こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想になります。


今回観た映画は『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』。今年2月に公開されたアメリカ映画です。実は私は2月に東京に行って、その時にこの映画も見ようと思ったのですが、タイミングが合わずに見逃してしまったんですよね。しかし、今回地元の映画館が上映してくれるということで、もう配信がスタートしているにもかかわらず、わざわざ映画館まで観に行ってきました。


そして、観たところ素晴らしい映画でした。現時点で今年観た洋画の中では間違いなく一番です。好きが詰まっていましたね。


それでは感想を始めたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いします。




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―あらすじ―

老人の養護施設で暮らすダウン症のザックは、子どもの頃から憧れていたプロレスラーの養成学校に入ることを夢見て、ある日施設を脱走する。同じく、しっかり者の兄を亡くし孤独な毎日を送っていた漁師・タイラーは、他人の獲物を盗んでいたのがバレて、ボートに乗って逃げ出す。ノースカロライナ州郊外を舞台に、偶然にも出会った二人の旅の辿り着く先は……? やがて、ザックを探してやってきた施設の看護師エレノアも加わって、知らない世界との新たな出会いに導かれ、彼らの旅は想像をもしていなかった冒険へと変化していく。

(映画『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください。













※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。







この映画を一言で言うならセラピー映画でした。最初は嫌々だった二人の旅が、次第に中を深めていくうちにかけがえのないものになっていくという、ロードムービーの王道を気持ちよく進んでいるんです。根っからの悪人が一人も登場せず、ザック、タイラー、エレノアのメイン3人は凄くいい人たちで、優しい世界に包まれて、心が癒されていくようでした。本当に好きなタイプの映画です。


ダウン症の青年ザックは養護施設で暮らしています。プロレスラーになることを夢見る彼は、ビデオのヒールレスラー・ソルトウォーターに夢中。彼がプロレス学校を開いているエイデンへと向かうべく施設から脱走します。ザックを演じたのは同じ名前のザック・ゴッツァーゲン。ダウン症にも理解のある彼は、ゆっくりと少しどもりがちに話すことで障害を表現。決して誇張しすぎず、いい塩梅の演技だったと思います。


一方、どこかの漁師町。漁師のタイラーは他人の獲物を盗んでしまい、相手のダンカンからきつくお灸をすえられます。その腹いせにダンカンのカゴに火をつけてしまいます。でも、彼は彼で兄を自分のせいで亡くしたということが傷になっていて、やさぐれていただけなんですよね。だからといって火をつけたのが許されるわけではありませんが。タイラーを演じたシャイア・ラブーフは少し無骨でぶっきらぼうなところもありましたが、自分を理解してくれる相手を求めていたという寂しさをうまく滲み出していました。


火をつけたのが相手にバレて、タイラーは自分のボートに乗って逃げ出します。そこに偶然身を隠していたのがザック。ここで全く接点のなかった二人が出会います。なんとかダンカン達から逃げ出すことができた二人。タイラーはザックを置いていこうとしますが、ザックは「置いていかないでくれ」と懇願。タイラーも見捨てることができず、途中まで二人で旅をすることにします。この辺りでもうタイラーの本当は良い奴感が滲み出てますね。


そして、タイラーは途中までザックを案内し、いったん二人は別れます。ヒッチハイクを捕まえて、街を目指すタイラーですが、なんとザックの身を案じ、途中で引き返します。何この超良い奴。無理やり飛び込まされるザックを「泳げないんだ」と助けに入るタイラー。ザックの目指す場所がソルトウォーターのプロレス学校があるエイデンと知り、自らの目的地であるフロリダの途中にあるから連れていってやると宣言。ここから二人の旅が始まります。




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この二人旅がすごく暖かいんですよね。ルールを決めるところのほんわかしたやり取りや、川を渡る時のスリルなど見どころ満点なんですが、個人的に好きなのがやはり最初の夜のシーンです。ザックがプロレスラーになりたいという夢を語るんですけど、普通はお腹がブヨブヨのザックがそう言ったら笑ってもおかしくないですよね。でも、タイラーは笑わないんですよね。ザックの言葉を真摯に受け止めるんです。


ザックが自分はダウン症だからプロレスラーになれないと弱気になったときも、「人間出来ないことはあるけれど、お前は強い」ですからね。「ダウン症とかじゃなく人は魂だ」ですからね。ザックの心持ちを認めて、お前はヒーローにだってなれると励ましてくれるんですよ。ダウン症のという枕詞を取り払って、同じ目線に立つタイラーは火をつけた人間と同一人物とは思えないほど、良い奴でした。私もあんな風に認められたいです。


そして、そこからはトレーニングと称してザックを鍛えようとするのですが、この描写がとにかく愛おしい。レールの上でバランスを取ったり、草の塊を押したり、二人にしか通じない特別な握手を作ったり。とくにスイカを分け合って食べて、食べ終わった殻をメットにするシーンとかは見ていて笑顔になるほど微笑ましいものでした。旅先で出会った盲目の老人もめっちゃ良い人でしたしね。いかだを作らせて二人の移動を助けてくれました。


でもって、この映画のピークなぐらい好きなシーンが再びの夜のシーンです。ザックは足首を痛めてしまうんですけど、その解決方法がウィスキーを飲んで誤魔化すという愛くるしさ。さらに、二人は火を囲んでいるんですけど、ここでザックのリングネームをつけるシーンがあるんですよ。そのザックのリングネームがピーナッツバター・ファルコンでした。


