種が進み、やっと落ち着いてきたかと思ったら、オミクロン株が出てきて、欧米ではこのタイミングで感染者数の過去最多を更新したりして。年末年始は人の移動も多いですし、年明けが今から心配です。このコロナ禍はいったいいつ終わるんでしょうか。来年には終わって、マスクなしで外出できるようになるといいですね。


さて、映画界も今年は引き続きコロナの影響を受けまくりました。いくつかの映画は延期になり、また大作洋画などは数度の延期を経てようやく公開したり。さらには、ここ数年のトレンドである配信サービスの躍進も今年はより印象的で、多くのNetflix映画が映画館で上映されました。まだまだステイホームが推奨されるなかで、映画館にも少数の大作映画を除いて、なかなか客足が戻ってこず寂しい限りです。


ただ、そんな中でも私は下半期も相変わらず、映画館に足を運び続けました。下半期で観た映画は12/29時点で93本。上半期の107本と合わせると、なんとちょうど200本です。ブログをなかなか書かなくなった分、映画鑑賞に避ける時間が増えたのはなんとも皮肉なことです。


では、発表をはじめるにあたって、ここでいつもの選考基準の説明をしたいと思います。


1.2021年7月1日~2021年12月29日までに映画館で鑑賞した映画であること
2.個人的な好きという気持ちを最優先にすること


今の時代いつまで映画館にこだわってんだと言われるかもしれませんが、個人的にはパソコンやスマートフォンの画面で見る映画って気分が乗らないんですよね。他の物にも目が移ってあまり集中できないですし。その点映画館は映画にだけ集中できる環境が整っていますし、音響も自宅よりずっといい。没入感が段違いなわけですよ。だから、映画館での鑑賞とそれ以外での鑑賞を同じ土俵に乗せて考えるのは、私にはまだできません。なので、今回も「映画館で」という条件をつけさせていただきます。


それと、二つ目については個人的な感情を最優先にした方が、バラエティに富んでいて面白いなというただそれだけの理由です。興行ランキングと個人的なベスト10っていうのは違いますからね。今回もあまり興行ランキングには顔を出さなかった作品を中心に、個人的嗜好丸出しで選考させていただきました。


それでは、ランキングの発表を始めます!果たして1位に輝いたのはどの映画なのでしょうか!?













第10位:1秒先の彼女


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台湾から届いたロマンティックでチャーミングなラブストーリーが第10位にランクインです。


主人公のシャオチーは、何をするにも人よりワンテンポ早い系女性。ある日、ダンス講師とデートの約束をするも、気がついたらいつの間にか翌日になっていました。この映画は消えた一日を巡るサスペンス、かと思いきや全然そんなことはなく、あくまでもポップに何てことない日常が進んでいきます。シャオチーを演じたリー・ペイユも本当にその辺にいるような可愛らしさがありました。でも、その微笑ましい日常の中にさりげなく伏線を忍ばせていて、ストーリーテリングの能力が高いと感じます。


消えた一日のカギを握るのは、グアタイというバス運転手。彼はシャオチーとは対照的に何をするにもワンテンポ遅い男性です。そのおかげで、今までの人生は損ばかり。シャオチーに密かに思いを寄せていますが、そのことも伝えられていません。彼を演じたリウ・グアンティンも情けなさを感じる中に、一抹の格好よさを感じて好きでした。


そして、この映画は終盤に驚きの展開を迎えます。それまでの映画のムードからは逸脱したように思える展開なのですが、その理由がとっても素敵で、この映画で一番好きなところですね。人生は損ばっかりじゃない。きっといつかいいことがあるって。チェン・ユーシェン監督の世間にちょっと馴染むことのできないはみ出し者への暖かな視線を感じて、好感が持てます(『熱帯魚』や『ラブ ゴーゴー』も映画館でやってたから観ればよかったなぁ)。


着地点もハートフルでしたし、観終わった後には思わず心が温かくなる、映画って自由なんだなと思えた一作でした。ソフトは来年の2/9発売で、同日に配信でのレンタルも開始されるそうなので、よかったらどうぞ。オススメです。










