Subhuman

ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203



こんにちは。これです。


2020年は大変な年でしたね。新型コロナが猛威を振るい3月~6月の公開作品は多くが延期。映画館も旧作を上映することでなんとか凌いでいましたが、未だコロナは収まる気配を見せません。これを書く前に上半期の記事を見返してみたのですが、新規感染者50人とか書いてあって驚きました。今じゃ東京だけで1000人に迫る勢いですからね。こんな未曾有の状況の中で、年末年始も返上して働いてくださっている医療関係者他、全ての関係者の方々には感謝してもしきれません。そういった方たちのおかげで、私は映画を観ることができています。本当にありがとうございます。


そして、今回のブログは毎年恒例の年間ベスト10です。今年は洋画大作を中心に多くの映画が公開延期、もしくは配信となりましたが、その代わりにミニシアター系の邦画が充実していて、個人的には今までと質的にはさほど変わりなかったように思えます。


ちなみに去年、2019年のマイベスト10をおさらいしておくと、

第10位:プロメア
第9位:王様になれ
第8位:ホームステイ ボクと僕の100日間
第7位:スパイダーマン スパイダーバース
第6位:空の青さを知る人よ
第5位:翔んで埼玉
第4位:海獣の子供
第3位:チャイルド・プレイ(2020)
第2位:ホットギミック ガール・ミーツ・ボーイ
第1位:バジュランギおじさんと、小さな迷子


という結果でした。アニメが多いですね。詳しくは、を参照ください。


さて、今回の年間ベスト10の選出基準ですが、去年と変わらず


・2020年1月1日から2020年12月31日の間に映画館で鑑賞した映画であること
・個人的な好きを最優先にすること



の2点でいかせてもらいたいと思います。今年はコロナ禍で配信される映画がぐっと増えましたが、映画館の大スクリーンで映画を観るありがたみを感じたことと、いつでも見られるからいつまでも見ない問題が発生したため、今年も映画館限定のランキングとさせていただきます。


あと、個人的な好きを最優先にしないと、個人でランキング付けする意味がなくなってしまうので、歴史的なこととか、業界的なことは完全に無視したオリジナルのランキングでいかせてもらいます。その方がバリエーションも増えて楽しいですしね。


選考対象ですが、2020年は計137本の映画を鑑賞したので、この中から選ばせていただきます。去年が124本なので、13本も増加した形です。コロナ禍なのに。映画館が閉館している期間があったのに。


※鑑賞した映画のリストは


以上の二本の記事をご覧ください。


それでは、前置きはここまでにしてさっそく始めたいと思います。果たしてどの映画がランクインしたのでしょうか!?













第10位:アンダードッグ


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『ロッキー』や『百円の恋』に代表されるように、映画とボクシングは相性がいいのですが、今年新たにボクシング映画の傑作が登場しました。前後編で四時間半ありますが、それに見合うだけのクオリティと興奮。逆境だらけの人生を跳ね返そうと、リングに向かう男たちのドラマは掛け値なしの熱量があります。


何と言ってもいいのが三人の主役を演じた俳優さんたち。落ちぶれた元日本一位・末永を演じた森山未來さんは、武骨な演技で燻っている感を醸し出し、未来あふれる天才ボクサー・大村を演じた北村匠海さんは眼光鋭く胸の底にナイフを隠し持つさまを出で立ちで表現。がけっぷちのお笑い芸人・宮木を演じた勝地涼さんの軽々しさとやりきれなさも素晴らしい。


この三者の生き様がリング上でぶつかる試合シーンは、『百円の恋』の制作チームが手掛けているとだけあって、嘘が一つもない。それを支えるドラマ部分も良く、彼らの試合に懸ける姿勢を最大限に高めています。四時間半たっぷりと楽しめる、一日潰す価値がある作品でした。ABEMAプレミアムで1月1日からドラマ形式で全8話が配信されるので、家でも見ることができますね。


そして、何より良いのが石崎ひゅーいさんが手掛けた主題歌「Flowers」。陽の当たらない燻った感じがよく出ていて、個人的最優秀主題歌賞です。歌い出しからして鳥肌が立ちましたね。こちらもぜひお聞きいただければと思います。













