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ものすごく薄くて、ありえないほど浅いブログ。 Twitter → @Ritalin_203

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こんにちは。これです。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開日決まりましたね。なんと3月8日の月曜日。思っていた以上に急で新劇場版シリーズ見なきゃ…...と今焦っているところです。Jリーグも開幕しましたし、忙しい日が公開までは続きそうです。


さて、今回のブログは2021年2月の映画ランキングです。毎月恒例(にしていきたい)この企画。2月は映画館で合計17本の映画を鑑賞しました。1月より日数が少ないので、まあこんなものかなと思います。それでも年間200本ペースに乗っかっていてどうしようかとは思いますが。


それでは、前置きもさっさと終えて、ランキングに入りたいと思います。果たして、どの映画が一位に輝いたのでしょうか?












第17位:カポネ


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有名ギャングの晩年を描いたこの映画。何が驚きかって、主人公がカポネと一言も呼ばれないことです。カポネはラジオから聞こえてくるだけの名前で、主人公はフォンスと呼ばれている。それはさておき内容は、認知症を患ってしまったフォンスが現実と妄想の世界をさまようというもの。妄想部分はなかなかグロい描写もありましたが、両者がシームレスに展開されるので、うとうとしながら観ていたこともありますが、話についていけませんでした。葉巻の代わりにニンジンをくわえるのが印象的です。










第16位:ハッピー・オールド・イヤー


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去年公開されたタイ映画。人気を博した『バッド・ジーニアス』の制作会社と女優さんの組み合わせですが、こちらはさほどハマらず。新しい店を出すために断捨離をするという内容で、最初はバンバン捨てていこうとするのですが、徐々に物に宿った価値や思い出に気づき元の持ち主に返していく。ストーリーだけ見れば好みなのですが、個人的には淡々と進みすぎたかなと。でも、物があるとことでときめいていれるという価値観は印象的でした。私もずっとときめいていたいです。











第15位:ある人質 生還までの398日


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仕事先のシリアでISISに囚われてしまったデンマークの写真家。この映画では彼が収容される様子と、彼を取り戻すための家族の奮闘が描かれます。劣悪な環境に身体的暴力や銃殺など目を覆いたくなるような拷問の数々。家族は身代金の要求に答えようと、必死に募金を集めますが、身代金を渡すということはテロリストを支援するということで奪還してもハッピーエンドとはならないんですよね。辛い現実を描くのはいいのですが、ただ長すぎる。エピローグ等などカットして2時間以内に収めてほしかったです。










第14位:声優夫婦の甘くない生活


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ソ連で洋画の吹替声優だった夫婦も、移住先のイスラエルでは仕事がなかった。さて、どうしようというこの映画。夫婦仲が修復されるまでを描いていますが、私は本筋よりも電話越しの恋に惹かれてしまいました。だってあれじゃ電話してきた男があまりにも可哀想じゃないですか。肝心の夫婦の物語の方はセックステレフォンに電話をかけるなど唐突な箇所が目立ち、イマイチピンと来ず。緊急事態に何キスしとんねんとツッコミたくなりました。『クレイマークレイマー』が登場したのは嬉しかったですけど。









第13位:あの頃。


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近年、名作を連発している今泉力哉監督の最新作。しかも主演が松坂桃李さんということで、すごく期待をして観に行きましたが、こちらもそこまで…...。いつだって今が最高!と言えない人にも寄り添っているのは良かったのですが、端的にノリが合わない。古めかしいオタク像は2004年設定だからいいとしても、恋愛研究会の内輪のノリが私とは水と油でした。思っていたよりハロプロ要素が薄かったのもちょっとマイナス。主役を食う勢いの仲野太賀さんはひたすら良かったんですけどね。










第12位:記憶の技法


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4月に『砕け散るところをみせてあげる』の公開が控える石井杏奈さん主演ということだけで観に行ったこの作品。女子高生の曖昧な記憶を探る旅が繰り広げます。グロい描写もあり、決して悪い映画ではないのですが、ただ一緒に行動する男子高校生の行動原理が薄すぎる。最後に種明かしはなされますが、それを含めても物語の都合で動かされているように感じてしまって、そこがマイナスかなと。あと、韓国パートの必要性もあまり感じられませんでした。まるまる削っても物語が成立してしまうので。










第11位:哀愁しんでれら


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ある女性が不幸のどん底からシンデレラストーリーのように駆け上がるも、その先にはまた別の不幸が待っていた…...というこの映画。起こした事件の凶悪度だけで言えば、邦画史に確実に残るほどの衝撃があります。土屋太鳳さんや田中圭さんといった実力ある俳優さんを起用していて、演技も良質。ただ、全体としてはそういう意図とはいえところどころクサすぎるところがあるのと、最後がちょっと説明しすぎかな…...と。あの子供たちのシーンは映さない方が衝撃度が増したように思えます。

















第10位:すばらしき世界


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役所広司さん主演×西川美和監督で、海外の著名な映画賞も受賞したこの映画も、個人的にはこの順位に。服役を終えて出所した男が社会で四苦八苦する姿を描いていて、類型では収まらないひりつくほどのリアルさはさすがの一言。役所広司さんの鋭さを必死に抑えるかのような演技は、今年随一でしょう。免許も再取得できなかったり、最初はうまくいかなかった三上も、次第に六角精児さん演じるスーパーの店長をはじめとした理解ある良い人たちに支えられて、劇的な更生物語を歩んでいきます。途中までは。


三上からカメラが外れた瞬間から、少しずつ雲行きが怪しくなっていき、せっかく就職できた介護施設はいじめが横行。少し誇張しすぎかなとも思いましたが、懸命に堪える三上の姿が見ている私たちに、この世界は素晴らしいのかという問いを強く投げかけてきます。ただ、最後に三上が死んでしまったのはやりすぎでしょう。悲しみで花が咲くものか、ですよ。皮肉が行き過ぎていて、ちょっと個人的に合わなかったです。











第9位:ライアー×ライアー


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ジャニーズの方主演で、ポスターからも分かる通りティーン向け恋愛映画です。おそらく一般的な評価では、この映画が『すばらしき世界』の上に来ることはありえないでしょう。でも、いいんです。これは私のランキングなんですから。


まあこの順位に置いたからってツッコミどころがないわけじゃないんですけどね。普通気づくやろというツッコミは物語が成立しないからなしとしても、心の中を全てモノローグで語ってしまうのはどうなんだとか、胸キュンポイントに分かりやすく音楽をつけるのは安易だなとか、映画内でバカバカ言ってるけど、バレ方が本当にバカ過ぎないかとか。


でも、全ては森七菜さんの存在でチャラになるわけですよ。一人で中学生から社会人までをこなすという八面六臂の大活躍。やはり20年代で重要な俳優さんの一人だと感じます。松村北斗を主演にしたことで、普段あまり来ないような女性を映画館に呼ぶことに成功していましたし、この映画を糸口にして他の映画も観るようになる可能性だってないわけじゃない。そこの部分は評価されてもいいと思いますけどね、私は。










第8位:今は、進め。


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公開されたばかりで、おそらくこのランキングの中では観ている方が一番少ないと思われるこの映画(実際、映画館に私一人しかいなかった)。内容としては(自称)最強の地下アイドル・仮面女子の派生ユニット・kiraboshiの三人に密着したドキュメンタリー映画となります。


ユニット結成からライブまでをつぶさに追っていて、その工程の多さが大変だなと。三人が心の内を文章化するというかなりの力技を使ってくるのですが、そのおかげでストーリーが分かりやすく、最後のライブには思わず引き込まれてしまいました。ただ、上澄みだけを掬い取ったという印象は拭えず、序盤で「ぶつかることもあると思う」と言っておきながら、ぶつかるシーンがなかったのは少し物足りないところでした。


また、この映画は開始前に『忘れられた神様』という短編映画が上映されます。ストーリーとしては不登校の女子高生が、神様を名乗るおじさんと交流していくというもの。周囲の人の口が悪すぎるとか、良い感じの音楽でごまかしているところがおおいなど、気になる点もありましたが、全体としての空気感は決して嫌いじゃありませんでした。二本の合わせ技でこの順位となったという感じです。









第7位:音響ハウス Melody-Go-Round


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タイトル通り、銀座に実在するスタジオ・音響ハウスにまつわるドキュメンタリー映画です。普段聞くような曲がどのように作られているのかというものづくりの面にはこだわりが覗き、坂本龍一さんや松任谷由実さんら日本のミュージックシーンを支えてきたアーティストたちの裏話にはほっこりさせられます。登場人物全員が楽しそうなのが印象的で、構えることなくゆるっと観られる良質なドキュメンタリーでした。普段聞いている曲がこうやって作られているんだということも知れましたしね。テーマ曲のMelody-Go-Roundもリラックスして聞けて良かったです。


ただ、この映画が撮影されたのってコロナ禍の前なんですよね。私が見たときには特別映像として監督らからのメッセージとMelody-Go-Roundのアコースティックバージョンが流れましたが、当然ですけどマスクをしていて。早くコロナ禍が収まって、元の制作環境に戻ってほしいなと思わずにはいられませんでした。












第6位:zoom 見えない参加者


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第6位にランクインしたのはコロナ禍での状況を逆手に取ったホラー映画です。タイトル通り全編zoomで俳優さんたちは一度も会わずに制作されたというこの映画。オンラインで霊を降ろそうという内容で、映画の序盤は人物の紹介がてら和気あいあいと会話が流れ、エンジンがかかるまでには少し時間がかかるのですが、エンジンがかかってからは一気でした。


このコロナ禍で悪霊も鬱憤が溜まっていたのか、とにかく頑張ってくれるんです。全ての家に出現するという同時多発ぶり。空中に浮かんで人の首を絞めたり、机にバンバンと頭を打ち付けさせたり、手数も豊富に大盤振る舞い。特にあらかじめ用意しておいた画面から、恐怖映像にスイッチするという演出はzoomならではのもので、普通に感心してしまいました。70分にも満たない上映時間を、最後まで勢いを落とさず駆け抜けてくれたのは好印象です。その後のメイキング映像はあまり怖くなかったんですけどね。


















第5位:ファーストラヴ


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島本理生さん原作のサスペンス小説の映画化。以前にドラマ化もされていたようですが、私はそちらは見ておらず。ただ、珍しく二年くらい前に原作は読んでいたので、おぼろげな記憶とともに観に行ってきました。


