Subhuman

ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203

カテゴリ: 感想



こんばんは。これです。


2021年上半期もコロナ禍は続きましたね。三度の緊急事態宣言が出て、映画館も休刊になるなど、主に都市部に大きなダメージが行ってしまいました。公開延期となった映画も数多く、相変わらず映画業界は苦境に立たされていますが、ワクチン接種も始まったりと少しずつ光も見え始めています。これから公開延期になった映画も続々と公開されるので、応援するためにも多く映画館に通いたいですね。


さて、今回のブログは恒例の振り返り企画。これ的!2021年上半期映画ベスト10です。私の住んでいる地域では、映画館が休館になることはなく、今年の上半期は107本の映画を鑑賞することができました。去年の上半期と比べても3割増しくらいで、多く観てますね。逐一ブログに感想を書かなくなったせいです。


※ちなみに鑑賞映画のリストは以下の月間ランキングをご覧ください。
 
     
 

順位の発表をはじめるにあたって、ここで二つの個人的な選考基準を説明します。


1.2021年1月1日~2021年6月30日までに映画館で鑑賞した映画であること
2.個人的な好きという気持ちを最優先にすること



私は地方に住んでいるので、ミニシアター系の映画は公開されるまでにタイムラグがある場合が多い印ですよね。また、近年では映画の配信がますます盛んになっていますが、そもそも私はそこまで家で映画を観ないのと、家出のテレビやスマートフォンでの鑑賞は、映画館と同じ体験足りえないと考えていますので、今回も選考からは外させていただきました。


それと、個人の感情を第一にした方が、ベスト10の顔ぶれにもバラエティが出て面白いですしね。今回も世間的な評価を無視して、主観まるだしで10作品を選出させていただきました。


果たして、どんな映画がランクインしたのか。1位に輝いたのはどの映画なのか。


それでは、何卒よろしくお願いします。












第10位:劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト


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Filmarksの初日満足度が1位で、ファンしか観ていないとはいえ、その評価の高さが気になって、その次の日にたまたま時間が合ったので、完全初見にも関わらず観に行きました。フライヤーに「初見でも分かります」と書いてあったので、「本当だな?その言葉信じるぞ」と思いながら観たのですが、全くもって一ミリも分かりませんでしたね。とにかくバキバキに決まった映像にぶっ飛ばされました。こんなもの初見で分かるわけがありません。でも、観終わった後の興奮が凄かったですね。とんでもないもの観たなと。


この映画の舞台は、私立聖翔音楽学園という演劇を学ぶ学校。今思い出してもわけが分からないオープニングの後には、メインキャラクターが進路相談という名目で、次々に自己紹介をしてくれます。まあ初見で9人を把握するのは難しいですけど、一見さんへの配慮ですね。それからは主人公の愛城華恋とその幼馴染の神楽ひかりの回想を挟みながら、それぞれの進路を考えていく話なのかなと思わせといての、電車のシーンですよ。


いきなり電車がステージに変形したと思うと、画面には「ワイルドスクリーンバロック」という謎の文字列が。がっちりとした歌も流れて、大場ななというキャラクターが、仲間たちに攻撃を仕掛けるという、一目見て飲み込めるはずがない映像が展開されます。この映画では生徒同士の諍いや感情を、レヴューという演劇に乗せて語ります。


デコトラ、清水の舞台、オリンピック、ハラキリ、東京タワーなど何でもありのやりたい放題です。システム自体は、観ていると何となく飲み込めてくるものの、なぜ武器を持って戦っているのかは、全く分かりません。だけれど、アクションも冴えてるし、何より面白いからヨシ!と、ねじ伏せられてしまいました。口上もかっこいいですし、何度でも観たくなる魅力がありましたね。


だけれど、ぶっ飛んでいるようで、骨格的には卒業後どうするかという進路の話なので、意外と地に足はついています。最後は清々しい気分になります。初見でも分かるとはとても言えませんが、映画館で見るべき映画だと思うので、興味があればぜひ観てほしいですね。








第9位:まともじゃないのは君も一緒


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公開規模は大きくないものの、朝ドラにも主演中で、飛ぶ鳥を落とす勢いの清原果耶さんが出演しているということで期待していたこの映画。観ている間、いい意味でずっとニヤニヤが止まりませんでした。


数学好きで普通の恋愛が分からない予備校教師と、知ったかぶる癖に恋愛経験に乏しい教え子が織りなす会話劇がメインのこの映画。成田凌さんの不器用な演技が愛らしく、清原果耶さんのあーだこーだ作戦を考える姿が微笑ましい。序盤のシーンに代表されるように、会話自体のテンポも良く、上質なコントのような笑いを提供してくれます。軽やかな劇伴も最大限マッチしていましたし、ストレスフリーで何時間でも観ていたくなりました。


それでも短くまとめて、この二人の先をもう少し観てみたいと思わせるところで終わっていて、気持ち良く映画館を後にすることができました。日本語ならではのリズムを大切に練られた脚本は、邦画の一つの方向性を示したと私は思います。こういう邦画ばっかり観ていたいですね。本音を言うと。


また、少しずれた二人の視点から、社会にはびこる「普通」という呪縛を皮肉っているのもポイント高いです。結婚ができなくても、普通じゃなくても、世界は素晴らしいんですよね。私もまともな人間ではないので励まされました。ちょっと埋もれているのがもったいない傑作だと思います。







第8位:女たち


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タイトル通り、2020年の現代に翻弄される女性たちを描いたこの映画。主演の篠原ゆき子さんをはじめ、倉科カナさんや高畑淳子さんなどの女優さんが新境地を開拓しています。なかでも倉科カナさんが良かったですね。特に終盤の長回しのシーンはイメージとは全く違う表情を見せていて、びっくりしました。もっと出演作チェックしておくべきだったなと思いました。


また、この映画の一番の特徴は、映画の中にコロナ禍を取り入れていることです。この映画では冒頭にニュースでコロナ禍であることがはっきりと示され、登場人物たちはマスクをし、手が触れるところを消毒し、二枚のアベノマスクが配られます。私は常々、映画はもっとコロナ禍を取り入れてもいいなと思っているのですが、それはあとで見返したときに「あの時はこうだったな」という記録的価値が出るためなんですね。しかし、映画は制作期間が長いため、なかなか難しい部分もあります。ただ、この映画は企画から公開までに一年ほどしかかかっていない。このスピード感は称賛されるべきだと思います。


そして、今もなおコロナ禍の真っ最中のこの時期に公開したことで、この映画は時代との計り知れない同時性を獲得しています。登場人物が私たちと同じようにコロナ禍に置かれることで、現実と少しも変わりないように思えるのです。苦しみや憤りがダイレクトに伝わってくるのです。


いつになるかは分かりませんが、この映画が配信等される時には、社会はどうなっているか分かりません。ワクチンが行きわたってコロナ禍が終息しているかもしれないし、変異株がさらに猛威を振るっている可能性もあります。だからこそ、『女たち』はまだコロナ禍真っ最中の今、映画館で観ることに大きな意味があると思います。内容的にも素晴らしいですし、ぜひ観ることをおすすめします。今一番、観るべき映画ですよ。








第7位:ダニエル


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トラウマから生み出した空想上の友達に、主人公が苦しめられていく。いわゆるイマジナリーフレンドの映画なのですが、今まで観た映画の中でもトップクラスに怖い映画でした。


映画冒頭、ダニエルは主人公をそそのかして、主人公の母親を殺そうとします。ですが、そのたくらみは失敗に終わり、ダニエルはおもちゃの家に封印されてしまいます。雷雨の中でドンドンとドアを叩くダニエル。このドアを叩く音が主人公が成長してからも、うっすらと聞こえてくるほど強烈なものでして。本格的に登場する前から、私の心臓はキュッと縮まっていました。


そして、ダニエルの封印が解かれてからは、いよいよ本番。最初は内気な主人公にアドバイスをすることで、女性と仲良くさせたりと良いこともしているのですが、ダニエルを演じたパトリック・シュワルツェネッガーの妖気のある雰囲気が、全く安心させません。何かやばいことをしでかしそうな予感に、心臓は早鐘を打ちます。


また、映画の中盤で少しだれてきそうなところで、主人公の人格を乗っ取ることができるという新要素を出して、興味を引き付ける脚本も見事。『寄生獣』かと思うほどのグロテスクなCGは見ごたえがあり、物語に緊張感を与えます。終盤では思わぬ伏線回収もあったりと、最後まで興味を引き付けてくれる仕掛けも十分。人を選びそうな狂った映画ですが、私はハマりました。思わぬ掘り出し物でしたね。








第6位:ディエゴ・マラドーナ 二つの顔


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一位は言わずと知れた名サッカー選手、ディエゴ・マラドーナのドキュメンタリーです。私がサッカー好きで、隔週で地元のスタジアムに行っていることを抜きにしても、この映画は本当に凄まじく、観ながら何度も心の中で「もうやめてくれ」と叫び、観終わった後にはロビーで思わず頭を抱えてしまいました。去年の『Documentary of 欅坂46~僕たちの嘘と真実~』に匹敵する地獄ドキュメンタリーでした。


この手の映画になると、マラドーナについて知っておかなければならないのかと構える方もいるかもしれませんが、それは大丈夫。公式サイトに年表がありますし、極端な話「なんか凄い選手」ぐらいの認識で問題ないです。


この映画はマラドーナの中でも主にナポリ時代の7年間を追ったもの。バルセロナで思うような実績を残せなかったマラドーナはナポリに移籍します。最初は上手くいきませんが、見事ナポリをセリエA優勝に導き、ファンからは神として崇められる。その崇拝はあまりにも強烈なもので、熱狂的を通り越して、狂気的でした。この映画の前半はそんなマラドーナの活躍がたっぷり見られるので、特に海外サッカーが好きな人は観て損はしないと思います。かの有名な神の手ゴールと5人抜きもちゃんとやってくれますし。


ですが、活躍の裏ではマフィアとのかかわりやコカインの服用など徐々に怪しい影が。この映画のタイトルにもなっている二つの顔とは青年ディエゴとサッカー選手マラドーナのことを指していて、マラドーナがディエゴを侵食していく様が観ていて辛い。そして、それは1990年イタリアワールドカップで決定的になります。


マラドーナが所属するアルゼンチン代表は準々決勝でイタリアと対戦。そして、その舞台はホームとして慣れ親しんだナポリのスタジアム。結果はマラドーナがPK戦でPKを決めたこともあり、アルゼンチンの勝利。こっからの手のひら返しがもう5ちゃんねるなんて目じゃない苛烈なもので。イタリアで一番嫌われた人物となったマラドーナはどんどん精神を追い詰められていきます。ですが、ナポリはボロボロになったマラドーナとの契約を延長し……。


最近、『花束みたいな恋をした』や『あの頃。』、小説では『推し、燃ゆ』など好きな者との距離感を問いかける作品が増えていますが、この映画はその最北にあるような映画です。ぜひとも多くの方に観ていただいて、できればサッカーファン以外からの感想を聞きたいなと感じました。


















第5位:14歳の栞


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とある中学校の2年6組35人に密着した、ドキュメンタリーを謳うこの映画。クラスの中心にいる者、はしっこにいる者。部活に燃える者から、目標を見いだせない者。車いすの子や教室に入れない子まで35人全員に等しくカメラが向けられており、表面上は学校生活をありのまま見せてきようとします。


私自身、暗い学生時代を過ごしたので、もっと憎悪渦巻く地獄みたいな環境を想像していましたが、映画の中では、意外と学生たちが明るく振る舞っていて、まずそこに驚きました。だって、誰も「死にたいです」とか言わないんですよ。「自分が嫌い」レベルに留まっている。言ってもカットされたのかもしれないですけど、話したこともない(ほとんどの)人たちが、何を考えて生活を送っているのか、知ることができたのは良かったですね。


また、この映画の特徴は音楽がガンガン鳴っているということ。さらに「子供は子供で悩んでいるけど、それでも前に進もうとしているんだよ」と、観客を誘導する編集もひどい。凄く恣意的で、作った大人の視線を感じて、胸糞悪くなりましたが、その胸糞悪さがかえって私は好きでした。


本当にリアルを知りたいなら、無断で定点カメラを仕掛けて、撮影と同時にライブ配信すればいい話なんですよ。でも、ドキュメンタリー映画として出すには、編集が必ず必要になる。そこには作り手の意図が必ず入り込む。この映画はマイクが写っているポスターからして、その介入に自覚的で、有名な「ドキュメンタリーは嘘をつく」という言葉通りの映画だと感じました。リアリティーショーを好んで見る人の気持ちが少し分かった気がしますね。


主題歌であるクリープハイプの「栞」も映画に合ってましたし、冒頭の謎の馬の件を差し引いても、観終わった瞬間に、上半期ベスト10に入るなと確信した映画でした。









第4位:花束みたいな恋をした


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『カルテット』や『大豆田とわ子と三人の元夫たち』など、テレビドラマで活躍する名脚本家・坂本裕二さんの初映画脚本。監督も去年『罪の声』で着実な評価を得た土井裕泰さんですし、主演も菅田将暉さんと有村架純さんという名実ともに日本トップクラスのお二人。ここまでの布陣を組まれたら、私にとってはもう観る以外の選択肢はありません。さっそく初日に観ましたしね。