第9位:子供はわかってあげない


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第9位にランクインしたのは名匠・沖田修一監督の最新作です(コロナで一年延期になったけど)。


この映画は何と言っても主演の二人がいいんですよね。主人公の朔田美波を演じた上白石萌歌さんは全身から瑞々しいオーラを放っていて、ふとした瞬間に笑いが込み上げてくるさりげないおかしさみたいなものがありました。また、もう一人の主人公のもじくんを演じた細田佳央太さんも『町田くんの世界』とはまた別の爽やかな魅力が爆発。二人が揃っているシーンは目が焼かれると思うほどの青春~!という趣を感じて大満足でした。脇を固める古舘寛治さんや斉藤由貴さんもよかったですし(OK牧場で泣く日が来るとは思わなかった)、なにより怪しげな新興宗教の元教祖役の豊川悦司さんの不器用なやさしさが身に染みます。


ストーリーとしては、美波が実の父親を捜すというものなのですが、これがもう超絶微笑ましいんですよね。平和な家庭を離れて、実の父親のところに女子高生が上がりこむというのは字面だけ見れば、なんだか危険な香りもするわけですが、基本的に登場人物全員が善人なので、そんな危うさは全く感じず、終始ニコニコしながら観ることができました。オープニングのアニメを見るシーンから、その微笑ましさがずっと漂っていて、ユーモアもふんだんにちりばめられていて、とにかく観ていて気持ちがよかったですね。偏見が一個もない理想の世界に癒されました。


で、そのほんわかしたなかにも継承のドラマが込められていて、特に終盤の展開にはかなりグッときました。離れていても心は繋がってるんだなぁと。エンドロール後のオチまで含めて大好きな映画です。現在、U-NEXTで独占配信中。ソフトの発売とレンタルは来年の3月2日とまだ先ですが、出た際にはもう一回観て楽しみたいと思います。












第8位:シュシュシュの娘


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第8位は苦境に陥ったミニシアターに力を貸すために制作された、入江悠監督10年ぶりの自主制作映画です。


この映画が描いているのは、ずばり現代日本の暗部。舞台となる街は移民排斥条例を可決した閉鎖的な地方都市。主人公の鴉丸未宇は市役所でひっそりと仕事をこなしています。ある日、頼りにしていた先輩が自ら命を絶つ事件が発生。その先輩は公文書の改ざんを命じられ、それを実行してしまったことを苦にして屋上から飛び降りてしまいました。しかし、先輩の死は何の変化ももたらさず、やがて未宇も公文書の改ざんを命じられてしまいます。こう書いているだけでも、イライラしてフラストレーションが溜まるような状況です。


しかし、この映画はそんな閉塞感溢れる状況に、とある現実離れした対抗策で逆襲していくんですね。一見シュールとも見えるその手段は、映画でしかできないもので、どうしようもない現実にフィクションの力で対抗していく私の大好きな部類のお話でした。映画のムードもそこまで暗く放っていないですしね(相応の重みはあるけれど)。最後の方はもう必殺仕事人かと思いましたよ。


さらに、この映画が特徴的なのが画面サイズ。この映画は通常の16:9ではなく、1:1のスタンダードサイズを採用しています。正方形の画面は、今までいくつもの映画を見てきた私だからこそ新鮮でした。これはたぶん、どの大きさのスクリーンでも同じ鑑賞体験を味わえるようにと考えられてのものだと思いますが、それがかえって想像の余地を残していました。


また、私はこの映画を全国のミニシアターによる同時試写会で見たんですけど、映画が終わった後に全国のミニシアターとZoomで繋がれたんですね。満員の映画館もあれば、そんなに入っていないところもあって。でも、そのバラエティの豊富さこそが、日本の映画文化を見えないところから支えてるんだなと感慨深くなりました。その経験も含めての下半期ベスト10入りです。
















