こんにちは。11月24日(日)東京流通センター第一展示場にて開催される第二十九回文学フリマ東京に参加させていただくこれです。全四冊を頒布予定です。入稿を済ませ、現在POPなどを鋭意準備中。オ-36「胡麻ドレッシングは裏切らない」を何卒よろしくお願いします。


そんな最中の今回のブログは映画の感想になります。今回観た映画は『決算!忠臣蔵』。『忠臣蔵』と名のつくものを一個も見たことない私ですが、今回意を決して観に行ってきました。まあ結果は散々たるものでしたけどね。年齢層が高く、若者は私だけというありさまでしたよ。


では、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。




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映画情報は公式サイトをご覧ください。




※ここからの内容は映画のネタバレを少し含みます。ご注意ください。











えー、まず感想を始めるにあたってお知らせがあります。ここまでイマイチ決め手に欠けていた2019年ワースト映画争いが終結しました。2019年の個人的ワースト映画は『決算!忠臣蔵』に決定です。いや、本当に全く期待はしていなかったんですけど、それでももしかしたら、もしかしたら面白いかもしれないという微かな望みをかけて観てきたんですが、予想以上の酷さに映画が終わったときに頭を抱えている私がいました。いや、ここまでとは……。


そもそも、私は『ゾンビランド:ダブルタップ』が観たかったんですよ。明日観ますけど。でも、仕事終わりのちょうどいい時間帯にはやってなくて。で、職場の同僚がこの映画を勧めてきたのを思い出したんですね。その人って『ぐるナイ』とか『チコちゃん』みたいなバラエティ番組の話ばっかりしている人で。クッソ面白くないダジャレとかもよく言うんですけど、映画館には全く行かない、それこそ『天気の子』すら見ないような人なんです。


で、私は雑談が苦手であまり人と喋れないような人間なんですけど、それじゃいかんなとは日々感じていて。その人と共通の話題を持ちたいと思って観たんですが、まあ酷いこと酷いこと。観たことを後悔しました。やっぱり人と話を合わせるために観る映画って、あまり面白いものではないですよね。義務感を感じてしまう。これからは自分が観たいものを最優先にして観よっと。信頼できるのはツイッターの映画ファンだけやで。


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話が逸れてしまいました。ここからは映画の内容の話をしたいと思います。まあ批判ばっかりになるんんですが。あまりネガキャンはしたくないけど、この映画に限ってはせざるを得ません。まず、最初に画面に映った吉本興業のロゴでもう嫌な感じはビンビンにしたんですね。今年色々問題がありましたし、心証はかなり悪くなっていました。そしてその悪い予感は見事的中してしまいました。しなくていいのに。


もう最初に、俳優さんの演技が過剰なんですよ。主演の堤真一さんをはじめ、とにかく厳しい顔で声を張り上げて、迫真の演技に見せかける。分かりやすさを一番に置いているなという感じですが、それがシンプルにうるさいんですよ。休まる時間が全然なくて、観ていて悪い意味で疲れるんです。特に荒川良々さんの過剰さと言ったらなかったです。声の大きさが完全に舞台用なんですよね。もっと映画用の演じ方もできる人のはずなのに……。ここは俳優さんのせいじゃなくて、演出の方向性が悪いですね。


あと、気になったのがモブのガヤです。こちらも音響設計バグってんじゃないの?というくらいにうるさいうるさい。この映画って吉本制作の映画ですし、たぶん売れない芸人も少なからずエキストラとして出ていたと思うんですね。で、それぞれが爪痕を残そうとめいめいに騒ぐ。それがとっても耳障りでした。あと音楽もポップな吹奏楽が全く映画のカラーに合ってませんでしたし、音響は間違いなく今年観た映画でもワーストかなと思います。


あとは芸人さんの多数起用ですかね。吉本ならではのネック。慣れている木村祐一さんや板尾創路さんはまだいいですよ。ただ、上島竜兵さんはそのまま服脱いで熱湯風呂にでも入りそうな感じが拭えませんし、ぎょろ目を瞬かせる西川きよしさんには、思わず失笑してしまうほど。「小さなことからコツコツと」は時代劇なのにそれ言っちゃうんだと辟易してしまいました。あふれ出るバラエティ番組感が抑えきれていません。