まず特筆すべきは、主人公の二人がオタクであるということでしょう。天竺鼠のチケットを持ち、押井守さんを目撃して大興奮し、きのこ帝国の「クロノスタシス」で盛り上がれる。顔面偏差値以上のサブカル偏差値の高さに、観ていて心が躍ります。サブカルワードが優に百個以上盛り込まれていて、ツボは人によって多種多様。観た後の会話が盛り上がりそうだなと感じました。特にTOHOシネマズやピカデリーじゃなくて、テアトル新宿でこの映画を観ることを選ぶ人たちには直撃でしょう。荻原みのりさんやオダギリジョーさんなど邦画好きにはピンとくる俳優さんも多く出演していますしね。


ストーリーは難病や親の反対エトセトラなど特別な障害があるわけではなく、ただ二人の生活を描いているだけなのですが、練り込まれたキャラクター描写のおかげで破壊力が高い。順調な時もキーッとならず、反対に別れに至る流れは恋愛をしたことがないのに共感を覚えてしまいます。仕事で忙しくなってサブカルに触れることができなくて、徐々に距離が離れていく描写には観ていて心を痛めました。


そして、真骨頂は終盤のファミレスのシーンですよね。お互い別れようとは思っているんだけれども、なかなか離れられない。だけれど、ある光景を目の当たりにしてしまって、自分たちの関係が終わってしまったことに気づく。なんでもないようなファミレスの内装と合わさって、グサグサ胸を刺してきます。


だけれど、二人の別れはあくまでも爽やかなもので、ラストも清々しかったですし、邦画の恋愛映画の新たな地平を切り開いた感がありました。もう何回でも観たいです。観て感情を揺さぶられたいです。一月に観た映画ですが、今年の年間ランキングにも食い込むのではないかなと思います。今村夏子さんの『ピクニック』を読まなければ。








第3位:すくってごらん


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目立ちこそしませんでしたが、実は公開前からひそかに期待していた映画でした。『魔女見習いをさがして』で百田夏菜子さんには良いイメージを持っていましたし。ただ、シネコンでやる勝算が見えないなと心配しながら、観に行ったのですが、そのぶっとんだ内容に完全ノックアウトされてしまいました。今年一番狂った映画だと思います。


金魚すくいを題材にしていて、左遷されてきた銀行員が地方に馴染んでいくという良くあるストーリーなのかと思いきや、その味付けの仕方が独特で。なんとミュージカル仕立てなのです。どの曲も抜群に良く、メインの俳優さんも歌が上手く、百田さんのピアノも様になっていて、飽きる隙を与えません。最初は心の声を字幕にすんなや、歌詞出すなやMVちゃうねんぞと乗り切れていなかったのですが、だんだんと基準が壊れていく様は、観ていて気持ちが良かったですね。まあ90分ほどの映画なのにもかかわらず、休憩があるのは謎ですが。


演出はかなり奇抜ですが、小赤を脱落組に見立てたり、ポイの破れと人生における失敗を上手く被せていたり、メッセージ性もちゃんとあり、考えられているのもポイントが高い。起と承はしっかり(?)してるんです。転でマサルさんになって、結でボーボボになるだけで。それでも、タイトルの出し方は格好良かったですし、今年あと何本映画を観ても、この映画のことは忘れないだろうというインパクトがありました。記録よりも記憶に残る映画です。


この映画を上位に置くことでシネフィルな人たちから、総スカンをくらっても本望だと思いました。まだ公開中ですので、イカれた世界をぜひどうぞ。








第2位:きまじめ楽隊のぼんやり戦争


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今年単位で見ても、確実にベスト争いをするのではないかという超絶大傑作です。


舞台は9時から5時まで規則正しく戦争をしている町。ロボットみたいにガチガチに動くキャラクターに、お役所仕事で融通が利かない軍隊。どんな脅威かも忘れて戦争をしている。盗みをしたのに、市長の息子だからと警察になれる。打たれて片腕を失っても、感情に大きな変化はなし。女性は子供を産む道具としか見られていない。平坦な話し方は癖になり、そのブラックユーモアに思わず笑いが込み上げてしまいますが、冷静に考えたら笑えるところなんて、こぼれ落ちる白米ぐらいしかない。今の二本や世界を痛烈に皮肉っていて、その刃の切れ味が最高でした。


主人公は前線に出て、銃を打っていましたが、ある日楽隊への移動を命じられてしまいます。この楽隊に辿り着く過程も面白かったのですが、楽隊に辿り着いてからはきたろうさんのキャラクターもあり、面白さのギアが一段階上がっていきます。しかし、楽隊の仕事は軍隊を勇気づけること。かつて、日本でも戦時中に映画は国威発揚の道具として用いられていましたが、歴史は繰り返すのだと思わずにはいられません。


また、主人公は向こう岸の住人と音楽で心を通い合わせますが、最終的にはそれも何の役に立たず。今の文化芸術が真っ先に制限されているコロナ禍の状況さえも、意図的にではないにしても反映していて、その先見性に身震いがしました。文化芸術で世の中は変えられないというショッキングなラストは、観終わった後思わず放心状態になってしまうほどインパクトのあるもの。最悪に最悪を塗り重ねたあの終幕は、しばらくは忘れようとしても忘れることができないでしょう。


ユーモアを隠れ蓑にして、戦争の愚かさ、醜さ、滑稽さを描き切ったこの映画は、一人でも多くの方に観てもらいたいです。








第1位:彼女は夢で踊る


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公開自体は去年ですが、観たのは今年なので、今年のランキングに入れました。わけ分かんないくらい泣きました。嗚咽を漏らさないようにするのに必死で、今まで映画館で観た映画の中でも、間違いなく一番泣きました。


舞台は広島第一劇場。そこでは、何十年もの間ストリップが公演されていました。しかし、今はスマホで簡単にアダルト動画を見ることができる時代です。当然ストリップに人は来なくなり、広島第一劇場は閉館することになります。もう時代に取り残されて消えゆくものという設定だけで、私の大好物なのですが、支配人であるこの映画の主人公は、口では何事もないように言っていても、本心では閉館を受け入れられていません。閉館に抗おうとあがく姿が、どうしようもなく涙を誘います。


主人公がそこまでストリップ劇場に固執していたのは、かつて広島第一劇場で見たストリッパーに恋をしてしまったからなんですね。しかし、劇場のスタッフとして働き始めた主人公はそのストリッパーと付き合うことができません。それでも、惹かれていく主人公。しかし、そのストリッパーは公園が終わると、広島を離れていってしまいます。いつか好きだったストリッパーが戻ってくるために、劇場を守り続けようと決めた主人公。この映画では現代と回想がシームレスにつながるという特殊な構造をしていて、その構造が主人公の健気さを強調していて、私はボロボロ泣きました。


また、かかる音楽もよかった。特にレディオヘッドの「Creep」が何度もかかっていて、曲のパワーだけでも泣きそうになりますし、私は二回目あたりで、既にヤバかったのですが、最後に歌詞の訳が空かされたらもう大号泣ですよね。彼女は特別だけれど、僕は気持ち悪い奴なんだ。彼女がどんどん離れていく。映画の内容と見事にマッチしていて、加藤雅也さんの謎の踊りも気にならないくらい泣きました。


それに、ストリップ自体もよくて。劇中の言葉を借りれば「人間の美しさ」を見せつけられたんですよ。現役トップストリッパーである矢沢ようこさんが出演していて、踊りにも説得力がありますし、心の底から美しいなと思って涙が止まりませんでした。私は人間が嫌いで、醜悪な存在だと思っているのですが、ここまで人間を美しく感じたのは、生まれて初めてのことでした。


それに、一番の勝因は観たシチュエーションですね。私はこの映画をミニシアターで観たのですが、これが大正解。映画と一緒に、映画館の持つ歴史を感じて、ミニシアターが好きでよかったなと思ったことも、涙を流させた一つの要因です。私も四半世紀は生きているので、好きだった場所がなくなった経験も何回かしています。この映画が出した結論は、そんな今はない場所への最大級の賛辞で、もうたまりませんでした。最高の映画です。




2021年上半期映画ベスト10結果一覧

第10位:劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト
第9位:まともじゃないのは君も一緒
第8位:女たち
第7位:ダニエル
第6位:ディエゴ・マラドーナ 二つの顔
第5位:14歳の栞
第4位:花束みたいな恋をした
第3位:すくってごらん
第2位:きまじめ楽隊のぼんやり戦争
第1位:彼女は夢で踊る















以上でランキングの発表は終了となります。いかがでしょうか。個人的には上半期も良い映画にたくさん出会うことができて、満足していますね。特に1位と2位の2本は突出して素晴らしかったです。3~10位はほとんど横一線なので、日によって順位は変わるかもしれませんが、今の気分ではこれで。


まとめると、今年の上半期は個人的にはイカれた映画が強かった印象です。10位の『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』と7位の『ダニエル』、さらに3位の『すくってごらん』とぶっとんだ映画が3本もランクインしていますからね。今までにはなかった傾向です。


私もたまに創作みたいなことをしたりしますが、どうあがいても普通のことしか出てこないんですよね。だから、自分にはないぶっとんだものを求めているのかなと思いました。下半期も負けず劣らず、ぶっとんだ映画が出てくることを期待したいですね。まあ、着実な映画もそれはそれで好きなんですけど。


あと、邦画ばっかりなのはいつもの傾向です。私、洋画より邦画の方が断然好きなタイプですので。去年の年間ベスト10も9本が邦画で、残りの1本が韓国映画でしたし。洋画も観たいなとは思っているんですが、ビビッとくるものが少なく……。でも、下半期は邦画と洋画を、せめて6:4くらいのバランスで観ていきたいですね。できる限りがんばります。


では、そろそろこの記事を終わりにしたいと思います。また半年後、2021年下半期映画ベスト10および、2021年映画ベスト10でお会いしましょう。それまでお元気で。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 


彼女は夢で踊る
横山雄二
2021-03-26



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こんにちは。これです。


ワクチン接種、いよいよ一般向けにも始まってきましたね。まだまだ私の住んでいるところでは、案内が来ませんが、コロナ禍の終局が徐々に見えてきた感じはあります。映画館もレイトショーを再開しましたしね。ただ、変異株もあるのでまだまだ気の抜けない日々は続きそうです。


さて、今回のブログですがいつもの通り、6月に観た映画の月間ランキングです。6月には20本の映画を映画館で鑑賞しました。その中で1位に輝いたのはどの映画なのでしょうか?


今回も何卒よろしくお願いします。








第20位:るろうに剣心最終章 The Beginning


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The Finalで綺麗に終わっていたので、The Beginningで何をするんだろうとは思っていましたが、ポスター通り過去編オンリーでした。とにかくテンポが悪く、さらにThe Finalで結末も知っているだけに、時間が長く感じてしまいます。敵が剣心を倒すのに、やたらともったいぶる理由も分からなかったですし、村上虹郎さんの沖田総司以外は全くテンションが上がりませんでした。シリーズ最高傑作どころか、個人的にはシリーズワーストに近い出来です。








第19位:僕が跳びはねる理由


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自閉症スペクトラム障害(ASD)の世界をドキュメンタリーで描いたこの映画。私も手帳を持っているくらいにはASDなので、観に行きましたが、あまり気に入りませんでした。ASDの人の感じ方、認知の仕方を言語化していて、interesting的な面白さはありましたが、fun的な面白さは皆無でした。それに、随所で悲劇的な音楽を流して「どう?可哀想でしょ?」と誘導していたのもマイナスポイント。私はそんなに可哀想とは思われたくないです。結局は定型の人が作った映画なんだと感じました。








第18位:であること being


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ドラァグクイーンなどLGBTQの方々の語りを収めたドキュメンタリー映画です。映画等の性的なシーンを監修するインティマシーコーディネーターや、LGBTQのカミングアウトが必ずしも良い方向に働かないなど、学びも多かったのですが、こちらもfun的な面白さはあまり見られませんでした。でも、配慮してやっているという自分の傲慢さに気づくことができたのは、大きかったですね。日本でもLGBT法が議論になっていますが、将来的にはそんなものがなくても、当たり前に理解が浸透している社会になればいいなと感じました。








第17位:漁港の肉子ちゃん


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明石家さんまさんプロデュースで西加奈子さん原作という、どう考えても危険な香りしかしない映画でしたが、観てみたら意外にもまともでマイルドな作品になっていました。ただ、突出しているところは娘のキクリンの可愛らしさぐらいしかなく、内容的には凡庸。ポップなアニメ的表現もあまりハマっているとは言い難く、終盤では気を遣わずにどんどん頼っていいと言っておきながら、キクリンに気を遣わせるなどお話もあまりハマりませんでした。女子の陰湿な争いは良かったんですけど。あとエンドロール後がマイナス50億点です。








第16位:モータルコンバット


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ゲームが原作で、特殊能力を持ったキャラクターがバトルを繰り広げるという作品でしたが、私の中二心はそれほどくすぐられず。目が光る浅野忠信さんや、火を吐く真田広之さんなど面白いシーンも多かったのですが、縦に真っ二つや腹にどでかい穴を開ける、頭を握りつぶし、腕を粉砕させるといったグロいシーンが多く、若干引いてしまいました。また、主人公の活躍がいまいちで、特にサブ・ゼロはsっ主人公が倒すべきだったっと思います。続編作る気満々の終わり方をしたので、その辺は次回に持ち越しということなんですかね。