内容は父親を殺した女子大生の鑑定に、公認心理士・真壁由紀と弁護士・庵野迦葉がタッグで挑むというもの。主演の北川景子さんはキャリアベストを更新するかのような演技を見せていましたし、中村倫也さんも飄々とした中に事情を抱える弁護士を好演していましたが、なんといってもこの映画で特筆すべきは殺人を犯した女子大生・聖山環菜を演じた芳根京子さんですよ。序盤は鑑定に訪れた相手を翻弄するかのようなトリッキーな演技を見せていましたが、中盤に入って思いを吐露する様はまさに迫真。ラストの裁判に至ってはほとんど芳根京子劇場といった趣で場を支配していました。北川さんとの演技合戦は見どころ十分でしたね。


また、ストーリー展開も今の時代に合っていて。環菜は子供のころからデッサン会と称して、多くの男たちに凝視されるという耐え難い仕打ちを受けていたんです。そこから来るトラウマが彼女の心のキーになっていて、由紀との会話によって声をあげていく決意をする。現実もまだまだではありますが、女性がモノを言える、声をあげられる社会に変化していて、その潮流を汲んでいるこの映画の重要性は小さくないと感じます。


舞台挨拶で板尾創路さんが言っていたように、都合よくトイレの床が濡れていたなど不自然なところもなくはないのですが、それでも評価されるべき映画だと感じましたね。












第4位:AWAKE


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去年の年末に公開されて、かなり評判が良かったこの映画。中規模公開なので、どうしても地方では公開が遅れ、このタイミングでの鑑賞になりましたが、評判に違わぬ良作でした。


40人の同期がいる中で、先輩後輩も含め年間たった3人しかプロ棋士になれない将棋の世界。勝負の厳しさを徹底的に叩き込まれる環境で、主人公・英一は、後にプロ棋士になる天才・陸に敗れ、プロ棋士になる夢を諦めてしまいます。将棋しかしてこなかった英一が大学に入って出会ったのはプログラミングの世界。そこでAIの将棋ソフトを開発することになるが……というストーリーのこの映画。綿密な取材に裏打ちされた将棋とプログラミング描写が映画に説得力を与えていて、素人目から見てもよく練り込まれていることが分かりました。


そして、何より痺れたのが最後の英一と陸との対局。一手一手にひりつくような緊張感が漂っており、真剣なまなざしがめちゃくちゃかっこいいんです。あまりセリフの多くない映画に憧れがある私にぴったりとハマりました。この対局で勝ったのは陸ですが、それは自分の戦法を捨てて、勝ちにこだわった結果。一方、負けた英一は陸に自分の作った最強の将棋ソフト「AWAKE」を認めさせることを目標にしていて、実際それは対局後に叶います。どちらも勝者でどちらも敗者という結果で対局は終わりますが、この映画の白眉はラストシーン。今まで二人が散々こだわり続け、縛られてきた勝ち負けのない世界にこの映画は連れて行ってくれるんです。そこには爽快感があり、良い映画観たなという満足した気持ちのまま映画館を後にすることができました。見逃さないで良かったです。












第3位:あのこは貴族


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観る前から二月で一番の注目作と見込んでいたこの映画。主演も門脇麦さんと水原希子さんということもあり、期待値もかなり高めに設定して行きましたが、そのハードルを軽々と超えてきてくれました。


門脇さん演じる華子は東京育ちのお嬢様。医者の家系に生まれていて、結婚して子供を作らないとという強迫観念に駆られ、不慣れな飲み会にも繰り出してしまいます。一方、水原さん演じる美紀は富山から上京してきたどこにでもいるような(慶応に合格できる時点でこの言葉には疑問符がつかないでもない)女性。こちらも保守的な父親から「女なら料理ぐらいできないと」という「こうあるべき」という呪いをかけられています。


正直、第一報を聞いたときは、二人の役柄は逆の方がハマるのではないかと思っていましたが、映画を観ていてその考えは完全に覆されましたね。門脇さんの適応力もさすがでしたが、水原さんも上手く華を抑え込んでいて、でも完全に消し去ってはおらずちょうどいい塩梅でした。


華子は映画が進む中で、高良健吾さん演じる御曹司・幸一郎と婚約します。ただ、その幸一郎は美紀と同窓で親交がありました。共通の知り合いのもと、二人は出会うのですが、ここで従来なら取っ組み合いの喧嘩になりそうなところを、この映画はそうはならないんです。互いを責めずにあくまで話を聞くだけ。キャラクターや観客の「こうあるべき」という固定観念をこの映画は軽々と翻していき、そこが気持ち良かったですね。


個人的に一番好きだったのが、華子が夜の街を一人で歩くシーンと、美紀が友達と二ケツをするシーンで。この映画の始まりは両者とも車の中なんですよね。誰かにハンドルを握られて進んで行っている。だけれど、二人が出会ってお互いの価値観に影響を与えたことで、自分の足で進めるようになっている。ただ歩くだけのシーンがとても印象的で、岨手監督の高い演出力を感じました。もう一回観たいです。












第2位:タイトル、拒絶


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「私の人生にタイトルなんて必要なんでしょうか」というモノローグから始まるこの映画。デリバリーヘルス・クレイジーバニーに従事するセックスワーカーの女性たちを描いています。主な舞台は女性たちの待機室。主人公はそこでアシスタントをするカノウです。うだつの上がらない日々を過ごすカノウを伊藤沙莉さんが演じており、日々の憂鬱を懸命に抑えながらなんとかやり過ごしているありきたりな女性を、等身大の演技で表現していました。また、クレイジーバニーの店主を演じた般若さんも迫力があって恐ろしく、セックスワーカーを演じた女優の方々も適材適所で輝いていました。


その中でも私が一番印象に残ったのは、一番人気のセックスワーカーを演じた恒松祐里さんです。以前から色々な映画やドラマで拝見していて、良い俳優さんだとは思っていたのですが、この映画の恒松さんはとにかく凄かった。明るく振る舞っているようで、心の中に底知れない闇を抱えていることを一発で感じさせる表情は圧巻の一言。最後のセリフに至るまで悪魔的な怪演を見せてくれました。この映画のMVPだと思います。


でも、私がこの映画を推したい理由はそれ以上に、人間の感情がむき出しになっていたところです。この映画は前半まではある程度淡々と進んで行きますが、中盤の長尺の大喧嘩のシーンで空気が一変。殴る、叫ぶ、泣く、喚くなど今まで登場人物が抑えていた感情が一気に暴露されます。山田佳奈監督は普段、劇団を主宰しているそうですが、このシーンは観る者の心を掴んで離さない圧倒的なシーンで、いい意味での舞台っぽさが滲み出た最高のシーンでした。叫ぶって生きていることだなと。感情むき出し上等だなと。私の書いているものももっと感情出していいのかなと考える転機になりました。













第1位:ディエゴ・マラドーナ 二つの顔


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一位は言わずと知れた名サッカー選手、ディエゴ・マラドーナのドキュメンタリーです。私がサッカー好きで、隔週で地元のスタジアムに行っていることを抜きにしても、この映画は本当に凄まじく、観ながら何度も心の中で「もうやめてくれ」と叫び、観終わった後にはロビーで思わず頭を抱えてしまいました。去年の『Documentary of 欅坂46~僕たちの嘘と真実~』に匹敵する地獄ドキュメンタリーでした。


この手の映画になると、マラドーナについて知っておかなければならないのかと構える方もいるかもしれませんが、それは大丈夫。公式サイトに年表がありますし、極端な話「なんか凄い選手」ぐらいの認識で問題ないです。


この映画はマラドーナの中でも主にナポリ時代の7年間を追ったもの。バルセロナで思うような実績を残せなかったマラドーナはナポリに移籍します。最初は上手くいきませんが、見事ナポリをセリエA優勝に導き、ファンからは神として崇められる。その崇拝はあまりにも強烈なもので、熱狂的を通り越して、狂気的でした。この映画の前半はそんなマラドーナの活躍がたっぷり見られるので、特に海外サッカーが好きな人は観て損はしないと思います。かの有名な神の手ゴールと5人抜きもちゃんとやってくれますし。


ですが、活躍の裏ではマフィアとのかかわりやコカインの服用など徐々に怪しい影が。この映画のタイトルにもなっている二つの顔とは青年ディエゴとサッカー選手マラドーナのことを指していて、マラドーナがディエゴを侵食していく様が観ていて辛い。そして、それは1990年イタリアワールドカップで決定的になります。


マラドーナが所属するアルゼンチン代表は準々決勝でイタリアと対戦。そして、その舞台はホームとして慣れ親しんだナポリのスタジアム。結果はマラドーナがPK戦でPKを決めたこともあり、アルゼンチンの勝利。こっからの手のひら返しがもう5ちゃんねるなんて目じゃない苛烈なもので。イタリアで一番嫌われた人物となったマラドーナはどんどん精神を追い詰められていきます。ですが、ナポリはボロボロになったマラドーナとの契約を延長し……。


最近、『花束みたいな恋をした』や『あの頃。』、小説では『推し、燃ゆ』など好きな者との距離感を問いかける作品が増えていますが、この映画はその最北にあるような映画です。ぜひとも多くの方に観ていただいて、できればサッカーファン以外からの感想を聞きたいなと感じました。


















以上でランキングは終了となります。いかがでしたでしょうか。先月に続き洋画が上位10本中2本と寂しい結果になってしまいました。今年ピンときた洋画って今のところマラドーナだけですからね。今年はできるだけ洋画も観たいと思っているのですが、早くも先行きが少し不安です。


ただ、その分今月も邦画が奮闘。今月公開だけでも『あのこは貴族』は年間のベスト10を狙える映画ですし、『ファーストラヴ』もかなり良かった。『すばらしき世界』や『あの頃。』も個人的にはあまりハマらなかったのですが、評判は良いですし、先月公開の『花束みたいな恋をした』や『ヤクザと家族 The Family』なども入れて、今邦画が熱いと言えると思います。舐めてかからないでぜひとも映画館で観てほしいですね。


