こんばんは。これです。今日は「ふくろうず」の話をしたいと思います。皆さん知ってますか「ふくろうず」。え?知らない?これを機に知ってください。後半にはいつものように曲紹介もあります。では始まります。



私の好きなバンドの話
第7回:ふくろうず



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”内田万里(Vo,Key)、石井竜太(G)、安西卓丸(B,Vo)からなるただのJPOPバンド"ふくろうず。


私がふくろうずを初めて知ったのは、これも「the pillows山中さわおのPOISON ROCK'N'ROLL」からですね。さわおさんが2011年のベストアルバムを決める企画だったかなで、ふくろうずの「砂漠の流刑地」を紹介してたんですよね。「グワーッと掴まれた」みたいなこと言ってた気がする。


で、その「砂漠の流刑地」を聴いてみて、1曲目の「もんしろ」で全身に電流が走りました。「命を燃やして飛んで飛んで消えてけ!」という駆け抜けるような疾走感と、「あたしこのままでいい 逃げてるのか、それでもいい」というだめな自分も受け入れていく姿に「ああこうなりたいな」と思ったものです。今でも「もんしろ」で受けた衝撃は忘れられない。ふくろうずを聴いていくうちに「もんしろ」みたいな曲は少数派だと知ったんですけどね。ふくろうずってミドルテンポの曲が多くて「もんしろ」みたいなハイテンポな曲ってあまりないですし。その次の「砂漠の流刑地」からして雰囲気ガラリと変わりますからね。


そこからはふくろうずにはまって「テレフォンNo.1」からは毎回CDを買っていましたし、ライブにも行ったことあります。「マジックモーメント」ツアーだったかな。赤坂BLITZ(現マイナビBLITZ)で。今思うとその頃キーボードの練習をしていたのもふくろうずをコピーしたいって思いがどこかにあったのかもしれない。いや、あった。「ぷりんと楽譜」で「ふくろうず」って入れて検索してた。何も出てこなかったんですけど。


私がふくろうずで好きなのは、内田さんのキュートで舌足らずでどこか電波的な歌声やエモーショナルなキーボード、石井さんの普段は飄々としてるけどいざとなったら情熱的にかき鳴らされるギターや、安西さんのシンプルだけど確かな存在感があるベースだったりいろいろあるんですけど、一番は内田さんが作る曲や歌詞の世界観なんですよね。自分を必要以上に大きく見せようとしてないし、だめだなってところも思いのまま歌にしている。私も「自分ってだめだな」って良く思う内省的な性格なので、そういうふくろうずだったり内田さんの持つ内省的な部分に惹かれたんですよね。でもただ内省的であればいいってわけじゃなくてやっぱり前向きな部分もほしいわけですよ。そりゃ暗いだけじゃ聴いてるこっちの精神が参っちゃいますし。そういう意味でもふくろうずはピッタリでしたね。


確かに自分はだめなんだけど、そんな自分も受け入れて前に進んでいく」というスタンスがふくろうず、内田さんの作る曲には一貫してあるんです。1st「ループする」のタイトル曲「ループする」なんてその最たるものです。

こんなことばっかり
続けてる日々じゃ
全然だめだって
ちゃんとわかってる

「ループする」は上の歌詞で始まります。だめな自分を自覚してとても内省的です。
これは1番ですけど2番で

こんなことばっかり
続けてる日々を
あたしはばかだから
愛しちゃってるんだぜ

って歌うんですよ。ゾクゾクしますよねこの歌詞。「理想の自分」とは程遠い存在である「だめな自分」を既に受け入れていることに気づいちゃってます。でも「理想の自分」というものは確かに存在していて、「だめな自分」を受け入れてることに気づいたところで「理想の自分」との距離は縮まっていない。それを知ってしまうと人というのはそのギャップに悩みます。胸を痛めつけられます。ふくろうずの何が凄いってその「胸の痛み」まで受け入れちゃってることなんですよね。