第7位:草の響き


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第7位にランクインしたのはいろいろあった東出昌大さん二年ぶりの主演作です。


この映画の最大の武器は、言うまでもなく主人公である工藤和雄を演じた東出昌大さんでしょう。精神病を患いながらも、表面上は何事もなく日々を送っているように見える和雄。しかし、その裏にはいつ命を絶つかもしれない表裏一体の危うさがあります。東出昌大さんはそんな和雄を、オーラから、表情から、一挙手一投足まで何一つ欠けることなくスクリーンに具現化。力強いようでどこか虚ろな瞳や、淡々とした声が「狂わないように走ってんだよ」というセリフに説得力を持たせています。『BLUE/ブルー』でも好演を見せていましたし、個人的に今年のベスト男優賞ですね。プライベートのことを抜きにしても(そもそも差し引きに入れるもんでもないけど)、今日本で有数の実力を持つ俳優さんだと思います。


また、この映画の原作は『そこのみにて光輝く』や『きみの鳥はうたえる』などの佐藤泰志さんです。私は『きみの鳥はうたえる』は見たことあるんですけど、正直演出が独特過ぎてよく分からなかったんですよね。でも、この映画はそんな頭の悪い私でも分かるような次元まで降りてきてくれて、突っかかることなく観ることができました。個人的に共感する場面もありましたしね。和雄が死のうとして大量に飲んだ薬、あれと同じものを私も飲んでますから。


そして、一番私がこの映画で好きなのは「表裏一体の生と死」を描いているところです。この映画に登場する人物は、誰もが死にたい!とはいかずとも生き辛さを抱えています。それを認めながらも、何とか何事もないように日々を送ろうとしている。だけれど、希死念慮はふとした瞬間に顔を出して、あるときには取り返しのつかない事態を招いてしまう。それでも、生き辛さと付き合って生きていくしかない。そのための手段が和雄にとっては走ることであり、それが集約されたラストシーンは、事態は何も解決していないものの、どこか清々しささえ私は感じました。派手さはないですが、良い映画です。











第6位:猿楽町で会いましょう


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第6位にランクインしたのは新鋭・児山隆監督の露悪的青春映画です。


映画のタイトルにもなった猿楽町とは渋谷区の地名。センター街や原宿などがフィーチャーされがちな中、影の薄いと言ったら失礼ですが、なかなか顧みられない猿楽町という地名が、都会の片隅でもがく若者たちとリンクしています。


この映画で素晴らしいのが主人公とヒロインを演じた金子大地さんと石川瑠華さんです。金子さんは得意な仕事が見つけられずにくすぶる小山田という役を、やさぐれた目で表現していましたし、石川さんは純粋なようでどこか影のあるユカというヒロインを、持ち前のキュートさと触ったら壊れてしまうような脆さで好演していました。また、劇中にはユカの写真が何度か登場するわけですが、これが実に可愛く撮れていて、それだけで映画の大きな長所になっています。写真撮影を担当した草野庸子さんの功績は大きいですね。


この映画は都会でもがく男女の刹那的な恋をモチーフにしています。とあれば、特に小規模映画ではよくあるモチーフだと思われがちですが、この映画が凄いのは「撮る」という行為の意味が、映画が進むにつれて変質していくこと。前半はそれこそ二人の仲は上手くいっていて、青春を感じる場面も多数ありますが、それは嘘で塗り固められたグラグラの土台の上に成り立つ、一時的な幸せにすぎませんでした。物語の中盤でその嘘が明かされると、映画はアクセルを踏んだように暗黒面へと突っ走っていきます。「撮る」という行為が純粋なものから、歪んだ功名心を含むグロテスクなものへと変質していく様には思わず圧倒されて、心の中で言葉をなくしていました。着地も一筋縄ではいかず、終わった後少し放心してしまったほどです。その辺の青春映画とは違った強烈な印象が残ったので、下半期ベスト10に入れさせてもらいました。