そして、3月も個人的に注目している映画はいくつかあります。たとえば公開の新作では


・野球少女
・シン・エヴァンゲリオン劇場版
・すくってごらん
・ミナリ
・まともじゃないのは君も一緒
・ノマドランド
・騙し絵の牙



はぜひとも観たいと思っていますし、遅れて公開の映画でも


・ガンズ・アキンボ
・FUNAN フナン
・心の傷を癒すということ 劇場版
・恋するけだもの
・空に聞く
・藁にもすがる獣たち



はチェックしたいと考えています。引き続きコロナには注意しながら映画館に通えたらなと。そして、来月もまた元気でランキングを作りたいと思っていますので、その際は何卒よろしくお願いします。


では、また会いましょう。お読みいただきありがとうございました。


おしまい


あのこは貴族 (集英社文庫)
山内マリコ
集英社
2020-07-03


 
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こんばんは。これです。遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今年は更新のペースを去年よりも上げたいなと。創作の傍らでもがんばります。


さて、今回のブログは1月の映画ランキングです。長野では遅れて公開する作品も多いので、去年に公開された映画でも、今月観た映画は今月の映画としてカウントします。なので、わりと独特なランキングになっていますが、どうかご笑覧ください。


今年の1月に観た映画は20本。去年が10本だったのでちょうど倍。年間200本ペースです。延期した映画もあるのにどうなってるんでしょうか。自分でも分かりません。


それでは、始めたいと思います。今回は観た映画全てに簡単なコメントを書きました。上位になるにつれ好きなので文章は伸びてますけどね。だから投稿するまでに四日もかかったんだ…...。来月からはなるべく早く投稿できるように努力したいと思います。月が終わるまでにはなんとか。


さて、前置きはここまでにしておいて、一気に発表していきます。果たしてどの作品がランクインしたのでしょうか?













第20位:ソング・トゥ・ソング


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展開に山がなく、嫌いにすらなれないどうでもいいキャラクターの話が延々と続く。ゴールも見えず、モノローグ+それっぽい音楽の合わせ技が十数回続き、心が折られた。はじめて途中退出してしまった映画でした。









第19位:異端の鳥


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去年、話題の映画も個人的にはハマらず。目を覆いたくなるような描写はあったものの、こちらも展開が平坦で途中眠ってしまいました。でも、朱に交われば赤くなるという現実を淡々と描いていたのは良かったと思います。









第18位:ブリング・ミー・ホーム 尋ね人


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息子を誘拐された母親の執念の追走劇。終盤の迫力はあったもののこちらもいまいちハマらず。はじめに見たこともあって、ほとんど記憶にも残っていない…...。というかウトウトしてしまった。犯人グループたちのクズさは好き。









第17位:スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち


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映画製作の裏側を知ることのできるドキュメンタリー。貴重な証言も数多く、スタントウーマンがどのように闘ってきたのか知ることができた。綿々と受け継がれる意思を感じる。ただ、90分くらいの上映時間だったのに、やたらと長く感じてしまいこの順位に。興味ある分野のはずなのに。










第16位:燃ゆる女の肖像


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いや、分かるんですよ。絵画的なショットは洗練されていますし、シスターフッドが大事だってことも。だけれど、『君の名前で僕を呼んで』でも感じたけれど、こういったオシャンティーなLGBT洋画は私とは相性が悪い……。おそらく一番遠いところにいるからなんでしょうね。















第15位:名も無き世界のエンドロール


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子ども時代仲の良かった三人はどうして引き裂かれてしまったのか。主演の三人をはじめとして俳優さんは良いんですよ。中村アンさんがあそこまでブチギレてくれるのは予想外でしたし。伏線回収も巧みなんですけど、宣伝段階でラスト20分を強調しすぎているのがねぇ…...。無駄にハードルが高くなるのでもう止めにしませんか。











第14位:喜劇 愛妻物語

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今年一本目に観たのがこの映画。倦怠期の夫婦を描いていて、とにかく水川あさみさん演じるチカの機嫌が悪い。うだつのあだらない夫にキレまくり。情けなさを醸し出す濱田岳さんもグッド。個人的に信頼している脚本家・足立紳さんの初監督作品で、去年好きだった『アンダードッグ』と同じくルーザーの物語になっているのにグッときました。終わり方も何気ない感じで良かったと思います。最高とまではいかなくてもいいスタートを切ることができました。









第13位:さんかく窓の外側は夜


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原作未読で挑んだこの映画。幽霊を祓う探偵コンビというBL的な間口から入りつつ、着地点が私の好きな疑似家族的になっていたのが好きでした。映像も凝っていましたし、飄々とした岡田将生さんや、目つきの鋭い平手友梨奈さんなど俳優さんも良く、特に滝藤賢一さんが予想に反してほぼ出ずっぱりでにやついてしまった。「信じない」というこの映画では重要な役どころで、思わずガッツポーズ。あと、ツイッター等で話題になっている某映画(とそれを取り巻く現象)を想起させるのも面白かったです。










第12位:リトル・サブカル・ウォーズ~ヴィレヴァン!の逆襲


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個人的に好きな岡山天音さんが主演というだけで、ドラマも履修してから観に行きました。舞台はタイトル通り、サブカルまみれの書店ヴィレッジヴァンガード。ですが、映画はサブカルが奪われてしまった世界での主人公たちの奮闘を描いています。世界観には詰めの甘さも残りますが、最終的に「好きを叫ぼうぜ」という結論に達するのがよきでした。というか、やっていることは大体クレヨンしんちゃんの映画と同じなので、私が好きにならないはずがないんですよね。


あと、なぜか入場時にステッカーとお好きなグッズ(私はハンドスピナーにした)をもらったのもいい思い出です。









第11位:ばるぼら


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言わずと知れた手塚治虫の作品を令和になって映画化。退廃的な少女・ばるぼらに出会って堕落していく作家・美倉の物語です。この映画の良さは何と言っても主演二人に代表されていて。ばるぼらってミステリアスですが、意外とテンションが高いんですよね。演じた二階堂ふみさんは謎とミステリアスと可愛さをいい塩梅でミックスさせていて流石でした。稲垣吾郎さんからにじみ出る自意識の高さもベストキャストですしね。


それと、美術がけっこう頑張っていて美倉の部屋の変遷や、ごみ捨て場みたいなたまり場など退廃的なムードを作り上げていました。

















第10位:おもいで写眞

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わざわざ松本のイオンシネマまで行って観たこの映画。遺影写真がテーマとなっていて、東京で夢をかなえられず、傷心して地元に戻ってきた主人公が人々との触れ合いによって癒されていく。筋書きとしては良くあるご当地映画なのですが、何一つ外さず正面から優しい世界を描いていて、こういうのでいいんだよと癒されました。


主演の深川麻衣さんはむすっとしている場面も多いのですが、団地の人々に寄り添おうとしているのが窺えて、ちゃんと映画を引っ張っていてくれていますし、高良健吾さんがかつてないほどの好青年なのも癖を消していて良いなと。物語上ベテランの俳優さんが多く配置されていて安心感がありますし、『パンとバスと二度目のハツコイ』以降、深川麻衣さんは俳優としてとても良いキャリアを歩めていると感じました。










第9位:新感染半島 ファイナル・ステージ


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2016年に公開されて大きな話題を呼んだ『新感染 ファイナル・エクスプレス』の続編。前作以上にあらゆる面でスケールアップしていて、特に終盤のカーチェイスは並み居るゾンビたちをバッタバタと轢いていく勢いの良さがたまりません。姉役の方がかっこ可愛くて印象的でした。


とはいえ、私がこの映画で最も気に入ったのはそのストーリー、特に終盤です。大金を巡るコンゲーム的な要素を纏わせつつ、全てを吹っ飛ばすカーチェイスからの展開。母親が自分を犠牲にして、子供を逃がそうとするんですけど、それじゃダメだと主人公が母親もろとも助け出すんですよ。『新感染』では父親が犠牲になって子供が生き残ったんですけど、自己犠牲なんてクソだと言わんばかりの展開には痺れましたね。ちゃんと『新感染』の先を行ってくれていて、好印象で映画を観終えることができました。









第8位:フェアウェル


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実は去年観たんですけど、その時はほとんど寝てしまったんですよね。いつかリベンジしたいなと思ってたところ、運良く上映していたので観に行ったんですけど、ちゃんと観られたことに感謝したくなる良い映画でした。


おばあちゃんが余命宣告を受けたことを、周囲が必死に隠すというストーリーなんですけども、描かれている家族像がとにかく暖かくて。大勢で食卓を囲んでいるところとか羨ましくて仕方なかったですよ。ちょっとずれた結婚式も面白かったですし、明かすか明かさないかという家族の葛藤もしっかり描かれていました。


どこにいてもおばあちゃんと過ごした思い出を胸に生きていけるという結論の向こうに、そう来るかという展開が待っていて、思いっきり騙されたのも好きです。この手の話では斬新な終わり方でした。









第7位:銀魂 THE FINAL


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これまで何度も終わる終わる詐欺をしてきた銀魂の正当な完結編。いきなりバトルの前から始まるので、初見向けでは全くないですし、ところどころ引きの絵で怪しいなと思うところもある。だけれど、「銀魂」映画としてはこれ以上ないほどの作品となっていました。


いきなりパロディで始まるので、まず一笑い。話もちゃんと虚や高杉との決着をつけていて盛り上がる。そしてその後にはこれでもかというほどギャグを盛り込み、最後はメインテーマを流して終わるというファンを満足させるシーンがたくさん。あまりいないとは思いますが、銀魂ファンでこの映画をまだ観ていない人がいたら絶対に観て!と言いたいですね。


また、エンドロール後も必見。映画館のスクリーンが自宅のテレビになります。私は昔実家でアニメを見ていた時のことを思い出しました。









第6位:ミセス・ノイズィ


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去年公開されて評判が良かったこの映画。きっかけは些細なご近所トラブルですが、それがSNSで拡散されて大事になっていく様子を描いています。面白半分で投稿された動画がどんどんと広がっていき、手が付けられない状態に。報道陣も押しかけて、当事者たちの神経をすり減らしていきます。


ただ、バンバン布団を叩いていたおばさんの方にも、それなりの理由があったことが中盤に明らかになります。炎上の的はなんてことのない生活をしている一人の人間だという当たり前の人間だということを描いていて、SNS炎上に警鐘を鳴らしているのが好感触でした。狂っているのは誰なのかと、観ている間ずっと考えてしまいましたね。