いいね、いいね、切ないね
まだちゃんと胸が痛むよ

という歌詞で「ループする」は締めくくられます。「胸の痛み」は「私が生きてる証拠」と言わんばかりのこの歌詞。ふくろうずは「だめな自分」という「現実」を認める。でも全てを肯定するわけじゃない。「理想」に向かっていかないといけないのは事実。その「理想」に向かって自分との葛藤に苦しみながらも少しずつでも進んでいく。そういうスタンスが羨ましいなって思うんです。私はまだ「ダメな自分」を受け入れるってことができていないので。もっと「だめな自分」という「現実」を受け入れることができればいいんですけど、どうやら「それを受け入れてしまったら終わり」と思ってる節があるらしい。でもそんな「『だめな自分』を受け入れることができない」だめな自分にもふくろうずの音楽は寄り添ってくれるんですよね。世間に溢れてるただ「頑張ろうぜ」と励ますだけの歌にはついていけてない私のような「だめな人」のためにふくろうずはいてくれたんだと思います。


だめな私を認めてくれるふくろうずの音楽はある種の心の拠りどころにもなってましたし、かなりの信頼を置いてたんですよね個人的に。なので去年の末に解散が発表されたときは本当にショックが大きかったです。こんな書き方はどうかと思うんですけど、率直に「裏切られた」って感じました。信じて分だけ余計にね。


もちろん今までふくろうずが残してくれた音楽はこれからも残ります(というか私が残す。これからも聴き続ける)。小さいながらも確かに産声を上げた「ループする」、それに続いて内省的な自分を歌った「ごめんね」(個人的に一番好きなアルバム。ガチ名盤)、パワーアップしてエモさが増した「砂漠の流刑地」、ドラマーが抜けて3人で新たに歩み出した「テレフォンNo.1」、打ち込みを多用するなど新機軸を示した「マジックモーメント」、内田さんのガーリーな部分が今までにも増して強く出た「ベイビーインブルー」、事務所を移籍し、ふくろうず的JPOPをもう一度見つめ直した「だって、あたしたちエバーグリーン」、そして脱退したドラマーをサポートに迎えまた次の10年へとまた歩き出したと思ったらラストアルバムになってしまった「びゅーてぃふる」。これらふくろうずの音楽は私にとって宝物です。これからも聴いていくとは思うんですけど、やっぱりもう新しいものが生み出されないっていうのは悲しいことですよ。もっとふくろうずの音楽を聴いていたかった。それは偽らざる本音です。


繰り返しになりますけどふくろうずって「だめな人」のためのバンドなんですよ。だめな人に「私は私でいいんだ」って勇気を与えてくれてたんです。そのふくろうずがいなくなってしまったってことは「だめな自分」を認めてくれる人がいなくなったってことで個人的には結構沈みましたね。関係が悪化して解散したのではなくて、セールス的な不振が理由で解散してしまったのもやりきれない。もっと普段から好きって言ってたり、他の人に勧めていたら何かが変わってたのかもしれない。それにもっとライブにも行っとけばよかった。行くチャンスはいくらでもあったのに。


ふくろうずの解散は今までの私の考え方を大きく変えました。「もっと好きなものは好きって言おう」「永遠じゃないんだからライブにも行けるだけ行っとこう」「好きなもののためにお金を使うことはみんなが得する行為だからどんどんしていこう」っていう風になりましたね。かなり好きだったバンドが解散してしまうっていう経験は個人的に初めてだったので。ふくろうずに出会ってそして別れなければこういう考え方にたどり着くのはもっと遅くなっていたと思うので、そういう意味でもふくろうずが私に与えてくれた影響はでかいです。ありがとうふくろうず。出会えてよかった。


グッバイふくろうず、フォーエバーふくろうず。最後にもう一度、ありがとう。





…......



ふくろうずは解散してしまったんですけど、でも3人とも音楽を辞めてしまったわけではなくて。現在は石井さんは他のバンドのサポートギターとして活動していて、内田さんもこの前大阪でライブしてましたしね。安西さんをサポートに迎えて。で内田さんはその時に自主製作のCDも一緒に売ったらしい。枚数が少なくて多くの人に行き渡らなかったから「(通販するとか)何とかします」って言っていたそう。とりあえずは内田さんのCDが通販されるのを待ちたいなっていうのが今の私の気持ちです。早く通販されないかな。

これからも元ふくろうず3人の活動を気にし続けながらふくろうずを聴き続けます。いつか再結成されるその日を願いながら。






おしまい












































じゃない!!