現在、Amazon Prime Video等で配信中ですので、興味のある方はぜひ観てみてください。明るい気持ちにはあまりなれませんが、オススメです。









第5位:空白


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第5位にランクインしたのは、上半期『BLUE/ブルー』で確かな実力を示した吉田恵輔監督の最新作です。


事の始まりはとある女子高生の万引き未遂。その女子高生はスーパーの店長に追いかけられて、車に轢かれてしまい命を落としてしまいます。女子高生の父親は怒り狂いあの手この手で、真相を明らかにしようとします。一方、スーパーの店長も罪の意識に苛まれ、人生を狂わされていくという重く苦しいストーリーのこの映画。


まず何と言っても俳優さんが素晴らしかった。父親を演じた古田新太さんは容赦のない追い込み方で迸る憤怒と喪失を表現し、スーパーの店長を演じた松坂桃李さんも等身大の人間像を上手に形作っており、二人が共演した、とくに終盤の海辺でのシーンは今年の映画でも屈指の名シーンだと思います。また、脇を固める藤原季節さんや趣里さん、片岡礼子さんや田畑智子さんも素晴らしかったですね。その中でも個人的に印象に残っているのがスーパーの店員を演じた寺島しのぶさんです。寺島さんの役柄はボランティア活動にも精を出し、自分の正しさを疑わず、それを人にまで押しつけてしまうというものだったのですが、それがこの映画のテーマの一つである「正しさとは何か」を逆説的に突き付けてきて好きでした。良い感じにイライラするキャラクターで最高でしたね。


また、この映画は世武裕子さんが手掛けた音楽も素晴らしいのですが(世武さんが参加している作品は安心して観れます)、特筆すべきは吉田恵輔監督の演出でしょう。人は一人では生きられない。誰かと関わることで、いい方向にも悪い方向にも変化していくという当たり前のことを、押しつけがましくなく描くさりげない手腕は見事の一言。誰も悪者にせず、かといって聖者にもせず、全ての登場人物に内省を促し、その結果ほんの少しの変化と救いを与える。


人と人とが関わる物語をヒューマンドラマと呼ぶならば、この映画は間違いなく一線級のヒューマンドラマと言えると思います。吉田監督は『ヒメノア~ル』や『愛しのアイリーン』では少々露悪的な面が目立っていましたが、今年に入ってからは『BLUE/ブルー』もこの映画も、シニカルな面を持ちつつ、人の善性を肯定する暖かさを手に入れています。個人的にドンパチやる映画はどちらかというと洋画の領分だなと思っていて、邦画はこういったヒューマンドラマを突き詰めていくべきだなと感じているので、その意味では吉田監督は今年の最優秀監督だなぁと。『BLUE/ブルー』と『空白』との合わせ技でですね。これからも期待せずにはいられません。


そんな『空白』ですが、現在DVD&Blu-rayが好評レンタル中です。ぜひ観てみてはいかがでしょうか。











第4位:映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園


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ここ数年安定して良作を生み出しているしんちゃん映画が今年も4位にランクインです。


今年のしんちゃん映画は学園を舞台にした本格風ミステリー。エリート学校・天下統一カスカベ学園、通称天カス学園に体験入学したしんのすけたち5人。その学校はAIによって管理された近未来的な学園でした。良い行いをするとエリートポイントがたまっていき、そのポイントに応じてクラス分け等がされています。ミステリーで興味を引き付けておいて、管理社会やエリート層・非エリート層で二分された世界を痛烈に皮肉る様は、まさに爽快の一言。そこを打破していくのが、しんのすけと風間くんの友情であるのもまたアツい展開です。