ただ、正直SNS炎上というのは、そろそろ創作のテーマとしては使い古されてきた感もあり…...。この映画もアッと驚くような切り口ではなかったかなと…...。そこが少し惜しいところですね。


















第5位:相撲道 サムライを継ぐ者たち


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『火ノ丸相撲』でくらいしか相撲を知らない私。ですが、たまたま時間が合って観たこのドキュメンタリーは凄く面白く感じられました。映画冒頭で取組のカットを重ね、イラストや音楽もふんだんに盛り込まれていて、楽しんで観ることができました。


とはいえ、描かれている内容はなかなか過酷なもの。怪我をしても熱を出しても休場できない。テーピングをしたら、怪我している箇所をばらしてしまうのでしないという苛烈さ。稽古も地道な練習が大半を占め、強くなるには日々の積み重ねしかないことを伝えます。かと思ったら、焼き肉店など力士のオフのシーンなんかも盛り込まれていて、緩急が上手いなと思いました。


それと、相撲の場所という特性が生かされたとんでもなく熱い展開が終盤には待ち受けていまして。ネタバレになるんですけど、この映画は前半後半の二部構成となっていて、前半は境川部屋と豪栄道を、後半は高田川部屋と竜電をメインに描いています。前頭五枚目の竜電は白星を重ね、後半は上位陣との取り組みが組まれるようになります。そして、なんと十一日目に豪栄道と対戦するんですよ。いうなればポケモン金銀のレッドみたいな展開に、私はぶち上がりましたね。今年これより熱い展開を見られるのかな?と思うくらいには。











第4位:樹海村


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去年公開の『犬鳴村』に続く禁断の村シリーズ第二弾は、二匹目のどじょうを遥かに越えて、『犬鳴村』よりも格段に良い映画となっていました。『犬鳴村』がヒットしたので、たくさん予算が降りたんでしょうか。VFXに力が入っていてリッチな出来となっており、終盤を大いに盛り上げてくれます。正しくお金で殴られた気がして気持ち良いです。


また、ストーリーも前回よりもヒューマンドラマ要素が強めとなっており、賛否両論ありますが、私としては歓迎。特にイマジナリー安達祐実さんが素晴らしく、この映画の個人的MVP。はじめて見た山口まゆさんも冴えていて、不憫な役柄だと輝く山田杏奈さんも安定の好演。工藤遥さんも新境地を開拓し始めた感があり、女優さんが光っている印象を受けました。まあ、それもしっかり怖かったからなんですけどね。指を切り落とすというグロさ。スマートフォンのカメラを用いた怖がらせ方は新しいなと感じました。


あと『犬鳴村』と違って、ちゃんと主題歌がマッチしていたのも嬉しかった。本公開は2月5日からですが、ぜひお勧めしたい映画ですね。










第3位:アイヌモシㇼ


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LGBTや障害者の方を描いた映画が多く見られる昨今。マイノリティに焦点を当てるというのは、全く正しいことではありますが、日本にはまだスポットライトを当てられるべき「アイヌ民族」というマイノリティがいることを、堂々と見せつけたのがこの映画です。メインキャストもアイヌの血を引いている方々が務めています。


とはいえ、現在のアイヌ文化というのは観光の一コンテンツになってしまっています。良い部分だけをパッケージ化して見せている。非アイヌの人たちにとっては、言い方は悪いですが動物園の動物を見ているのと大差はありません。だからこそ平気で「日本語上手ですね」みたいな言葉が出てくるわけですし。


ですが、この映画で描かれたのは本当にリアルなアイヌの風習。育てた熊を殺して神様に献上する「イオマンテ」という儀式が数十年ぶりに行われようとしていますが、現代の価値観からすればとても認められるものではありません。それでもこの映画ではイオマンテを実行するんですよね。パッケージからこぼれ落ちたリアルは強烈な嫌悪感を私たちに突きつけてきます。綺麗事だけじゃないと。


と、きつい映画と思われるかもしれませんが、この映画の軸はあくまで少年・カントの成長に置かれているので、構えなくても十分に観ることができます。ラストも救いのある終わり方をしていますしね。










第2位:ヤクザと家族 The Family


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『新聞記者』等の作品で知られる藤井道人監督の新作はヤクザ映画。古き良き男の世界を描いていて、綾野剛さんや舘ひろしさんなど俳優さんたちの熱演や、名カメラマン・今村圭祐さんの撮影もありとにかくカッコいい映画となっています。特にオープニングのかっこよさは今年随一でバチバチに痺れましたね。


ポスターにもある通り、この映画は三部構成となっています。1999年パートでは主人公・山本賢治はぎらついたナイフのよう。父親を亡くして危ない橋を渡っているところを柴咲組の組長・柴咲に拾われる。6年が経った2005年パートでは、山本は柴咲組の構成員。シマを巡る抗争の結果、相手の若頭を殺した罪を被った山本は刑務所へ入れられます。この二つのパートでは、未だ古いヤクザの世界が幅を利かせていて、映画的なかっこよさがありました。


しかし、それが14年後の2019年パートに入ると状況は一変。柴咲組はすっかり衰退し、山本も路頭に迷うようになってしまいます。かつて可愛がっていた子供や好意を寄せていた女性のもとでなんとか暮らしていく様子は、まさに落ちぶれたという言葉そのもの。ヤクザは人権を奪われ、一般の仕事に就くにも5年という時間がかかってしまいます。彼らを苦境に追い込んでいるのは社会であり、私たち一人ひとりだという事実には胸が苦しくなりましたね。ここから登場する磯村勇斗さんも好演を見せていました。


そして、ファーストカットの意味が明かされるラストまで、一人の男の生き様を描き切っており、邦画ならではのかっこよさに圧倒される2時間20分でした。早くも今年の各映画賞の本命になるであろう映画です。SNSの描写はもう少し何とかならなかったのかなとは思いつつも、強大な力作が1月の2位にランクインです。












第1位:花束みたいな恋をした


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『カルテット』や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』など、テレビドラマで活躍する名脚本家・坂本裕二さんの初映画脚本。監督も去年『罪の声』で着実な評価を得た土井裕泰さんですし、主演も菅田将暉さんと有村架純さんという名実ともに日本トップクラスのお二人。ここまでの布陣を組まれたら、私にとってはもう観る以外の選択肢はありません。さっそく初日に観ましたしね。


まず特筆すべきは、主人公の二人がオタクであるということでしょう。天竺鼠のチケットを持ち、押井守さんを目撃して大興奮し、きのこ帝国の「クロノスタシス」で盛り上がれる。顔面偏差値以上のサブカル偏差値の高さに、観ていて心が躍ります。サブカルワードが優に百個以上盛り込まれていて、ツボは人によって多種多様。観た後の会話が盛り上がりそうだなと感じました。特にTOHOシネマズやピカデリーじゃなくて、テアトル新宿でこの映画を観ることを選ぶ人たちには直撃でしょう。荻原みのりさんやオダギリジョーさんなど邦画好きにはピンとくる俳優さんも多く出演していますしね。


ストーリーは難病や親の反対エトセトラなど特別な障害があるわけではなく、ただ二人の生活を描いているだけなのですが、練り込まれたキャラクター描写のおかげで破壊力が高い。順調な時もキーッとならず、反対に別れに至る流れは恋愛をしたことがないのに共感を覚えてしまいます。仕事で忙しくなってサブカルに触れることができなくて、徐々に距離が離れていく描写には観ていて心を痛めました。


そして、真骨頂は終盤のファミレスのシーンですよね。お互い別れようとは思っているんだけれども、なかなか離れられない。だけれど、ある光景を目の当たりにしてしまって、自分たちの関係が終わってしまったことに気づく。なんでもないようなファミレスの内装と合わさって、グサグサ胸を刺してきます。


だけれど、二人の別れはあくまでも爽やかなもので、ラストも清々しかったですし、邦画の恋愛映画の新たな地平を切り開いた感がありました。もう何回でも観たいです。観て感情を揺さぶられたいです。一月ですが、今年の年間ランキングでもかなり上位に食い込むのではないかなと思います。今村夏子さんの『ピクニック』を読まなければ。


















以上、2020年1月の映画ランキングでした。いかがでしたでしょうか。


今月は月の始めにはこれだ!と思う映画が少なく、大丈夫なのかな……と思ってしまいましたが、後半になるにつれて、どんどんと良作が公開された(観られた)月だったと思います。順位をつけるのにも結構迷って、特に13位の『さんかく窓の外側は夜』から4位の『樹海村』までは順位ほどの差はないですね。気分によってかなり変動しますが、今のところはこんな感じです。あと邦高洋低な傾向はありますけど、これは2018年ぐらいから個人的にずっと続いている傾向なので、あまり気にしないでください。たぶん来月も邦画が多くなると思いますので。


それと今月の大きなトピックとしてはやっぱり『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開延期ですかね。楽しみにしていた方も多く、もし公開されていたらランキングのどこに食い込んできたのかは気になります。2月も『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』や『夏への扉 キミのいる未来へ』などが延期になっていて、いやはや寂しいですね。これ以上延期される映画が出ないことを願います。


しかし、それでも2月にも期待の映画はたくさん。新作では、


『哀愁しんでれら』
『すばらしき世界』
『ファーストラヴ』
『あの頃。』
『あの子は貴族』


はおそらく観ますし、旧作でも


『ハッピー・オールド・イヤー』
『AWAKE』
『タイトル、拒絶』
『声優夫婦の甘くない生活』



は多分観ると思います。なんだかんだで2月も10本は観るのではないでしょうか。どんな良い映画に出会えるか楽しみです。


では、今回はここまで。また来月にお会いしましょう。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい





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こんにちは。これです。


2020年は大変な年でしたね。新型コロナが猛威を振るい3月~6月の公開作品は多くが延期。映画館も旧作を上映することでなんとか凌いでいましたが、未だコロナは収まる気配を見せません。これを書く前に上半期の記事を見返してみたのですが、新規感染者50人とか書いてあって驚きました。今じゃ東京だけで1000人に迫る勢いですからね。こんな未曾有の状況の中で、年末年始も返上して働いてくださっている医療関係者他、全ての関係者の方々には感謝してもしきれません。そういった方たちのおかげで、私は映画を観ることができています。本当にありがとうございます。