ああ危ない。曲紹介忘れるところでした。いつも通り5曲紹介します。よろしくどうぞ。

・できない



中毒性のあるこの曲。「見せて!」というシャウトでそれまで溜められていた所在なさが爆発するのが気持ちいい。最後なんてもう感情の昂りが抑えられなくなってますし。内田さんの独特な歌声も相まってまるでこちらの心を見透かされているかのよう。すごくドキドキする。あと安西さんのベースが不穏さを醸し出していて好みですね。なのに全体としてはJPOP的な爽やかさもあってそのバランスが絶妙な曲です。本当にいけない心を見せてしまいたいけどやっぱりそれは「できない」。でも背徳感ってとても気持ちものだし。そういうせめぎ合いの曲です。1st Album「ループする」収録。






・ごめんね



ふくろうずの代表曲と言える曲です。とにかく切ないですよね。出会ったことすら悔やむような恋愛の終わり。こんな私でごめんねというやりきれなさ。別れを告げるシーンから始まって別れた後の寂しさや辛さがこの曲では歌われています。「ごめんね」の繰り返しがグッとくる。謝罪や後悔や自己正当化、感謝など諸々の感情が「ごめんね」という4文字に込められています。自分で決めた恋愛の終わりなのに自分でも受け入れられずに苦しんでいる。でも少しでも受け入れてちょっとずつ進んでいこうとするかのような希望が垣間見れる。そこがこの曲の好きなところです。2nd Album「ごめんね」収録。








・テレフォンNo.1



ふくろうずの中でも一二を争うほどポップに振り切った曲です。電話を待つ片思いの女の子の心情を歌ってます。こういうテーマって切ない方向に行ってしまいがちだと思うんですけど、そこは"ただのJPOPバンド"ふくろうず。キャッチ―なメロディとカラフルな世界観で切なさやそれに伴う暗さを表面上はあまり感じさせない。とても楽しく聴ける仕上がりになってます。かといって明るく楽しくだけかと言われればそうでもない。どこか冷めた部分もある。その両面性が好きですね。とにかくまずはMVを見てほしい。個人的にふくろうずの中で一番好きなMVですので。なぜかって?このMVでの内田さんが一番かわいいと思ってるからだよ。1st mini Album「テレフォンNo.1」収録。







・うららのLa



ボーカルの内田さん曰く「より多くの人に聴いてもらおうと思って作った曲」。サビで鳴るシンセがいいですね。この曲も失恋とそれから立ち直る姿を歌っていて、そういう意味では「ごめんね」から続いてるところもあるのかもしれない。ふくろうず、内田さんの歌詞って一貫して片思いだとか失恋だとか恋愛の切なく悲しい部分を描いていて(多くのJPOPがそうしてるように)、やりきれなさや絶望感みたいなものがある。でもそれを受け入れて進んでいこうっていう希望も確かに存在してるんですよね。「傷あとは消えないけど これでいい これでいいのさ」という歌詞に代表されるように。そのスタンスがとても気持ちいいです。5th Album「だって、あたしたちエバーグリーン」収録。








・びゅーてぃふる 



ふくろうず最後のアルバムのリード曲であるこの曲。これも片思いの曲ですね。内田さんの少女趣味が爆発してます。基本的には一途に想っているんですけど、決して依存的、盲目的ではない。浮気心や嫉妬心のようなひねくれたマイナスの部分もあるのが好きですね。最後の「僕は君を愛している、たぶん」の「たぶん」が浮気心の中に照れ隠しを混ぜていてたまらないです。それとメロディがとにかくいい。シンセがこの歌の持つ切なさを倍増させていて素敵。手数の多いドラムも個人的には好みですね。和テイストのMVも面白いです。何なんだ途中の謎ダンスは。6th Album「びゅーてぃふる」収録。












以上で「私の好きなバンドの話第7回:ふくろうず」は終了となります。お付き合いいただきありがとうございました。よかったらふくろうず聴いてみてください。1stの「ループする」からリリースされた順番に聴いていくのがおすすめです。

次回第8回「thee michelle gun elephant」に続く。

本当におしまい



びゅーてぃふる
ふくろうず
徳間ジャパンコミュニケーションズ
2017-09-06