天カス学園では、おしりを吸う吸ケツ鬼の噂がまことしやかに囁かれていました。その吸ケツ鬼の被害に遭っておバカになってしまった風間くん。しんのすけたちは吸ケツ鬼の正体を探していくというのがこの映画のストーリーなのですが、素晴らしいのが複数のゲストキャラが全員キャラが立っているということなんですよね。ポスターにも数人生徒キャラがいますけれど、観ればその全員に愛着が湧くようになっている。しかして、一人残らず怪しいという。この映画は本格「風」を謳っていますけれど、お話に出てきた手掛かりでちゃんと犯人を推理できるようになっているんですよね。伏線の張り方も巧みで、「風」を外してもいいんじゃないかと思うくらい。そして、犯人を突き止めた後はストーリーは予期せぬ展開へ。当初の中目標を達成したら、違う大目標が出てくるというストーリーのツボを押さえていて、これを104分で収めているというのは、正直訳が分からないです。今年のベスト脚本賞と言ってもいいんじゃないでしょうか。うえのきみこさんマジ凄い。


さらに、私がこの映画で一番好きなのが、「別れ」の予感を漂わせているということ。言うまでもなくしんちゃん世界はサザエさん時空ですから、しんのすけたちは永遠に年を取ることはありません。しかし、お受験家庭の風間くんと他の4人では、別の小学校に通うであろうことはなんとなく察しがつきます。そう察しがついてしまうからこそ、風間くんの「いつかはバラバラになってしまうんだ」(意訳)という言葉が胸に響く。私もそれなりの年齢ですから、いくつかの別れは経験しているので、ものすごく共感してしまいました。これは大人だからこそ響きますよ…!


というわけで、今年のしんちゃん映画も傑作でした。来年の『もののけニンジャ珍風伝』も超楽しみです。
















第3位:彼女が好きなものは


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第3位は年末になってダークホースのように現れた、ゲイと腐女子の相互理解の映画です。


高校生の安藤純。彼はゲイであることを隠しながら、日々を送っていました。ある日彼は書店でクラスメイトの三浦紗枝がBL漫画を購入しているところに出くわします。紗枝もまたBL好きを隠していて、誰にも言わない代わりに二人の距離は近づき始めます。自分も"ふつう"の人生を歩めるのではないかと期待する純。しかし、事はそううまくは運ばず…。


このストーリーを見ると、昨今雨後の筍のように制作されているLGBT映画の一つと思われるかもしれます。ただ、この映画が秀でているのはまず単純に映画としての出来が良いことが挙げられます。伏線回収も嫌味ったらしくなく、『世界でいちばん長い写真』で注目を浴びた草野翔吾監督の手腕が冴え渡っています。また、主演の二人も素晴らしい。純を演じた神尾楓珠さんは揺れ動く純の心の機微を細やかな表情や挙動の違いで表現していましたし、紗枝を演じた山田杏奈さんも、今まで暗めな役どころが多かったせいか、この映画では解放されたように明るく、でもその中に一匙の影を混ぜるバランス感覚が巧みでした。全ての出演作を見られているわけではありませんが、2人ともキャリアベスト級の演技を披露していた気がします。


でも、この映画は好きであることには間違いないんですが、正直ベストに入れるかどうかは迷ったんですよね。現代は大分LGBTの人たちの存在が知られるようになってきていて、10年ほど前よりは状況は改善してきています。ただ、異性婚をして子供を設けるという動物的な規範は未だに根強くて。LGBTの人には、そんな"ふつう"や"当たり前"から自分が疎外されているように感じている人も多いと思います。理解しているというのも、理解してやっているというマジョリティ側の思い上がりでしかなくて。劇中でも描かれたように半端な理解は、かえってLGBTの人たちを、自分とは違う存在だと外から眺めるありがた迷惑なんですよね。私だって、そう考えないようにはしていますけど、無自覚に動物的規範を押し付けていることが絶対にないとは言い切れないですし。


ぶっちゃけた話をしますと、私にはこの映画を観てLGBTの人が何を感じたなんて分からないわけですよ。この手のLGBT映画って結局は「私はマイノリティのことを理解している」ってマジョリティを気持ちよくさせる罪深い効果も多分に含んでいますし。彼ら彼女らを追い詰めているのは、まぎれもなく私たちマジョリティなのに、この映画を純粋に評価していいのかは今でも私には分かりません。でも、それすら考えていない人たちもまだまだこの世にはいることを思うと、やっぱりこういう映画が出てきたことを私は評価したいですし、一人でも多くの人に見られるべきだとも思います(単純に映画としての出来が素晴らしいですし)。そう考えて、迷った挙げ句この映画を下半期の第3位に選出させていただきました。まだまだ全国の映画館で上映中なので、興味のある方はぜひご覧ください。オススメです。