そして、今回のブログは毎年恒例の年間ベスト10です。今年は洋画大作を中心に多くの映画が公開延期、もしくは配信となりましたが、その代わりにミニシアター系の邦画が充実していて、個人的には今までと質的にはさほど変わりなかったように思えます。


ちなみに去年、2019年のマイベスト10をおさらいしておくと、

第10位:プロメア
第9位:王様になれ
第8位:ホームステイ ボクと僕の100日間
第7位:スパイダーマン スパイダーバース
第6位:空の青さを知る人よ
第5位:翔んで埼玉
第4位:海獣の子供
第3位:チャイルド・プレイ(2020)
第2位:ホットギミック ガール・ミーツ・ボーイ
第1位:バジュランギおじさんと、小さな迷子


という結果でした。アニメが多いですね。詳しくは、を参照ください。


さて、今回の年間ベスト10の選出基準ですが、去年と変わらず


・2020年1月1日から2020年12月31日の間に映画館で鑑賞した映画であること
・個人的な好きを最優先にすること



の2点でいかせてもらいたいと思います。今年はコロナ禍で配信される映画がぐっと増えましたが、映画館の大スクリーンで映画を観るありがたみを感じたことと、いつでも見られるからいつまでも見ない問題が発生したため、今年も映画館限定のランキングとさせていただきます。


あと、個人的な好きを最優先にしないと、個人でランキング付けする意味がなくなってしまうので、歴史的なこととか、業界的なことは完全に無視したオリジナルのランキングでいかせてもらいます。その方がバリエーションも増えて楽しいですしね。


選考対象ですが、2020年は計137本の映画を鑑賞したので、この中から選ばせていただきます。去年が124本なので、13本も増加した形です。コロナ禍なのに。映画館が閉館している期間があったのに。


※鑑賞した映画のリストは


以上の二本の記事をご覧ください。


それでは、前置きはここまでにしてさっそく始めたいと思います。果たしてどの映画がランクインしたのでしょうか!?













第10位:アンダードッグ


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『ロッキー』や『百円の恋』に代表されるように、映画とボクシングは相性がいいのですが、今年新たにボクシング映画の傑作が登場しました。前後編で四時間半ありますが、それに見合うだけのクオリティと興奮。逆境だらけの人生を跳ね返そうと、リングに向かう男たちのドラマは掛け値なしの熱量があります。


何と言ってもいいのが三人の主役を演じた俳優さんたち。落ちぶれた元日本一位・末永を演じた森山未來さんは、武骨な演技で燻っている感を醸し出し、未来あふれる天才ボクサー・大村を演じた北村匠海さんは眼光鋭く胸の底にナイフを隠し持つさまを出で立ちで表現。がけっぷちのお笑い芸人・宮木を演じた勝地涼さんの軽々しさとやりきれなさも素晴らしい。


この三者の生き様がリング上でぶつかる試合シーンは、『百円の恋』の制作チームが手掛けているとだけあって、嘘が一つもない。それを支えるドラマ部分も良く、彼らの試合に懸ける姿勢を最大限に高めています。四時間半たっぷりと楽しめる、一日潰す価値がある作品でした。ABEMAプレミアムで1月1日からドラマ形式で全8話が配信されるので、家でも見ることができますね。


そして、何より良いのが石崎ひゅーいさんが手掛けた主題歌「Flowers」。陽の当たらない燻った感じがよく出ていて、個人的最優秀主題歌賞です。歌い出しからして鳥肌が立ちましたね。こちらもぜひお聞きいただければと思います。













第9位:滑走路


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予定していた映画の時間が間に合わず、その代わりに偶然観た映画がなんと年間ベスト10入りを果たしました。この映画は32歳の若さで命を絶った歌人・萩原慎一郎さんの生前唯一の歌集を映画化したもので、前半は高校生、官僚、切り絵作家という三人のストーリーを交互に映す形で展開していきます。それぞれ悩みを抱えていて、ままならない日々を過ごしている様子。特に非正規などの不安定な雇用で自死した人たちを調査する官僚・鷹野がある一人の死を追っていくうちに、ストーリーの真相が明らかになります。


現在、日本で自死を選ぶ人は年間で三万人にも上っています。コロナ禍で困窮の中、その道を選んだ人も少なくないでしょう。さらに孤独死は毎日起きています。この映画で描かれたのはそんな孤独な魂の救済なんですよね。人知れず死んでいった人にも人生があって、接した人との記憶の中に生きた証が残っているという願いにも似た叫びです。私も死ぬときは一人だなと思っているので、この映画で示された生きた証拠のようなものには思わずグッと来てしまいました。


この映画は、萩原慎一郎さんだけでなく、人知れず死んでいった人々の魂をこの世に残す試みなんだと思います。正直、直前まで9位には別の映画がランクインしていましたが、私だけでもこれらの魂を受け取りたいと思い、急遽入れ替えました。観終わってすぐに歌集「滑走路」を買ったぐらいに心に残っている映画です。












第8位:アルプススタンドのはしの方


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高校演劇の名作を映画化した今作。今年の邦画で一二を争う話題作となりました。甲子園で強豪校に挑む野球部を、気が進まない状態で眺めている4人が主人公となります。彼ら彼女らは観客席でも、学校でもはしの方にいるような存在。中心として活躍する野球部やそれを応援する吹奏楽部は、自分とは遠い存在で、嫉妬心もあり素直に応援することができません。軽やかなようでどことなく重苦しさを感じさせる会話の雰囲気は、青い空には不釣り合いなものです。


はしの方に座る4人のうち、2人の演劇部は大会への参加ができずに「しょうがない」と自らを納得させていました。他の2人ももやもやした思いを抱えながら座っています。だけれど、声を枯らして応援する教師や、吹奏楽部の部長との会話を経て、少しずつグラウンドで戦っているのは同じ学校の生徒であることを再認識していきます。


相手は勝てっこない強豪校。にも関わらず「しょうがない」と言い訳することなく、立ち向かう野球部の姿に心動かされて「がんばれ」と声をあげる4人。別に応援したからと言って、必ず勝てるわけではありません。しかし、その声は選手たちには間違いなく届くはずです。また、「がんばれ」と口に出すことで、自分の鼓膜をも揺らし、自分自身にもその意志を届かせる。コロナ禍で試合も応援もなかなかできないなか、「がんばれ」と言うことの純粋さを伝えてくれたこの映画は、私にいっそう響きました。


Blu-rayは1月20日発売ですが、既にDVDレンタルやAmazon Prime Video等で配信もされていますので、よかったら年末年始にご覧ください。
















第7位:劇場版 SHIROBAKO


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第7位にはランキング唯一のアニメ映画がランクインしました。現在NHKでも放送中のアニメシリーズ『SHIROBAKO』の劇場版となるこの映画は、劇場アニメーションを作る人々の奮闘を描いています。


テレビシリーズではハッピーエンドで終わりましたが、2019年の武蔵野アニメーションは瀕死の状態。社員も少なくなり、かつてのような賑わいは見る影もありません。そんな中、他会社が投げ出した劇場アニメの企画書が持ち込まれます。それは武蔵野アニメーションの、キャラクターたちの人生をかけた一世一代の大勝負。キャラクター一人一人にエピソードがあり、それが集まって一つの作品を作り上げていく高揚感は、今年のアニメ映画の中でも屈指のものでした。ミュージカルや時代劇風などアニメーション自体も工夫されていましたしね。


そうして完成した劇場アニメ『空中強襲揚陸艦SIVA』が、この映画のラストで流れます。絶体絶命、勝ち目のない状況に追い込まれた主人公たちが、それでも明日を信じて精一杯あがく、もがく。その姿が武蔵野アニメーションの面々の奮闘と重なり、大きな感動が生まれていました。フィクションは所詮、嘘です。だけれど、私たちはそのフィクションを通して、真実を知るのです。先が見えなくても、必死にあがいて、もがくこと。そのことをアニメを通して伝えてくれたこの映画を、好きにならないはずがありません。観終わって、私も頑張ろうと素直に思えましたしね。


Blu-ray&DVDは1月8日発売ですが、既にU-NEXTでは配信が開始されているようなので、興味があればご覧ください。












第6位:前田建設ファンタジー営業部


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6位にランクインしたのは、今年一番観ていて楽しかった映画です。マジンガーZの格納庫を作るにはいくらかかるかを積算して出すというウソのような本当の話を映画化した今作は、これが好きだ!という熱に満ちていました。


最初は乗り気ではなかったメンバーたちが、その道のプロフェッショナルと接することで、だんだんとプロジェクトにのめり込んでいく様は、観ていてアツくなれますし、俳優さんたちの演技もやや誇張気味ですが、それがこの映画ではプラスに働いています。これが好きだ!という人たちの純粋なエネルギーにあてられて、いつの間にか私たちもチームの一員になったような感覚を覚えますし、だからこそ中盤の予測不能の事態には本気でうろたえました。


マジンガーZの格納庫の積算を出すなんて、言ってしまえば、意味なんて一つもないわけですよ。そんなことしたって業績には直結しません。でも、その意味のないことに夢中になれることが、どれだけ素晴らしいことかをこの映画は伝えてくれます。意味がないものがどんどん削られていっている今の状況において、この映画が生まれた意味は小さくないと感じました。それに、こんな風に自分の仕事に誇りをもって働けるのは、日々平坦な仕事をしている私からすれば、とても羨ましく映りましたしね。私も好きというエネルギーだけで動けたらどれだけ楽しいだろうかと、つい思ってしまいました。


DVD&Blu-rayはすでに発売中。レンタルや配信もAmazon Prime Video等でされていますので、こちらもよければ観てみてはいかがでしょうか。すごく面白かったオープニング映像を貼っておきますので、これが気になった方はぜひ。
















第5位:さよならテレビ


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第5位はこのランキング唯一のドキュメンタリー映画です。今まで数多のドキュメンタリーを作成してきた東海テレビが、自社の報道局にカメラを入れたそのドキュメンタリーはほとんど衝撃と言っていいような内容でした。


テレビがメディアの絶対的な王者に君臨していたのも、今は昔。苦境に立たされつつあるテレビ報道の現状は、この映画では過度な視聴率至上主義として活写されます。常に他局との比較表が目立つところに貼り出され、一に数字、二に数字。数字が取れるスクープを抜くために、月100時間以上の残業もザラです。現場の雰囲気もピリピリしていて、この職場で働いたら胃に穴が開きそうだなと感じてしまいました。