第9位:滑走路


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予定していた映画の時間が間に合わず、その代わりに偶然観た映画がなんと年間ベスト10入りを果たしました。この映画は32歳の若さで命を絶った歌人・萩原慎一郎さんの生前唯一の歌集を映画化したもので、前半は高校生、官僚、切り絵作家という三人のストーリーを交互に映す形で展開していきます。それぞれ悩みを抱えていて、ままならない日々を過ごしている様子。特に非正規などの不安定な雇用で自死した人たちを調査する官僚・鷹野がある一人の死を追っていくうちに、ストーリーの真相が明らかになります。


現在、日本で自死を選ぶ人は年間で三万人にも上っています。コロナ禍で困窮の中、その道を選んだ人も少なくないでしょう。さらに孤独死は毎日起きています。この映画で描かれたのはそんな孤独な魂の救済なんですよね。人知れず死んでいった人にも人生があって、接した人との記憶の中に生きた証が残っているという願いにも似た叫びです。私も死ぬときは一人だなと思っているので、この映画で示された生きた証拠のようなものには思わずグッと来てしまいました。


この映画は、萩原慎一郎さんだけでなく、人知れず死んでいった人々の魂をこの世に残す試みなんだと思います。正直、直前まで9位には別の映画がランクインしていましたが、私だけでもこれらの魂を受け取りたいと思い、急遽入れ替えました。観終わってすぐに歌集「滑走路」を買ったぐらいに心に残っている映画です。












第8位:アルプススタンドのはしの方


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高校演劇の名作を映画化した今作。今年の邦画で一二を争う話題作となりました。甲子園で強豪校に挑む野球部を、気が進まない状態で眺めている4人が主人公となります。彼ら彼女らは観客席でも、学校でもはしの方にいるような存在。中心として活躍する野球部やそれを応援する吹奏楽部は、自分とは遠い存在で、嫉妬心もあり素直に応援することができません。軽やかなようでどことなく重苦しさを感じさせる会話の雰囲気は、青い空には不釣り合いなものです。


はしの方に座る4人のうち、2人の演劇部は大会への参加ができずに「しょうがない」と自らを納得させていました。他の2人ももやもやした思いを抱えながら座っています。だけれど、声を枯らして応援する教師や、吹奏楽部の部長との会話を経て、少しずつグラウンドで戦っているのは同じ学校の生徒であることを再認識していきます。


相手は勝てっこない強豪校。にも関わらず「しょうがない」と言い訳することなく、立ち向かう野球部の姿に心動かされて「がんばれ」と声をあげる4人。別に応援したからと言って、必ず勝てるわけではありません。しかし、その声は選手たちには間違いなく届くはずです。また、「がんばれ」と口に出すことで、自分の鼓膜をも揺らし、自分自身にもその意志を届かせる。コロナ禍で試合も応援もなかなかできないなか、「がんばれ」と言うことの純粋さを伝えてくれたこの映画は、私にいっそう響きました。


Blu-rayは1月20日発売ですが、既にDVDレンタルやAmazon Prime Video等で配信もされていますので、よかったら年末年始にご覧ください。
















第7位:劇場版 SHIROBAKO


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第7位にはランキング唯一のアニメ映画がランクインしました。現在NHKでも放送中のアニメシリーズ『SHIROBAKO』の劇場版となるこの映画は、劇場アニメーションを作る人々の奮闘を描いています。


テレビシリーズではハッピーエンドで終わりましたが、2019年の武蔵野アニメーションは瀕死の状態。社員も少なくなり、かつてのような賑わいは見る影もありません。そんな中、他会社が投げ出した劇場アニメの企画書が持ち込まれます。それは武蔵野アニメーションの、キャラクターたちの人生をかけた一世一代の大勝負。キャラクター一人一人にエピソードがあり、それが集まって一つの作品を作り上げていく高揚感は、今年のアニメ映画の中でも屈指のものでした。ミュージカルや時代劇風などアニメーション自体も工夫されていましたしね。