第15位:キャラクター


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漫画家が殺人鬼に会ってしまい、事件に巻き込まれていくこの映画。演技初挑戦のFukaseさんのサイコパス演技も悪くはなかったのですが、作品を引っ張るほどの強いエネルギーにはなり得ず。ハマらなかったわけではないのですが、特に語ることもない映画でした。もう少し攻めた描写をしてくれれば、評価はまた変わったんですけどね。でも、二人掛けのベビーカーを連れた高畑充希さんは怖かったので、そこはよかったと思います。









第14位:くれなずめ


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結婚式の二次会で赤ふんダンスを披露するために、集まった学生時代の親友6人。主に二次会までのダラダラした時間を描いていますが、成田凌さん演じる主人公が死んでいたという設定で物語にひとひねりを加えています。悲劇的な話をコメディで笑い飛ばそうという狙い自体は良かったのですが、男たちが集まって話す内輪のノリがどうしても合いませんでした。若葉竜也さんや藤原季節さんなど好きな俳優さんも多く出演していたんですけどね......。でも、ウルフルズに合わせた赤ふんダンスは好きです。








第13位:アオラレ


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たった一度の煽り運転を1000倍にして返すような、そんな執念深い映画でした。少なくない数の人間が死んでいき、最後は自分の命を持って、正しい交通マナーを伝える暗黒交通安全教室映画でした。主演のラッセル・クロウのガタイのよさは敵に回したくないなと直感的に感じます。標的にされた息子を助けることができるかというハラハラがあり、面白かったのですが、難点を挙げるとすれば、そのエンドロールの長さ。三曲分ほどの長さがあり、もう少しまとめて表示するなど、見自覚してほしかったなと思います。








第12位:夏への扉 キミのいる未来へ


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有名SF小説をはじめて映画化したこの作品。手堅くまとまっていて、良い映画だったと思います。目的もはっきりとしていますし、何より藤木直人ヒューマノイドが面白すぎる。一挙手一投足がいちいちおかしく、ずっと笑っていました。ストーリーの方はタイムスリップしてからの答え合わせに、少々退屈なところがありましたが、そんなものは何回も流れるミスチルの前では些末な問題です。途中、ミスチルのMVかな?と思うシーンもあり、曲の強さに感動させられました。いっそのこと主題歌もミスチルで良かったのではないかと思います。








第11位:SNS 少女たちの10日間


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大人の女性が12歳の少女になりきって、SNSを運用するというドキュメンタリー映画です。アカウントには性行為を求める多数の男性が群がり、丸出しの下心にはおぞましいと言うほかありません。ここまで男性器が出る映画は他にないですね。実験が始まる前の被害を告白するシーンから衝撃的です。子供のSNSの利用に警鐘を鳴らす内容でしたが、個人的には男性→女子のみを映していたことに違和感を感じました。だって、女性→女子というコンタクトもあったでしょうから。途中のまともそうな人の登場もあまり好きではないです。話しかけてくる時点でまともではないので。













第10位:BLUE/ブルー


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吉田恵輔監督が、自らも打ち込むボクシングを題材にしたこの映画。青コーナーに立つ挑戦者たちを描いていますが、その特徴は劇伴の少なさ。ボクシング映画は、試合のシーンに大げさなテーマ曲を流して盛り上げるというのが、『ロッキー』からの定石だと思いますが、この映画は大して劇伴を流しませんし、主題歌も弾き語りで始まります。この引き算の手法によってもたらされた、静かな熱に私は次第に取り込まれていきました。音楽が鳴っているシーンよりも、鳴っていないシーンの方が好きですね。なので、もっと引くことができたのになとさえ、思ってしまいました。


ストーリーも主人公を徹底的に敗者にしているのが印象的です。また、メインの三人が全て負けて映画が終わるというのも斬新。だけれど、それまでに費やした時間や経験は無駄ではなかったという展開は熱いですし、ラストシーンのまだ火は消えていないという演出は感動を覚えました。私も人生負け続きなので、試合には負けたけれど、決して首を垂れるだけの負け犬ではないという描き方には励まされました。








第9位:Arc/アーク


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生物をプラスティック化するプラスティネーションを応用して、不老不死になった女性のSF映画です。人間はいずれ死ぬからこそ生に意味があるという定型句に、真っ向から対立していて、前半では芳根京子さん演じるリナが不老不死に近づいていく様子をビビッドな映像で描き、後半のモノクロになる演出を際立たせます。後半は60年くらい時間が飛んでいる設定で、不老不死になって人生に目的を失ってしまったリナの心情を現しているように私には感じて好きでした。まあ、それが物語のゴールがいまいち分からないという難点にもなっていたわけですが。


映画が進んだ最終局面も、単なる円環構造に収まっていなくて良いなと思いましたし、冒頭に芳根京子さんが初めて見せるダンスも印象的。最後の演出にはたとえありきたりな結論だとしても、有無を言わさず感動させる力があります。石川慶監督は、個人的に前作の『蜜蜂と遠雷』があまりハマらなかったのですが、『Arc/アーク』は満足してスクリーンから出ることができました。








第8位:ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち


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エキストラにも何回か参加させていただいたので、内容如何に関わらず公開されたら、必ず観るつもりではいました。だけれど、予告からは危険なテストジャンプを、金メダルのためと正当化している印象を受けて、正直なところはあまり期待していませんでした。だけれど、観てみたら思いのほか良作でしたね。


主人公はケガでオリンピックに出られなくなった選手。前回のオリンピックで銀メダルに終わった原因である仲間が代表に選ばれていて、悔しさと嫉妬を感じています。失敗しろと思わず願ってしまう。そんな主人公をはじめとして、オリンピックに参加できない女子選手や、怪我がトラウマになっている選手など、主要なキャラクターの葛藤とその解決をしっかりと描いていて、共感することができました。ラストも知っていたとはいえ、素直に感動しましたしね。


だけれど、劇中でもその危険性が語られていた吹雪の中のテストジャンプを、ただ「やりたい」という気持ちだけで、大したロジックもないのに決行してしまうのは、さすがにどうかとも感じます。あと、「ヒノマルソウル」というワードは聞くたびに寒気がして、最後まで受け付けませんでした。








第7位:いとみち


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三味線×メイドという取り合わせだけでも異色ですが、さらにそこに何を喋っているのか聞き取れない津軽弁が加わったこの映画。とも思えば、奇抜な映画とも思うかもしれませんが、この映画はその三者が絶妙なバランスで成り立った良作でした。


主人公のいとは訛りが強いことにコンプレックスを抱いているキャラクター。そのおかげであまり話せていませんが、ある日偶然見かけたメイド喫茶のアルバイトに応募します。そこにいたのはシングルマザーや夢追い人、Uターンしてきた店長など個性的な人々。小さくても心安らげる場所を手に入れたいと。同じ職場とのメイドたちや同級生と話すシーンは、シスターフッドの要素を兼ね備えていました。


さらに、この映画はいとの成長物語でもあり、メイド喫茶がピンチに陥ったとき、いとは遠ざかっていた三味線を再び弾く決意をします。父親との関係も改善され、迎えたラストシーンのチョイスは大正解。ままならないいくつもの小さな人生を肯定するラストに、横浜監督の優しい目線を感じます。音楽映画としての見せ場もあり、色々な要素が上手くミックスされている作品だと思いました。







第6位:クワイエット・プレイス 破られた沈黙


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前作から二年半ほどの年月が経ち、もう内容をほとんど忘れてしまっていました。しかし、それでも序盤にしっかりと状況説明から入ってくれるので、前作を観てなくても問題なしの優れたホラー映画だったと思います。


音を立てたら怪物に襲われる世界のなかでの親子の奮闘が描かれるのですが、判定基準は相変わらず緩め。ですが、カットバックにより、いくつかのシーンを交互に見せることで、上手く緊張感を盛り立てていました。また、怪物の手が及んでいない島を登場させることで、展開にも緩急を作り、終盤の恐怖を盛り上げていた点も出色です。さらに、前回では庇護されるばかりだった子供たちを活躍させていたのも、心憎いですね。前作の内容をあまり覚えていなくても、成長を感じられて少しだけ感慨深くなりました。


終わり方も余計なエピローグを入れずに、スパッと切ったのも高評価。心臓がバクバクしたまま映画館を後にすることができました。家族は誰も死ななかったので(ネタバレ)、まだまだ続編は作れそうですね。楽しみにしています。














第5位:男の優しさは全部下心なんですって


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MOOSIC LAB2019で主演の辻千恵さんが女優賞を獲得したこの映画。地元のイオンシネマで1週間のみの上映だったので、逃すまいと観に行きましたが、想像を超える良作でした。


主人公の宇田みこは、とにかく男運の悪いキャラクター。好きになった相手には、別の彼女がいたなんてしょっちゅうです。辻千恵さんから発せられる幸が薄い雰囲気が、こういう人いるなと思わせて、抜群に良かったですね。屋上で自殺を止めた相手とはうまくいきそうでいかず、好きになった脚本家には幽霊の彼女がいたりと、劇中でほとんど良い目に遭いません。


この幽霊の彼女の件はまさに出色の出来で。幽霊が脚本家に憑りついて脚本を書かせているという設定なのですが、よだれがだらだらでホラー風味を感じます。さらには、宇田みこにも幽霊が憑依して、その憑依した状態で、脚本家と行為に及ぶわけですが、ここのシーンが流れる音楽も合わさって、屈指の空しさ。こんな意味のない行為のシーン見たことないと思い、胸が締め付けられます。


さらに、どの男性とも上手くいかず、それどころか却って利用されるばかりの宇田みこ。着ぐるみを着て、表情が分からない状態で喋るのが痛々しく感じられます。そして、映画が進むにつれて宇田みこはどんどんと感情を失くしていく。明るい夫婦に招かれて食事をするシーンなんて、目を覆いたくなるほどの悲惨さです。


ラストも一見綺麗に見えますが、とてつもなくグロテスクな終わり方をするので、思わず「救いはないのですか?」と心の中で言ってしまいました。映画が終わった後は「宇田みこ、マジで幸せになってほしいな」という思いで頭がいっぱいになります。というか、今でもそう思っています。後を引いています。








第4位:映画賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット


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人気シリーズの映画第二弾です。前作を家のテレビで見て、その面白さにどうして映画館で観なかったんだと後悔したので、続編が発表されたときから、この映画は映画館で観ようと決めていました。何回か公開延期になったんですけど。そして、公開日に映画館に行ったところ、前作を超える正当進化的な面白さがあったので、ずっとニヤニヤしながら観ていました。マスクをしていて良かった。


今作ではこの映画の美点であるオーバーアクションが、前作よりもパワーアップ。個人的には大げさな演技はあまり好きではないのですが、これくらい振り切っていると、かえって楽しく観られます。前作からのレギュラー陣はもちろんのこと、今回の敵である視鬼神を演じた藤井流星さんが、違和感なく世界観に馴染んでいて良かったですね。卑怯な手やあからさまなイカサマを使い、追い詰められれば自分から負けてしまう小物感が良い味を出していました。


また、ストーリーの面でもハッタリを効かせたギャンブル対決や、気持ちのいい伏線回収など前作で良かったところをしっかりと踏襲。夢子と綺羅莉の共闘など、ファンにはたまらない展開もてんこ盛り。個人的には森川葵さんの活躍シーンが多かったのが嬉しかったです。前作を好きだった人は、必ずと言っていいほどハマる成功した続編になったのではないでしょうか。ラストを見る限り、まだまだ続編を作る気満々みたいなので、これからも楽しめそうですね。俳優さんの年齢の問題は気になりますけど。









第3位:劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト


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Filmarksの初日満足度が1位で、ファンしか観ていないとはいえ、その評価の高さが気になって、その次の日にたまたま時間が合ったので、完全初見にも関わらず観に行きました。フライヤーに「初見でも分かります」と書いてあったので、「本当だな?その言葉信じるぞ」と思いながら観たのですが、全くもって一ミリも分かりませんでしたね。とにかくバキバキに決まった映像にぶっ飛ばされました。こんなもの初見で分かるわけがありません。でも、観終わった後の興奮が凄かったですね。とんでもないもの観たなと。


この映画の舞台は、私立聖翔音楽学園という演劇を学ぶ学校。今思い出してもわけが分からないオープニングの後には、メインキャラクターが進路相談という名目で、次々に自己紹介をしてくれます。まあ初見で9人を把握するのは難しいですけど、一見さんへの配慮ですね。それからは主人公の愛城華恋とその幼馴染の神楽ひかりの回想を挟みながら、それぞれの進路を考えていく話なのかなと思わせといての、電車のシーンですよ。


いきなり電車がステージに変形したと思うと、画面には「ワイルドスクリーンバロック」という謎の文字列が。がっちりとした歌も流れて、大場ななというキャラクターが、仲間たちに攻撃を仕掛けるという、一目見て飲み込めるはずがない映像が展開されます。この映画では生徒同士の諍いや感情を、レヴューという演劇に乗せて語ります。


デコトラ、清水の舞台、オリンピック、ハラキリ、東京タワーなど何でもありのやりたい放題です。システム自体は、観ていると何となく飲み込めてくるものの、なぜ武器を持って戦っているのかは、全く分かりません。だけれど、アクションも冴えてるし、何より面白いからヨシ!と、ねじ伏せられてしまいました。口上もかっこいいですし、何度でも観たくなる魅力がありましたね。