その中でも一番きつかったのが、岡村隆史さんですね。とにかく演技の幅が狭い。全体的にバラエティ番組での普段の喋り方のトーンを落としたものでしかない。悪い意味でなにをやらせても岡村隆史になってしまう感はありました。あまりこういうことは言いたくないですが、出演しているシーンの強度は他のシーンのそれと比べて明らかに劣っています。


ただ、これも岡村さんが完全に悪いわけではないんですよ。人には適材適所という言葉があって。岡村さんが最も輝けるのはバラエティ番組で、最もそぐわないのが映画だというだけです。他にも輝けない場所にいさせられた方が多くて(特に芸人の方は)、だから映画としての魅力はそこまでないのかなという印象でした。


さらに、余計性質が悪いのがこの映画って有名な俳優さんも結構出演していることなんですよね。主演の堤真一さんをはじめ、石原さとみさん、濱田岳さん、滝藤賢一さん、阿部サダヲさん、さらに『蜜蜂と遠雷』で鮮烈なデビューを飾った鈴鹿央士さんも実は出演しています。よく引っ張ってこれたなと言う面々です。で、この本職の俳優さんたち、実に真っ当に演技しているんですよね。ちゃんと仕事をしているんですよね。それがなんか凄い申し訳ないなとは正直思います。芸人さんの出演を抑えて、この面々でもっとオーソドックスに作ってたら、それなりに面白い映画になっていたのではないでしょうか。もったいない。


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また、ストーリーも全然面白くない。『忠臣蔵』というのは討ち入りがメインのストーリーですよね。メインの面白さは、討ち入りの様子やそこに至るまでの葛藤や衝突みたいなところにあると、何も見ていない私でさえ思います。でも、この映画は討ち入りを決定するまでの紆余曲折の方をどちらかというと長く取っているんですよね。そこで独自性を出したかったのかなとは推察できますが、その試みは完全に失敗しているように見受けられました。


なぜかというと討ち入りをすることは史実によって決まっているから。それに予告編でも「討ち入りにお金がかかる」ことをメインに打ち出していました。となると、討ち入りを決行するまでの紆余曲折が描かれるのかなと構えていたら全然違う。1時間経っても全然討ち入りが決まらない藩の残務整理とか討ち入りをするまでの二転三転とか、正直どうでもいいからはよ討ち入れやと冷めた目線で見ている自分がいました。正直退屈以外の何物でもなく、早く終わらないかなと願っている自分がいました。遊郭で大石蔵之介が遊んでいるところとか、本当に何を見せられているんだろうと思って帰りたくなりましたよ。こんなこと初めてです。


でも、討ち入りを決意してからはようやくちょっとですが、面白くなってくるんですよね。祭りは始まる前が一番楽しいに通ずる準備の面白さみたいなものがあって。でも、それは『忠臣蔵』というフォーマットの面白さであって、この映画独自の面白さではないと思います。


もうこの際だから言っておきますけど、私が映画を観るときに一番重視しているのってストーリーなので。ストーリーが面白くない映画は、私はあまり好きじゃないです。たとえストーリーがアレでも、俳優さんの魅力で押し切るのも一つの方法だとは思いますが、この映画にはそれもない。過剰な演技に笑っているお客さんも少しはいましたけど、それはその俳優さんが面白いのであって、この映画自体が面白いわけじゃないからなというのは一つ言っておきたいです。


あとは、やっぱり討ち入りのシーンがなかったのが嫌でしたね。そういう映画ではないと分かっていても、『忠臣蔵』の最大の華をカットして一体どうしようというのでしょうか。討ち入るの討ち入らないのグダグダやっている暇があったら、ナレーションカットするんじゃなくて、20分でいいから討ち入りのシーン見せたらんかいと。そのシーンさえあれば、もっと好印象で終わっていた気がします。ダメなのは変わらないですけど。