そうして完成した劇場アニメ『空中強襲揚陸艦SIVA』が、この映画のラストで流れます。絶体絶命、勝ち目のない状況に追い込まれた主人公たちが、それでも明日を信じて精一杯あがく、もがく。その姿が武蔵野アニメーションの面々の奮闘と重なり、大きな感動が生まれていました。フィクションは所詮、嘘です。だけれど、私たちはそのフィクションを通して、真実を知るのです。先が見えなくても、必死にあがいて、もがくこと。そのことをアニメを通して伝えてくれたこの映画を、好きにならないはずがありません。観終わって、私も頑張ろうと素直に思えましたしね。


Blu-ray&DVDは1月8日発売ですが、既にU-NEXTでは配信が開始されているようなので、興味があればご覧ください。












第6位:前田建設ファンタジー営業部


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6位にランクインしたのは、今年一番観ていて楽しかった映画です。マジンガーZの格納庫を作るにはいくらかかるかを積算して出すというウソのような本当の話を映画化した今作は、これが好きだ!という熱に満ちていました。


最初は乗り気ではなかったメンバーたちが、その道のプロフェッショナルと接することで、だんだんとプロジェクトにのめり込んでいく様は、観ていてアツくなれますし、俳優さんたちの演技もやや誇張気味ですが、それがこの映画ではプラスに働いています。これが好きだ!という人たちの純粋なエネルギーにあてられて、いつの間にか私たちもチームの一員になったような感覚を覚えますし、だからこそ中盤の予測不能の事態には本気でうろたえました。


マジンガーZの格納庫の積算を出すなんて、言ってしまえば、意味なんて一つもないわけですよ。そんなことしたって業績には直結しません。でも、その意味のないことに夢中になれることが、どれだけ素晴らしいことかをこの映画は伝えてくれます。意味がないものがどんどん削られていっている今の状況において、この映画が生まれた意味は小さくないと感じました。それに、こんな風に自分の仕事に誇りをもって働けるのは、日々平坦な仕事をしている私からすれば、とても羨ましく映りましたしね。私も好きというエネルギーだけで動けたらどれだけ楽しいだろうかと、つい思ってしまいました。


DVD&Blu-rayはすでに発売中。レンタルや配信もAmazon Prime Video等でされていますので、こちらもよければ観てみてはいかがでしょうか。すごく面白かったオープニング映像を貼っておきますので、これが気になった方はぜひ。
















第5位:さよならテレビ


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第5位はこのランキング唯一のドキュメンタリー映画です。今まで数多のドキュメンタリーを作成してきた東海テレビが、自社の報道局にカメラを入れたそのドキュメンタリーはほとんど衝撃と言っていいような内容でした。


テレビがメディアの絶対的な王者に君臨していたのも、今は昔。苦境に立たされつつあるテレビ報道の現状は、この映画では過度な視聴率至上主義として活写されます。常に他局との比較表が目立つところに貼り出され、一に数字、二に数字。数字が取れるスクープを抜くために、月100時間以上の残業もザラです。現場の雰囲気もピリピリしていて、この職場で働いたら胃に穴が開きそうだなと感じてしまいました。


この映画では、主に三人の登場人物に重点を置いて構成されています。夕方ニュースのメインキャスターである福島さん。中途入社の派遣社員である渡邊さん。経済紙出身で報道に強い関心を持つ澤村さん。彼らには分かりやすい目標があり、そこに向かって七転八倒、四苦八苦する姿はまさしくストーリー。苦しい状況に置かれたテレビの今を映しているよう。ただ、日々の仕事に追われ、劇中で示された報道の三つの役割を全うできているとは言い難く、本当にテレビはこのままでいいのかという問題提起がこの映画のメインを占めています。


しかし、その問題提起はどこへ行ったのか、取り繕ったハッピーエンドで映画は幕を閉じようとしますが、ラストに衝撃の展開が待っていました。それはドキュメンタリーは編集されたもので、ありのままを映しているわけではないという、欺瞞を暴く展開です。事実を物語化して理解しようとしている私たちの要請に応えて、テレビは、メディアは発展してきたという構図を明らかにすることで、他人事じゃないという現実を突きつけてきます。観終わって立ち上がるまでに時間を要するほど、初見での衝撃はすごかったです。