だけれど、ぶっ飛んでいるようで、骨格的には卒業後どうするかという進路の話なので、意外と地に足はついています。最後は清々しい気分になります。初見でも分かるとはとても言えませんが、映画館で見るべき映画だと思うので、興味があればぜひ観てほしいですね。








第2位:女たち


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タイトル通り、2020年の現代に翻弄される女性たちを描いたこの映画。主演の篠原ゆき子さんをはじめ、倉科カナさんや高畑淳子さんなどの女優さんが新境地を開拓しています。なかでも倉科カナさんが良かったですね。特に終盤の長回しのシーンはイメージとは全く違う表情を見せていて、びっくりしました。もっと出演作チェックしておくべきだったなと思いました。


また、この映画の一番の特徴は、映画の中にコロナ禍を取り入れていることです。この映画では冒頭にニュースでコロナ禍であることがはっきりと示され、登場人物たちはマスクをし、手が触れるところを消毒し、二枚のアベノマスクが配られます。私は常々、映画はもっとコロナ禍を取り入れてもいいなと思っているのですが、それはあとで見返したときに「あの時はこうだったな」という記録的価値が出るためなんですね。しかし、映画は制作期間が長いため、なかなか難しい部分もあります。ただ、この映画は企画から公開までに一年ほどしかかかっていない。このスピード感は称賛されるべきだと思います。


そして、今もなおコロナ禍の真っ最中のこの時期に公開したことで、この映画は時代との計り知れない同時性を獲得しています。登場人物が私たちと同じようにコロナ禍に置かれることで、現実と少しも変わりないように思えるのです。苦しみや憤りがダイレクトに伝わってくるのです。


いつになるかは分かりませんが、この映画が配信等される時には、社会はどうなっているか分かりません。ワクチンが行きわたってコロナ禍が終息しているかもしれないし、変異株がさらに猛威を振るっている可能性もあります。だからこそ、『女たち』はまだコロナ禍真っ最中の今、映画館で観ることに大きな意味があると思います。内容的にも素晴らしいですし、ぜひ観ることをおすすめします。今一番、観るべき映画ですよ。








第1位:彼女は夢で踊る


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公開自体は去年ですが、観たのは今月ですので、今月のランキングに入れました。ぶっちぎりの一位ですね。わけ分かんないくらい泣きました。嗚咽を漏らさないようにするのに必死で、今まで映画館で観た映画の中でも、間違いなく一番泣きました。


舞台は広島第一劇場。そこでは、何十年もの間ストリップが公演されていました。しかし、今はスマホで簡単にアダルト動画を見ることができる時代です。当然ストリップに人は来なくなり、広島第一劇場は閉館することになります。もう時代に取り残されて消えゆくものという設定だけで、私の大好物なのですが、支配人であるこの映画の主人公は、口では何事もないように言っていても、本心では閉館を受け入れられていません。閉館に抗おうとあがく姿が、どうしようもなく涙を誘います。


主人公がそこまでストリップ劇場に固執していたのは、かつて広島第一劇場で見たストリッパーに恋をしてしまったからなんですね。しかし、劇場のスタッフとして働き始めた主人公はそのストリッパーと付き合うことができません。それでも、惹かれていく主人公。しかし、そのストリッパーは公園が終わると、広島を離れていってしまいます。いつか好きだったストリッパーが戻ってくるために、劇場を守り続けようと決めた主人公。この映画では現代と回想がシームレスにつながるという特殊な構造をしていて、その構造が主人公の健気さを強調していて、私はボロボロ泣きました。


また、かかる音楽もよかった。特にレディオヘッドの「Creep」が何度もかかっていて、曲のパワーだけでも泣きそうになりますし、私は二回目あたりで、既にヤバかったのですが、最後に歌詞の訳が空かされたらもう大号泣ですよね。彼女は特別だけれど、僕は気持ち悪い奴なんだ。彼女がどんどん離れていく。映画の内容と見事にマッチしていて、加藤雅也さんの謎の踊りも気にならないくらい泣きました。


それに、ストリップ自体もよくて。劇中の言葉を借りれば「人間の美しさ」を見せつけられたんですよ。現役トップストリッパーである矢沢ようこさんが出演していて、踊りにも説得力がありますし、心の底から美しいなと思って涙が止まりませんでした。私は人間が嫌いで、醜悪な存在だと思っているのですが、ここまで人間を美しく感じたのは、生まれて初めてのことでした。


それに、一番の勝因は観たシチュエーションですね。私はこの映画をミニシアターで観たのですが、これが大正解。映画と一緒に、映画館の持つ歴史を感じて、ミニシアターが好きでよかったなと思ったことも、涙を流させた一つの要因です。私も四半世紀は生きているので、好きだった場所がなくなった経験も何回かしています。この映画が出した結論は、そんな今はない場所への最大級の賛辞で、もうたまりませんでした。最高の映画です。












以上で6月の映画ランキングは終了になります。いかがでしたでしょうか。


6月は映画館で、このタイミングで観ることに意義を感じた映画がベスト3を占めました。『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は映画館で観るべき映像に圧倒されましたし、『女たち』はこのタイミングで観たことで登場人物たちがより現実的に見えました。そして『彼女は夢で踊る』はミニシアターという場で観たことで思いきり泣いてしまいました。映画館で映画を観るありがたみを感じた1ヶ月でしたね。下半期も映画鑑賞は続けていきたいと思います。


さて、下半期最初の7月ですが、相変わらず観たい映画はたくさんあります。新作だと


・東京リベンジャーズ
・ハニーレモンソーダ
・竜とそばかすの姫
・プロミシング・ヤング・ウーマン
・犬部!
・サイダーのように言葉が湧き上がる
・べいびーわるきゅーれ
・映画クレヨンしんちゃん 謎メキ! 花の天カス学園



はおそらく観ますし、遅れて公開する映画でも、


・なんのちゃんの第二次世界大戦
・映画 さよなら私のクラマー first touch
・胸が鳴るのは君のせい
・明日の食卓
・2gether the movie
・1秒先の彼女
・猿楽町で会いましょう



あたりはチェックしたいと考えています。暑くなってきているので、夏バテしないように気をつけながら、映画館に通いたいと思います。


では、また来月お会いしましょう。それまでお元気で。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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こんにちは。これです。


コロナ禍なかなか収まりませんね。ワクチンの接種もなかなか進まず、東京や大阪では日々1000人近くの新規感染者が生まれ、変異株に3度目の緊急事態宣言。期間中に公開の映画も数多く延期になっています。こう書いているだけで、気が滅入りそうになりますが、なんとか気持ちを強く持って、感染拡大が収まる日まで生き延びたいですね。


では、ブログを始めたいと思いますが、その前に宣伝を一つさせてください。


私これは5月16日(日)に東京流通センター第一展示場にて開催される第三十二回文学フリマ東京に参加します。

詳細→5月16日(日)第三十二回文学フリマ東京@東京流通センター第一展示場に参加します。|これ|note

Webカタログ→胡麻ドレッシングは裏切らない [第三十二回文学フリマ東京・小説|エンタメ・大衆小説] - 文学フリマWebカタログ+エントリー (bunfree.net)


既刊3冊、新刊1冊の計4冊を頒布予定です。

ブース番号はエー17。

サークル名は『胡麻ドレッシングは裏切らない』です。

こちらのサイトから試し読みもできます→第三十二回文学フリマ東京用試し読みサイト一覧 : Subhuman (ritalin203.com)


ギリギリ緊急事態宣言の範囲外ですが、開催されるかどうかはかなり怪しい状況です。皆さんも大変だとは思いますが、感染対策を万全にしたうえで、足を運んでもらえると嬉しいです。

何卒よろしくお願いします。




それでは、宣伝も終わったので本題です。今回のブログも毎月恒例となった月間映画ランキングです。4月は公開映画の延期にも負けず、15本の映画を鑑賞しました。この状況の中で、我ながらよく観たなと思います。


では、ランキングを始めたいと思います。果たして1位に輝いたのはどの映画でしょうか!?












第15位:聖なる犯罪者


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今月観た映画の中で、唯一と言ってもいいほど全くハマらなかったのがこの映画です。アカデミー賞にもノミネートされていますが、ポップさが一ミリもなく、ちょろい私には合いませんでした。釈放された囚人が身分を偽って神父になるのですが、展開がとにかく重いくせに平坦。途中で身分を知っている人間を投入するもののフックにはならず、個人的には眠気を我慢するのが大変でした。でも、唐突なラストはその血まみれの顔も相まって、大きなインパクトがあったと思います。









第14位:チャンシルさんには福が多いね


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仕事仲間の映画監督に先立たれて、失職したアラフォー女性映画プロデューサーが、第二の人生を歩みはじめようと奮闘するこの映画。基本的には落ち着いた雰囲気の中で進んでいきますが、『ミナリ』にも登場したおばあちゃんや、タンクトップの幽霊などおかしさも満点。安易に誰かといることでしか幸せになれないという展開にしなかったのも良かったです。ただ、ここで終わりかな?というタイミングが何か所かあり、終盤は少し間延びしている気もしました。それでもどちらかというと好きですけどね。










第13位:ザ・スイッチ


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連続殺人鬼と女子高生が入れ替わる(最近の日本ドラマでも似たような設定あったな)というこの映画。とにかく主演の二人が素晴らしかったですね。女子高生の鋭い目つきと、おじさんの可愛らしさ。濃いキャラで二時間ほどを持たせたのは良かったです。殺そうとするけど、非力な女子高生なのでなかなか上手くいかないというおかしさもありましたし。愛着がわいていただけに、最後殺されてしまったのは悲しかったですけど。また、意外としっかりグロかったのも評価高いです。冷凍庫など手を抜かずにしっかりやっていて好感が持てました。










第12位:パーム・スプリングス


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今やすっかり一大ジャンルとなったループものに、新たな映画が仲間入りを果たしました。この映画が他のループものと一線を画しているのは、主人公の一人が強くループを抜け出そうとしていないところ。どうせ繰り返すなら楽しんでしまえというスタンスが新鮮でしたね。それでも、もう一人の主人公がループを抜け出そうと四苦八苦してくれるので、ちゃんとループものとしての面白さは確保されています。新機軸を打ち出しながらも、しっかりとツボを押さえていて、堅実なつくりをあっけらかんと見せてくれて、好感が持てました。










第11位:恋するけだもの


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『ほん呪』などで知られる白石晃士監督が描くバイオレンスアクションが11位にランクインです。二重人格の主人公と、彼に恋する女装男。飲尿など最初はきつめの描写もありますが、後半になるにつれてアクション増し増し。ちゃんとしたアクションコーディネーターの方も入っていて、大作映画とも肩を並べるキレのあるバイオレンスが降り注ぎます。ちゃんと人も死にますし。でも、最後は二人の純愛物語に着地していて、グッときました。ほら、少し血の匂いがする純愛物語って皆好きでしょ?よかったら観てみてください。















第10位:映画バイプレーヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら


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テレビ東京の人気ドラマを映画化したこの一本。もちろん私はテレ東は見れませんし、配信でも見なかったので全く知らない状態で観に行きました。


この映画の特徴は何といっても、俳優さんが本人役で多数出演しているということ。それも田口トモロヲさんや光石研さんなどの脇役に、多くスポットライトが当たっているのが嬉しいです。オープニングとか笑ってしまいましたもん。ちょい役にも滝藤賢一さんや岸井ゆきのさんなど知っている人が多く、私のような邦画を多く見るライトな映画ファンにはうってつけの映画だと感じました。劇中ドラマも「モデルはこれかな?」という楽しみ方ができますしね。


ただの器物破損じゃないかとか、簡単に収拾がつきすぎだろとか細かいツッコミどころはいくつか挙げられますが、この映画に限ってはそんなことどうでもいいんです。ベテランを筆頭に俳優さんたちがわちゃわちゃしているのを楽しむお祭りムービーなんですから。それでも、モノづくり讃歌になっていたり、ラストには思わずホロリとしたり。上映中ずっと気楽に見ることができました。










第9位:ビバリウム


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移り住んだ住宅地から出られないというワンアイデアだけで、90分近くを押し通したこの映画。とにかく水色の同じ家々がずらっと並ぶ住宅地の風景が、人気を感じさせず不気味です。また案内人の怪しすぎる風貌も生気を感じさせず、薄気味悪い。この二つを揃えられただけで、この映画の勝利はもはや確定したもので、後半になるにつれてうっすらと身の毛がよだつ感覚を、加速度的に覚えていました。赤ちゃんの泣き声は、映画が終わった後も耳にこびりついていましたし、死体を収納する寝袋もそのカジュアルさが、却って衝撃的です。


言うなれば、これは『世にも奇妙な物語』のロングバージョン。私が嫌いなわけがありません。この手の話にしては、最後にちょっとだけ不穏な空気を残すのではなく、完全なバッドエンドで終わったのも味わい深かったですね。怖さもちょうど良く、年間ベストってほどではないんですけど、個人的にはけけっこう好きな映画です。










