こんばんは。これです。えーと今日も映画を観に行きました。いくつか選択肢があった中で今回選んだのはヤクザ映画「孤狼の血」。邦画見たいなって思ったのと今までヤクザ映画を観たことがなかったのでちょっと挑戦してみようかなというのが主な理由でした。あとは時間の都合。
観終わって初めてのヤクザ映画でしたけど面白かったです。いや正直ここまでとは。今回はその感想です。よろしくお願いします。

私はヤクザ映画始めてみたんですけどヤクザ映画って面白い!
出てくる男たちの多くが渋くてかっこいいんですよね。底知れなさを感じさせる。広島弁もいいですよね。こう「本場!」っていう感じがして。「仁義なき戦い」も広島弁じゃないですか(それくらいは知ってますよ)。標準語とは迫力が段違いですよ。
あとやっぱりヤクザ映画とだけあってもう暴力のオンパレード。「ここまでやるの...」と私はドン引きしたんですけどでも面白かったです。暴力に次ぐ暴力が生み出すエクステンションに魅せられました。
ドスやチャカというヤクザ映画を知らないような人でも知ってる象徴的なアイテムの出番が多かったこともヤクザ映画を知らない私にとっては有り難かったです。取っつきやすくて。出だしからエンコ詰めをするんですよ。「うわっ、こういうこと本当にやるんだ」(フィクション)という驚き。私が想像してるヤクザ映画のイメージそのもので震え上がってたんですけど、ベタすぎて逆に笑いがこみあげても来たんですよね。「シリアスな笑い」とはこのことかって。
それととにかく主演の二人が素晴らしかった。
役所広司さんは正義なんだか悪なんだか分からないダーティな刑事を演じていたんですけど、その迫力にやられました。広島弁もネイティブなんじゃないかと思うくらいでしたし、一言一言に凄味があった。それと目つきがとにかく怖い。金◯抉り取るところなんてもう完全にイッてる人の目でしたし、何でもないようなシーンでもその視線が刺さる刺さる。ジャンボ宝くじのCMに出てる人とは同一人物と思えないです。
でもそれ以上に素晴らしかったのは松坂桃李さんですよね。後述しますが、クレジットでは役所広司さんが最初に出ていたんですけど、この映画は松坂桃李さんの映画だって観終わった後にまず感じました。最初は頼りないペーペーの刑事だったんですけど、徐々に一人の漢になっていく感じがもうたまらんですよ。とくに終盤なんてもう役所さんに負けないくらい怖かった。徐々に目に静かな狂気が満ちていくんですよね。その侵されていく様が印象的でした。前半部分の頼りない芝居も感情移入できて良かったですし、覚悟を決めてからの顔がもう本当にかっこいい。あれは反則でしょう。「男のための映画」みたいなキャッチがされてましたけど個人的にはそんなことは全くないと思います。松坂桃李さんを主人公に置き、今までとは異なるカッコよさを押し出したことで女性にも受け入れられる映画になってるんじゃないかなと感じました。朝ドラでの印象とは全く違いますね。同じ人とは思えない。
そして脇を固める俳優さんたちも竹野内豊さんや江口洋介さん、中村獅童さんなどベテランぞろいでした。安定感が半端ないんですよね。とにかく頼もしい。いるだけで画面が引き締まる。広島弁も上手くてモノホンのヤクザの人なんじゃないかって思っちゃいました。
「孤狼の血」はそんな豪華俳優陣の共演を楽しむことができる映画でした。皆が皆かっこいいですし、これは観てほしいです。豚のう◯こ食べさせられるシーンから始まってエログロは満載なんですけど、まあそれはヤクザ映画の標準装備ってことで一つ。
※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。未見の方はご注意ください
この映画って主人公を誰と捉えるかっていうのがけっこう大事なポイントになってまして。「予告を見ても全力で役所広司さん演じる大上章吾を前面に押し出してるし、主人公は大上じゃないの?」って思いますよね。実際私もそう思ってました。
たしかに大上というキャラクターはダーティでかっこよかった。「捜査のためなら使えるものは何でも使う」。これは「ダーティハリー」から続く男性の憧れです。
これは完全な余談になるんですけど「ダーティハリー症候群」って言葉があるんですってね。意味は「緊張状態にある新人警官が、自らを逞しく見せようとするあまり過度の暴力をふるってしまうこと」のようです。うーんどこかで聞いたような…?