レンタルも配信もされておらず、現在観れる手段はありませんが、観る機会があったら、ぜひ観ていただきたいドキュメンタリー映画です。















第4位:マルモイ ことばあつめ


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『パラサイト 半地下の家族』をはじめ、今年は多数の韓国映画が話題になりましたが、その中でも私の心に一番響いたのが、この映画です。朝鮮語の辞書を作ろうと苦闘する人々を描いた映画です。


辞書を作ることは、それだけで何年もかかる大変な仕事ですが、この映画の舞台である1940年代の韓国は、日本の統治下に置かれていました。日本語を話したり、日本名を名乗るように強制されたりと、日本化が進む中で、朝鮮語の辞書を作るということは、総督府に逆らう所業なのです。だから、当然一筋縄ではいかず、何度も憲兵の妨害に遭います。終盤では銃も持ち出されますしね。この映画はそんな中で、挫けずに自分たちの言葉を残そうとした人々をフィクションという媒体を用いて、記録したものなのです。


主となるのは、お調子者のパンスと真面目なジョンファンのでこぼこコンビ。正反対の二人が辞書作りを通して、お互いを理解していくというバディもの要素もこの映画には含まれており、決して説教くさくはありません。ただ、文字を読めないパンスが言葉の奥深さを知り始めたとき、それを奪おうとする日本側の政策がどれだけグロテスクなものかを、私たちは知ることになります。


この映画では言葉は、命よりも大切なものとして描かれています。人々をつなぐかけがえのないものだと。魂が形を得たものだと。かつて世界にはもっと多くの言語が存在していましたが、歴史の中で多くの言語は消えていきました。魂の消失です。この映画で描かれたのは、魂を死守するための戦いなのです。日本側が敵として描かれていますが、決して反日映画などではありません。むしろ、加害者側の私たちが観るべき映画だと感じました。













以上、10位~4位の発表でした。いかがでしたでしょうか。では、ここでベスト3を発表する前に、インターミッション。惜しくもランクインしなかった30位~11位の映画を一挙に発表したいと思います。


第30位:朝が来る
第29位:ミッドナイトスワン
第28位:パラサイト 半地下の家族
第27位:思い、思われ、ふり、ふられ(実写)
第26位:彼らは生きていた
第25位:mellow
第24位:ラストレター
第23位:娘は戦場で生まれた
第22位:映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者
第21位:プリズン・サークル
第20位:本気のしるし《劇場版》
第19位:ジョゼと虎と魚たち
第18位:デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆
第17位:ザ・ピーナッツバター・ファルコン
第16位:37セカンズ
第15位:僕たちの嘘と真実~Documentary of 欅坂46~
第14位:パブリック 図書館の奇跡
第13位:サヨナラまでの30分
第12位:三島由紀夫 vs 東大全共闘 50年目の真実
第11位:魔女見習いをさがして



それでは、いよいよベスト3の発表です!1位に輝いたのは果たしてどの映画なのでしょうか!?









第3位:his


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上半期マイベスト映画が、年間でも3位にランクインしました。去年『愛がなんだ』や『アイネクライネナハトムジーク』で、邦画界の話題をさらった今泉力哉監督が、今作では男性同士の恋愛を描いています。


迅はかつての恋人、渚と別れて田舎町で一人で暮らしています。しかし、数年が経ったある日、渚が子供を連れて再び迅の前に現れます。再び、共に暮らし始める二人。その光景はアンモラルな要素は全くなく、ささやかな幸せといつ終わるかもしれない不安感が漂っていました。迅を演じた宮沢氷魚さんも、渚を演じた藤原季節さんもそれぞれ繊細さを持った演技を見せていて、こだわり抜かれた構図とともに抜群の存在感を発揮しています。