第8位:るろうに剣心 最終章 The Final


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今年の邦画でもおそらく一二を争うビッグタイトルが、8位にランクインです。人誅編が下敷きになっていますが、2時間余りで上手くまとめたなという印象が第一にありました。四星など不要な部分はすっぱりとカットして、なおかつ見せ場であるアクションにはしっかりと尺を取りつつも、追憶編の要素も垣間見せる。シリーズものの利点を生かしたサプライズもありましたし、ファンには満足できる作品になっていたのではないでしょうか。説明セリフの多さと、煽情的な音楽は気になりましたが、ここは邦画大作はこういうもんだと割り切るしかないように感じます。


個人的には、やっぱり雪代縁を演じた新田真剣佑さんがMVPですね。クールながらも復讐に燃えている縁そのものと言っても過言ではない出で立ちでしたし、可動域の広さを存分に生かしたアクションも素晴らしかった。ハマりっぷりはキャストの中でも群を抜いていて、この映画が成功した最大の要因ではないかと思えます。


『The Final』、少し不満はありつつも面白かったので、『The Begining』も見たいんですけど、やったとして何やるの?ってぐらいには『The Final』で綺麗に完結していましたね。










第7位:劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班


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2018年にカンテレなどで放送された連続ドラマの劇場版。公開前にはテレビでスペシャルドラマも放送していましたが、私はいずれも未見で、他に公開している新作映画もないからみたいな軽い気持ちで観に行きました。電池切れの無線機が現在と過去の刑事をつなぎ、交信することで事件を解決するといったストーリーのこの映画。ちゃんと本編に入る前に、軽くこれまでのあらすじを説明してくれるので、劇場版が初見の人にも配慮はきちんとなされていました。


お話は、化学兵器によるテロ事件を阻止するというなんとも劇場版といった趣のストーリー。今の日本社会への風刺も垣間見えます。想像以上に坂口健太郎さんのアクションが多かったですね。画面を暗くすることで、思いっきりスタントの方を使えていたので、見ごたえがありました。また劇的なもったいぶった説得にもちゃんと理由があったり、作劇も一定の水準は越えていて、低い期待を覆す面白さがありました。


ただ、この設定、この映画ならではのストロングポイントは、あまり見受けられなかったのも正直なところ。間違いなく面白いのですが、それだけで終わってしまう映画のように私は感じてしまいました。










第6位:おろかもの


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インディーズ映画の登竜門、田辺・弁慶映画祭でグランプリを受賞したこの映画。結婚する兄の妹と、その愛人が結婚式をぶち壊そうとする?ストーリーです。主演の笠松七海さんの少し擦れた雰囲気と、同じく主演の村田唯さんの上品だけれど、どこかくたびれた空気。この二人が企むシーンは、上質な百合あるいはシスターフッド。さらに、中国人留学生の友達や、軽率な兄の部下など、インディーズ映画とは思えないほどキャラが立っていて、実は重めのストーリーを小気味よく見せてくれました。


そして、極めつけは最後の結婚式のシーン。単純な復讐劇に終わらない展開は、衣装のコントラストも相まって、強く印象に残るシーンでした。何も解決してはいないんですけど、二人にのしかかる呪いは少し解けて、ちょっとずつ光の方へ向かっていくのかなと想像できます。


ただ、これはこちらの都合なのですが、惜しむらくは観たタイミング。私がこの映画を観たのは4月の中旬なのですが、2月に同じシスターフッドをテーマにした『あのこは貴族』を観てしまったのが大きかった。実際結婚式のシーンでも『あのこは貴族』の「日本では女たちを対立させる価値観が~」というセリフを思い出していましたし、『あのこは貴族』の前に観ることができたら、もっと順位は上だったのかもしれません。















第5位:21ブリッジ


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『ブラックパンサー』のチャドウィック・ボーズマン最後の主演作は、ニューヨーク・マンハッタンを舞台にした硬派なサスペンス。正直、ポスターや予告の雰囲気から大味な映画な気がして、鑑賞をためらっていましたが、かなり良い評判に押されて観に行きました。そして、観た後は大味な要素など一個もなく、緻密に計算し尽くされた素晴らしい映画でした。緊迫感あふれる展開に、自然と力が入り、スクリーンの外に出ると、どっと疲れが押し寄せてきましたけれど、その疲れさえも心地よく、見逃がさないでよかったなと思います。


主人公はかつて父親が殉職したという過去を持つ警察官。彼が働くマンハッタンで、警官が殺される事件が発生します。犯人たちにも予想外な展開の連続で、次はどうなるのかと観ている者の心をつかんで離しません。また、チャドウィック・ボーズマンの硬い表情からは、何としてでも犯人を捕らえるんだという行き過ぎた正義感を覚え、畏怖すら感じるほどでした。追走中に繰り広げられるアクションにもよかったですしね。(余談だけれど、地下鉄が出たときには「最近見た『BANANA FISH』そのままだ」ってなった)


ですが、最後。事件が解決したかと思いきや、事件の黒幕は別にいたことが明かされます。その正体に、私は今までのことは何だったのかと思わず脱力してしまいました。キャラクターと一緒に作り手の手のひらの上で踊らされていた感じです。その無力感がとてもリアリティがあり、私にしばらく消えない強い印象を残しました。










第4位:街の上で


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今一番勢いのある監督と言っても過言ではない、今泉力哉監督の最新作は下北沢を舞台にした日常劇。『あの頃。』があまりハマらなかった私でも、この映画にはハマりました。


若葉竜也さん演じる青が映画の撮影に臨むという大まかなストーリーはあるのですが、それも美大の学生のこじんまりとした卒業制作。いわば当事者以外には、どうでもいいこと。この映画は他にも、知らない人の恋愛話など、九分九厘どうでもいい話しか出てきません。いわば掃いて捨てるようなことばかり(私はその次元にすら達していないけれど)。そのどうでもよさが押しつけがましくなくて、私は好きでした。『あの頃。』があまりハマらなかった理由に、思ったよりもハロプロ要素が多くないなということがありましたが、この映画はちゃんと予告編の印象と、いい意味で変わらない130分を見せてくれましたしね。


また、撮り方もかなり特徴的で。長回しのシーンが多くを占めているんですね。最初の穂志萌香さん演じる彼女とのシーンからそれは顕著で。特に好きだったのが、若葉竜也さんと中田青渚さんの夜の会話のシーン。あそこ7分くらいずっと回してたんじゃないんでしょうか。何気ない会話に緊張感を持たせていて、流石だなと感じます。


それに、この映画は再開発工事で変わって失われていくかつての街の風景を、ささやかな会話に重ね合わせていたのが面白かったですね。警官との会話シーンとか、なくてもストーリーに支障はなく、それはまるで青が出演したけれどカットされた映画のワンシーンのようでもあり、亡くなった人のことでもあり。そういった小さなことが今の街を下支えしているんだなとしみじみ思いました。










第3位:砕け散るところを見せてあげる


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『とらドラ!』などで知られる竹宮ゆゆこさん原作のこの映画。どこにでもいる高校生・濱田清澄と学年一の嫌われ者・蔵本玻璃の交流を描きます。


清澄を演じた中川大志さんも良かったですが、この映画で一番輝いていたのは何といっても玻璃を演じた石井杏奈さんです。暗く危なっかしい雰囲気を纏った序盤から、清澄に心を開いていくにつれて、まるで別人のような可愛らしさを獲得。特に夜の商店街で話すシーンの魅力は突き抜けていて、私はノックアウトされてしまいました。間違いなく今年のベストガールの有力候補です。


そして、何より私が好きなのはこの映画がヒーロー映画になっているということです。堤真一さん演じる玻璃の父親が登場してから、この映画は徐々に転回を迎えます。父親から暴力を受けて、清澄のもとに駆け込んでくる玻璃。もともといじめられているところを助けた清澄は、玻璃にとってのヒーローでしたが、玻璃が清澄にとってのヒーローになってもいたんですよね。お互いが助け合って、心の支えになり合って。予告にもあった「俺を生かすエネルギーは、お前の幸せだから」と自転車をニケツするシーンは、今まで見てきたニケツの中でもトップクラスに印象深いものでした。


また、原作には叙述トリックが仕掛けられていて、そこが少し分かりにくく感じたのですが、映画では終盤は分かりやすく翻訳されていたのも、私みたいなバカには助かりました。タイトルの意味がスッと心に入ってきて感慨深かったですし。原作最後の「愛には終わりがない」という言葉も映像で見ると、より説得力を持って感じられました。賛否両論はありますが、私は圧倒的に賛ですね。











第2位:ダニエル


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トラウマから生み出した空想上の友達に、主人公が苦しめられていく。いわゆるイマジナリーフレンドの映画なのですが、今まで観た映画の中でもトップクラスに怖い映画でした。


映画冒頭、ダニエルは主人公をそそのかして、主人公の母親を殺そうとします。ですが、そのたくらみは失敗に終わり、ダニエルはおもちゃの家に封印されてしまいます。雷雨の中でドンドンとドアを叩くダニエル。このドアを叩く音が主人公が成長してからも、うっすらと聞こえてくるほど強烈なものでして。本格的に登場する前から、私の心臓はキュッと縮まっていました。


そして、ダニエルの封印が解かれてからは、いよいよ本番。最初は内気な主人公にアドバイスをすることで、女性と仲良くさせたりと良いこともしているのですが、ダニエルを演じたパトリック・シュワルツェネッガーの妖気のある雰囲気が、全く安心させません。何かやばいことをしでかしそうな予感に、心臓は早鐘を打ちます。


また、映画の中盤で少しだれてきそうなところで、主人公の人格を乗っ取ることができるという新要素を出して、興味を引き付ける脚本も見事。『寄生獣』かと思うほどのグロテスクなCGは見ごたえがあり、物語に緊張感を与えます。終盤では思わぬ伏線回収もあったりと、最後まで興味を引き付けてくれる仕掛けも十分。人を選びそうな狂った映画ですが、私はハマりました。思わぬ掘り出し物でしたね。










第1位:14歳の栞


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とある中学校の2年6組35人に密着した、ドキュメンタリーを謳うこの映画。クラスの中心にいる者、はしっこにいる者。部活に燃える者から、目標を見いだせない者。車いすの子や教室に入れない子まで35人全員に等しくカメラが向けられており、表面上は学校生活をありのまま見せてきようとします。


私自身、暗い学生時代を過ごしたので、もっと憎悪渦巻く地獄みたいな環境を想像していましたが、映画の中では、意外と学生たちが明るく振る舞っていて、まずそこに驚きました。だって、誰も「死にたいです」とか言わないんですよ。「自分が嫌い」レベルに留まっている。言ってもカットされたのかもしれないですけど、話したこともない(ほとんどの)人たちが、何を考えて生活を送っているのか、知ることができたのは良かったですね。


また、この映画の特徴は音楽がガンガン鳴っているということ。さらに「子供は子供で悩んでいるけど、それでも前に進もうとしているんだよ」と、観客を誘導する編集もひどい。凄く恣意的で、作った大人の視線を感じて、胸糞悪くなりましたが、その胸糞悪さがかえって私は好きでした。


本当にリアルを知りたいなら、無断で定点カメラを仕掛けて、撮影と同時にライブ配信すればいい話なんですよ。でも、ドキュメンタリー映画として出すには、編集が必ず必要になる。そこには作り手の意図が必ず入り込む。この映画はマイクが写っているポスターからして、その介入に自覚的で、有名な「ドキュメンタリーは嘘をつく」という言葉通りの映画だと感じました。リアリティーショーを好んで見る人の気持ちが少し分かった気がしますね。


主題歌であるクリープハイプの「栞」も映画に合ってましたし、冒頭の謎の馬の件を差し引いても、観終わった瞬間に、今月ベストだと確信した映画でした。















以上でランキングの発表は終了となります。いかがでしょうか。


今月はけっこう好きな映画が多く、アベレージ的には今年に入ってから一番高い月だったのではないかと思います。14位の『チャンシルさんには福が多いね』から4位の『街の上で』までは、ほぼ横一線ですしね。もちろん好きそうな映画を選んで行っているのが大きいのですが、自分の運の良さに少し感謝したい気分です。


さて、5月鑑賞予定の映画ですが、既に『ヒノマルソウル』や『ゴジラvsコング』などの映画が延期になっているんですよね…...。だけれど、長野では映画館は引き続き開いているので、新作では


・ジェントルメン
・映画賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット
・地獄の花園
・女たち
・茜色に焼かれる
・クルエラ
・HOKUSAI



などを中心に。遅れて公開になる映画では、


・JUNK HEAD
・NO CALL, NO LIFE
・椿の庭
・ベイビーティース
・バクラウ 地図から消された村
・彼女来来
・POP!
・アポトーシス
・the believers
・ターコイズの空の下で
・きまじめ楽隊のぼんやり戦争
・裏アカ
・フィールズ・グッド・マン



あたりを鑑賞したいと思っています。上手くいけば20本ぐらいは観られるかな。評判の良い作品もいくつかありますし、楽しみです。


それではまた、2021年5月映画ランキングでお会いしましょう。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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こんにちは。これです。


季節も四月に入りようやく春めいてきましたね。もはやコートもいらない暖かさで、私は今のところ花粉症もないので、過ごしやすくて嬉しく思います。しかし、コロナも第四波が来ており、特に大阪は大変なことになっていますね。マスクをしなくてもいい日はいつ訪れるのでしょうか。今年中にワクチン打てるかな。


さて、今回のブログも月間映画ランキングです。3月には計17本の映画を鑑賞しました。それぞれの映画に一言コメントもつけて、ランキング化しました。果たして一位に輝くのはどの映画なのでしょうか?