と思ったら分かりました。これ「クレヨンしんちゃん」の映画であったやつだ。「暗黒タマタマ大追跡」だったかな。セクハラ事件に拳銃を持ち出した新人女性刑事がいたんですよね。これまさに「ダーティハリー症候群」そのものだなって。はい、それだけです。脱線すみませんでした。
情報を聞きだすためには袖の下を受け取るなどヤクザとズブズブの関係になることも辞さない。情報を聞きだすためなら金◯をえぐり出すなどヤクザと同等以上の拷問だってする。これだけならただのヤベーやつですけど、これらの行動の裏には大上なりの正義がちゃんとあったんですよね。全てはカタギのためだという正義が。
大上はカタギのことを考えて行動していたんですよね。だってヤクザの抗争がはびこる街にカタギが安心して住めるわけないじゃないですか。カタギの安全のために公務を執行する。実に警察官らしい姿です。そのためにはヤクザでさえ駒として扱う。その割り切り方に憧れちゃいます。
その思考は立派ですけど手段としては褒められたものじゃありません。カタギの養豚場のおっちゃんに「狂ってる」って言われてましたからね。カタギのためを思ってのことなのに逆にそのカタギから引かれてしまうとは何とも皮肉なものです。そんな悲しさを内包してたのも大上章吾というキャラクターの魅力の一つですね。
そんな大上を主人公としてとらえると、松坂桃李さん演じる日岡秀一(通称:広大)は、後輩で捜査にくっついてきてるだけの新人っていうキャラクターということになります。でも違うんです。これ逆だったんです。実は主人公は日岡でその先輩が大上という図式だったんです。もっというと大上と日岡のダブル主人公だったんです。私の好きなダブル主人公。
この日岡というキャラクターは真面目で大上の違法スレスレ(というか完全に違法)捜査に疑問を抱くというキャラクター、当初はそうでした。でもこれ実は100%本人の意志というわけではなかったんです。日岡は大上の違法行為の内偵のために呉原東署に配属されたというバックボーンがあるキャラクターでして。まあ広島大学卒で高学歴で真面目という性格を上層部に見込まれて送られたっていうのもあるんですけど。
でも大上と一緒に捜査を続けていくうちに徐々に迷いが出てくるんですよね。「正義とは何なのか」っていう迷いが。大上の「法律がヤクザしばいてくれんか」「食われる前に食わないかん」という言葉がますます日岡の迷いを深めます。さらに、自らの身を顧みない大上の捜査に日岡は同情するようになっていきます。
その迷いはスナック梨子で6時間飲み続けたのちに大上が現れたことで爆発します。「こんな綱渡りいつまで続けんですか」と。大上はこう答えます。「確かに綱渡りかもしれん」「警察とヤクザどっちに傾いても落ちる」「落ちないためには前に進むしかないんじゃ」と。ここで日岡は気づいてしまったんですよね。大上に付き合わされているうちにもう自分も綱渡りをしちゃっているということに。もう戻ることは許されない。前に進むしかないということに。
日岡ってキャラクターの何が特徴的かっていうと、鑑賞者視点のキャラクターであるということなんですよね。少なくとも私は鑑賞者視点で喋る日岡に感情移入してました。私も真面目な性分なのでこんな捜査許されるわけないだろって思いながら観てましたし、「オイオイオイ死ぬわアイツ」って私が思ってたことも日岡はそのまま喋ってくれました。
祭りの中で大上の真実を知ることになる日岡。自らの保身のため動く警察やヤクザとは違い、大上はカタギのために動いていた。自分は警察上層部の保身のために大上の内偵をされていたことを明らかにされ、日岡は笑います。「もうどうでもよくなってきて」。日岡の頭の中でグチャグチャにされていたのと同時に私の頭の中もグチャグチャにされていました。「何が正義なのか」という問いが日岡にそして私たちに襲い掛かります。
頭の中がグチャグチャにされたまま帰宅し、大上の自分に対する思いを知り泣く日岡。このシーンはやばかったですね。日岡は大上に起こられてばかりで全く認められてなかった、でも心の中では認めていた。それまで日岡にずっと感情移入していた私たちにとって、これが自分事のように押し寄せてくるんですよ。今年観た映画の中で一番涙腺にきたシーンかもしれないです。日岡に感情移入してた分だけ感動も大きかった。上手い。
そして訪れる主人公交代劇。物語終盤には主人公は完全に日岡になります。ある出来事を境目に覚悟を決めた日岡。大上の狂った部分がそのまま日岡に受け継がれます。映画の中のセリフを借りると「ミイラ取りがミイラになった」。気に入らないやつを怒りとダーティハリー症候群に任せてボコボコにする日岡。でも大上の時と比べて「やりすぎなんじゃないか」とは感じませんでしたね個人的には。それも日岡に感情移入していたからこそなんでしょう。「日岡やっちまえー」という思考に私の脳は支配されていました。鑑賞者視点である日岡が狂っていったことで鑑賞者である私達も狂っていったのです。私達もダーティハリー症候群に罹患してしまったのです。この頭のネジがぶっ飛んでいったような快感といったらもう最の高でしたよ。超気持ちいい。
映画の最後に大願を成し遂げた日岡。その達成感がこちらにもダイレクトに感じられました。「ああ良かった。これで大上さんも喜んでくれるわ」と思わずにはいられない。でもまだヤクザは壊滅したわけではないですし、これからも日岡の戦いは続いていくはずです。私は映画が終わってその続きを観たくなりました。「孤狼の血」ワールドにはまってしまったどうしよう。
ここまで書いた通り私はこの映画にはまったんですけど、それは別に暴力シーン、エログロに耐性があったわけではなくて、松坂桃李さん演じる日岡秀一にかなり感情移入したからなんですよね。逆に言うとどれだけ日岡に感情移入できるかがこの映画を楽しめるかどうかの分かれ目です。日岡に感情移入できなければ暴力シーンやエログロに耐性があっても楽しめないと思いますし、感情移入できれば耐性がなくても楽しめる。そんな映画でした。これは日岡のように真面目な人なら真面目なほどハマるんじゃないかな。R15とかヤクザ映画とか関係なしに多くの人に観てもらいたいなと。そう思える映画でした。オススメです。
以上で感想は終わりになります。いやー面白かった。ヤクザ映画もいいかもしれない。
なんか今「仁義なき戦い」や「極道の妻たち」に興味が出てきてるんですけどどうなんですかね。これらの作品日岡みたいな鑑賞者視点のキャラクターいるのかな。いつか借りて観てみたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
おしまい
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