この映画では、主に三人の登場人物に重点を置いて構成されています。夕方ニュースのメインキャスターである福島さん。中途入社の派遣社員である渡邊さん。経済紙出身で報道に強い関心を持つ澤村さん。彼らには分かりやすい目標があり、そこに向かって七転八倒、四苦八苦する姿はまさしくストーリー。苦しい状況に置かれたテレビの今を映しているよう。ただ、日々の仕事に追われ、劇中で示された報道の三つの役割を全うできているとは言い難く、本当にテレビはこのままでいいのかという問題提起がこの映画のメインを占めています。


しかし、その問題提起はどこへ行ったのか、取り繕ったハッピーエンドで映画は幕を閉じようとしますが、ラストに衝撃の展開が待っていました。それはドキュメンタリーは編集されたもので、ありのままを映しているわけではないという、欺瞞を暴く展開です。事実を物語化して理解しようとしている私たちの要請に応えて、テレビは、メディアは発展してきたという構図を明らかにすることで、他人事じゃないという現実を突きつけてきます。観終わって立ち上がるまでに時間を要するほど、初見での衝撃はすごかったです。


レンタルも配信もされておらず、現在観れる手段はありませんが、観る機会があったら、ぜひ観ていただきたいドキュメンタリー映画です。















第4位:マルモイ ことばあつめ


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『パラサイト 半地下の家族』をはじめ、今年は多数の韓国映画が話題になりましたが、その中でも私の心に一番響いたのが、この映画です。朝鮮語の辞書を作ろうと苦闘する人々を描いた映画です。


辞書を作ることは、それだけで何年もかかる大変な仕事ですが、この映画の舞台である1940年代の韓国は、日本の統治下に置かれていました。日本語を話したり、日本名を名乗るように強制されたりと、日本化が進む中で、朝鮮語の辞書を作るということは、総督府に逆らう所業なのです。だから、当然一筋縄ではいかず、何度も憲兵の妨害に遭います。終盤では銃も持ち出されますしね。この映画はそんな中で、挫けずに自分たちの言葉を残そうとした人々をフィクションという媒体を用いて、記録したものなのです。


主となるのは、お調子者のパンスと真面目なジョンファンのでこぼこコンビ。正反対の二人が辞書作りを通して、お互いを理解していくというバディもの要素もこの映画には含まれており、決して説教くさくはありません。ただ、文字を読めないパンスが言葉の奥深さを知り始めたとき、それを奪おうとする日本側の政策がどれだけグロテスクなものかを、私たちは知ることになります。


この映画では言葉は、命よりも大切なものとして描かれています。人々をつなぐかけがえのないものだと。魂が形を得たものだと。かつて世界にはもっと多くの言語が存在していましたが、歴史の中で多くの言語は消えていきました。魂の消失です。この映画で描かれたのは、魂を死守するための戦いなのです。日本側が敵として描かれていますが、決して反日映画などではありません。むしろ、加害者側の私たちが観るべき映画だと感じました。













以上、10位~4位の発表でした。いかがでしたでしょうか。では、ここでベスト3を発表する前に、インターミッション。惜しくもランクインしなかった30位~11位の映画を一挙に発表したいと思います。


第30位:朝が来る
第29位:ミッドナイトスワン
第28位:パラサイト 半地下の家族
第27位:思い、思われ、ふり、ふられ(実写)
第26位:彼らは生きていた
第25位:mellow
第24位:ラストレター
第23位:娘は戦場で生まれた
第22位:映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者
第21位:プリズン・サークル
第20位:本気のしるし《劇場版》
第19位:ジョゼと虎と魚たち
第18位:デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆
第17位:ザ・ピーナッツバター・ファルコン
第16位:37セカンズ
第15位:僕たちの嘘と真実~Documentary of 欅坂46~
第14位:パブリック 図書館の奇跡
第13位:サヨナラまでの30分
第12位:三島由紀夫 vs 東大全共闘 50年目の真実
第11位:魔女見習いをさがして



それでは、いよいよベスト3の発表です!1位に輝いたのは果たしてどの映画なのでしょうか!?









第3位:his


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上半期マイベスト映画が、年間でも3位にランクインしました。去年『愛がなんだ』や『アイネクライネナハトムジーク』で、邦画界の話題をさらった今泉力哉監督が、今作では男性同士の恋愛を描いています。


迅はかつての恋人、渚と別れて田舎町で一人で暮らしています。しかし、数年が経ったある日、渚が子供を連れて再び迅の前に現れます。再び、共に暮らし始める二人。その光景はアンモラルな要素は全くなく、ささやかな幸せといつ終わるかもしれない不安感が漂っていました。迅を演じた宮沢氷魚さんも、渚を演じた藤原季節さんもそれぞれ繊細さを持った演技を見せていて、こだわり抜かれた構図とともに抜群の存在感を発揮しています。


概要からすればこの映画は、昨今急増しているLGBT映画と思われるかもしれませんが、この映画が優れているのは上記の三人だけで完結していないことです。迅と渚の二人に注がれる懐疑的な眼差しもありますし、なにより迅の妻である玲奈の苦悩も描いていて、単なるLGBT映画からは一歩抜きんでています。誰しもに事情がある、辛いのは自分だけではないという当たり前のことを当たり前に描いていて、普遍性を持った映画だなと感じました。玲奈を演じた松本若菜さんもまた良かったですしね。


そして、親権を巡る裁判で互いに思いの丈を吐露して、少しだけ分かりあった彼ら彼女らは、最後にある一つの結末を迎えます。このラストシーンの清々しさは、今年観た映画の中でもピカイチで、ままならない現実の中に一筋の希望を見たようでした。


この『his』、実は前日譚としてドラマ版もありますが、たとえこちらを見ていなくても映画単体として十分に楽しむことができます。現在Blu-ray&DVDが発売・レンタル中。Amazon Prime Video他配信もスタートしていますので、よろしければ観てみてはいかがでしょうか。














第2位:佐々木、イン、マイマイン


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『his』に続いて、藤原季節さん主演の映画が2位にランクインです。今年も終わりに差し掛かった頃に公開され、一気に今年の邦画を代表する作品となった青春映画の傑作です。


佐々木コールがなされると、どこでも構わず服を脱いで全裸になってしまう佐々木。彼ほどではないにしろ、そのようなお調子者はどのクラスにもいたはずです。私はそんなお調子者を自分とは違う人種だと決めつけて、見下していました。だが、この映画で描かれたのはそんな佐々木の暗いバックボーンです。あまり帰ってこない父親との二人暮らし。主食はカップ麺。明るく振る舞っているのも、無理しているのではないかと思うほどで、遠い存在だと思っていたお調子者は自分たちと変わりない学生だったことを思い知らされます。


きっと多くの人は学校に通っていたことでしょう。どんな学生時代を過ごしたにせよ、クラスに所属していたならば、お調子者は記憶の一ページとして刻まれているはずです。学生時代を青春と呼ぶならば、それは青春の構成要素。だけれど、この映画で描かれたのはそんな「青春」への別れです。


「さよならだけが人生だ」とは、もう誰が言い始めたか分からないほど有名な言葉です。私たちには手が二つしかありません。両手に持てる思い出にも限界があります。年を重ねていく以上、いつかは青春時代に「さよなら」を言わなくてはなりません。人生は「さよなら」の連続。「さよなら」をすることで手に入るものもある。でも、「さよなら」をしても青春時代の思い出は確かに心の中に残っていて、ふとした瞬間に自分を勇気づけてくれる。これらのことが終盤の展開に詰め込まれていて、私は涙が止まりませんでした。ラスト付近のセリフを探して、しばらく口ずさんでいたくらいです。


あまり注目度は高くなかったけれど、観てよかったと思いました。













第1位:れいこいるか


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今年のベストも「さよなら」を描いた映画です。タイトルを聞いてピンとくる人は、おそらくあまりいないのではないでしょうか。私も松本で一度だけ上映されたのを観に行ったのみですから。だけれど、その一回で他のどの映画にも負けない印象を『れいこいるか』は残してくれました。


主人公となるのは阪神淡路大震災で、一人娘・れいこを亡くした夫婦です。二人は離婚。お互いに合わないまま23年の時が流れます。そして、再会した二人はれいことの思い出の地を巡る。これだけ観れば死を用いたお涙頂戴のストーリーと思うかもしれません。ですが、この映画ではお酒を飲んで、笑って、そういった何でもないようなシーンがかなりの割合を占めています。震災は多くの人の命や生活を奪っていきました。だけれど、人々の営みまでは奪い去ることができない。いたって平凡に暮らしていた人々を映すことは、生を浮かび上がらせ、私たちに襲い来る災害に抵抗しようとしているように私には見えました。


また、この映画は度々、大胆に時間が飛びます。そこでけっこう重要な出来事が省かれていて、もしかしたら戸惑いを覚える人もいるかもしれません。しかし、私はこの間にも描かれていない人々の人生を想像することができるので、この大胆な映画的省略はかえって好きです。プラスにしかなりません。


そして、淡々と進んでいるからこそ、終盤の感情が表出したシーンの威力は絶大。予告にもあるいるかのぬいぐるみを抱えるシーンもそうですが、夫婦に限らず誰もが震災による悲しみを背負っているんですよね。だけれど、それを表に出さず、顔は穏やかに笑っている。その葛藤を感じて、本当に何気ないセリフで涙を流している自分がいました。終わり方も復興のシンボルを映していて最高ですし、エンディングテーマもグッときます。


死にゆく者たちへのメッセージとして、今年一番心に響いた映画でした。他の誰が挙げなくても、私はこの映画を今年のマイベストに推したいです。





2020年映画ベスト10結果一覧

第10位:アンダードッグ
第9位:滑走路
第8位:アルプススタンドのはしの方
第7位:劇場版 SHIROBAKO
第6位:前田建設ファンタジー営業部
第5位:さよならテレビ
第4位:マルモイ ことばあつめ
第3位:his
第2位:佐々木、イン、マイマイン
第1位:れいこいるか


