何卒よろしくお願いします。








第17位:太陽は動かない


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ドーン!という間の抜けた予告編から嫌な予感は漂っていましたが、映画本編でもその悪印象は覆りませんでした。アクションはそこまで悪くなかったものの、回想と現代を交互に繰り返すストーリーテリングが上手くいっているとは言えず…...。決めのセリフが聞き取りづらかったのも惜しいところ。しかし、何より衝撃的だったのはエンドロールです。多部未華子さんや吉田鋼太郎さんなど、映画にないシーンがどんどんと映されるのですから。存在しない記憶を見せられて、終わった後に戸惑いが一番先に来てしまいました。








第16位:KCIA 南山の部長たち


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KCIAという、アメリカで言うところのFBIに当たる機関の部長が、紆余曲折を経て大統領を暗殺するこの映画。保身のためならば、ばっさばっさと側近や人民たちを切り捨てていく大統領に震えあがり、喜楽を奪われたイ・ビョンホンのプレーンフェイスが事態の深刻さを伝えてきます。日本では、さほどヒットしないであろうこの映画が韓国でヒットしたことはお国柄の違いを感じさせますね。ただ、緊迫感のある静かな映画だったので、私は何度か落ちてしまいました。通して観れたらもっと上に来ていたと思います。








第15位:心の傷を癒すということ 劇場版


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NHKの同名ドラマを再編集した映画です。うっすらと感動した記憶があったので、観に行きました。震災で心の傷を負った人たちに向き合う精神科医の話。だと思っていたのですが、診療よりも主人公の生い立ちがメインになっていました。「弱いのは悪いことじゃない」や「誰も一人ぼっちにさせない」など、心に沁みる言葉は多いのですが、肝心の診療シーンが少なく、やや説得力に欠けていたかなと。たぶんドラマ版は診療シーンも数多くあったと思うので、ドラマ版の方がいい作品なんだろうなというのは、観終わって最初に来た感想でした。









第14位:ミナリ


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アカデミー賞ノミネート作品も、個人的にはあまりハマらずこの位置に。トラブルもありますが、家族の絆が深まっていく過程を淡々と見せられて、イマイチ乗り切れませんでした。離婚話がやたらとリアルだったり、おばあちゃんに尿を飲ませるといういきすぎたクソガキムーブがどうしても受け入れられなかった。最後も良いように締めているけれど、何一つ解決しとらんやんけと思ってしまいましたし。熱狂の意味が違いましたね。一番印象に残っているのはひよこのオスメスを見分ける仕事です。こんなベタなことするんだって思いました。









第13位:空に聞く


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震災後東北に移住し、いくつものドキュメンタリーを発表してきた小森はるか監督の作品です。阿部さんというラジオ・パーソナリティに密着しており、日常的な営みを淡々と描き出すこの映画。最初は市からの発表を間違えず読み上げることに集中していた阿部さんが、住民の声を伝えることが大事なんだと語り、実際に祭りの様子や、凧を揚げて追悼するシーンが収められ、編集されてはいるものの記録映画として高い価値があります。震災から十年。まだ復興は道半ばですが、人がいる限り小さな花はずっと咲き続けるのだと感じました。










第12位:FUNAN フナン


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アヌシーでグランプリを受賞したフランスのアニメ映画。独裁政権下のカンボジアを舞台にしており、息子と生き別れてしまった夫婦の悪戦苦闘を描きます。革命に賛同しないものは、ばったばったと処刑されていく辛辣な描写をはじめとして、自殺や飢餓、銃殺に売春など目を覆いたくなるような悲惨なシーンがとにかく多い。最後は一応ハッピーエンドで終わりますが、それでも気分は全く晴れません。映画には歴史を記録する機能があるとはいえ、バランスのとり方があまり上手だと私には感じられませんでした。シンプルな線は良かったんですけどね。









第11位:ブレイブ 群青戦記


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アレなキャッチコピーの割にはなかなか奮闘した映画だと思います。序盤の学生がバッタバタと殺されていく地獄絵図は、後の展開への期待を膨らませ、新田真剣佑さんのアクションや三浦春馬さんの最後の演技など見どころも十分。ただ、落ち武者が現代に適応するのが早かったり、ラストで唐突に馬に乗れるようになっていたりとツッコミどころも多かった。大作邦画特有のウェットな演出もてんこ盛りで、観ていて食傷気味です。落としどころは良かっただけに、惜しいという印象が残ってしまいました。













第10位:二重のまち/交代地のうたを編む


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第13位の『空に聞く』と同じく小森はるか監督の映画がランクイン。震災後の陸前高田市にやってきた四人の若者が、地域に暮らす人の話を聞いて、映画を観ている人に語りかける、伝えていくというただそれだけの映画です。劇伴も少なく、黒地を背景にただ語っているだけという場面も多いので、少し落ちかけはしましたが、それでも伝えていくこと、繋いでいくことの重要性を考えさせられる映画でした。


タイトルの『二重のまち』とは、震災後にかさ上げをしている陸前高田のことを指していて、寓話的な小話として劇中何度か挿入されます。私たちが、今暮らしている土地もスクラップアンドビルドを繰り返してきたわけで、過去を伝えるというどこでも共通の問いが何度も投げかけられます。この映画は最後はポスターに映っている四人が伝えていくことの意味について話し合うのですが、結局答えは出ないまま、映画は終わります。なぜ伝えるのか、どのように伝えるのかは映画を観た私たち自身が考えるしかないと、突きつけられたようでした。








第9位:ノマドランド


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ゴールデングローブ賞を獲得し、今年度のアカデミー賞の有力候補とも目されているこの映画。何といってもその特徴はアメリカの雄大な景色を、スクリーンいっぱいに堪能できることでしょう。ロードムービーという特性を生かした画作りは、眠りを誘ってしまうくらい心地良いです。実際私も何度か落ちかけましたし。絶対そういうオーラ出てますよ。静かすぎる。


話としては主人公である中年女性が、夫の死をきっかけにノマドと呼ばれる放浪民になるというもの。ホームレスではなく、ハウスレスと自称していますが、交流をしていた同じノマドがハウスとホームを同時に得ていき、徐々に一人になっていくのが辛かった。だけれど、それは永遠の別れというわけではなく、ノマドには「さよなら」という言葉がない。あるのは「またいつか」。そして、それは必ず現実になる。喪失でつけられた主人公の心の傷を、優しく癒していくムードが評価されたのだと思います。時間が進むにつれて、しみじみと良いなと感じました。









第8位:騙し絵の牙


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めちゃくちゃ面白い映画が8位にランクイン。出版社で廃刊間際の雑誌を、熱い情熱で救う編集者の話。かと思いきや、あるプロジェクトの存亡をかけた社内のパワーゲームがメインのこの映画。最初のテンポの速いカットバックから、息つく間もなく嘘や謀が畳みかけられます。登場人物全員とはいかずとも、8割の人間が嘘をついていて、騙し合いバトルとしての満足感が高い。


当て書きされた大泉洋さんの食えない雰囲気はもちろん、松岡茉優さんの対峙した相手を引き立てる受けの演技も良かったです。國村隼さんとのシーンは『ちはやふる』を思い出して、胸がジーンとなりました。


結論としては、今の状況のままなら座して死を待つのみ。だから、とにかく動かなければならないというものでしたが、それがイコール新しいことをするに結びついていないのが良かったと思います。温故知新という言葉があるように、古いものでもやりようによっては戦える。新しいものだけを賛美しない姿勢に私は、思わず拍手を送りたくなりました。










第7位:野球少女


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タイトル通り天才野球少女が、プロを目指す映画が7位にランクイン。周囲は露悪的ではなく、むしろ優しい部類に入るのですが、それでも女性にプロは無理だという空気が支配的。最大の理解者となるべき母親も懐疑的で、主人公であるスヨンにはいばらの道が待ち受けています。ですが、コーチと出会い特訓をしていく中で、少しずつ理解者を増やしていく。師弟ものの面白さがあります。


前例がない中でも必死に頑張るスヨン。その頑張りに周囲が動かされていくという王道のストーリーが観ていて気持ち良かったですね。基本的に穏やかに進んで行くのですが、静かな熱量がありました。母親がデレる終盤のシーンは思わずホロリとしてしまいましたね。


そして、私が一番グッときたのがそのラスト。スヨンはプロ入りを果たすわけですが、それよりも高校の野球部に女子部員が入部するというのが良くて。スヨンが前例を作ったことで、少しずつ社会が変わっていく。チャレンジは決して無駄じゃなかったことを証明する見事なラストでした。











第6位:シカゴ7裁判

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ネットフリックスの映画っていつでも観られるから、かえっていつまでも観ないっていうことありますよね。この映画が配信されたのも半年くらい前で、話題になってはいたのですが、なかなか観る気が起きず、今回映画館で上映されたので、ようやく観てきました。


ベトナム戦争への抗議デモを扇動した罪に問われた7人。真っ当な裁判もので専門用語も多数飛び交い、なかなかついていけないところも正直ありましたが、それでもスタイリッシュな編集と音楽が印象的でした。冒頭のシーンで表される通り、裁判は彼らを有罪にすることが既定路線。百何回と一応公判は行われますが、それでも証人に証言をさせなかったり、口に猿轡をつけて物理的に被告人を喋れなくしたりと、今の裁判では考えられないような仕打ちが続きます。特に裁判長の態度は酷かったですね。


そんな中でどう無罪にしていくかに焦点が当てられがちですが、この映画のラストは有罪が決まっていることを逆手に取ります。戦争の悲惨さを訴えるラストは、反戦という七人の目的を果たしたもの。まさに試合に負けて勝負に勝ったという趣です。実際の映像も多く用いられて、真に迫る。個人的にはこの映画がアカデミー賞を獲ると良いなと思います。














第5位:ガンズ・アキンボ


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『ハリー・ポッター』シリーズのイメージをぶち壊すかのように、トンチキ映画に出続けているダニエル・ラドクリフ。彼が今回演じたのは、ポスターを見て分かる通り、両手に拳銃を取りつけられた男の悪戦苦闘です。


主人公はゲーム制作を仕事にしていますが、普段はSNSへのクソリプに余念がない内弁慶。違法配信のデスゲーム・スキズムにクソリプを送ったことで、拳銃を取り付けられ、最凶の女殺し屋ニックスと戦うことになってしまいます。最初はニックスがかっこいいだけの映画だと思っていましたが、徐々に主人公が覚悟を固めていく展開は、意外なほど王道で熱いものがありました。ちゃんとどんでん返しもありましたしね。妄想でミスリードを誘ったのは上手いと素直に感心しましたし。


それに、主人公が覚醒してのガンアクションは、この映画が最も力を入れたところで、実際一番の盛り上がりになっています。この映画は人がバンバン死ぬのですが、それをあたかもゲームのように見せることで、一種の爽快感を生んでいました。主人公の属性を生かした、好演出でテンションも上がります。あまり期待していなかったのですが、観た後にはすっきりとした気分で映画館を後にできる思わぬ掘り出し物でした。










第4位:藁にもすがる獣たち


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原作は日本の小説ですが、なぜか韓国で実写映画化されたこの一作。今月の締めとして、そこまで期待せずに観に行ったのですが、想像以上の面白さに観ている間ずっと興奮しっぱなしでした。


映画の内容はバッグに入った10億ウォンを巡って、闇金や役人、セックスワーカーや一般人が仁義なき戦いを繰り広げるというもの。序盤は視点がめまぐるしく変わっていき、後半の展開への種まきをしてきます。どの登場人物もが金を必要としているからこその骨肉の争い。人がけっこうあっさりと死ぬので、緊張感は最後まで途切れません。


その中でも私が一番ゾッとしたのは、セックスワーカーを雇う女社長ですかね。淡々と死体の捨て方を指南したり、不利になると思えばためらわずに刺殺したりと、人の命をなんとも思っていないような冷酷さが、逆にたまりませんでした。


映画は点と点で進んで行きますが、ある瞬間からまさしく一本の線になって、ストーリーの全体像が浮かび上がってきます。その種明かしの快感と言ったらなかったですね。オチも完璧でしたし、見逃さないでよかったなと思いました。巻き込まれたパンピーの親子は可哀想でしたけど。


ただ、観終わった後、あまりの面白さに悔しくも感じたんですよね。どうしてこれを邦画でできなかったんだろうって。別にどこの国が映画化しても良いし、韓国ノワールだからこそ出せた味が大きいんですけど、それでもこの原作を逃してしまったのは、日本映画界にとってもったいないなと感じてしまいました。









第3位:シン・エヴァンゲリオン劇場版


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テレビ放送開始から26年間続いてきた『新世紀エヴァンゲリオン』の完結編にして、今月の本命に位置する映画です。エヴァと同い年の私は、今年に入ってから急いで旧劇から見始めて、公開当日に鑑賞しましたが、間違いなく今年を代表する映画だと感じました。アニメーションのクオリティは、名の知れた制作会社がいくつも参加しているので、言わずもがな今の日本アニメの最高峰といえる出来なのですが、それ以上に話に感動しましたね。