まだまだ、批判は続きますよ。私がこの映画を受け付けなかった最大の理由。それはこの映画が、映画というよりもバラエティ番組に近かったからです。まず、「この映画は全てを日本円で示しますよー」というナレーションに代表されるように、この映画は分かりやすさが第一。逐次いくらというテロップを出し、いくつかの台詞は文字で強調。後半に至っては、画面の端に常に残高が表示されるという小学生にでも分かる親切設計です。


それに、演出も過剰気味で。いろいろきつかったシーンは枚挙に暇がないんですが、特にきつかったのが笛の音と共に堤真一さんの耳から湯気が吹き出すシーンですね。もう素人のSN〇Wかよ、TikT〇kかよと見てられず、頭を抱えてしまうほどでした。この映画って完全にバラエティ番組の方法論で作られているんですよね。それが嫌で嫌で。


私が思うに、バラエティ番組と映画の違いって強度の種類の違いだと思うんですよね。別にバラエティ番組に強度がないと言っているわけではなくて。世の中緩い映画もいっぱいありますし。でも、バラエティ番組って多くの人が、ご飯を食べながら、会話しながら、スマホを見ながら、いわゆるながら見をしていると思うんですよ。製作側もそれを想定して作っているはずで、だからこそリアクションを過剰にしたり、テロップを逐次出して、見られている時間が少ない中で印象に残るような作りになっている印象があります


でも、映画は違うんですよ。映画館で映画を観るときには、私たちは基本的にずっとスクリーンを見ているわけじゃないですか。ジュースを飲もうとポップコーンを食べていようとメインはスクリーンに映る映像なはずです。そこで、上記のようなバラエティ番組の方法論を使われてしまうと正直クドいんですよ。情報過多なんですよ。疲れるんですよ。私も観ていて疲れましたし。


だから、映画って二時間集中を持たせるために、どっかで情報量を落として、いわば分かりにくいシーンを作る必要があるんですけど、二時間ずっとバラエティ番組のこの映画にはそれがない。緩急が無くてずっと急ばっかり。普段何気なく見ている映画がどれだけ上手く緩急を作れているのかを実感しましたね。あぁ静かな映画観たい。


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以上、ここまでずっと批判ばっかしてきたんですけど、ただ私はこういう映画もあってはいいと思ってはいるんですよね。私と同じ列にいた妙齢の女性は、私が頭を抱える一方で、満足げな表情を見せていましたし、それこそ冒頭の職場の同僚はこの映画を『面白かった』ということでしょう。この映画を面白いと感じる人は確かに存在しているはずで、それを否定することは私にはできないんですよね。


なんか普段からもっといろんな人が映画館に足を運んでほしいなと私は感じていて。だって、新規顧客を開拓できなければ、映画業界はこのまま先細っていく一方でしょう。で、インディーズから徐々に映画は減っていき、その波はメジャーにも訪れるかもしれない。それで困るのは映画ファンでしょう。だから、もう映画館に足を運んでくれればそれでよし、みたいな考えが私にはあるんですね。そう言う意味では、芸人さんを多数起用したこの映画は、普段バラエティ番組しか見ない人にとっても吸引力があるはずで、それをないがしろにするのはあまり良くないなーと思います。ミラクルが起こって、この映画から映画を多く見始める人も一人はいるかもしれないですし。


でも、この映画の面白さってバラエティ番組の面白さであって、映画の面白さではないんですね。
同僚は言うことでしょう。「『決算!忠臣蔵』面白かった」と。
私は思うことでしょう。「その面白さは映画の面白さじゃないんだぞ。勘違いしてもらっちゃ困る」と。
しかし、せっかく映画に興味を持ち始めたこの人に、それを萎ませるようなことは、極力言いたくない。
となると、私も「そうですね、面白かったですね」と答えることでしょう。

何が楽しいんだ、この会話。


周囲に左右されない「確固たる自分」がほしいものです。いくら周りが騒いでようと、悪い予感がする映画をスルーできる自分が。そんなことを『決算!忠臣蔵』を観て思いました。


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以上で感想は終了となります。『決算!忠臣蔵』、こんなこと初めて言いますが、別に観なくてもいい映画です。オススメはしませんし、どうしても観るのなら自己責任でお願いします。いや、本当に。



お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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