以上、2020年映画ベスト10でした。いかがでしたでしょうか。今年は邦画9本に、洋画1本のみと極端な邦高洋低となってしまいました。これは洋画大作が延期されたこともありますけど、そもそも私が洋画をあまり観られていないことが大きいと思います。40本くらいしか観ておらず、ミニシアター系の洋画は全くカバーできていませんから。来年はもう少しその方面も発掘していけたらなと思っています。


こうしてみると、一般的な物語には描かれないような陽の当たらない人間の映画が、今年は個人的には強かったと感じています。『アンダードッグ』『滑走路』『アルプススタンドのはしの方』『マルモイ ことばあつめ』『佐々木、イン、マイマイン』『れいこいるか』がそうですね。やはり私も世界のほんの隅っこに生きている実感はありますし、中心でワイワイ騒いでいる人よりも、窓の側で本を読んでいるような人が気になる性分です。現実のスポットライトは数パーセントの人間が独占していますが、映画ではそれ以外の人にスポットライトが当たるので良いですね。


また、今年の個人的な映画のキーワードとして「さよなら」が挙げられると思います。『滑走路』『佐々木、イン、マイマイン』『れいこいるか』。この三作はいずれも死別を描いており、残された人間はどうするかが一つのテーマになっているように感じられます。『アンダードッグ』の主題歌「Flowers」でも「さよなら」は歌われていますし、惜しくもベスト10圏外となりましたが、『サヨナラまでの30分』もありました。人生は「さよなら」の連続である。長い長い「さよなら」である。そのことをしっかりと描きながら、ひっそりと隠された希望を掬い上げてくれる。そういった映画が、今年の私のモードに上手くハマったんだと思います。


また、今回のランキングを選ぶにあたって、最重要視したのがです。「どれだけ魂がこもっているか」「どれだけ魂を感じたか」が一番の選考基準になりました。ただでさえ、人とのつながりが希薄化している現代において、コロナ禍で外出自粛やリモートなどでさらに人と会う機会は減りました。せっかく会ったとしても、マスクをしていて、完全な表情は読み取れない状態です。普段は一人で映画を観ることが多い私ですが、やはり人とのかかわりに飢えていたんだと思います。そんな私の心を潤すどころか、ありあまる魂の洪水を浴びせかけてくれた映画を上位に選出しました。おかげさまで、他の方々とはだいぶ違ったランキングになりましたが、これが私のベスト10だと胸を張って言えます。


それでは、そろそろこの記事を結ばせていただきたいと思います。2020年は本当に大変な一年でしたし、コロナ禍は2021年も続きそうですが、皆さんどうかお元気で、死なずにまた来年、年間ベスト10を発表し合いましょう。その際には私のこともほんの少しは気にかけていただけたら幸いです。


今年一年の感謝を込めて


本当にありがとうございました!!!




おしまい


歌集 滑走路 (角川文庫)
萩原 慎一郎
KADOKAWA
2020-09-24



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こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想になります。


今回観た映画は『きみの瞳が問いかけている』。吉高由里子さんと横浜流星さんが共演したラブストーリーです。本公開は10月23日なのですが、15日に1日限定で先行公開されたので、観に行ってきました。


そして、観たところなかなか興味深い映画でしたね。20年代の邦画はどうなるのか、吉高由里子さんとはいったい何なのか、考えさせられる内容でした。意外と重要な映画かもしれないです。


それでは感想を始めたいと思います。拙い文章ですが、よろしくお願いします。




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―あらすじ―

視力を失くした女と、罪を犯し夢を失った男。暗闇で生きてきた2人が初めて見つけた、ささやかな幸せ。だが、あまりに過酷な運命が彼らをのみこんでいく──。

目は不自由だが明るく愛くるしい明香里(吉高由里子)と、罪を犯しキックボクサーとしての未来を絶たれた塁(横浜流星)。小さな勘違いから出会った2人は惹かれあい、ささやかながらも掛け替えのない幸せを手にしたかに見えた。
ある日、明香里は、誰にも言わずにいた秘密を塁に明かす。彼女は自らが運転していた車の事故で両親を亡くし、自身も視力を失っていたのだ。以来、ずっと自分を責めてきたという明香里。だが、彼女の告白を聞いた塁は、彼だけが知るあまりに残酷な運命の因果に気付いてしまっていた。

(映画『きみの瞳が問いかけている』公式サイトより引用)






映画情報は公式サイトをご覧ください













『きみの瞳が問いかけている』、映画を観た後にツイッターのフォロワーさんから指摘されて知ったのですが、この映画は2011年の韓国映画『ただ君だけ』のリメイクなんだそうですね。確かに地下闘技場なんてアイデアはなかなか邦画(特に恋愛映画)では出てこないような気がします。


しかし、私はそれ以上にこの映画の展開に既視感を抱きました。明香里と塁が出会い、仲を深めていく。明香里の視力を回復させるために、塁が地下闘技場での違法ファイトに赴く。予告編から推測できたストーリーから何一つ外れることなく、映画は進んでいくのです。


なので、吉高由里子さんと横浜流星さんの演技は良かったのですが、正直かなり終盤まで微妙かな......と思いながら観ていました。それでもラストの10分~15分くらいは予想を超える「ああこれがやりたかったのね」という展開が待っていて、一気に巻き返してくれたんですけど。この展開には涙を流す人がいるのも納得でした。ただ、最後まで観て、私の既視感は確信に変わりました。


この映画は2020年のケータイ小説だ」と。


ケータイ小説 - Wikipedia




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Wikipediaによると、ケータイ小説のブームは2002年~08年頃だといいます。私が小学生~中学生だった頃ですかね。当時の私は携帯電話は持っておらず、小説を読む習慣もなかったため、蚊帳の外にいましたが、何となく流行っていた記憶はあります。私の持つ勝手なイメージだと、ケータイ小説には悲惨な出来事が次々と襲い掛かり、特に死またはそれに準ずるものが安易に用いられ、感動を誘うような印象があります。それは、この映画でも多く見られました。


明香里は事故で両親を失い、視覚障害を抱えてしまいます。一方の塁も母親が入水し、孤児院に預けられています。塁には罪を犯した過去があり、許されていないと葛藤を抱えている様子。他にも、明香里に関係を迫ろうとする上司や、半グレ集団との接触など悲劇的な出来事には事欠きません。発生した困難を解決するのが物語の一つの類型とはいえ、若干多すぎるくらいです。少し悲劇が安易に用いられている気もしてしまいます。


また、最終的には純愛ものだというのもポイント。明香里は姿の見えない塁に好意を持ち、塁が消えたときには塁の顔を模した彫像まで作って悲しんでいます(少し怖かった)。また、塁も明香里に手術を受けさせようと、高額なファイトマネーを得るために地下闘技場に赴いているわけですし、二人の間には邪心は見られません。悲劇を乗り越えつつ、最後にはハッピーエンドで物語は締めくくられる。これも私が考えるケータイ小説のイメージです。


前述したようにケータイ小説のブームは2002年~08年頃です。そして、ブームは循環するものです。タピオカだって最近は陰りが見えていますが、1990年~、2008年~を経ての第三次ブームでしたからね。きっと干支が一周以上して、再びケータイ小説的純愛ものブームが来始めているのかもしれません。


だって、ケータイ小説ブームの時の中高生はもう20代後半~30代ですし、ブームが去ってからネットに触れたのが今の中高生です。前者には懐かしさを、後者には新鮮さを持って受け入れられるでしょう。この映画のような00年代のケータイ小説的恋愛ものをリバイバルする路線は、もしかしたら20年代前半のトレンドの一つになるかもしれません。そうなると、20年代の邦画を考える上では、この映画はひょっとすると重要な映画になるかもしれないですね。










繰り返しになりますが、ケータイ小説の読者だった中高生は20代後半~30代に。Wikipediaにはケータイ小説は女子主人公が多いと書かれています。当時の中高生は、主人公に自分を重ねて読んでいたのでしょう。でも、年を取った今はそういうわけにはいきません。では、どうするか。この映画は大人の女性を主人公にするという方法を取ってきました。


劇中の明香里の年齢は明言されてこそいないものの、事故発生が2015年でその当時大学生だったという描写から考えると、おそらく25~27歳あたり。これは2006年~の第二次ケータイ小説ブーム時は高校生だった計算になります。さらに、明香里を演じた吉高由里子さんは現在32歳で、これは2002年~の第一次ケータイ小説ブームにピンズド。年齢的にはケータイ小説の少女主人公が、大人になったのが明香里であるともいえそうです。


現在20代後半~30代の女優さんは何人もいます。それでも、明香里は吉高さんでなければ務まらなかったと私は映画を観終わった後に感じました。それは人気があるという理由だけではなく、女優としての吉高さんの特性ゆえです。


結論から申し上げますと、明香里が吉高さんでなくてはいけなかった理由。それは、そのリアリティの薄さです。映画を観てもらえば分かると思うんですが、あんな明るい喋り方する人、現実にはあまりいないじゃないですか。自然体とは真逆で、めちゃくちゃ作っている感じがしたんですよね。例えば、「でも大丈夫」の言い方。あれは完全に三井住友銀行のCMのソレですよ。






この映画の吉高さんって、厳密に言えば柏木明香里を演じてはないんですよ。いや、視覚障害の描写には力を入れていましたけど、それ以外では「パブリックイメージとしての吉高由里子」を演じているように私には見えました。でも、それを全うできること、フィクションをフィクションとして演じられることが吉高さんが今ドラマなどに引っ張りだこな理由かなとも思いました。


なぜかというと、ここにも近年の傾向があると思うんですが、最近ってやったらめったらリアリティが重視されるじゃないですか。現実性、整合性、自然体というものが持て囃されている感じが私にはするんですよね。CGだって壮大なものとリアルなものに二極化していますし、また共感をより重視する時代になって、感情移入のためにリアルな演技というものが追求されがちです。


でも、これだけライフスタイルや嗜好が多様化した現代に、万人が共通的にイメージするリアルなんてものはもう存在しないわけですよ。それならフィクションの方が、現実から離れているという部分では共通しているのかもしれないです。で、この映画を観て感じた吉高さんの優れている部分って、ある程度現実離れしているところなんじゃないかって感じました。