概要からすればこの映画は、昨今急増しているLGBT映画と思われるかもしれませんが、この映画が優れているのは上記の三人だけで完結していないことです。迅と渚の二人に注がれる懐疑的な眼差しもありますし、なにより迅の妻である玲奈の苦悩も描いていて、単なるLGBT映画からは一歩抜きんでています。誰しもに事情がある、辛いのは自分だけではないという当たり前のことを当たり前に描いていて、普遍性を持った映画だなと感じました。玲奈を演じた松本若菜さんもまた良かったですしね。


そして、親権を巡る裁判で互いに思いの丈を吐露して、少しだけ分かりあった彼ら彼女らは、最後にある一つの結末を迎えます。このラストシーンの清々しさは、今年観た映画の中でもピカイチで、ままならない現実の中に一筋の希望を見たようでした。


この『his』、実は前日譚としてドラマ版もありますが、たとえこちらを見ていなくても映画単体として十分に楽しむことができます。現在Blu-ray&DVDが発売・レンタル中。Amazon Prime Video他配信もスタートしていますので、よろしければ観てみてはいかがでしょうか。














第2位:佐々木、イン、マイマイン


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『his』に続いて、藤原季節さん主演の映画が2位にランクインです。今年も終わりに差し掛かった頃に公開され、一気に今年の邦画を代表する作品となった青春映画の傑作です。


佐々木コールがなされると、どこでも構わず服を脱いで全裸になってしまう佐々木。彼ほどではないにしろ、そのようなお調子者はどのクラスにもいたはずです。私はそんなお調子者を自分とは違う人種だと決めつけて、見下していました。だが、この映画で描かれたのはそんな佐々木の暗いバックボーンです。あまり帰ってこない父親との二人暮らし。主食はカップ麺。明るく振る舞っているのも、無理しているのではないかと思うほどで、遠い存在だと思っていたお調子者は自分たちと変わりない学生だったことを思い知らされます。


きっと多くの人は学校に通っていたことでしょう。どんな学生時代を過ごしたにせよ、クラスに所属していたならば、お調子者は記憶の一ページとして刻まれているはずです。学生時代を青春と呼ぶならば、それは青春の構成要素。だけれど、この映画で描かれたのはそんな「青春」への別れです。


「さよならだけが人生だ」とは、もう誰が言い始めたか分からないほど有名な言葉です。私たちには手が二つしかありません。両手に持てる思い出にも限界があります。年を重ねていく以上、いつかは青春時代に「さよなら」を言わなくてはなりません。人生は「さよなら」の連続。「さよなら」をすることで手に入るものもある。でも、「さよなら」をしても青春時代の思い出は確かに心の中に残っていて、ふとした瞬間に自分を勇気づけてくれる。これらのことが終盤の展開に詰め込まれていて、私は涙が止まりませんでした。ラスト付近のセリフを探して、しばらく口ずさんでいたくらいです。


あまり注目度は高くなかったけれど、観てよかったと思いました。













第1位:れいこいるか


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今年のベストも「さよなら」を描いた映画です。タイトルを聞いてピンとくる人は、おそらくあまりいないのではないでしょうか。私も松本で一度だけ上映されたのを観に行ったのみですから。だけれど、その一回で他のどの映画にも負けない印象を『れいこいるか』は残してくれました。


主人公となるのは阪神淡路大震災で、一人娘・れいこを亡くした夫婦です。二人は離婚。お互いに合わないまま23年の時が流れます。そして、再会した二人はれいことの思い出の地を巡る。これだけ観れば死を用いたお涙頂戴のストーリーと思うかもしれません。ですが、この映画ではお酒を飲んで、笑って、そういった何でもないようなシーンがかなりの割合を占めています。震災は多くの人の命や生活を奪っていきました。だけれど、人々の営みまでは奪い去ることができない。いたって平凡に暮らしていた人々を映すことは、生を浮かび上がらせ、私たちに襲い来る災害に抵抗しようとしているように私には見えました。


また、この映画は度々、大胆に時間が飛びます。そこでけっこう重要な出来事が省かれていて、もしかしたら戸惑いを覚える人もいるかもしれません。しかし、私はこの間にも描かれていない人々の人生を想像することができるので、この大胆な映画的省略はかえって好きです。プラスにしかなりません。