これに気分を良くしたタイラーはその辺にあった枝でオリジナルの衣装を作るんです。ああなんて微笑ましい。重い丸太をザックが持ち上げようとするところを「お前ならできる」「お前は強い」ってめっちゃ励ましてくれますし、それまで施設で管理されてきたザックにとってはこれ以上ない暖かい言葉だったと思います。二人ともとても良い奴で、観ていて気持ち良かったですね。もう好きな展開しかなくってどうしようかという感じでした。


それでもって大事なのが癒されているのが、ザックだけではないところなんですよね。タイラーも癒しを受けているんです。兄を自分のせいで死なせてしまって傷を受けていた。孤独だったところにザックが現れて。タイラーがあんなに早くザックを受け入れたのも、きっと一人が寂しかったこともあると私は考えます。イカダで出航するシーンではタイラーはザックに身を委ねていますし、とある部分が欠けてしまったパーツたちが、お互いの欠けた部分を埋め合わせるという構図は私の大好物です。もうこの図式を作れただけで、この映画の成功は決まっていたのかもしれません。










一方、施設では脱走したザックを探す動きもあります。中心となって探していたのが、看護師のエレノアです。タイラーとは一度鉢合わせますが、その後はすれ違うばかり。しかし、前述の二度目の夜が明けた後、ザックを見つけることに成功します(ここ少し唐突だった)。当然ザックを連れ戻そうとしますが、タイラーの説得を受けるんですよね。俺はあいつをエイデンまで送ることに決めたと。まあザックがエレノアが乗ってきた車の鍵を海に投げてしまって、結局三人で旅をするしかなくなるのですが。


三人旅が始まりますが、しばらくはあまりムードは良くない様子。エレノアはザックの世話をするのが私の仕事と言いますが、それはザックの自主性を信じられていないということでもあるんですよね。だから、ウスノロと言って下に見ている奴らと一緒だとタイラーは諭すわけです。ダウン症とか関係なく同じ目線に立つことが大事だともう一度提示されるんです。人と人が分かり合うことの本質を示しているようで、ハッとしましたね。


そして、エレノアも説得されて和やかな三人旅がようやく始まります。ここからのシーンは愛おしさがさらに増していきます。途中海に飛び込むシーンや魚を食べるシーンなど三人の仲の良さを演出。エレノアもザックを一人の人間だと認める良い奴っぷりを存分に発揮。ザックが言うように「このまま三人の楽しい時間が続けばいい」と思ってしまうほどです。自然と笑顔になってしまいます。まあこの後、追いついたエイデンたちにイカダを燃やされてしまうんですけどね。


それでも、何とか先に進んだ三人はソルトウォーターの自宅に到着します。そこはぼろい平屋で、出てきたソルトウォーターもすっかり老人となっています。プロレス学校も十年前に閉校。ザックをがっかりさせたくないタイラーは「ソルトウォーターは元々いなかった」と嘘をつき、三人は立ち去ります。どうなってしまうんだろうと思ったんですが、なんと次のシーンでは顔にペイントを塗ったソルトウォーターが車に乗って、登場してくるではありませんか。悪玉なのにめっちゃ良い奴だ。本当この映画良い奴しかいねぇ。ここはようやくソルトウォーターに会えたザックに感情移入してしまって、思わず泣きそうになりましたね。
 

映画はこの後、ソルトウォーターからの指南を受けたザックがプロレスの試合に臨むという展開になるわけですが、試合前ザックはさすがに怖気づくんですよね。でも、タイラーは「お前は強い」と大声でザックを励ますんですよ。えぇ……めちゃくちゃ良い奴じゃん......(何回目だ)。私もあんな風に励まされたいですよ。勇気づけられたいですよ。そして、ザックはタイラーが段ボールで作った手作りの衣装を着てリングに上がるというね......。ああいうハンドメイド感あふれる演出に私めっちゃ弱いんですよ。どうして私のツボが分かるの……?え......好き……。




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その後は因果応報的な展開はあるものの、最後は三人がタイラーの目的地であるフロリダに行くというハッピーエンドで幕を閉じるんですよね。ここ三人とも笑顔だったのが印象的で。冒頭でザックを逃がしたカールという老人が「友達は自分で選べる家族だ」と言っていましたけど、まさにこれがこの映画のテーマだと思います。


家族に見捨てられたザックと、家族を失ったタイラー。ザックはタイラーとエレノアのことを家族と称していましたし、タイラーもザックを見捨てることだってできたはずなのに、見捨てないことを選んだ。エレノアだって無理やりザックを連れ戻すことだってできたはずです。旅を続ける中で、この三人の間には友情が芽生えていて、ラストシーンはまるで家族のようでもありました。まだこの三人の旅を観ていたかったのにと映画が終わる瞬間は思ったものです


というわけで『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』は、本当に気持ちのいい映画でした。見逃さないで良かったと思います。上手くいかなくてささくれ気味だった私の心を癒してくれて、また明日からも暮らしていくことができそうです。本当にありがとうございました。




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以上で感想は終了となります。映画『ザ・ピーナッツバターファルコン』。すごく癒される理想的なロードムービーでした。こういう優しい世界大好きです。私もかつて趣味でロードムービーのお話を書いたことがあるんですけど、こんな風に書きたかったなと心から思いました。今年観た洋画ではトップクラスに入るくらい好きですね。もう上映している映画館はあまりないですが、配信で見られるそうなので、興味のある方はぜひ観てみてください。お勧めです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい




 

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