Qの最後でカヲル君が、シンジに向かって「縁が君を導くだろう」と言っていましたが、まさにその言葉通りの映画でした。Qで完膚なきまでに叩きのめされたシンジを再び立ち上がらせたのは、トウジやケンスケ、委員長にレイ、アスカといった人の縁に他なりません。皆がシンジのことを想って優しくする様子は、それまでのエヴァシリーズでは見られなかったもので、前半の第三村のシーンだけで、観て良かったなと感じました。


そこからも人の縁にシンジは導かれ、ゲンドウとも初めて腹を割って話し合います。それぞれのキャラクターも、人の縁に救われていき、最後は現実も捨てたもんじゃないよという結末。エヴァほどのビッグタイトルになると、人生を狂わされた人も大勢いると思うんです。本質的なテーマ(だと思う)人間賛歌には目もくれずに、世界の謎について考察本を出していた悪いオタクとか。彼ら彼女らに対して、現実は生きるに値するものだと示したのがこの映画だと思います。


今までも「現実を生きろ」というメッセージはありましたけど、伝え方がずっとマイルドになっていて、庵野監督のまごころみたいなものを私は感じましたね。









第2位:まともじゃないのは君も一緒


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公開規模は大きくないものの、朝ドラの主演も控え、飛ぶ鳥を落とす勢いの清原果耶さんが出演しているということで期待していたこの映画。観ている間、いい意味でずっとニヤニヤが止まりませんでした。


数学好きで普通の恋愛が分からない予備校教師と、知ったかぶる癖に恋愛経験に乏しい教え子が織りなす会話劇がメインのこの映画。成田凌さんの不器用な演技が愛らしく、清原果耶さんのあーだこーだ作戦を考える姿が微笑ましい。序盤のシーンに代表されるように、会話自体のテンポも良く、上質なコントのような笑いを提供してくれます。軽やかな劇伴も最大限マッチしていましたし、ストレスフリーで何時間でも観ていたくなりました。


それでも短くまとめて、この二人の先をもう少し観てみたいと思わせるところで終わっていて、気持ち良く映画館を後にすることができました。日本語ならではのリズムを大切に練られた脚本は、邦画の一つの方向性を示したと私は思います。こういう邦画ばっかり観ていたいですね。本音を言うと。


また、少しずれた二人の視点から、社会にはびこる「普通」という呪縛を皮肉っているのもポイント高いです。結婚ができなくても、普通じゃなくても、世界は素晴らしいんですよね。私もまともな人間ではないので励まされました。ちょっと埋もれているのがもったいない傑作だと思います。










第1位:すくってごらん

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目立ちこそしませんでしたが、実は公開前からひそかに期待していた映画でした。『魔女見習いをさがして』で百田夏菜子さんには良いイメージを持っていましたし。ただ、シネコンでやる勝算が見えないなと心配しながら、観に行ったのですが、そのぶっとんだ内容に完全ノックアウトされてしまいました。今年一番狂った映画だと思います。


金魚すくいを題材にしていて、左遷されてきた銀行員が地方に馴染んでいくという良くあるストーリーなのかと思いきや、その味付けの仕方が独特で。なんとミュージカル仕立てなのです。どの曲も抜群に良く、メインの俳優さんも歌が上手く、百田さんのピアノも様になっていて、飽きる隙を与えません。最初は心の声を字幕にすんなや、歌詞出すなやMVちゃうねんぞと乗り切れていなかったのですが、だんだんと基準が壊れていく様は、観ていて気持ちが良かったですね。まあ90分ほどの映画なのにもかかわらず、休憩があるのは謎ですが。


演出はかなり奇抜ですが、小赤を脱落組に見立てたり、ポイの破れと人生における失敗を上手く被せていたり、メッセージ性もちゃんとあり、考えられているのもポイントが高い。起と承はしっかり(?)してるんです。転でマサルさんになって、結でボーボボになるだけで。それでも、タイトルの出し方は格好良かったですし、今年あと何本映画を観ても、この映画のことは忘れないだろうというインパクトがありました。記録よりも記憶に残る映画です。


この映画を1位に置くことでシネフィルな人たちから、総スカンをくらっても本望だと思いました。まだ公開中ですので、イカれた世界をぜひどうぞ。

















以上、2021年3月の映画ランキングでした。いかがでしたでしょうか。


今月としては、やはり『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ですか。クオリティは図抜けていて観終わった後の満足感もかなり高かった。にもかかわらず、邦画が2本上に来ているということは個人的にはとても嬉しく思います。どちらもあまり公開規模は大きくないですが、お勧めです。ぜひ観てみてください。


それと今月の特徴としては、4位の『藁にもすがる獣たち』と5位の『ガンズ・アキンボ』と、人がたくさん死ぬ映画が上位に来ているということ。11位の『ブレイブ 群青戦記』もそうですが、フィクションではいくら人を死なせてもいいのだなと感じました。もちろんやり方次第ですけど、ここまで人が死ぬ映画が上位に来たのは私としては意外ですね。


さて、もう4月に入っていますが今月も観たい映画がもりだくさん。新規公開作としては、


・砕け散るところを見せてあげる
・バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら
・街の上で
・ザ・スイッチ
・るろうに剣心 最終章 The Final
・映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園
・賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット



はぜひとも観たいなと思っていますし、他にも


・恋するけだもの
・ダニエル
・おろかもの
・チャンシルさんには福が多いね
・NO CALL NO LIFE
・JUNK HEAD



あたりはチェックしたいなと思っています。他にも午前十時の映画祭が再会したり、『るろうに剣心』シリーズが上映されたりと、なんだかんだで4月も毎週映画館に通うことになりそうです。どの映画が上位に来るか今でも楽しみですね。またランキング記事を書きたいと思っていますので、その時は何卒よろしくお願いします。


では、また会いましょう。


おしまい





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こんにちは。これです。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開日決まりましたね。なんと3月8日の月曜日。思っていた以上に急で新劇場版シリーズ見なきゃ…...と今焦っているところです。Jリーグも開幕しましたし、忙しい日が公開までは続きそうです。


さて、今回のブログは2021年2月の映画ランキングです。毎月恒例(にしていきたい)この企画。2月は映画館で合計17本の映画を鑑賞しました。1月より日数が少ないので、まあこんなものかなと思います。それでも年間200本ペースに乗っかっていてどうしようかとは思いますが。


それでは、前置きもさっさと終えて、ランキングに入りたいと思います。果たして、どの映画が一位に輝いたのでしょうか?












第17位:カポネ


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有名ギャングの晩年を描いたこの映画。何が驚きかって、主人公がカポネと一言も呼ばれないことです。カポネはラジオから聞こえてくるだけの名前で、主人公はフォンスと呼ばれている。それはさておき内容は、認知症を患ってしまったフォンスが現実と妄想の世界をさまようというもの。妄想部分はなかなかグロい描写もありましたが、両者がシームレスに展開されるので、うとうとしながら観ていたこともありますが、話についていけませんでした。葉巻の代わりにニンジンをくわえるのが印象的です。










第16位:ハッピー・オールド・イヤー


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去年公開されたタイ映画。人気を博した『バッド・ジーニアス』の制作会社と女優さんの組み合わせですが、こちらはさほどハマらず。新しい店を出すために断捨離をするという内容で、最初はバンバン捨てていこうとするのですが、徐々に物に宿った価値や思い出に気づき元の持ち主に返していく。ストーリーだけ見れば好みなのですが、個人的には淡々と進みすぎたかなと。でも、物があるとことでときめいていれるという価値観は印象的でした。私もずっとときめいていたいです。











第15位:ある人質 生還までの398日


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仕事先のシリアでISISに囚われてしまったデンマークの写真家。この映画では彼が収容される様子と、彼を取り戻すための家族の奮闘が描かれます。劣悪な環境に身体的暴力や銃殺など目を覆いたくなるような拷問の数々。家族は身代金の要求に答えようと、必死に募金を集めますが、身代金を渡すということはテロリストを支援するということで奪還してもハッピーエンドとはならないんですよね。辛い現実を描くのはいいのですが、ただ長すぎる。エピローグ等などカットして2時間以内に収めてほしかったです。










第14位:声優夫婦の甘くない生活


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ソ連で洋画の吹替声優だった夫婦も、移住先のイスラエルでは仕事がなかった。さて、どうしようというこの映画。夫婦仲が修復されるまでを描いていますが、私は本筋よりも電話越しの恋に惹かれてしまいました。だってあれじゃ電話してきた男があまりにも可哀想じゃないですか。肝心の夫婦の物語の方はセックステレフォンに電話をかけるなど唐突な箇所が目立ち、イマイチピンと来ず。緊急事態に何キスしとんねんとツッコミたくなりました。『クレイマークレイマー』が登場したのは嬉しかったですけど。









第13位:あの頃。


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近年、名作を連発している今泉力哉監督の最新作。しかも主演が松坂桃李さんということで、すごく期待をして観に行きましたが、こちらもそこまで…...。いつだって今が最高!と言えない人にも寄り添っているのは良かったのですが、端的にノリが合わない。古めかしいオタク像は2004年設定だからいいとしても、恋愛研究会の内輪のノリが私とは水と油でした。思っていたよりハロプロ要素が薄かったのもちょっとマイナス。主役を食う勢いの仲野太賀さんはひたすら良かったんですけどね。










第12位:記憶の技法


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4月に『砕け散るところをみせてあげる』の公開が控える石井杏奈さん主演ということだけで観に行ったこの作品。女子高生の曖昧な記憶を探る旅が繰り広げます。グロい描写もあり、決して悪い映画ではないのですが、ただ一緒に行動する男子高校生の行動原理が薄すぎる。最後に種明かしはなされますが、それを含めても物語の都合で動かされているように感じてしまって、そこがマイナスかなと。あと、韓国パートの必要性もあまり感じられませんでした。まるまる削っても物語が成立してしまうので。










第11位:哀愁しんでれら


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ある女性が不幸のどん底からシンデレラストーリーのように駆け上がるも、その先にはまた別の不幸が待っていた…...というこの映画。起こした事件の凶悪度だけで言えば、邦画史に確実に残るほどの衝撃があります。土屋太鳳さんや田中圭さんといった実力ある俳優さんを起用していて、演技も良質。ただ、全体としてはそういう意図とはいえところどころクサすぎるところがあるのと、最後がちょっと説明しすぎかな…...と。あの子供たちのシーンは映さない方が衝撃度が増したように思えます。

















第10位:すばらしき世界


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役所広司さん主演×西川美和監督で、海外の著名な映画賞も受賞したこの映画も、個人的にはこの順位に。服役を終えて出所した男が社会で四苦八苦する姿を描いていて、類型では収まらないひりつくほどのリアルさはさすがの一言。役所広司さんの鋭さを必死に抑えるかのような演技は、今年随一でしょう。免許も再取得できなかったり、最初はうまくいかなかった三上も、次第に六角精児さん演じるスーパーの店長をはじめとした理解ある良い人たちに支えられて、劇的な更生物語を歩んでいきます。途中までは。


三上からカメラが外れた瞬間から、少しずつ雲行きが怪しくなっていき、せっかく就職できた介護施設はいじめが横行。少し誇張しすぎかなとも思いましたが、懸命に堪える三上の姿が見ている私たちに、この世界は素晴らしいのかという問いを強く投げかけてきます。ただ、最後に三上が死んでしまったのはやりすぎでしょう。悲しみで花が咲くものか、ですよ。皮肉が行き過ぎていて、ちょっと個人的に合わなかったです。











第9位:ライアー×ライアー


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ジャニーズの方主演で、ポスターからも分かる通りティーン向け恋愛映画です。おそらく一般的な評価では、この映画が『すばらしき世界』の上に来ることはありえないでしょう。でも、いいんです。これは私のランキングなんですから。


まあこの順位に置いたからってツッコミどころがないわけじゃないんですけどね。普通気づくやろというツッコミは物語が成立しないからなしとしても、心の中を全てモノローグで語ってしまうのはどうなんだとか、胸キュンポイントに分かりやすく音楽をつけるのは安易だなとか、映画内でバカバカ言ってるけど、バレ方が本当にバカ過ぎないかとか。


でも、全ては森七菜さんの存在でチャラになるわけですよ。一人で中学生から社会人までをこなすという八面六臂の大活躍。やはり20年代で重要な俳優さんの一人だと感じます。松村北斗を主演にしたことで、普段あまり来ないような女性を映画館に呼ぶことに成功していましたし、この映画を糸口にして他の映画も観るようになる可能性だってないわけじゃない。そこの部分は評価されてもいいと思いますけどね、私は。










第8位:今は、進め。


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公開されたばかりで、おそらくこのランキングの中では観ている方が一番少ないと思われるこの映画(実際、映画館に私一人しかいなかった)。内容としては(自称)最強の地下アイドル・仮面女子の派生ユニット・kiraboshiの三人に密着したドキュメンタリー映画となります。


ユニット結成からライブまでをつぶさに追っていて、その工程の多さが大変だなと。三人が心の内を文章化するというかなりの力技を使ってくるのですが、そのおかげでストーリーが分かりやすく、最後のライブには思わず引き込まれてしまいました。ただ、上澄みだけを掬い取ったという印象は拭えず、序盤で「ぶつかることもあると思う」と言っておきながら、ぶつかるシーンがなかったのは少し物足りないところでした。