そして、淡々と進んでいるからこそ、終盤の感情が表出したシーンの威力は絶大。予告にもあるいるかのぬいぐるみを抱えるシーンもそうですが、夫婦に限らず誰もが震災による悲しみを背負っているんですよね。だけれど、それを表に出さず、顔は穏やかに笑っている。その葛藤を感じて、本当に何気ないセリフで涙を流している自分がいました。終わり方も復興のシンボルを映していて最高ですし、エンディングテーマもグッときます。


死にゆく者たちへのメッセージとして、今年一番心に響いた映画でした。他の誰が挙げなくても、私はこの映画を今年のマイベストに推したいです。





2020年映画ベスト10結果一覧

第10位:アンダードッグ
第9位:滑走路
第8位:アルプススタンドのはしの方
第7位:劇場版 SHIROBAKO
第6位:前田建設ファンタジー営業部
第5位:さよならテレビ
第4位:マルモイ ことばあつめ
第3位:his
第2位:佐々木、イン、マイマイン
第1位:れいこいるか


















以上、2020年映画ベスト10でした。いかがでしたでしょうか。今年は邦画9本に、洋画1本のみと極端な邦高洋低となってしまいました。これは洋画大作が延期されたこともありますけど、そもそも私が洋画をあまり観られていないことが大きいと思います。40本くらいしか観ておらず、ミニシアター系の洋画は全くカバーできていませんから。来年はもう少しその方面も発掘していけたらなと思っています。


こうしてみると、一般的な物語には描かれないような陽の当たらない人間の映画が、今年は個人的には強かったと感じています。『アンダードッグ』『滑走路』『アルプススタンドのはしの方』『マルモイ ことばあつめ』『佐々木、イン、マイマイン』『れいこいるか』がそうですね。やはり私も世界のほんの隅っこに生きている実感はありますし、中心でワイワイ騒いでいる人よりも、窓の側で本を読んでいるような人が気になる性分です。現実のスポットライトは数パーセントの人間が独占していますが、映画ではそれ以外の人にスポットライトが当たるので良いですね。


また、今年の個人的な映画のキーワードとして「さよなら」が挙げられると思います。『滑走路』『佐々木、イン、マイマイン』『れいこいるか』。この三作はいずれも死別を描いており、残された人間はどうするかが一つのテーマになっているように感じられます。『アンダードッグ』の主題歌「Flowers」でも「さよなら」は歌われていますし、惜しくもベスト10圏外となりましたが、『サヨナラまでの30分』もありました。人生は「さよなら」の連続である。長い長い「さよなら」である。そのことをしっかりと描きながら、ひっそりと隠された希望を掬い上げてくれる。そういった映画が、今年の私のモードに上手くハマったんだと思います。


また、今回のランキングを選ぶにあたって、最重要視したのがです。「どれだけ魂がこもっているか」「どれだけ魂を感じたか」が一番の選考基準になりました。ただでさえ、人とのつながりが希薄化している現代において、コロナ禍で外出自粛やリモートなどでさらに人と会う機会は減りました。せっかく会ったとしても、マスクをしていて、完全な表情は読み取れない状態です。普段は一人で映画を観ることが多い私ですが、やはり人とのかかわりに飢えていたんだと思います。そんな私の心を潤すどころか、ありあまる魂の洪水を浴びせかけてくれた映画を上位に選出しました。おかげさまで、他の方々とはだいぶ違ったランキングになりましたが、これが私のベスト10だと胸を張って言えます。


それでは、そろそろこの記事を結ばせていただきたいと思います。2020年は本当に大変な一年でしたし、コロナ禍は2021年も続きそうですが、皆さんどうかお元気で、死なずにまた来年、年間ベスト10を発表し合いましょう。その際には私のこともほんの少しは気にかけていただけたら幸いです。


今年一年の感謝を込めて


本当にありがとうございました!!!




おしまい


歌集 滑走路 (角川文庫)
萩原 慎一郎
KADOKAWA
2020-09-24



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