第2位:あらののはて


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第2位にランクインしたこの映画は、もしかしたらご存知ない人も多いかもしれません。8月に池袋シネマ・ロサにて3週間限定公開されたのち、各地のミニシアターでぽつぽつと上映されただけの映画ですから。だけれど、断言します。この映画は大傑作です。


そう思う理由の一つがこの映画独特の演出方法です。この映画は長回しが多く、照明の加減でキャラクターの顔が見えないシーンも少なくありません。また、喋っている人間が画面外にいるという手法も多用されています。ともすれば、奇をてらった映画とも取られるかもしれませんが、この映画はその全てがちょうどいい塩梅なんですよね。長回しも長くなりすぎない絶妙な長さですし、あえて大事なところを見せない演出方法に想像力が掻き立てられます。大作映画では決してできないような方法論を採用した演出の数々は「こういうのが見たかった!」と、私にとっては垂涎ものでした。今年観たどの映画にも負けない豊かさがあります。朝焼けの道を歩くシーンなど画が素晴らしい、「これだけでこの映画を観てよかった」と思えるシーンがいくつもありました。メインどころの俳優さんの表情も全て痺れますしね。


さらに、演出だけでなく大本となったストーリーも一級品。25歳の野々宮風子はつつがない日々を送るフリーター。だけれど、彼女には忘れられない出来事がありました。それは8年前の高校生の時、絵画モデルをしているときに感じた得も知れぬ絶頂感です。しかし、モデルを頼んだ美術部の大谷荒野とは、彼が退学したこともあって、それ以来会っていません。友人にそそのかされ、8年ぶりに風子は荒野にまた自分をモデルにして絵を描いてくれと頼む。風子は学生時代の出来事を引きずっていて、未だ青春を終わらせることができていません。それは絵を完成させることができなかった荒野も同じ。この映画はその絵を完成させることによって、青春の終わりを印象的に描いているのです。言うまでもなく、人生は青春時代だけではありません。この映画は青春が終わっても、まだ人生は続く。いや、青春が終わってこそ本当の人生が始まるのだと、さりげなく主張しています。ラストシーンがもう大好きで。しかも、たった73分しかないんですよ、この映画。その短い時間で青春の終わりと人生の始まりを感じさせるストーリーは見事という他ありません。


というようにこの映画は、演出と物語ががっちり噛み合った大傑作なのです。正直どうしてこの映画が話題になっていないのかが私には分かりません。『カメラを止めるな!』のしゅはまはるみさんも出てるのにな…。配信もされていないし、ソフトが出るかどうかも分からない。まさに映画館でしか観れない作品であり、コロナ禍で家で映画を楽しむ人も増えた中で、映画館で映画を観ることのかけがえのなさを改めて感じましたね。本当にもっと観られるべき映画だと思います。マジで。














第1位:東京クルド


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下半期のベスト1は入管問題を扱ったドキュメンタリー映画です。観た直後からこの映画を下半期のベストにすることは決まっていました。はっきり言って、全ての日本人が見るべき映画だと思います。


思えば今年は入管問題が大きな話題となりました。3月にはスリランカ人女性にはウィシュマ・サンダマリさんが入管に収容中に亡くなり、5月には入管法改正案への反対論がネットを中心に巻き起こりました。この映画が描いているのは、そんな入管問題の只中にいる二人のクルド人男性、オザンとラマザンの虐げられながらも、懸命に生きる姿です。