何しろ表情筋の使い方が上手いんですよね。笑顔だけで何種類バリエーションがあるんだという感じです。さらに、少し上ずった感じの口調がリアルとリアルじゃない間の絶妙なラインを突いていました。「こんな人現実にはいないよ」と思わせつつ、最後には共感させて泣かせる。そのバランス感覚が抜きん出ているんですよね。若手俳優さんだとどっちかに振りきれがちになるので、さすがの演技だなと感じました。





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繰り返しますが、この映画の吉高さんはリアルすぎていません。きっとそれがリアル志向の10年代へのカウンターとして機能しているんだと思います。飽和するリアリティに疲れた現代の人が欲している絶妙なリアリティとフィクションのバランス。それを今日本で一番体現できるのが吉高さんなんだと感じます。時代が求めているとも言えそうですね。だからドラマ等の出演が途切れないんだと思います。


でも、吉高さんが活きたのは、相手役の横浜流星さんが徹底的にリアルに演じていたからというのを忘れてはいけません。この映画の横浜さんは静かで繊細な演技を心掛けていて、特にまだ明香里に戸惑っている前半の靴を気にしたりとか、距離を測りかねている感じが良かったです。受け身の演技が光っていました


しかし、映画の後半からは攻めに転じるので、そのギャップも見どころ。鋭い目つきと鍛えられた肉体は誰が見てもきゅんとすること間違いなしです。やはり横浜さんは20年代の主役の一人になりそうな俳優さんですね。




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長くなってきたので、この辺でまとめると『きみの瞳が問いかけている』は、


・00年代のケータイ小説的純愛ものを主人公を大人にしてのリバイバル
・10年代のリアル志向へのカウンター



という二つの要素が含まれている映画だと、私は感じました。この二つの潮流は20年代前半の邦画の一つのトレンドになりそうな予感がします。よくある純愛映画に見えて、後々振り返ってみたら大きな意味を持つ映画だった、ということになるかもしれないですね。既視感はあるかもしれませんが、興味のある方はご覧になってはいかがでしょうか。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい 





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こんにちは。これです。今回のブログも映画の感想です。


今回観た映画は『パブリック 図書館の奇跡』。7月に公開されてからいくつか好評が届いていたので、観てみたいリストには入っていたこの映画。10月になってようやく地元でも公開されたので観に行ってきました。


結論から申し上げますと、傑作ですね、この映画。いっぱい笑いましたし、最後には泣きそうになりました。今年観た洋画の中でも一二を争うくらい好きです。


それでは、感想を始めたいと思います。拙い文章ですがよろしくお願いします。





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―あらすじ―

米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、実直な図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)が常連の利用者であるホームレスから思わぬことを告げられる。「今夜は帰らない。ここを占拠する」。大寒波の影響により路上で凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターが満杯で、行き場がないというのがその理由だった。
約70人のホームレスの苦境を察したスチュアートは、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。それは“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張やメディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられてしまう。やがて警察の機動隊が出動し、追いつめられたスチュアートとホームレスたちが決断した驚愕の行動とは……。

(映画『パブリック 図書館の奇跡』公式サイトより引用)





映画情報は公式サイトをご覧ください







※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。







あらすじにもある通り、『パブリック 図書館の奇跡』は一言で言うと、大寒波で行き場を失ったホームレスたちが図書館を占拠する映画です。ユーモラスな雰囲気で包まれていますが、切実な問題提起がなされていて、観終わった後にはホームレスのことについて調べたくなるような、何かしたくなるような映画となっていました。


そして、調べてみたところビッグイシュー基金のHPによると、日本のホームレスと呼ばれる方々は2020年1月時点で3,992人いるとのこと。これは2007年から8割ほど減っていますが、ネットカフェ難民と呼ばれる方々は東京都だけでも一晩に4000人いるとのこと。このコロナ禍で失業したであろう数多くの人も含めると、日本でもまだまだ貧困問題は解決されているとは言い難いですね。


この映画でなされたのは、そんなホームレス問題、貧困問題への問いかけです。象徴的だったのが市長選のPRですね。印象悪く描かれていた検察官のデイヴィスはもちろん、善人っぽく描かれていた牧師も実はホームレス支援については何も語っていなくて。まあ住所がないと選挙の際に投票所入場券が届かないので、投票できないんですよね。政治家の身になってみれば、いくらアピールしても票が見込めないのでは、その時間や労力を他の政策に回した方が得策です。


そんな事情から職を失い、政治や公的扶助にも救われず、大寒波に震えるホームレスたち。図書館で暖を取っていましたが、閉館した夜には外に放り出されてしまいます。そして、寒さにさらされ凍死する者まで出てきてしまう。こんな状況にはもう耐えられないと、ジャクソンという黒人のホームレスをリーダーに公共図書館に居座ります。政治から見放された彼らが、公共の場に救われることには何かメッセージめいたものを感じてしまいますね。


彼らの事情を察して、図書館に居座ることを許可するのは一介の職員に過ぎないグッドソンです。もちろん、彼に夜間開放を認める権限はなく、刑事のラムステッドの説得に遭ったり、イメージを上げて選挙戦での逆転を狙うデイヴィスに、グッドソンが起こした立てこもり事件だと事をややこしくされてしまいます。


その中でも悪い意味で印象に残ったのが、中継をするリポーターですね。局の意向かもしれませんが、グッドソンを人質事件の犯人へと仕立て上げ、事実を正しく伝えません。ありのままの事実を伝えれば、事態は良い方に向かうにも関わらずです。


私にはこの報道は、自分たちが選んだ政治家が、ホームレスに支援をしなかったせいで、このようになってしまったという事実から目を背けているように感じました。自分たちにもほんの少しですが責任があるという真実を受け止めたくなくて、事件という分かりやすいストーリーにしているのかなと。




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でも、ホームレスがこの世界にいるのは事実で、本当は全員に定住する場所があることが理想なんですよね。健康で文化的な最低限度の生活に、衣食住の三要素が含まれているのであれば、ホームレスがいることは国の政策としては失敗なんですよね。映画でも、ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』から「全ての成功を帳消しにする失敗」(うろ覚え)というような言葉を引用していましたけど、まさにそれですよ。


そして、失敗は誰しも直視したくないものです。駅や道路に座るホームレスに声をかける人間が果たして何人いるでしょうか。私も東京に住んでいたころに、立川に行くとホームレスの方が毎月ビッグイシューを配ってましたけど、一度も受け取ったことなんてなかったですからね。こうやってこの映画を観なければ、わざわざこうしてホームレスの方に思いを馳せることもなかったでしょうし。


この映画は、そんな直視されない、見られないホームレスが「ここにいるぞ」と声を上げる映画なんですよね。俺たちの存在を知らしめるんだという。もう本当にのほほんと生活している自分を恥じたくなりましたよ。


最近の映画でLGBTを扱った映画が増えているじゃないですか。これも今まで顧みられなかったLGBTの方々の存在を知らせるという意味があるでしょうし、最近で言うとBLT(Black Lives Matter)運動もそうです。この運動も、人種差別の意識が薄い私たちに、いまだに人種差別が存在していることを強烈に訴えかけていました。


この映画の脚本が書かれたのは大体3年位前なんでしょうが(HPには制作に11年かかったと書かれている)、「(デイヴィスのイメージアップのために)何か事件起こらないか。黒人が射殺される以外で」というセリフがあったのにはビックリしました。そう考えると、ジャクソンが黒人であることも重要な意味を持ってきそうですね。


最近、某監督が「社会問題は誰も見ない」と呟いて物議を醸していましたけど、私は映画には記録装置という意味合いもあるので、どんどんと社会問題を扱ってほしいなと思います。普段目の届かない人に目を向けるきっかけになりますし。まあ、社会問題が入っているから高評価するっていう傾向は危ないとは思ってますけどね。ほら、多様性を必須条件としたアカデミー賞の新基準が話題になってましたし。









と、ここまで書いてきた限りでは、この映画はホームレス、貧困問題という社会問題を扱ったお堅い映画なのかなと思うかもしれません。でも、社会問題だけを伝えているのではなく、この映画はエンタメ性も十分に兼ね備えているんです。


まず、説得を狙うラムステッドと応じるわけにはいかないグッドソンとの駆け引きは手に汗握りますし、占拠中も次から次へと問題が発生して飽きさせません。事態をややこしくするデイヴィスの顔芸も見どころですし、何より映画に登場するホームレスがみんな明るい。誰一人として、必要以上に悲愴感を漂わせることなく、占拠はあくまで平和な雰囲気の中で行われているので、映画の雰囲気も決して重くなることはありません。血もほとんど流れないですし。


そして、最高だったのが、その落とし方です。警察の機動隊が突入する。もう悲劇的な結末しかない。そう思わせといてのアレにはびっくりしました。カメラが見えなくなったところで、「あ、これ全員いなくなってるヤツだ」と思ったんですが、全然違いました。初見では戸惑いとともに笑いがこみ上げてきます。まさか今年の某邦画を上回る映画を今年中に見られるとは思ってなかった。


でも、考えてみるとこれ以上ない平和的な解決方法だと思うんですよね。万国共通でインパクトも十分ですし、あれを見た住人はきっと忘れられない光景になったと思います。私もあの光景はしばらくは忘れることができないですし、ポスターの「忘れられない夜になる」という言葉の意味に思わず膝を叩いてしまいました。最後にセリフだけですけど、「低体温症になる温度は?」とか「ホームレスの人数は?」と聞かれていて、「ああこの出来事は住人の心を動かしたのだな」と感動してしまいました。


そして、私の心も動きました。もしこの映画を観ていなければ、最初に述べたようにホームレスの方々の現状を軽くでも調べることはなかったでしょう。それに、何かできることはないかとビッグイシュー基金にも少しですが協力させていただきました。今は微々たるものですが、人の役に立つことをしたという爽快感でいっぱいです。本当にこの映画を観てよかったなと思います。


参考までにビッグイシュー基金のURLを貼っておくので、映画を観たりしてホームレス問題を何とかしたいと考えた方は、寄付を検討してもいいのではないでしょうか。

https://bigissue.or.jp/how_to_join/donate/





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以上で感想は終了となります。映画『パブリック 図書館の奇跡』。社会問題をエンタメに乗せて届けている傑作です。上映している映画館はもう少なくなりましたが、興味のある方はぜひご覧ください。お勧めです。


お読みいただきありがとうございました。


おしまい






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