また、この映画は開始前に『忘れられた神様』という短編映画が上映されます。ストーリーとしては不登校の女子高生が、神様を名乗るおじさんと交流していくというもの。周囲の人の口が悪すぎるとか、良い感じの音楽でごまかしているところがおおいなど、気になる点もありましたが、全体としての空気感は決して嫌いじゃありませんでした。二本の合わせ技でこの順位となったという感じです。









第7位:音響ハウス Melody-Go-Round


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タイトル通り、銀座に実在するスタジオ・音響ハウスにまつわるドキュメンタリー映画です。普段聞くような曲がどのように作られているのかというものづくりの面にはこだわりが覗き、坂本龍一さんや松任谷由実さんら日本のミュージックシーンを支えてきたアーティストたちの裏話にはほっこりさせられます。登場人物全員が楽しそうなのが印象的で、構えることなくゆるっと観られる良質なドキュメンタリーでした。普段聞いている曲がこうやって作られているんだということも知れましたしね。テーマ曲のMelody-Go-Roundもリラックスして聞けて良かったです。


ただ、この映画が撮影されたのってコロナ禍の前なんですよね。私が見たときには特別映像として監督らからのメッセージとMelody-Go-Roundのアコースティックバージョンが流れましたが、当然ですけどマスクをしていて。早くコロナ禍が収まって、元の制作環境に戻ってほしいなと思わずにはいられませんでした。












第6位:zoom 見えない参加者


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第6位にランクインしたのはコロナ禍での状況を逆手に取ったホラー映画です。タイトル通り全編zoomで俳優さんたちは一度も会わずに制作されたというこの映画。オンラインで霊を降ろそうという内容で、映画の序盤は人物の紹介がてら和気あいあいと会話が流れ、エンジンがかかるまでには少し時間がかかるのですが、エンジンがかかってからは一気でした。


このコロナ禍で悪霊も鬱憤が溜まっていたのか、とにかく頑張ってくれるんです。全ての家に出現するという同時多発ぶり。空中に浮かんで人の首を絞めたり、机にバンバンと頭を打ち付けさせたり、手数も豊富に大盤振る舞い。特にあらかじめ用意しておいた画面から、恐怖映像にスイッチするという演出はzoomならではのもので、普通に感心してしまいました。70分にも満たない上映時間を、最後まで勢いを落とさず駆け抜けてくれたのは好印象です。その後のメイキング映像はあまり怖くなかったんですけどね。


















第5位:ファーストラヴ


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島本理生さん原作のサスペンス小説の映画化。以前にドラマ化もされていたようですが、私はそちらは見ておらず。ただ、珍しく二年くらい前に原作は読んでいたので、おぼろげな記憶とともに観に行ってきました。


内容は父親を殺した女子大生の鑑定に、公認心理士・真壁由紀と弁護士・庵野迦葉がタッグで挑むというもの。主演の北川景子さんはキャリアベストを更新するかのような演技を見せていましたし、中村倫也さんも飄々とした中に事情を抱える弁護士を好演していましたが、なんといってもこの映画で特筆すべきは殺人を犯した女子大生・聖山環菜を演じた芳根京子さんですよ。序盤は鑑定に訪れた相手を翻弄するかのようなトリッキーな演技を見せていましたが、中盤に入って思いを吐露する様はまさに迫真。ラストの裁判に至ってはほとんど芳根京子劇場といった趣で場を支配していました。北川さんとの演技合戦は見どころ十分でしたね。


また、ストーリー展開も今の時代に合っていて。環菜は子供のころからデッサン会と称して、多くの男たちに凝視されるという耐え難い仕打ちを受けていたんです。そこから来るトラウマが彼女の心のキーになっていて、由紀との会話によって声をあげていく決意をする。現実もまだまだではありますが、女性がモノを言える、声をあげられる社会に変化していて、その潮流を汲んでいるこの映画の重要性は小さくないと感じます。


舞台挨拶で板尾創路さんが言っていたように、都合よくトイレの床が濡れていたなど不自然なところもなくはないのですが、それでも評価されるべき映画だと感じましたね。












第4位:AWAKE


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去年の年末に公開されて、かなり評判が良かったこの映画。中規模公開なので、どうしても地方では公開が遅れ、このタイミングでの鑑賞になりましたが、評判に違わぬ良作でした。


40人の同期がいる中で、先輩後輩も含め年間たった3人しかプロ棋士になれない将棋の世界。勝負の厳しさを徹底的に叩き込まれる環境で、主人公・英一は、後にプロ棋士になる天才・陸に敗れ、プロ棋士になる夢を諦めてしまいます。将棋しかしてこなかった英一が大学に入って出会ったのはプログラミングの世界。そこでAIの将棋ソフトを開発することになるが……というストーリーのこの映画。綿密な取材に裏打ちされた将棋とプログラミング描写が映画に説得力を与えていて、素人目から見てもよく練り込まれていることが分かりました。


そして、何より痺れたのが最後の英一と陸との対局。一手一手にひりつくような緊張感が漂っており、真剣なまなざしがめちゃくちゃかっこいいんです。あまりセリフの多くない映画に憧れがある私にぴったりとハマりました。この対局で勝ったのは陸ですが、それは自分の戦法を捨てて、勝ちにこだわった結果。一方、負けた英一は陸に自分の作った最強の将棋ソフト「AWAKE」を認めさせることを目標にしていて、実際それは対局後に叶います。どちらも勝者でどちらも敗者という結果で対局は終わりますが、この映画の白眉はラストシーン。今まで二人が散々こだわり続け、縛られてきた勝ち負けのない世界にこの映画は連れて行ってくれるんです。そこには爽快感があり、良い映画観たなという満足した気持ちのまま映画館を後にすることができました。見逃さないで良かったです。












第3位:あのこは貴族


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観る前から二月で一番の注目作と見込んでいたこの映画。主演も門脇麦さんと水原希子さんということもあり、期待値もかなり高めに設定して行きましたが、そのハードルを軽々と超えてきてくれました。


門脇さん演じる華子は東京育ちのお嬢様。医者の家系に生まれていて、結婚して子供を作らないとという強迫観念に駆られ、不慣れな飲み会にも繰り出してしまいます。一方、水原さん演じる美紀は富山から上京してきたどこにでもいるような(慶応に合格できる時点でこの言葉には疑問符がつかないでもない)女性。こちらも保守的な父親から「女なら料理ぐらいできないと」という「こうあるべき」という呪いをかけられています。


正直、第一報を聞いたときは、二人の役柄は逆の方がハマるのではないかと思っていましたが、映画を観ていてその考えは完全に覆されましたね。門脇さんの適応力もさすがでしたが、水原さんも上手く華を抑え込んでいて、でも完全に消し去ってはおらずちょうどいい塩梅でした。


華子は映画が進む中で、高良健吾さん演じる御曹司・幸一郎と婚約します。ただ、その幸一郎は美紀と同窓で親交がありました。共通の知り合いのもと、二人は出会うのですが、ここで従来なら取っ組み合いの喧嘩になりそうなところを、この映画はそうはならないんです。互いを責めずにあくまで話を聞くだけ。キャラクターや観客の「こうあるべき」という固定観念をこの映画は軽々と翻していき、そこが気持ち良かったですね。


個人的に一番好きだったのが、華子が夜の街を一人で歩くシーンと、美紀が友達と二ケツをするシーンで。この映画の始まりは両者とも車の中なんですよね。誰かにハンドルを握られて進んで行っている。だけれど、二人が出会ってお互いの価値観に影響を与えたことで、自分の足で進めるようになっている。ただ歩くだけのシーンがとても印象的で、岨手監督の高い演出力を感じました。もう一回観たいです。












第2位:タイトル、拒絶


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「私の人生にタイトルなんて必要なんでしょうか」というモノローグから始まるこの映画。デリバリーヘルス・クレイジーバニーに従事するセックスワーカーの女性たちを描いています。主な舞台は女性たちの待機室。主人公はそこでアシスタントをするカノウです。うだつの上がらない日々を過ごすカノウを伊藤沙莉さんが演じており、日々の憂鬱を懸命に抑えながらなんとかやり過ごしているありきたりな女性を、等身大の演技で表現していました。また、クレイジーバニーの店主を演じた般若さんも迫力があって恐ろしく、セックスワーカーを演じた女優の方々も適材適所で輝いていました。


その中でも私が一番印象に残ったのは、一番人気のセックスワーカーを演じた恒松祐里さんです。以前から色々な映画やドラマで拝見していて、良い俳優さんだとは思っていたのですが、この映画の恒松さんはとにかく凄かった。明るく振る舞っているようで、心の中に底知れない闇を抱えていることを一発で感じさせる表情は圧巻の一言。最後のセリフに至るまで悪魔的な怪演を見せてくれました。この映画のMVPだと思います。


でも、私がこの映画を推したい理由はそれ以上に、人間の感情がむき出しになっていたところです。この映画は前半まではある程度淡々と進んで行きますが、中盤の長尺の大喧嘩のシーンで空気が一変。殴る、叫ぶ、泣く、喚くなど今まで登場人物が抑えていた感情が一気に暴露されます。山田佳奈監督は普段、劇団を主宰しているそうですが、このシーンは観る者の心を掴んで離さない圧倒的なシーンで、いい意味での舞台っぽさが滲み出た最高のシーンでした。叫ぶって生きていることだなと。感情むき出し上等だなと。私の書いているものももっと感情出していいのかなと考える転機になりました。













第1位:ディエゴ・マラドーナ 二つの顔


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一位は言わずと知れた名サッカー選手、ディエゴ・マラドーナのドキュメンタリーです。私がサッカー好きで、隔週で地元のスタジアムに行っていることを抜きにしても、この映画は本当に凄まじく、観ながら何度も心の中で「もうやめてくれ」と叫び、観終わった後にはロビーで思わず頭を抱えてしまいました。去年の『Documentary of 欅坂46~僕たちの嘘と真実~』に匹敵する地獄ドキュメンタリーでした。


この手の映画になると、マラドーナについて知っておかなければならないのかと構える方もいるかもしれませんが、それは大丈夫。公式サイトに年表がありますし、極端な話「なんか凄い選手」ぐらいの認識で問題ないです。


この映画はマラドーナの中でも主にナポリ時代の7年間を追ったもの。バルセロナで思うような実績を残せなかったマラドーナはナポリに移籍します。最初は上手くいきませんが、見事ナポリをセリエA優勝に導き、ファンからは神として崇められる。その崇拝はあまりにも強烈なもので、熱狂的を通り越して、狂気的でした。この映画の前半はそんなマラドーナの活躍がたっぷり見られるので、特に海外サッカーが好きな人は観て損はしないと思います。かの有名な神の手ゴールと5人抜きもちゃんとやってくれますし。


ですが、活躍の裏ではマフィアとのかかわりやコカインの服用など徐々に怪しい影が。この映画のタイトルにもなっている二つの顔とは青年ディエゴとサッカー選手マラドーナのことを指していて、マラドーナがディエゴを侵食していく様が観ていて辛い。そして、それは1990年イタリアワールドカップで決定的になります。


マラドーナが所属するアルゼンチン代表は準々決勝でイタリアと対戦。そして、その舞台はホームとして慣れ親しんだナポリのスタジアム。結果はマラドーナがPK戦でPKを決めたこともあり、アルゼンチンの勝利。こっからの手のひら返しがもう5ちゃんねるなんて目じゃない苛烈なもので。イタリアで一番嫌われた人物となったマラドーナはどんどん精神を追い詰められていきます。ですが、ナポリはボロボロになったマラドーナとの契約を延長し……。


最近、『花束みたいな恋をした』や『あの頃。』、小説では『推し、燃ゆ』など好きな者との距離感を問いかける作品が増えていますが、この映画はその最北にあるような映画です。ぜひとも多くの方に観ていただいて、できればサッカーファン以外からの感想を聞きたいなと感じました。


















以上でランキングは終了となります。いかがでしたでしょうか。先月に続き洋画が上位10本中2本と寂しい結果になってしまいました。今年ピンときた洋画って今のところマラドーナだけですからね。今年はできるだけ洋画も観たいと思っているのですが、早くも先行きが少し不安です。


ただ、その分今月も邦画が奮闘。今月公開だけでも『あのこは貴族』は年間のベスト10を狙える映画ですし、『ファーストラヴ』もかなり良かった。『すばらしき世界』や『あの頃。』も個人的にはあまりハマらなかったのですが、評判は良いですし、先月公開の『花束みたいな恋をした』や『ヤクザと家族 The Family』なども入れて、今邦画が熱いと言えると思います。舐めてかからないでぜひとも映画館で観てほしいですね。


そして、3月も個人的に注目している映画はいくつかあります。たとえば公開の新作では


・野球少女
・シン・エヴァンゲリオン劇場版
・すくってごらん
・ミナリ
・まともじゃないのは君も一緒
・ノマドランド
・騙し絵の牙



はぜひとも観たいと思っていますし、遅れて公開の映画でも


・ガンズ・アキンボ
・FUNAN フナン
・心の傷を癒すということ 劇場版
・恋するけだもの
・空に聞く
・藁にもすがる獣たち



はチェックしたいと考えています。引き続きコロナには注意しながら映画館に通えたらなと。そして、来月もまた元気でランキングを作りたいと思っていますので、その際は何卒よろしくお願いします。


では、また会いましょう。お読みいただきありがとうございました。


おしまい


あのこは貴族 (集英社文庫)
山内マリコ
集英社
2020-07-03


 
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