一応説明しておきますと、クルド人というのは主に中東で暮らす民族を指しています。彼らの多くはトルコで暮らしているのですが、この映画がまず映しだすのはクルド人とトルコ人の対立です。2015年のトルコ大統領選挙で大使館前に集まった両者が衝突するのですが、これが想像を絶するほど苛烈なもので。ギプスをつけるほどのけが人まで出ているんですよ。これが現代日本で行われていた光景なのかと、言葉を失ってしまいました。


日本ででさえこうなのですから、トルコでの状況の芳しくなさは言うまでもありません。オザンとラマザンは危険な故郷から、辛くも日本に逃げてきましたが、その日本でも非正規滞在者の烙印を押されてしまっています。難民申請を続けているものの、一向に受理される気配はなく、住民票もなければ働くこともできない。「ただ、いること」しか許されていないんです。グローバルを謳う英語の専門学校にも入れてもらえないし、せっかく入学した自動車学校でも本名で呼んでもらえない。よく「日本には差別がない」ってしたり顔で言う人がいますけど、こんなの立派な差別じゃないですか。基本的人権の侵害ですよ。


彼らは何も悪いことをしていないのに、ただ法律だからってだけで差別的な扱いを受けて、入国管理局に入れられているのだとこの映画は描きます。この映画を観て、悪い意味で一番印象に残ったのが中盤で起こった事件ですね。入管に収容されている人が体調不良になったんですけど、救急車を呼んだのに搬送されず、30時間経ってからようやく医療を受けられる。これが日本で起こった出来事なのかと愕然としましたよ。ひどい仕打ちを受けているせいで、主人公2人のうち1人が「人生楽しくない」「自分には価値がない」って言っていてすごく悲しくなりましたよ。そう言わせているのは無関心のままでいる私たちなんだと身につまされました。


本当にこの映画は全ての日本人が観て、入管問題を少しでも知ることが必要だと思います。映画の中で入管の職員が「別の国行ってよ」と言っていました。それを言われた彼の心情はいかほどだったのでしょうか。私たちがこんなことを言わないようになるためにも、この映画はもっと観られるべきだし、観られなくちゃいけない。これが私がこの映画を下半期のベストに選んだ理由です。











2021年下半期映画ベスト10結果一覧

第10位:1秒先の彼女
第9位:子供は分かってあげない
第8位:シュシュシュの娘
第7位:草の響き
第6位:猿楽町で会いましょう
第5位:空白
第4位:映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園
第3位:彼女が好きなものは
第2位:あらののはて
第1位:東京クルド















以上、ランキングの発表でした。皆さんの好きだったり気になる映画は入っていましたでしょうか。


今回、このランキングを選出して思ったのが、ミニシアター系の映画が多いなということです。『空白』『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』『彼女が好きなものは』以外の7作品は、全て地元のミニシアターで観た映画ですからね。配信がどんどん優位性を増していく中で、逆説的に映画館で映画を観ることの価値が上がっているように私は思います。映画館でしかできない鑑賞体験を数多く体験することができた下半期でした。特に2位の『あらののはて』はそれが顕著でしたね。


それと、やはりコロナ禍で数多くのミニシアターが苦境に陥ったと思うんですよ。客足もまだ回復してないですし。でも、ミニシアターを求める観客っていうのは潜在的にいると私は信じたいです。そうでなければ、ミニシアターエイド基金に3億円も集まらないでしょう。8位の『シュシュシュの娘』はミニシアターで観ること自体に価値がある映画でしたし、来年もあまり注目されていないような良作・傑作を発掘するためにもミニシアターに足繁く足を運びたいと思います。(もちろんシネコンにも行きます)


あと邦画ばかりなのはいつもの傾向なのでお気になさらず。年間ランキングも全て邦画ですし、どうしても邦画の空気感が私には合うみたいです。来年もすでに楽しみな邦画がいくつかありますしね。洋画ももっと観ていかなきゃなと思うんですけど、来年も充実した映画ライフになりそうです。生きて、収入さえあれば。


では、そろそろこの記事を終わりにしたいと思います。2021年の年間ランキングは、明後日の大晦日発表予定ですので、またすぐお会いしましょう。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 


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2022-02-09




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